お座敷ばんび・PIYO

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君のぬくもり・6



君のぬくもり・6


「ミスター・ギブソン」

2007-08-25 17:50:39



今年の夏は猛暑続きの日々になった。

最高気温が記録更新とニュースになり、

熱中症での死者が毎日ニュースで報道された。


このところ私の時間のなさを気遣って連絡を控えめにしている親友から

久しぶりに電話があった。たわいもない話ぶりであったが、たまには顔を

みて話をしようということになった。時間が空くのでこちらに来るという。

わたしの近況に変化は特になく特に報告することも無かったので、

親友の話を聞くことにした。しばらく見ないうちに少し細くなったような気がした。

様子はいつもと変わらないのだがな。。。と観察をした次の瞬間、

私は胸腔部内の臓器が鷲づかみにされたような感覚を覚え

呼吸が出来ずに瞬きも出来ないまま呆然としていた。

彼が話した言葉に衝撃を受けたのだ。


「ヘモグロビン値が下がっている。」


その言葉に頭の中にはいやな病態ばかりが浮かんでくる。

男の場合、貧血というのは考えにくい。


すぐに病院に行き検査をするよう薦めたところ実は先日、済ませたという。

検査に行くきっかけはそのヘモグロビン値だったのかを堰を切ったように聞いてしまった。


目眩が現れだした、、、。ほかにも色々とあって。。。
検査ではAFPがやはりね。。。


その詳しくは聞くまでもない。彼の表情が物語っているのは当然だ。


まさか!!そんな。。。


言葉にだせずただ硬直した身体をなんとかしなくてはと焦る。

AFPは胎生期、あるいは出生したばかりの動物の血清にしか存在しない

抗原性をもつ蛋白である。正常人の血清ではきわめて少量しか検出され

ないものだが、特に多量に検出される場合がある。そのため検査には有効と

される腫瘍マーカーだ。しばらくの沈黙の後、彼は言った。



もう余計な事はしなくてよいと言ってある。今出来る限りも手遅れだ。
とにかく、せめてまた歩いて会いにくるからな。


穏やかな微笑みは彼の独特の表情であって、わざわざ微笑んでいるのではない。

わたしは 当たり前だ! と強く言い彼を見送った。

彼とは様々に衝突もし、話し合い、笑いあってきた。

いつもお互いが元気でいるものだと安心しきっていた。

それが突然、彼は人生をリタイヤするのだ。

あがくこと無い彼をどうすることも出来ない。

それだけ彼の人生は確実になったということなのだ。



蝉しぐれの空を見上げた。

この空を次の夏にわたしはどう見るのだろう。。。。

























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