おとぼけ香港生活から脱皮

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【番外編】乞食事情


豊は「シンセンに行ったらびっくりするぞ!」
と言っていた。

「何がびっくりするの?」と聞いても
答えてはくれなかった。
とにかく、自分の目で確かめて来いと言われ、
私はパパさんとシンセンへ行ったのである。


そして、シンセンへ出ると
なんとも広大な土地!
車が行きかう道は何本線にも広がり、
ビルとビルの間がとても広い。


豊の言っていた「びっくり」はこれか?


私は豊の言っていた言葉がこれだと信じ
疑わなかった。


な~んだ。これが答えなのか~ 
ま、びっくりだけど、そこまで強調されることでもないじゃん♪


と気を許してしまったのだ。


そして、パパさんの歩く後ろをひたすら歩いた。
香港の狭い土地にひしめきながらそびえ立つ
ビルとは違い、シンセンを歩くことは
広すぎて見るものがなく、
同じ距離を歩いてもとても長く
感じられるのだった。


すると、突然、階段の踊り場に
見苦しい程のボロをまとった
乞食が物乞いをしていた。

だが・・


だが・・



片足がない!!!!!



突然の出現に気を緩めていた私は心臓が止まり
倒れそうなほどびっくりした。


豊の言っていた「びっくり」は
「乞食」 だったのだ。


ある時は、片足が未成熟のままで
お尻からぶらぶらと足を垂れ下げ
四つんばい(?)になって歩道橋の階段で
人の行きかう方へと足早に寄っては
お金をせびっている。

これを見たときはとてもショッキングで
寄って来られるのが怖いと思うのと同時に
目を背けずにはいられなかった。
通り過ぎて、遠くの方からその乞食を
眺めていたのだが
私は初めて見るこの世の者とは思えないほど
奇異な眼差しで眺めていたものだった。

目が見えない、片足がない、片腕がない、
両足がないといった乞食があちこちにいる。
そして、老人の乞食や子供の乞食まで
老若男女に亘っているのだ。

パパさんに聞いた話だが、人身売買で
買ってきた子供の目をつぶしたり、
腕を切ったり、足を切ったり
四肢切断をして
買った親は子供の時から
物乞いをさせていると言うのだ。

こういった身体的に障害がある乞食たちは
後に乞食を業種にして、交代制で
タクシー乗り場で物乞いをする。


老人や子供の乞食はお金をくれるまで
後を付いて来るのだ。
そして、子供を物乞いにさせている親は
子供に、お尻丸出しの赤ん坊を
抱かせ、身なりの汚い格好で物乞いをさせている。
そして、親はというと子供達を近くで見張っている。
しかも、私達となんら変わらない普通の格好をして。



以前、赤ん坊を抱いた母親が
地べたに座りゴミ箱をあさって「ゴミ箱から
ご飯を食べる」というのが流行った。

これは事前にゴミ箱の中にビニールを被せ
ご飯を仕掛けておく。
そして、事前に仕掛けておいた白いご飯を
つまんでただ食べるのだ。


これは香港の新聞にも取り上げられ
ゴミ箱が設置してある毎に
赤ん坊を抱いた母親達がゴミ箱から
ご飯を食べている写真が
載っていた。

これを見て大いにおかしく笑ったのだった。
これでは同情の余地はなく、恵む人はいない。
通り過ぎ様に見て笑われるのがオチであった。

だが、これでもショッキングなことがあった。
ゴミ箱から地下にご飯を食べている人がいたのだ。
当然、ゴミ箱の中は錆びっぽくとても汚れていた。


リアルすぎるよ・・・



今のシンセンはとても発展して行き、
乞食の数も減ってきた。
シンセンを歩いても
手足がない人はそう出くわすことはなく
五体満足の乞食をたまあに見かける。


豊家族が香港に来た際、私を交えてシンセンへ
行ったときのことだ。

皆で歩いていると、
ちらほらと老人の乞食に出くわすのだが、
乞食達はなぜか体格のいいお義兄さんの
所に一直線だ(笑)

体格がいいと「食」もいいと思って
いるのだろう。
「食」を沢山食べるからお金を持っていると
思われるのだ。

お義兄さん、広東語がしゃべれるから
乞食を相手にしてしまう。
「お金なんてないよ!」と言っているのだが
相手にしちゃうから付いて来るのだ。
こういう時は無視を決め込むのがいい。

だが、この乞食、お義兄さんが恵んでくれないと
わかると、今度は私と手を繋いで歩いている
姪っ子をターゲットにして来た。


子供相手に恵んでくれってか!!!!


私は一気に腹が立ち、


「子供がもってるわけないでしょっ!!!!!(怒)」


と、思いっきり日本語で怒鳴りつけてやった。

すると、この乞食、異国人と知るや否や
物乞いを諦めたのだった。


あの時よりは遥かに乞食の数は減っている。
だけど、体に異常がある乞食を見ると
やはり恐怖に怯えるほど凍りつく。
そういう乞食に
突然出くわし、足早に向かってくるので
私の背中は悪寒が走るほどゾッとするのである。

皆さんがしつこい乞食に遭遇した時は
日本語(母国語)で怒鳴りつけることを
お勧めする。


※ 乞食は意外にお金持ちで
  田舎では大きな豪邸に住んでるそうです。(パパさん談)



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