K/Night

K/Night

―Preparation―


木々は黄や赤へ色付き、茶へと変色していく。
冷たい風は冬を思わせ、季節の変わり目を実感させる。

「―――そんな事件が起こっているのですか・・・・」
旧校舎に住む、七不思議の内容に1人である梓蘭は綺麗な眉を眉間に寄せる。
事件とは9月末から10月の今に至って起きている殺人事件の事だ。
1つが、男女合わせて5人もの犠牲者を出した事件。彼等は無残にも四肢を引き裂かれ、公園に無造作に転がされていた。まるで人形の様に。
もう1つが、ここ一帯で生活している女生徒を狙った事件。既に2人の犠牲者が出ている。しかも共通点があり、必ず何処かしらが無くなっていた。例えば、右目とか―――・・・・
警察はこの2つの事件を並行して捜査しているらしい。
「そうなんだよな。折角ハロウィンの日に学校をあげてのイベントを企画したのに、このままじゃそれも出来なくなっちまう」
返答をしたのは天生水城。今日は長い髪を邪魔にならない程度に結わいている。
それに、
「被害者が出るよりは良いだろう?」
眼鏡を掛けた麻生蒼麻が窘める。
周りには何時ものメンバー―――天生水生、上杉竜矢、上杉竜也の面々が椅子に座っている。
彼等は今、旧校舎の一室、1階にある教室に陣取っていた。
夏に交わした梓蘭との約束を守っている。
丁度今日がその日で、5人は旧校舎へと入り、こうして話しをしていた。
「水生、竜也。取り敢えず事件が解決するまでこのように俺達―――生徒会は動こうと思うのだけど、如何だろう?」
生徒会長である蒼麻は別な書類に目を通しながら、肝心の書類を手渡す。
2学期で高3生は任期終了の為、その後の引渡しの手続き等があり大変なのである。
水生と竜也は黙ってそれを受け取り、ざっと目を通す。
2人の間から竜矢が興味津々に覗いた。
「授業が終り次第即刻下校、部活動の当面停止、2人以上での登下校・・・・まぁ、俺達に出来るのはこれくらいだな」
次期生徒会長に決定している竜也は、疲れの濃い表情を浮かべる。
引き受けの手続き等で忙しいのに、この事件での騒ぎだ。更に警察の息子としての家庭事情でも忙しい。
それは水生にも言える事で、
「下校の見回りは高等部で引き受けよう。中等部は直ぐに下校。委員全員と先生方とで如何にかなるだろう」
次期副会長に決定している水生も手続きに忙しく、同じくして警察の娘なので更に忙しく立ち回っていた。
それに加えて、
「竜矢、出来るかは置いておいても、もうそろそろハロウィンイベントの準備をしなくてはいけない。特にイベントで使うお菓子だ。作るほうが低コストだが、作る手間がかかるし、買ったら逆に予算がかかる。予算は生徒会が工面してくれると言ってくれているが、あまり甘えるわけにもいかないからな」
「それなら心配はないよ。調理部と理科部が手伝ってくれる事になったんだ。クッキーとべっこう飴、2種類だけでも充分だろ?これなら低コスト間違いない!」
竜矢との便利屋としての仕事もあった。
内容は『ハロウィンでイベントを開いて欲しい』
先刻水城が『出来るか・・・・』と心配していた正にそれ。
して、その依頼主は、
「すみません。忙しいのにまたお願いしてしまって・・・・」
普通の人間のように座り話しを聞いている梓蘭である。
今は申し訳無いとばかりに伏し目がちだ。
「謝る事はないよ。こっちも楽しんでやっている事だからね」
眼鏡を外しながら、蒼麻は微笑む。
「ハロウィンでな、皆で仮装する事にしたんだ。これなら梓蘭達が外に出ても不自然じゃない。どうせなら皆で楽しんだ方が良いだろ?」
水城が悪戯をする子供のような笑みを浮かべる。
「まぁ、さっきも言ったが出来るかは分らないけどな」
気まずそうに竜也が付け足した。
「まぁ、これから準備で色々忙しくなる・・・・っていうのは分ったけど、1つ注意する事があるから皆聞くように」
パンパン、と手を叩き注目を促す蒼麻に、他の4人の視線が集まる。
「まず、梓蘭はあまり人前に出ない事。感が良い人間は、一目で君がこの世の人間じゃないって分るからね。竜也、水城、竜矢、水生の4人は事件解決まで必ず最低1人以上と一緒に帰る事。下校延長は認めません。俺がまだ学校に残ってる時間までなら滞在は認めるけどな。特に水生、君は一応女の子なんだから絶対に守る事」
「・・・・私を見て女だとすぐに分る奴はいるのか?」
正論に真実で返される。
思わず何とも言えない表情をしてしまう。
更に水生は畳み掛ける。
「私よりも竜矢の方が危ないと思うのだが?」
「へ?俺?」
自分を指して目を丸くする竜矢。
―――確かに・・・・
その言葉は頷ける物でもあった。
決して小柄ではないが、細いイメージを与える体。切らずに伸ばした髪。童顔に加えての少々女顔。
後姿でも間違われ易い。ならば正面から見て間違えられても不思議ではない。
しかし、水生も必ずしも男に見間違えるという事はない。明かに線が細い。しゃれっ気がない一本結わきの髪だが、後ろから見れば分る人は分る。
「取り敢えず、水生と竜矢は必ず2人で、ベストは竜也と水城がいれば良いけど、兎に角何人か増やしてから帰る事。これは命令。分ったか?」
何時の間にか、竜矢も数に入れられている。
「・・・・分った」
「はーい」
1人は渋々、1人は状況を略把握していない状態で返事をした。
兄達は、
『必ず一緒に帰ろう』
と思ったとか思わなかったとか・・・・
「まぁ、この頃はこんな感じだ。イベントは最後まで粘るつもりだから、気長に待っててくれ。じゃあ、今度は梓蘭達の話しをしてくれないかな?」
自分達の話しを締めくくり、蒼麻は楽しそうに聞いている梓蘭へと話題を移した。

空は気味が悪いくらいにオレンジ色をしている。
雲も、街中も、空と同じ色で染まっていた。
「今日も沢山話したね」
満足気に伸びをする竜矢。
「こういう日は5人全員で一緒に帰る事。良いかい?」
一番後ろから蒼麻が念押しする。
「蒼麻は神経質過ぎだよ。あんまり色んな事を考えると倒れるよ?」
竜矢は手を腰にあて、頬を膨らませる。
蒼麻はその頬を掴んで伸ばし、真面目な顔で窘める。
「警察官を目指す者なら油断は禁物!一瞬の気の緩みが命の危険にも繋がるんだからな?」
「でも竜矢が言ってる事も当たっている。あんま1人で背負い込むなよ?唯でさえ蒼麻は忙しいんだからさ」
「俺達がいる事をお忘れなく」
存在を示すかのように竜也と水城は背中を叩く。
「さて、じゃあ帰りますか。目を通した書類を先生方に提出してさ」
クルリと降り返って、水生が呼びかける。
「・・・・そうだな」
安堵にも似た苦笑。
―――それでも不安は拭いきれない。

決定事項
・終礼後、即刻下校とする(部活動は禁止)
・登下校は2人以上で行動する事
・高等部の委員と教師による生徒下校後の見回り

戻る 次ページ TOP 篠慶学園TOP

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: