北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

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2005.11.16
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テレビ広告の値段を比べる指標として、CPRP(Cost Per Rating Point)があります。その放映エリアにおいて1%の視聴率を獲得するための料金です。
でもこれでは、放映エリアの大きさ(そのチャンネルを視聴可能な人口など)がバラバラですから、国や地域別の比較ができません。
それを可能とする指標がCPM(Cost Per Mill, Cost Per Thousandとも言います)で、その広告を1,000人に視聴してもらうためにかかる費用です。これでも、日本と中国では現時点で経済力が違いますから、同じ1,000人でもモノが買える人がすべてなのか、そうでない人も含まれているのかで、実際の広告効果は違ってきます。
ですから、例えば日本の広告料金(効率)と比較するためには、その1,000人を個人月収1,000RMB以上などに限定して数値を出したりします。東京なら全住民の手に届く商品でも、北京だと個人月収1,000RMB未満の人たちには関係の無い商品の広告だったりしますから。
このようにしてテレビ広告の値段を比較すると、東京より北京のほうがはるかに高くつくことが分かります。

日本の広告主はテレビ広告の効果に期待します。日本ではテレビスポットの放映量と比例して、商品の売上が上がるようなケースもまだあるからです。でも私は、テレビ広告をあまりお勧めしません。予算や販売エリアが限られているクライアントには、OOHM(Out of Home Media)をお勧めしています。広告業界ではスグに横文字を使いたがるので、最近ではOOHMなどと言うようになりましたが、要は「屋外広告」です。

「屋外広告」と言えば、日本では真っ先に、ビルの屋上にあるネオン広告を思い浮かべてしまうでしょう。中国の大都市部では、バスストップや地下鉄ホーム周辺の広告ボードやラッピング・バス(バスの車体広告)がよく目に付きます。
そして、日本では一般的でないのが、「エレベータ広告」です。

その後暫らくして、大きなビルの1階のエレベータホールに液晶モニタを設置して、そのモニタでテレビCMを放映する、と言う売込みがありました。
どちらもテレビ広告と比較すれば格段に安上がりなのですが、こんなゲリラ的な広告をしちゃうとブランド価値が下がるだろうと言う思い込みがあり、日本のクライアントにはお勧めしませんでした。
そのうち、エレベータの"カゴ"内のポスターやエレベータホールの液晶モニタがどんどん目に付くようになり、中国のトップブランドのみならず欧米系のケータイ端末やITサービスのトップブランドの広告なども目にするようになりました。

エレベータホールの液晶モニタを高価値メディアに育て上げた FOCUS Media(分衆伝媒) は、設立から半年後にはソフトバンクから多額の投資を受け、その後モニタの設置箇所をどんどん増やして、3年足らずでNASDAQに上場を果たしました。いまでは中国の50都市以上のオフィスビルに2万5,000台もの液晶モニタを設置して、広告メディアとして販売しています。
エレベータの"カゴ"内のポスター広告を早くから手がけた Framedia(框架媒介) も急成長を遂げ、最近FOCUS Mediaの傘下になり、この新興メディア・グループに、既存のテレビ局は脅威を抱いているとも言われるようになりました。

中国では高級なオフィスビルでも、エレベータの設置台数が少なかったり、制御システムの問題で待ち時間が長かったりします。1階のエレベータホールが人で溢れることもしばしばです。また、これは日本でもそうですが、エレベータの"カゴ"の中は何となく視線のやりどころに困ったりします。エレベータ広告は、こうした状況を捉えた画期的なメディアと言えます。
しかも、対象となるオフィスビルは20~30代の小金持ちが勤務したり商用で頻繁に出かけたりする場所です。若者の高所得者層に広告ターゲットを限定できるのです。

エレベータ広告は画期的なメディアではありますが、システムは極めてロウ・テク。液晶モニタで放映する広告素材はDVDに保存して、2万5,000箇所のモニタに人海戦術でセットします(NASDAQ上場でがっぽり資金調達できたので、近い将来ハイテク化するみたいですけど....)。"カゴ"内ポスターにしても、何万箇枚も人の手で張り替えているのですから、中国だからこそ可能だとも言えそうです。

欧米のトップブランドもエレベータ広告を利用するようになって、日本のクライアントに積極的にご紹介しているのですが、まだまだ熱心に検討してくださる企業は少ないようです。日本で生活してるとピンと来ないでしょうし、北京で生活していても、日本人があまり出入りしないようなオフィスビルやマンションに多く設置されていますから....。





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Last updated  2005.11.17 02:26:46 コメント(6) | コメントを書く


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