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紫色の月光
第十話「生きる理由」
漆黒の機体、ダーインスレイヴの前に三つの光が迫る。それはまるで悪い戦士を倒す為に光の国からやってきた三体の正義の使者にも見える。
だが、そんな事はどうでもいい。
正義とか悪とかはどうでもいい。寧ろクソ喰らえ、と言った感じである。
何が正しいのかなんてどうでもいい。
何が悪いことなのかもどうでもいい。
今はただ、目の前にいるクソムカツク野郎どもを叩きのめす。
カイトの頭の中にあるのはそれだけだ。
「…………」
そして彼は無言で光の三つを睨む。
残りの数は5人だが、3人来ただけでも彼にとっては大収穫だ。
「………取りあえず、念の為に『証明』してもらおうか」
つまるところ、アンチジーンである事を証明しろといっているのだ。
この三人がアンチジーンでないのなら何の意味も無い。
すると、三体の機体の間接部分が光りだした。これはシステムXの使用を意味するものである。
「それなら自己紹介と行こう。俺はアンチジーンナンバー4のニオン・ショート。能力は全身刃物化だ」
すると三体のうちの赤い機体の腕が突然刃物となった。まるで一瞬にして腕が包丁になったかのようである。
「私はアンチジーンナンバー3のレオン・クリムゾン。能力は獣化、変身後はこうなる」
黄色の機体はみるみるうちに漆黒色に変化していく。そして頭部は人型からまるで狼のように牙を持つ獣の様な形となった。どうやら狼男のようである。
「最後はアンチジーンナンバー2、レオナルド・ゴードン。能力は鏡のように相手になりきる変身能力だ」
すると、驚くべき事に灰色の機体が一瞬にしてダーインスレイヴそっくりになった。先ほどまで無かったはずの背部の黒い翼もきちんとあるし、インフェルノ・スマッシャー発射の為の胸部開放口もきちんと用意されている。
「そして後ろにいるのがアンチジーンナンバー6のギルドラン・エルドロイ。此処まで俺たちを運んできてくれた奴だ。その能力は電子系等の操作で、簡単に言えば一人でも戦艦を動かせる。その能力で俺たちを運んできた、と言う事さ」
つまり、3体ではなくナンバー1を除く4体が揃ったと言う事だ。
こいつは思いもしなかった収穫である。これで一体探す手間が省けたのだから。
「それならこっちも本人だと証明しておこう。ジーンナンバー1、カイト・シンヨウだ。能力は微弱ながらの再生能力と――――――」
ダーインスレイヴの間接部分が光りだす。システムX発動の合図だ。
そして漆黒の機体はゆっくりと左掌を開いてみせる。
「放電能力だ」
その瞬間、ダーインスレイヴの漆黒の掌から紫電が溢れ出した。
それはまるで噴水のようである。
「成る程、確かに本人のようだ。ナックとチェンを殺した張本人」
「しかし我々は倒せない」
「何故なら貴様は此処で死ぬからだ。―――――誘い込んだつもりだろうが、実力差というものを思い知らせてやる!」
次の瞬間、三つの影がダーインスレイヴに襲い掛かってきた。
確かに彼らの言うとおり、残った連中は厄介なレベルのアンチジーンだ。しかしそれでも此処で倒さなければならない。
何故ならまだ最強のナンバー1が控えているからだ。
此処でこの三人に苦戦していたらそれこそナンバー1は倒せない。
「来い、貴様等みーんな纏めて地獄へ道連れにしてやる!」
ダーインスレイヴは右腕を軽くかざすと、手から某アメコミヒーローの如く漆黒の鉤爪が生えてきた。
ダーインスレイヴの武装の一つ、ブレイククローである。
「俺一人で、死にはしない!」
今、カイトの究極の挑戦が始まった。
負ければ死が、勝てても次の戦いが待つ過酷な挑戦である。
そして最後まで勝てたとしても誰も迎えてはくれない。一人寂しく散っていくだけなのだ。
「うおおおおおおおおおおお!!」
カイトは吼えた。それは全てと決別する決意を込めた咆哮である。
それに応えるようにダーインスレイヴは漆黒の翼を展開する。そのまま超スピードで三つの影へと突っ込んでいった。
漆黒の鉤爪に紫電が纏う。
システムXを使用しているが為に可能となった、カイトだけが出来る荒業である。
「ライジング・クロー!」
電撃のオマケ付きで鉤爪は突き出される。
ニセダーインスレイヴと狼の機体を無視して突き出された先にあるのは刃物の塊となっている赤い機体だ。
「甘い!」
しかし赤い機体はその攻撃をすんでのところで回避する。
向こうの自慢はスピードだ。勿論その切れ味抜群の刃物も持ち味なのだが、それでもこの赤い機体の元からの自慢はスピードなのだ。
しかし、
「甘いのはそっちだったな」
「――――――え?」
赤い機体はその言葉の意味が分らなかった。
先ほどの電撃爪は完全に回避できた。それなのに何故こちらが甘いのだろうか。
そう思った瞬間、ニオンは機体と共に完全に『消し飛んだ』。
それは痛みも何も感じる事が無く、本当にたった一瞬の出来事であった。
「ニオン!?」
その事態に真っ先に反応したのはニセダーインスレイヴに乗るレオナルドであった。
彼の振り向いた先にいるのは胸部を展開している本家ダーインスレイブの姿である。
「馬鹿な! 攻撃スピードが速すぎる。こんなの計算外だ!」
それもそうだろう。インフェルノ・スマッシャーは多少のチャージ時間が必要な武装である。それなのにカイトはものの数秒もしないうちにぶっ放したのだ。
「システムXを発動している今、貴様等はこの俺がじきじきに相手をしていると言う事になる。俺は攻撃スピードには自分でも結構自信があってな」
ダーインスレイヴは残りの2体に向かって突っ込んでいく。その右腕にはやはりライジング・クローが構えられている。
ニセダーインスレイヴと狼の機体、デッドファングの二体はそれを見た瞬間、迎撃体勢に入った。
「喰らえ、プラズマ・フェザーブラスター」
しかし先ほどのライジング・クローで襲い掛かってくると思ったら、今度は本家ダーインスレイヴの漆黒の翼から一対のビームランチャーが顔を出した。
その銃口には光と共に紫電も集まっていく。
「死ね!」
その声が放たれると同時、電撃付きのブラスターは左右から二本発射される。
最早最初から分りきっている事だが、この容赦の無い一撃は周囲の木々や山をお構いなしで破壊していき、そのまま二体へと向かう。
右のブラスター砲はニセダーインスレイヴ、左のブラスター砲はデッドファングにそれぞれ向かっていく。
「インフェルノ・スマッシャー!」
しかしニセダーインスレイヴはこれをインフェルノ・スマッシャーを使って迎え撃つ。しかも威力はこの胸部から放たれる閃光の方が上だ。
地獄の光は一気に紫電のブラスター砲を押し返し、そのまま本家ダーインスレイヴへと向かっていく。
「ふん」
しかしこれは軽く回避される。
インフェルノ・スマッシャーはコロニーを一撃で消し飛ばす威力を持っているが、それでも避けられたら何の意味も持たない。
一方のデッドファングは、紫電のブラスター砲が間近まで迫ってきても全く逃げようともしない。
しかし次の瞬間、レオンは誰もが予想だにしない方法でこれを防ぎにかかった。
両掌で紫電のブラスター砲を受け止めたのである。
「何だと!? あいつ正気か!?」
その行為に驚いたのはカイトである。
そもそもフェザー・ブラスターは一発がコロニーすら貫く威力をもっている。そんなものを真正面から受け止めるとはどうかしているとしか言いようが無い。
「ぬがあああああああああああああ!!」
しかしデッドファングの両手は紫電のブラスター砲を受けきった。
本当に両掌だけで防ぎきったのである。
「嘘だろ……!」
はっきり言うと信じられなかった。
あんな威力の物をまともに受けて生きていると言う事が、だ。
例えダーインスレイヴでもまともにあれを受けたら破壊されるのみである。
「ちぃ……どうやら厄介な連中が残ったようだぜ」
デッドファングは両手から煙が出ているのだがまるでダメージを受けていないわけではない。システムXを使用しているのだから機体のダメージはそのまま本人に返ってくる。
つまり、レオンの手も黒焦げになっていると言う事である。
「中々痛かったよ、こんな事は初めてだ」
レオンは無気味に笑うと、漆黒の影に襲い掛かった。
その攻撃方法は拳である。
デッドファングにはこれと言った武装はビームソードにバルカン、そして背部に装着されているビームカノン砲の三つだけである。
三つだけ装備されている理由は、レオンから言わせてしまえば『無意味に重いから』である。つまり、ゴチャゴチャ装備するよりだったらシンプルで簡単な武装だけにしてくれ、と言う事なのだ。
そして彼の望みは見事にかなえられた。
デッドファングは彼に合わせた超スピード重視機体として誕生し、システムXを使用する事で鋼の様な防御力を誇るようになったのである。
そして何より、システムXを使用する事でデッドファングは恐るべき『身体能力』を得たのだ。
「!?」
その脅威のスピードはカイトを驚かせるには十分すぎた。
その速さは今まで相対してきたどの敵よりも上なのだ。
「うおおおおおおお!」
避けようとするも、間に合わない。
一気に間合いを詰めるそのスピードは恐るべき脅威であった。
デッドファングは拳を本家ダーインスレイヴの腹部に叩き込むべく、拳を振り下ろす。
しかしカイトが狙うのはその瞬間だ。
「オーラ展開」
システムXを使用する事で機体のダメージがパイロットに跳ね返ると言うのなら、この黒のバリアで握り拳を防いでしまえば反動で向こうもかなりのダメージを受けるだろう、というのがカイトの狙いだった。
しかし、それは簡単に破られる。
「砕けぇぇぇぇぇぇぇっ!」
レオンが叫ぶと同時に、彼の拳は本家ダーインスレイヴが作り出す黒のバリアをいとも簡単に砕いた。それはまるでガラスのように簡単に砕け散っていく。
「何だと!?」
これに驚いたのはやはりバリアを作り出した張本人であるカイトだ。
確かにオーラは無敵のバリアと言うわけではないが、それでもビームソードやライフルは普通に防ぐ事が出来る。
それならばデッドファングの―――――レオンの拳はそれ以上の威力を持つと言う事になる。
(洒落にならんぞ、それ!)
そう思った瞬間、デッドファングの強烈な拳がダーインスレイヴの―――――カイトの腹部に命中した。
「が――――――!」
余りの威力に口から堪え切れなかった血が吐き出される。
パンチ一撃だけでこんな状態になったのは本当に久しぶりだった。
「まだまだぁ!」
しかしデッドファングは攻撃を止める事は無い。
自らの最強の武器である『拳』を使った猛烈なラッシュは次々と本家ダーインスレイヴの装甲に襲い掛かる。
そして黒の装甲が悲鳴をあげるたびに、カイトの身体の各部も悲鳴を上げる。
「――――――――」
まるでガトリング砲の様な猛烈なラッシュを浴びる中、カイトは何も言わずに攻撃を受け続けていた。
しかしその一撃一撃がダーインスレイヴのバリアを破壊する威力を持つラッシュを浴びながらも、カイトは意識を失ってはいない。
ただ静かに、痛みと言う名の雨を身体に受けながら反撃のチャンスを待っていた。
その恐るべき巨大な闘志を胸に秘めながら。
「だあああああああ!!」
レオンの攻撃は未だに続いていた。
合計で既に500は相手に入っている。此処まで受けてボロボロにならないその拳はかなりの物だが、それを受けてまだ起動できる状態のダーインスレイヴもかなりの物であった。
「ずえりゃああああああああああ!!」
ようやくラッシュを終えた彼は拳を下ろす。
しかしデッドファングは攻撃を止める事はなかった。
次にダーインスレイヴに放たれた攻撃は強烈な蹴りだ。
それはまるで缶蹴りの缶のようだった。
強烈な蹴りによってダーインスレイヴは宙に舞ったのだ。しかも翼を羽ばたかせて空中でストップする暇さえない。
「……くあ!」
宙に舞ったカイトの身体にようやく蹴りの痛みが伝わってくる。
これは先ほどのラッシュよりも強力だ。これでまだ装甲が耐え切っている方が不思議である。
しかしそれでも限界はやってくる。
「イビル・フラッシュ!」
そこに追い討ちをかけるかのようにニセダーインスレイヴが本家ダーインスレイヴに攻撃を仕掛ける。
しかも厄介な事に、ただの攻撃ではなかった。
続に言う「精神攻撃」である。
「………!」
ダーインスレイヴはそのまま何事も無いかのように自然体で落下していく。
その中,レオナルドは確信に満ちた勝利の笑みを浮かべていた。
何故なら、今の精神攻撃によってカイトは深い眠りにも似た幻の世界の中にいるからだ。その世界は今まで彼が見たこの世の地獄ともいえる世界。一度入ったら精神をズタズタに引き裂かれては二度と眠りからさめることでないであろう凶悪な技なのだ。
そしてその脅威の技を受けて静かに落下していく本家ダーインスレイヴに迫るデッドファングの姿がある。
彼の牙は眠っているカイトを二度と起こす事がないように、確実にコクピットを仕留める。それだけで全てが終わるのだ。
「死ねぇぇぇぇぇっ!」
デッドファングが吼える。
それと同時、デッドファングは更にスピードを上げてダーインスレイヴに迫る。
それは確実にカイトを葬る為、100%という絶対的な可能性で彼を葬る為に必要だったものである。
しかし次の瞬間、レオンは信じられない光景を見た。
コクピットに与えるべき一撃をダーインスレイヴに叩き込もうとした瞬間、何とそれよりも速いスピードでダーインスレイヴの右腕がデッドファングの――――自身が居るコクピットに迫ってきたのだ。
「馬鹿な! 精神はズタズタに引き裂かれたはずだ!」
「あのくらいの地獄なら何度だって見てきてるさ! 心はとっくの昔にズタズタにされてるよ!」
ダーインスレイヴの右腕がデッドファングよりも早くコクピットへの一撃を与える。その攻撃方法は仕込まれた漆黒の鉤爪だ。
ブレイククローがデッドファングのコクピットに突き刺さっているのである。
「レオン!」
信じられない光景にレオナルドは思わず殺された仲間の名を叫ぶ。
「インフェルノ・スマッシャー!」
しかしカイトは、先ほど確実に殺したはずのレオンを機体ごと消し飛ばす。
展開された胸部から放たれる地獄の光に飲み込まれたデッドファングは文字通り、跡形もなく消し飛んだ。
先ほど消されたニオンと同じように。
「後……3体!」
完全にデッドファングが消し飛んだ事を確認したカイトは残りの敵を―――――レオナルドを睨む。
その姿は何とも憎たらしい事に自身の愛機だ。
いかに能力で変身しているとはいえ、頭に来る。
「ちぃ、ムカツク敵だぜ……!」
しかしこちらはかなり不利である。
何故ならデッドファングから受けたラッシュで受けたダメージはまだ残っている。それもかなりのダメージだ。
それに対して向こうは未だにノーダメージ。
しかも厄介な事に先ほどの精神への直接攻撃技を見る限りはレオナルドの能力は機体どころかパイロット本人にすら化けられるようだ。
つまりは向こうは邪眼を使えると言う事である。
カイト本人に化ける事によって、だ。
「ちぇっ。速攻で倒せそうに無いな、こいつは……」
時間はさかのぼる事7時間前。
フィティング艦内では格納庫が騒がしかった。
エイジ・ヤナギとシデン・イツキが無理矢理でも出撃しようとしているのだ。
「ハッチ、早く開けてくれ!」
エイジがソウルサーガのコクピット内で叫ぶ。その口調は明らかに苛立ちの感情が含まれている。
「早く行かないと十時間経っちゃうよ! 富士山まではそう遠くは無いけどグズグズしてたら手遅れだよ!」
それはカイトによる恐るべきメッセージが全世界に送られてから間もない時であった。
エイジとシデンの二人は最早居ても経っても居られない気持ちになり、何とかしてカイトを止めるべく出撃を求めているのである。
しかし、
『いや、駄目だ』
新艦長はあっさりとそれを拒んだ。
「何でだよ、今から行けばまだ間に合うぜ!」
『駄目だ。下手に彼を刺激すると本当に攻撃しかねん。君たちだって見ているだろう、J2コロニーがあの黒い機体によって簡単に破壊されていく場面を』
その言葉を聞いて、二人は思い出す。
あのインフェルノ・スマッシャーの光によって消し飛ばされてしまったJ2コロニーを、だ。しかもあっさりと。
「でも、どっちにしろ彼はターゲットが来なかったら破壊していきますよ!」
「そう言う事!」
二人の反論に思わず艦長は唸ってしまったが、それでもこの二人を出すわけには行かなかった。
何故ならそういう命令がどういうわけか上から来ているからである。
一体連邦軍で何が起きているのだろうか。こんな事態になってしまい、そして二人を出撃させるな、とは何を考えているのだろうか。
『しかし……』
艦長が何か言い始めた瞬間だった。
突如として格納庫のハッチが破壊されたのだ。
『………へ?』
マヌケな顔で格納庫の映像を見るブリッジのメンバー。
一体ハッチを破壊したのは誰なのか、という純粋な疑問である。
アークブレイダーは何もしていない。ソウルサーガだってそうだ。この二人はさっきから艦長と話をしていて操作系には一切手を触れていないからだ。
「あ、ゴメンナサイ。つい手が滑っちゃいました」
すると、本当に申し訳なさそうな顔を『しないで』リーザが――――ヒュッケバインが手を上げた。その手にはライフルが握られている。
というか、手が滑ってライフルなんか発砲されたらそれこそパイロット失格の様な気がする。
「それじゃあ、お先に失礼ー」
リーザはさも当然のように破壊したハッチから飛び出した。
彼女の行き先と目的は唯一つ。
富士山へ行ってあのわけの分らない馬鹿をとっちめる事だ。
時間を元に戻して富士山。
此処では二つのダーインスレイヴが睨みあっていた。
片方はカイトが乗る本家ダーインスレイヴ。もう片方はレオナルドが自身の能力によって変身したニセダーインスレイヴである。
見分け方なんて無い。
それほどレオナルドの変身は完璧だったのだ。
「………残り時間は3分」
それはお互いのシステムXを残り時間だ。
これを過ぎたらパイロットは確実に発狂する。
以前カイトは無理をして五分以上使った事があるが、それでも精神がボロボロになってしまい、今の状態に戻る事が出来たのが奇跡と言ってもいい程の傷を受けたのだ。
「確実に消す!」
カイトは出来るだけ敵を完全に『消し去ろう』と考えている。
もしレオナルドの遺体が発見されたとして、それを元に連邦が新たなジーンを作り出す可能性があったからだ。
それは何としても避けなければならない。
だから今まで倒してきたアンチジーンも遺体がないように消してきた。
だから確実にレオナルドも消さないといけない。
「決める!」
ダーインスレイヴは同じタイミングに攻撃を開始する。
攻撃方法は黒いライフルだ。
銃口がお互いに向けられ、その銃口に同じタイミングで光が集う。
それから放出されるのは闇色の光だ。
しかしこれは何とお互いにぶつかる事により簡単に相殺される。
「ダークソード!」
するとニセダーインスレイヴは漆黒のビームソードを抜いた。
それに応じてカイトもダークソードを抜こうとするが、
「………っ!」
こんな時に激しい痛みが体中に襲い掛かる。
先ほどデッドファングから受けた猛攻撃が今頃になって利いてきたのだ。
「隙あり!」
「!」
その隙を突いてレオナルドが襲い掛かる。
しかし次の瞬間、それに待ったをかけるように何処からかビームが次々と二つのダーインスレイヴに襲い掛かった。
「何だと!?」
ニセダーインスレイヴはこれを辛うじて回避するが、本家ダーインスレイヴは回避が間に合わない。
「オーラ展開……!」
しかし彼はギリギリで黒い防御壁を作る事によってこれを防ぐ。
そして防ぎきった瞬間、カイトとレオナルドはビームが発射された方向を睨んだ。
「あれは……ヒュッケバイン!」
しかも見えるのはヒュッケバインのみだ。あの機体は今はフィティングくらいにしか配属されていない。
と、言う事はパイロットは自然とフィティング艦内のメンバーの中の誰かと言う事になる。
「ま、まさか……」
そこでカイトは最悪の予想をした。
J2コロニー戦であのヒュッケバイン乗り込んで追いかけてきた時と同様に、今回もリーザが乗っているとしたら。
―――――アルフレッドから生き延びてくれる事を望まれたあの女性が乗っているのだとしたら。
『くぉらー! 一体全体何がどうなってるの!? 何でダーインスレイヴ同士で戦っているのさ!?』
大当たりだった。
しかも何と言う事だろうか。向こうは状況が見えてない。
そういう、後先考えずに行動するのはやはり流石とした言いようが無いのだが、それでも今の状況は不味い。
「よくも邪魔したな!」
そしてレオナルドが駆るニセダーインスレイヴは真っ直ぐヒュッケバインに飛んでいく。スピードでは、ニセとはいえ本家と能力が同じであるダーインスレイヴが圧倒的に早い。
『は、速―――――!』
ヒュッケバインのコクピットに向かってダークソードが突き出される。
このまま突き刺さったら確実に死ぬ。万が一でも助かる可能性は無い。
リーザは覚悟を決め、目を閉じた。
そして思う。自分の人生、あっけなかったな、と。
『…………?』
しかし、何故か次にやってくるはずのコクピットを貫く光が何時までも来ない。
それに疑問を覚えた彼女はゆっくりと閉じていた瞼を開ける。
そこにあった光景は、まるで自分を守る盾のようにして漆黒のビームソードに立ち向う本家ダーインスレイヴの姿だった。
「カイト・シンヨウ! 貴様……!」
レオナルドが何か言おうとする前にカイトは素早く口を開いた。
「レオナルド、貴様の相手は俺だ。―――――彼女に手出しは無用」
何故なら、それがアルフレッドとの約束だからだ。
必ず彼女を生かしてみせる、それがカイトとアルフレッドの間で結ばれた約束なのだ。
「そして、時間も残りが少ない。決着着けようぜ」
カイトはシステムXの起動時間の残り時間を見る。
後、一分。
(なら、これが最後だ!)
デッドファングから与えられた痛みはまだ身体に残っているが、関係ない。
例え手足がもぎ取られようとも、歯で噛み殺すのみだ。
「ずえええええええええええ!!」
本家ダーインスレイヴは弾丸の様なスピードでニセダーインスレイヴに迫る。
その右腕は真っ直ぐ敵に向けられており、そこからひょっこりと顔を現したのは漆黒の爪だ。
「引き裂け、漆黒の雷爪よ!」
しかし次の瞬間、その漆黒の爪に紫電が迸った。
それは噴水のようにダーインスレイヴの右腕から溢れ出す。
「ライジング・クロー!」
ニセダーインスレイヴはその一撃を防ぐべく、ダークソードを構える。
いかに本家ダーインスレイヴが速かろうが決して目で追えないわけではない。
ならばギリギリまで引きつけてからこの漆黒のビームソードで弾いてやればいい。注意するのは右腕だけでいい。そこに神経を集中すればかわせない事も無いのだ。
しかし次の瞬間、ライジング・クローがニセダーインスレイヴの寸前で止まった。
そしてその次に来るのは本家ダーインスレイヴの左手だ。
「注意するのは全体と言うのは基本だぜ?」
すると、カイトはシステムXをカットした。
しかし左手はニセダーインスレイヴの前に突き出される。其処から放たれたのは緑色の光球だ。それも人間でいう所のサッカーボールサイズの大きさである。
「ジェノサイドミーティア……! 消し飛べ!」
その瞬間、放たれた緑色の光球―――――ジェノサイドミーティアは彗星のように尾を引きながらニセダーインスレイヴを飲み込んだ。
その偽りの漆黒の翼も、装甲も、頭部も、コクピットも―――――何もかもがキレイさっぱり消し飛んだのだ。レオナルドを巻き込んで、だ。
しかし、まだ終わりではない。
「ヘルゲート・オープン!」
レオナルドを倒したカイトだが、それでもまだ戦いは終わっては居ない。
あそこに、あんな場所にもう一人居るのだ。
アンチジーンナンバー6、ギルドランがたった一人で動かしている戦艦である。
展開された胸部の中にある巨大な銃口に地獄の光が集う。
それはどんどん膨れ上がっていく、次第には強大な光となる。
「インフェルノ・スマッシャー、発射!」
その瞬間、地獄の光は轟音を立てて発射された。
行く先にあるのはギルドランだけがいる戦艦である。
次の瞬間、地獄の光は見事に命中。
完璧にギルドランの戦艦を消し飛ばした。
ソウルサーガとアークブレイダーは富士山付近まで来ていた。
リーザよりも遅れて飛び出したが為に、彼女よりも遅くつく結果になってしまった。
「生きてるだろうな、あの馬鹿」
エイジが呟くように言うと同時、ついに漆黒の影を視界に捉えることに二人は成功した。
それは間違いなくダーインスレイヴの姿である。
そしてその隣にヒュッケバインも立っている。
二人は急いで黒い二機の近くに着陸した。
「くぉらぁぁぁ! 馬鹿カイト! てんめぇ、何考えてやがる!」
エイジはソウルサーガのコクピットから飛び出してダーインスレイヴの足元に駆け寄る。何故そんな事をするのかというと、其処にカイトがいるからだ。
「……それを言いにわざわざ来たのか? お前達3人は」
カイトは半ば苛立った口調でエイジの後ろに居る二人を見る。
其処にはエイジと同じくコクピットから飛び出したシデンとリーザの姿があった。
「いいえ、違うわ。この際はっきりと言わせて貰うけどあんたをとっ捕まえに来たのよ!」
リーザがはっきりと物を言う。
こういう性格は嫌いじゃ無い、とカイトは無言で思った。
「ま、待ってよ曹長! 確かに彼がやった事は許される事じゃ無い。でも彼にだってそうでもしてでもやり遂げなきゃならない事情があったんだ」
「放してください、少尉! だってバーシャルもナックもチェンも皆こいつに殺されたのよ!? 何でそれで黙っていられるの!?」
シデンは今にも発砲しかねないリーザを後ろから押さえ込んでいる。
確かに、フィティングで皆と親しんでいたナック、チェン、バーシャル、サイラスはカイトとその仲間によって殺された。リーザの怒りはもっともだろう。
だからカイトは何の言い訳をしようともしなかった。何故なら、全て事実だからだ。
ふと気付けば、シデンがリーザを抑えながらこちらに顔を向けていた。
それは『全部話すよ』と言う無言の合図だ。
そしてそれにカイトは静かに答えた。それは今にも消えてしまいそうな声で、
「……勝手にしろ」
それから十数分が経過した。
しかしそれでもカイトにはとても長い時間に感じる。
「………助けてくれて、有難う」
すると、そんな彼の後ろから小さな声で女の声が聞こえてくる。
リーザだ。
ふと振り返ってみれば、リーザは複雑そうな顔でカイトを見ている。
「……パパって、どんな人だった?」
すると唐突にそんな事を言われた。
そういえば、アルフレッドは作業に没頭しすぎて家庭の事を殆ど近所の仲がいい家庭に任せっぱなしだったと言う。
「………良い人でした。こんな俺にも普通に住める所を与えてくれた……でも、それでも俺はもうあそこに帰る事は無い」
「何故?」
「全部捨てたからです。あの家も、何もかも……捨てたのだから、もう二度とあの場所に帰る事は無い。残りのアンチジーンの一人と連邦のトップを消せば、俺は消えます」
本音だった。
残りのアンチジーンと連邦のトップを消せば、カイトは自害するつもりで居たのだ。
「……黙って聞いていれば、それこそいい気になって」
すると、リーザは突然肩を振るわせ始めた。
それは紛れもなく怒りの現れである。
「あんたねぇ! 本当にそれでいいの!?」
唐突に胸倉をつかまれたカイトは唖然としながらリーザを見る。
「本当に捨てちゃっていいの!? 嫌いなの? 皆が!」
「嫌いじゃ無い! ……でも、もう捨てたんだ。生きる意味も無い、ただの殺戮兵器に成り下がった俺が、今更どういう顔してあいつ等に会えばいいんですか!?」
「捨てたならまた拾いなさい! 理由が要るのなら私が作る!」
そういうと、彼女は自身がつけていた銀のペンダントを外してカイトに手渡した。銀の十字架がついている、きれいなペンダントだった。
「貴方にこれを預けます。だから全部終わったら帰ってきなさい!」
「え?」
何がどうなっているのかわからなかった。
いきなりの事だったので、悲しいが、わけがわからない。
「そして帰ったら、迷惑をかけた皆に謝りなさい! 私にも、イツキ少尉にも、ヤナギ少尉にも、貴方の大好きな家族にも、世界中の皆さんにも、そして死んだパパ達みーんなに謝りなさい!」
「………俺に、生きろというのですか? 後三年しか生きられない俺に」
それは悲しい事実だった。
カイトの生命活動はあと最大で三年しか持たないのだ。
本来ならまだ長い間活動していけるのだが、15年も戦い続けたが為にカイトの生命エネルギーがぐんと減ってしまったのだ。
それはある意味では強くなった代償といえる。
「だから何? それでも、貴方は今を生きてるんでしょう! 死んで楽になろう何て思うな! その預けたペンダント返すまで、死ぬ事は許さないんだからね!」
彼女は強く言い放つと、カイトの胸倉から手を離した。
「行きなさいよ。……まだやらなきゃならない事が残っているんでしょう?」
正直に言えば、嬉しかった。
こんな自分でも、生きろという人がいてくれる。
「……待ってるからね。それ、パパが私にくれたペンダントなんだから。……無くしたとか言ったら承知しないんだからね」
少々照れくさそうに彼女が言った。
しかしそれでもカイトは嬉しかった。
待ってくれる人がいる。
それだけでとても強い力が湧いてくる、そんな感じがした。
そんな時だ、不意に横からエイジの声が聞こえてくる。
「おい、カイト! ダーインスレイヴに無理矢理通信が入ってきてるぜ!」
「何だと!?」
カイトは預かった銀のペンダントを強く握ると、コクピットに向かって走り出す。
その中で彼は一つの声を聞いた。
『聞こえるか、ジーンナンバー1。カイト・シンヨウ。私の名はゼッペル・アウルノート大尉だ。またの名をアンチジーンナンバー1である』
その言葉を聞いた瞬間、カイトは胸が張り裂けそうだった。
遂に向こうの大将が動いてきたのだ。
『しかし私は、敢えて君にお願いがあって今回通信をさせてもらった。――――カイト・シンヨウ。私の騎士としての誇りを賭け、君に一対一での決闘を申し込む!』
第十一話「クリスタル・ナイト」
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