「ソフィーの世界」
哲学者からの不思議な手紙
ヨースタイン・ゴルデル /池田香代子 1995/6 日本放送出版協会 単行本 667p
No.963 ★★★★★
先
日からこちらの本もちらちらと併読している。ちょうどこの本がでたころ中学生になった娘へ、何かの折にプレゼントしたのだった。高校にはいった時には、ちょうどでたばっかりの iMac
をプレゼントしたのだった。だが、今考えてみると、結局は、その時その時、自分がほしいものを、子供達にかこつけて購入して身近においておきたい、というちょっと狡猾な心理が働いていたのかもしれない。
娘はこの本を完読し、同じ中学にもこの本に関心を持っている級友もいたらしく、親友になったようだ。しかしその後、10年以上の年月が経過して、嫁に行って住人のいなくなった娘の部屋には、他の家具類とともにこの本も残されており、いまふたたび私が読み始めたというところである。
さ
て、今私がこの本を読み始めてみたとして、どちらの立場に立っているのだろうと思う。執筆したヨースタイン・ゴルデルの「哲学者」の立場だろうか。14歳の少女「ソフィー」の立場だろうか。今は純粋にどちらの立場とは言えないだろうが、敢えていえばソフィーのほうに近い。思えば、 ビディオ
もなかなか面白かったが、 「知の歴史」
のように、全体を簡単に俯瞰したいという欲望を満たしてくれるようで、両書ともなかなかここちよい。
いまはちょうどソクラテスのくだりまでやってきた。
「ぼくは今、アテナイのアゴラ跡に座っている。なんとも嘆かわしい光景だなぁ! 今のことを言っているんだよ。かつてはここに堂々とした神殿や裁判所やコンサートホールや、それから大きな体育館まであったんだ。そういう建物が、みんなこの大きな四角い広場を囲んでいた・・・・・このかぎられた空間にヨーロッパ文明のすべての基礎が置かれたんだね。
「政治」、「民主主義」、「経済」、「歴史」、「生物学」、「物理学」、「数学」、「論理学」、「神学」、そして「哲学」、「倫理学」、「心理学」、「理論」、「方法」、「観念」「体系」----まだまだいくらでもあるけれど、すべてもとをたどっていくと、それほど大きくもない人々の集団にいきつく。
その人びとが日常生活をくりひろげていたのがこの広場なんだ。ソクラテスはここで、出会った人びとと話しをした。たとえばオリーブオイルの壺を運んでいく奴隷の腕をつかまえて、この気の毒な男に哲学問答をふっかけたりした。なぜならソクラテスは、奴隷も市民と同じように理性をもっていると考えていたからだ。
それとか、市民のだれかと熱っぽく言いあったり、若い弟子のプラトンとしんみり話し込んだりしたんだね。それを思うとおかしな気分になる。ぼくたちは、やれ『ソクラテス』哲学だ、やれ『プラトン』哲学だと言うけれど、そういう時の『プラトン』や『ソクラテス』と、かつて いた
生身のプラトンやソクラテスはまで別物なんだろうね」
p103
<2>につづく
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