「グーグルが日本を破壊する」
竹内一正 2008/04 PHP研究所 新書 222p
Vol.2 No.0130 ★★★★★
タイトルは扇情的だが、必ずしもドメステッィクな保護主義的論説ではない。むしろ、マイクロソフトやヤフーとの覇権を競う中でのグーグルが活写され、そこにオープンソースの潮流などとの関係が書かれてあり、業界の現状がよくわかる一冊。最近は、MSのヤフー買収が失敗して、ヤフーがグーグルと提携するという逆転劇が演じられており、この本は、今年の4月発行で比較的新しい情報なのに、その後にさらなる新たな展開が繰り広げられている。
グーグルにもちろん死角なしとはしないわけで、その危うさも異なる角度からいくつか書き出されている。
中国では、たとえば「天安門」や「ダライ・ラマ」などの政治的キーワードは、検索できない。当局にとって都合の悪いキーワードは、検索できないよう検閲され、言論統制されているのだ。都合が悪いと判断すればインターネットの接続を切ってしまうことだってやってのける。13億人が住み、日本の25倍も広い国土で、中国共産党は検索ができないように完全に切ることができるのだ。
p55
今回のFree Tibetや、中国内陸部の地震、そして北京オリンピックなどで、中国共産党が今後どのように変化していくのか、注目しつづけなければならない。
中国問題は、グーグルだけに降りかかった災難ではない。ヤフーもマイクロソフトも火の粉を浴びたのだ。だが、マイクロソフトなら、ビジネスのためになにをしても世間は驚かない。金儲けのためには邪悪になるのがビル・ゲイツ流だ。ヤフーにも、グーグルほどの誠実さを世間は期待していない。
だが、グーグルは、金儲けのために邪悪にはならない会社であったはずなのだ。「自動で検索結果を表示するので、人為的な操作はできない」とユーザーに断言している。ホームページには、「検索結果に対し人的介在もなければ恣意的操作もない。ユーザーがグーグルを客観的情報とみなし、信頼する理由はここにある」と言明してある。
「マイクロソフトはグーブルに追いつくか」とか「そしてウィンドウズは消える」などの見出しが、ますます扇情的に踊る。そして、「グーグル後に勝つ日本の技術」あたりが、この本のキモなのだろうが、巻末に申し訳程度についている感じがする。
「ウェブ時代5つの定理」 の梅田望夫ほど、グーブル信奉者ではないだろうが、 「Googleとの闘い」 のジャン・ノエル・ジャンヌネーほど、まじめにグーグルと対峙しようとしている本ではない。
グルジェフ伝 神話の解剖 2009.01.14
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