地球人スピリット・ジャーナル1.0

地球人スピリット・ジャーナル1.0

2008.08.30
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カテゴリ: 環境心理学


「最後の遊牧帝国」 ジューンガル部の興亡
宮脇淳子 1995/2 講談社 全集・双書 278p
Vol.2 No.262
★★★★☆

正木晃は
「さらに深くチベットの歴史を知るための読書案内」 の中で、あまり聞き慣れない「オイラト・ジュンガルを知るために」という項目を設け、しかもたった一冊だけ、この書を推薦している。カタカナ表記により、学者によって微妙な違いはあるが、オイラト・ジュンガルとはつまりオイラト族のジュンガル部というニュアンスであろう。

「モンゴル帝国の興亡」 の岡田英弘は、本著の著者の夫であり、研究の過程で80年代中盤以降暮らしをともにしているようだ。 「岡田宮脇研究室」 という私設研究室の展開も図っている。年齢にやや差もあり、出会い方を考えれば、宮脇は岡田の弟子ということになる。宮脇から見れば岡田は「世界的な満州学者でありモンゴル学者である」p37ということになる。

17・8世紀に中央ユーラシア草原を席巻した最後の遊牧帝国ジューンガルの実体は、ジューンガル部長を盟主とするオイラト遊牧部族連合であった。古くは匈奴(きょうど)以来、鮮卑(せんび)や柔然(じゅうぜん)や突厥(とつけつ)やウイグルやモンゴルなど、北アジアや中央アジアで消長を繰り替えしたいわゆる遊牧帝国も、ジューンガルと同じような遊牧部族連合だったに違いない。 p246

 1578年にアルタン・ハーンから初めてその称号を贈られたダライ・ラマ3世から、17,18世紀の後継の5世・6世の時代になると、チベット仏教文化とモンゴル帝国の後裔との交流もかなり盛んなものになる。それを反映しているのか、本著においては、さかんにその経緯が記述されている。その部分だけを抜き書きしたとしても大量になってしまう。

グーシ・ハーンは、1642年にチベット国王の位につき、グーシ・ハーンが任命した摂政ソナム・ラプテンがチベットの世俗の統治権を握った。ダライラマ5世は、この時、チベット仏教界の教主に推戴されたにすぎなかった。しかし、1655年1月24日にグーシ・ハーンが亡くなり、58年に摂政ソナム・ラプテンが死んだ後、政治的手腕に長けていたダライラマ5世は、その継承問題を巧みに操作して、1660年チベットの統治権を手中にした。こうしてチベットのダライラマ政権が始まったのである。 p187

 こうして次第次第に現代のダライ・ラマ14世まで継承されてくるわけだが、転生活仏とは言え、必ずしも一貫したパーソナリティが転写されたのではないようだ。

ダライラマ6世は、酒を好み、女を愛し、恋愛詩を作る放蕩者だった。6世は具足戒(ぐそくかい)も受けず、すでに受けていた沙弥戒(しゅみかい)も、自らタシルンポ寺に赴いてパンチェンラマ2世に返上してしまった。しかし、ダライラマは生まれながらにして観音菩薩の化身であるから、チベット人たちの6世に対する敬愛の念は少しも揺るがなかった。 p212

 チベット仏教についての書は多いが、モンゴル帝国の後裔たちとの接触をシームレスで等量の重きをおいている書はすくない。そもそも資料的情報が欠如しているからだろうが、積極的に過去の「歴史」が消されてしまっている可能性もある。

17世紀後半は、世界史上の大転換期であった。この頃にわれわれの人類の生活様式は大きな変化を遂げ、これ以前のことが想像できなくなっていったと思われる。ジューンガル帝国は、古い英雄時代の最後の華であったといえる。そのジューンガル帝国を創ったガルダンは、遊牧民に生まれてチベット仏教の修行をした、文武兼ね備えた新しいタイプの英雄だった。そして、かれと同時代に生きた、清の康煕帝、チベットのダライラマ5世、ハルハのジェブツダンバ・ホクトク1世、ヴォルガ・トルグートのアユーキ・ハーン、ロシアのピョートル大帝もまた、自分の育った世界に新しい文化を持ち込んだ英雄だった。 p248

 このように数少ない研究を手掛けるようになった彼女であるが、「あとがき」にちょっと気になるところがあった。

 「小・中学校で差別はいけないとさんざん教えられたが、世の中は差別だらけだった。先輩たちの学生運動が、社会秩序を変革するのに有効だったようには思えなかった。私は、どうしてこのような社会になったのか、その歴史と理由を知る方が先じゃないかと思った。身近な日本を研究すると、早い時期に自分自身に直面し決断を迫られるような気がして、遠く離れたモンゴルを研究対象に選んだ」

 1952年生まれの日本人女性の1994年における記述としては、まっとうな姿勢だろうと思う。学年的には私よりひとつ上の学年であるだけに、時代感覚はよくわかる。さて、その差別のない社会へむけての社会変革への希望は、今回のFREE・TIBETムーブメントの中で、どのような形に変容しているのだろうか。彼女には「朝青龍はなぜ強いのか?----
日本人のためのモンゴル学」2008/02などの近著もある。機会があれば読んでみたい。






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Last updated  2008.08.30 08:53:46
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