「曼荼羅と輪廻」
その思想と美術
立川武蔵 1993/12 佼成出版社 単行本 347p
Vol.2 No.363 ★★★★☆
名古屋大学に21年の長きに亘って教鞭を執った立川教授が、ここを去るにあたっての知己・門下の面々による論文集。曼茶羅と輪廻をテーマに、浄土とマンダラ、チベット人の死生観、臨死体験と曼茶羅など14編の論考を収載。 アマゾンの 「商品紹介」 より
ということで、弟子筋の学者たちが、オマージュとしての論文を捧げている。前後二部に分かれていて、「思想・宗教編」で気になるのは、谷口富士夫の「母なる一切衆生---チベット仏教のおける輪廻と修行体系」。その中で、ツォンカパやアテーシャ、ガムポパなどが論じられている。しかし、これは後日に後回し。
後半の「美術・図像編」で、おお、これこそは読みたいと思ったのは、森雅秀「サンヴァラマンダラの図像学的考察」。ごくごく最近サンヴァラは、突然、当ブログ内で浮上した。まるで彗星のように。でも、彗星であって見れば、当然のごとく登場はすでに輪廻システムの中にプログラミングされていたはずなのである。ただ知らなかったのは、時間的スケールを測りかねていたからだ。
森雅秀については、最近 「マンダラ事典」 を読んだが、「マンダラ」というキーワードだけでは、どこにフォーカスしていったらよいか、かえって迷いは強くなる。むしろ、ここは、後期仏教、チベット密教のなかの無上ヨーガにして、母タントラたるチャクラサンヴァラあたりに、そろりそろりと近づいていってみようと思う。
なにはともあれ、マンダラというかぎり、そのサンヴァラマンダラとはどんなもんかを、実際に目でみなくてはならない。しかし、このして見たからと言って、はて、他のマンダラとどう違うのか、を明確に端的に把握することはできない。

中央に座すのは主尊サンヴァラであろうが、その周囲をかこむのは、62人の女男のダーキニー&ダーカ(男性の行者)である。う~む、こうしてみると、かなりコテコテのタントラの世界だなぁ。

このように、サンヴァラマンダラを生み出した思想的な基盤や実践形態をわれわれは知り得るようになった。これは津田(真一)氏の諸研究に負うところが大きく、氏の研究はサンヴァラを中心とした母タントラ研究を飛躍的に発展させたばかりではなく、タントラ仏教研究全体にも新時代を開くものであった。 p212

なんと、先日読んだ 「反密教学」 の津田真一は、サンヴァラ研究の第一人者であったのである。あの本は1987年発行、こちらの本は1993年発行、すでに15年20年が経過している。この間に、それぞれの研究はもっともっと進んでいるはずである。関連の研究があれば、そちらも・・・、と早くも浮足立ってしまう自分がいる(笑)。なんとも「反」というところがそそられる。この 「反密教学」 、ごく最近再版されたようである。なにはともあれ、新しい視点から<再読>しなければなるまい。

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