「ハリール・ジブラーンの詩」
神谷美恵子 2003/09 角川書店 文庫 140p
Vol.2 No.505 ★★★★☆
ジブランの 「預言者」 は超有名で、私が知っているだけでも4種類の翻訳がある。現在は、新刊の 「よく生きる智慧 完全新訳版『預言者』」 2008.12の到着を待っているところ。しかし、「預言者」以外となると、必ずしもジブランの本の翻訳は多くない。もともと、イスラム圏とアメリカ圏を往来した著者であり、そして、生前に出版された本もそれほど多くなかっただけに、いきおい日本語バージョンも片よっているということになるのだろう。
名前の表記にしても、ハリール・ジブラーン、カリール・ジブラン、カリール・ギブランなどと、統一感がない。しかしまた、それはそれ、詩人の生き方としては、そうあって、何の不都合なことははない。この詩人に対して、Oshoは 「私が愛した本」
の中で、多くの言葉を贈り、この本の中の冊数でいえば、他の作家やマスターたちをはるかに超えて、最大数9冊のジブランの本に触れている。
今や日は暮れた。
巫女のアルミトラは言った。今日という日、
ここの場所、そして話して下さったあなたの心、
これらすべてに祝福あれ、と。
彼は答えた。
話したのは私だったろうか。
私もまた聞き手ではなかったろうか。
p93「預言者」より一部抜粋
師よ、歌の師よ、
語られていないことばの師よ、
七度(たび)私は生まれ、七度(たび)死にました、
あなたの急(せ)かしい訪問とわれらの短い歓迎以来。
ごらん下さい、私はまた生まれました、
山の中の昼と夜に
あなたの潮がわれらを持ち上げたときを思い出して。
p116「イエス」より一部抜粋
挫折よ、わが挫折、自覚、挑戦よ、
あなたゆえに私はまだ若く足早なのに気づき、
名誉の桂冠に捉えられるべきではないのを知る。
あなたの中にあってひとりある境地を見出し
うとまれ、あざけられるよろこびをも知った。
p39「狂人」より一部抜粋
わたしは自然が語ることば、
それを自然はとりもどし、
その胸のうちにかくし
もう一度語り直す。
わたしはは青空から落ちた星、
みどりのじゅうたんの上に落ちた星。
わたしは大気の力の生んだ娘、
冬には連れ去られ
春には生まれ
夏には育てられる。
そして秋はわたしを休ませてくれる。
p34「涙と薔薇」より一部抜粋
なんと寛容なものであることか、地球よ。
私たちはあなたから元素をひきぬき、
大砲や爆弾をつくるのに、あなたは
私たちの元素から百合やバラの花を育てる。
p19「思索と瞑想」
この本は極めて小さな本だが、1914年生まれの女性らしい感性によって、静かに静かに、ジブランの言葉が紡がれている。巻末に加賀乙彦が解説を書いており、意外なエピソードを紹介している。
これは、あまり声高に言うべきことではないが、神谷恵美子が、ハリール・ジブラーンに触れることができたのは、当時の皇太子妃美智子様から詩集「予言者」をプレゼントしていただいたのが切っ掛けになったそうだ。現在の皇后陛下が、私たちにこの詩人を与えてくださったと考えると、人と人の結びつきの神秘を感じる。
p131「解説」
グルジェフ伝 神話の解剖 2009.01.14
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