Jun 12, 2004
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待ちに待ったMouth to Mouth、英国横断という、とてつもなく長距離のクラブランである。
西のBarmouth(ウェールズ)から、東海岸のGreat Yarmouthまでの約320miles(512km)を、2日間にわたって走行するのだ。
参加者14名、毎度の事ながら紅一点である。

空模様はあやしくあまり有難くないが、8時半、走行開始。
約23miles(37km)地点から、この日最大の登坂が始まった。ここいらのサイクリストには有名なBwlch y Groes(ウェールズの地名。私には読めない...)、約5miles(8km)にわたって傾斜が除々にきつくなっていくという、心臓破りの登坂なのだ。

始めの半分程はグループでするすると登っていけたが、後半少しずつペースの違いがあらわれてきて、ちらばってきた。
追いかけたりはできない。自分のペースを守らなければ、頂上までたどり着けないばかりか、その後のグループのペースをも乱しかねない。先は長いのだ。

が、頭が働いていたのは、坂の3分の2位迄であった。

今まで体験した事の無い長く苦しい登坂に、私はもがいていた。まるで永遠に続くかのようなその坂に、何度も負けそうになっていた。


私の呼吸は乱れ、フォームが乱れ、ボディランゲージはもう限界だと告げている。頂上は、まだ見えない。行く先を見ると、仲間の一人が自転車を降り、歩いているのが見えた。気が緩んだ。とその時である。

「漕ぐのを止めるな」

リーダー、Willの声が背後から聞こえた。我に返った。

再び全力で漕ぎ始める。Willはひたすら「漕ぎ続けろ、道路幅を一杯に使え、ジグザグに進め」と呪文を唱えるかのように、背後から私に声をかけている。しかし既に私はこの時点で、彼の声は聞こえているが、自分が何をしているのかよくわからなくなっている状態であった。体のどこかが痛いとか、そういう事では無かったような気がする。ただ「辛い」ということしか覚えていない。

対抗車が来た。避けようとしてバランスを崩し、足を地面に付けてしまった。ぼんやりとした頭の中に悔しさがこみ上げてきた。登れない坂など無いのだ。

顔を上げた。私は言葉を発する事ができずに前方を指差した。
「そうだ、あと少しで頂上だ」とWillの言葉に私はうなづく。

彼に押されての再スタート。思考は完全に止まっていた。活き造りにされた鯵の口がぱくぱくしているような、そんな条件反射だけでペダルを踏んでいる。頂上に近付くにつれ、ペダルはどんどん重たくなっていく。

仲間の二人が路肩で休んでいる。ああ私も、と思ったか思わないかの瞬間に
「奴らの弱さを思い知らせてやれ」とWillが呟く。気力と意地で進み続けると、赤と黒の揃いのジャージーを纏った集団が目に飛び込んできた。あと200メートル。

文字通り、死にもの狂いで頂上に辿り着くと、安心した為か、気が緩んだせいか、号泣してしまった。理由があったかどうかは今もわからない。しかし、泣かれた彼らは、さぞ困った事だったろう。



結局、私の目標にしていた100miles(160km)を大きく越える、実走156miles(250km)、一日のメニューを完全にこなし、一同揃って宿に到着。

体中が沸騰しているようで、よく眠れない夜であった。


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最終更新日  Jan 25, 2006 01:56:36 AM
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