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スティーリー・ダン前夜のベッカーとフェイゲン 一方のウォルター・ベッカー(Walter Becker)は、1950年ニューヨーク生まれのドイツ系アメリカ人。もう一方のドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)は、2歳年上で、1948年にニュージャージーにてユダヤ系の両親のもとに生まれている。言わずと知れた、スティーリー・ダン(Steely Dan)の両名である。この二人が邂逅したのは、ニューヨークのバード・カレッジ在学中の1967年のこと。フェイゲンがとあるカフェの前を通りかかったところ、エレキギターを練習しているベッカーに出会い、自ら声をかけたのだという。こうして出会い、意気投合した二人は共同で曲作りをするようになる。スティーリー・ダンとしてデビュー盤を発表するのは1972年のことであり、この間の5年の歳月の多くは、二人にとっていろんな音楽の仕事をやって食いつなぎつつ、二人の曲作りや構想を温める時期となった。 そんな時期の彼らの初期音源を集めたのが、この『ファウンダーズ・オブ・スティーリー・ダン(Founders of Steely Dan)』である。1989年以降、この時期の音源集が何種類か編集されているが、海賊盤的なものかと思いきや、日本のレコード会社から発売されたものもあった(関連盤は下の方の商品リンクにもあり)。 総じて2~3分の短い演奏時間のものが多く、デモ音源的な雰囲気を感じさせるものもある。けれども、スティーリー・ダンが結成される間から、言ってみれば、“スティーリー・ダンは存在していた”のだということがよく分かる演奏である。後のアルバムに収録されたものもあれば、そうでない楽曲も含まれるわけだが、デビュー前音源が後々リリースされたというケースはあちらこちらにあるものの、完成度の高さ(演奏でそれが顕著なものもあれば、楽曲そのもののレベルの高さというものもある)という点では明らかに頭一つ抜け出したレベルである。 2017年、ベッカーが67歳で逝去したことにより、ベッカー&フェイゲンのコンビでの活動は止まってしまった。その死に際し、フェイゲンは“自分たちがスティーリー・ダンとして作った音楽を出来る限り輝かせていきたい”と表明したとのことだったが、二人で新たものがそれ以上生み出されなくなったというのは、筆者にも残念でショックだった。とはいえ、過去に遡及し、20歳そこそこの若き彼らを振り返ってみるというのも悪くない。少々マニアックな音源かもしれないが、スティーリー・ダンが好みの向きは、以上のようなことに思いを巡らせつつ聴いてみるのもいいアルバムだと思う。[収録曲]1. Android Warehouse2. A Horse in Town3. More To Come4. Parker's Band 5. Oh, Wow It's You Again6. Stone Piano7. Yellow Peril8. Take It Out on Me9. Braintap Shuffle10. The Mock Turtle Song11. Charlie Freak12. The Roaring of The Lamb13. Soul Ram14. Brooklyn15. A Little with Sugar16. You Go Where I Go17. Ida Lee18. Any World19. This Seat's Been Taken20. Berrytown21. Sun Mountain1989年リリース。 【輸入盤CD】【新品】Donald Fagen/Walter Becker / Origins Of Steely Dan: Old Regime【K2018/2/2発売】(ドナルド・フェイゲン&ウォルター・ベッカー) ウォルター・ベッカー&ドナルド・フェイゲン / アーリー・イヤーズ [CD] ヤング・アンド・イノセント・デイズ -コンプリート・レコーディングス1968~71年 [ ドナルド・フェイゲン&ウォルター・ベッカー ] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓
2024年11月28日
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シカゴの隠れ名曲選(其の5) 前回記事の「ぼくらの世界をバラ色に」によって、頭の中の考えがすっかりテリー・キャスの方に向いてしまいました。そんなわけで、一区切りのこの5回目も、テリー・キャスの楽曲で締めたいと思います。 1969年のデビューから1980年に至るまで、シカゴは概ね毎年1作品(ただし2枚組作品も多数)のハイペースでアルバムを出し続けました。そんな真っただ中の1976年のアルバム『シカゴX(カリブの旋風)』に収録されたのが今回のナンバーです。 上記アルバムからは「愛ある別れ」がという有名なヒット曲がありますが、今回は“隠れ名曲”がテーマです。アルバムの最後に収録されている「愛の終りに(ホープ・フォー・ラヴ)」をお聴きください。 この映像もまたジャケット写真のようなもの(実は諸作のアルバムジャケットを並べてデザインしたもの)だけで動きませんが、曲だけでも十分堪能できる好曲です。ちなみに、この曲が収録された盤のジャケットは、いちばん右の下から2つめ、そして最上段中央部のものです。 前項でも少し触れましたが、シカゴの当初から中心的なメンバーとして活動してきたテリー・キャスは、この後、1978年初頭に拳銃の暴発事故で亡くなりました。ロシアン・ルーレットのごとく冗談で“弾の入っていない”はずの(しかし実際には銃弾の入っていた)拳銃を頭部に撃って即死してしまいました。こうしたテリー・キャスの名曲を聴くにつけ、このような事件がなければまだまだいろんな曲が聴けたかもしれないのに…などとつい考えてしまいます。 ともあれ、今回のシカゴ曲選、ひとまずはこれで一区切りです。[収録アルバム]Chicago / Chicago X(カリブの旋風)(1976年リリース) シカゴX(カリブの旋風) [ シカゴ ] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2024年11月25日
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シカゴの隠れ名曲選(其の4) 今回はぐっと時代をさかのぼり、1970年の第2作(『シカゴII(シカゴと23の誓い)』)に収められたナンバーです。 1969年のデビュー盤に続いて2枚組の大作となったこのアルバムには、組曲になったものがいくつも収められています。個人的にはこういう大作志向というか、壮大な作りになっているのはなかなか好きだったりします。 さて、そうした組曲の一つがアナログ盤B面の大部部を占める「バレエ・フォー・ア・ガール・イン・ブキャノン」です。今回は、その中に含まれる「ぼくらの世界をバラ色に(カラー・マイ・ワールド)」をお聴きください(アルバムのジャケットの画像しか映りませんが、音は2002年のリマスターのものです)。 テリー・キャスによる曲で、彼がヴォーカルも務めています。1978年に急逝するまで、デビュー以来シカゴの中核メンバーとして活躍した人物です。 そんな彼の雄姿もご覧いただきたく、1970年当時のライヴ映像も今回はご覧ください。このライヴ映像では、同じ組曲「バレエ・フォー・ア・ガール・イン・ブキャノン」に含まれている「ぼくらに微笑みを(メイク・ミー・スマイル)」とのメドレー形式で演奏されています。 [収録アルバム]Chicago / Chicago(シカゴと23の誓い)(1970年リリース) シカゴII(シカゴと23の誓い)-スティーヴン・ウィルソン・リミックス/シカゴ[CD]【返品種別A】 シカゴII(シカゴと23の誓い) [ シカゴ ] 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2024年11月24日
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シカゴの隠れ名曲選(其の3) さらに時代は下り、今回は2008年に発表された『シカゴ32 ストーン・オブ・シシファス』に収録された「ビガー・ザン・エルヴィス(Bigger than Elvis)」という曲です。 実は上記のアルバムは、リリースの際に“32枚目”ということで“XXXII”という名前がつきましたが、本来は、1990年代前半に発表されるはずだったものでした。つまりは、“XXII”となるアルバムになるはずだったというわけです。 さらに、この「ビガー・ザン・エルヴィス(Bigger than Elvis)」という曲に関しては、日本国内向けに編まれたベスト盤に収録されたレア・ナンバーだったのですが、お蔵入りになったアルバムは、上の通り2008年に正式にリリースされました。こうして、正式なアルバムの収録曲として日の目を浴びることになったいうわけです。 シカゴを脱退したピーター・セテラの後釜として1985年に加入したジェイソン・シェフがヴォーカルを務めている楽曲です。“シカゴの声”としてのセテラの印象が強かっただけに、その当時、この人のヴォーカルについては賛否両論いろいろ言われました。けれども、その美声はシカゴのバラード曲などには向いていたのではないかと思います。このナンバーも存分に彼の実力が発揮された美曲だと言えるのではないでしょうか。[収録アルバム]Chicago / Chicago XXXII: Stone of Sisyphus(2008年リリース) シカゴ32 ストーン・オブ・シシファス/シカゴ[CD]【返品種別A】 【中古】 【輸入盤】Stone of Sisyphus (XXXII)/シカゴ ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2024年11月22日
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シカゴの隠れ名曲選(其の2) さて、時代はもう少し進んで、1980年発表のアルバム『シカゴ14』に収録されたナンバーです。このアルバムは、シカゴがコロンビア所属だった時代の最後の作品となりました。今回取り上げるのは、同盤に収められた「ソング・フォー・ユー(Song for You)」というナンバーです。 この盤から2年ほど後、レーベルがワーナーに変わってリリースされた次作からは、「素直になれなくて(ハード・トゥ・セイ・アイム・ソーリー)」という大ヒットが出たわけですが、それに比べると、「ソング・フォー・ユー」の方は、一応シングル化されたようなのですが、特にチャートアクションもなく、一般聴衆にはマイナーな曲にとどまってしまったようです。 ともあれ、その曲をお聴きください。ちなみに、動かない画像として表示されているのは、収録アルバムのジャケットで、指紋がシカゴの文字になっているデザインは、個人的には案外気に入っています。 今回のこの曲もピーター・セテラの楽曲・ヴォーカルですが、彼の声によるシカゴのバラードの魅力が既によく表れている1曲ではないかという気がします。シングルとしてヒットするには、曲の展開が少しあっさりし過ぎていたのかもしれませんが、なかなかの好曲だと個人的には思っています。[収録アルバム]Chicago / Chicago XIV(1980年リリース) シカゴ14/シカゴ[CD]【返品種別A】 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2024年11月20日
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シカゴの隠れ名曲選(其の1) シカゴ(Chicago)といえば、1960年代の末から現在まで長いキャリアを持つバンドですが、これまで本ブログでは、複数のアルバムを取り上げてきたほか、70年代のバラード選をやってみたり、80年代のポップ寄りなバラードを取り上げたりもしました。今回は、少し趣向を変え、“隠れ名曲選”と題して、このバンドによる少々マイナーなナンバーを中心に5曲ほどピックアップしてみたいと思います。 でもって、第1回目はこのシリーズを思い立ったきっかけのナンバーです。第7作となった2枚組の『シカゴVII(市俄古への長い道)』に収められた「ハッピー・マン(Happy Man)」です。 ヴォーカルはピーター・セテラ、この曲を書いたのも彼です(そういえば、この人のヴォーカルは“100万ドルの歌声”なんて言われたりもしましたね)。「長い夜」、「愛ある別れ(イフ・ユー・リーヴ・ミー)」などシカゴの有名曲の多くでヴォーカルを担当した彼ですが、そうした目立つところに出るわけではなかった今回のような曲においても、その実力を発揮しています。 ちなみに詞の内容は、“あなたに恋をしたハッピーな男”という何とも純真でストレートな内容。とはいっても、陳腐な感じにならないのは、やはり曲のよさ、演奏のよさ、そしてヴォーカルのよさといったところだと思います。[収録アルバム]Chicago / Chicago VII(市俄古への長い道))(1974年リリース) シカゴVII(市俄古への長い道) [ シカゴ ] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2024年11月18日
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INDEXページ(ジャンル別、アーティストのアルファベット順)を更新しました。ここ最近の記事を追加しています。INDEXページへは、下のリンク、もしくは本ブログのトップページ(フリーページ欄)からお入りください。アーティスト別INDEX~ジャズ編(A-G)へ → つづき(H-M)・つづき(N-Z)アーティスト別INDEX~ロック・ポップス編(A)へ → つづき(B)・つづき(C-D)・つづき(E-I)・つづき(J-K)・つづき(L-N)・つづき(O-S)・つづき(T-Z)アーティスト別INDEX~ラテン系ロック・ポップス編(A-I)へ → つづき(J-N)・つづき(O-Z)アーティスト別INDEX~邦ロック・ポップス編へ下記ランキングに参加しています。応援くださる方は、いずれかのバナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2024年11月17日
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シンプルな編成での秀逸盤 イギリス出身のミュージシャン、ジョー・ジャクソン(Joe Jackson)が2008年にリリースした17枚目のスタジオ作が、この『レイン(Rain)』というアルバムである。 ジョー・ジャクソンという人は、若い頃から多ジャンルの音楽に旺盛であるせいか、はたまた精神的に病んだりしたせいか、よくも悪くも作風が一定せず、聴き手を戸惑わせる部分がある。そんな中、個人的に好きなジョー・ジャクソン像はこれだと思わせてくれる作品がいくつかある。このアルバムは、筆者にとってそうした作品の一つだったりする。 演奏は極めてシンプルな構成。ジョー・ジャクソンがヴォーカルのほかピアノを演奏し、それ以外はベース(グラハム・マビー)、ドラムス(デヴィッド・ヒュートン)というものである。スリー・ピース・バンドの編成だからといって演奏が単純かというと必ずしもそんなことはなく、精緻に演奏されて作り込まれている。 注目したいナンバーをいくつか挙げてみたい。冒頭の1.「インヴィジブル・マン」は、ジョー・ジャクソンらしいヴォーカルやメロディ・ラインが筆者のツボにはまる好ナンバー。また、3.「シティズン・セイン」も、彼らしさという意味では、1.と並ぶ好曲だと思う。これら2曲に、5.「ジ・アップタウン・トレイン」を加えると、本盤収録曲の中でジョー・ジャクソンらしさに満ちた曲3選(実は6.が違った意味で彼らしい曲でもあるのだけれど)といった感じになる。 7.「ソロ(ソー・ロウ)」は、ピアノの弾き語りスタイルで、ドラマチックかつ鬼気迫るヴォーカルを聴かせてくれる。落ち着いた曲調の8.「ラッシュ・アクロス・ザ・ロード」は、さりげない名曲といった風情で、本盤の中で聴き逃がしてはならないナンバーの一つである。アルバムを締めくくる10.「ア・プレース・イン・ザ・レイン」は淡々とした曲のようでありながら、ヴォーカルの表現力の魅力が発揮されているナンバーだったりする。[収録曲]1. Invisible Man2. Too Tough3. Citizen Sane4. Wasted Time5. The Uptown Train6. King Pleasure Time7. Solo (So Low)8. Rush Across the Road9. Good Bad Boy10. A Place in the Rain2008年リリース。 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2024年11月15日
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没後6年目のアウトテイク集 1980年、今風に言えば“育休”からの復帰を果たし、『ダブル・ファンタジー』を発表したばかりのジョン・レノン(John Lennon)は、凶弾に倒れて帰らぬ人となった。それから3年と少しが経った後、同作の未発表音源を含む『ミルク・アンド・ハニー』がリリースされたが、さらに1986年になって、別の未発表音源集がアルバムとして発表された。それがこの『メンローヴ・アヴェニュー(Menlove Ave.)』という盤で、前作と同様にオノ・ヨーコが監修したものである。 本作は、未発表とはいっても、死の直前のものではなく、時を遡って1973~74年の音源である。アナログのA面(1.~5.)は、1973年、ロサンゼルスでのアルバム『ロックン・ロール』のレコーディング・セッションからのもの(ただし、2.のみ『マインド・ゲームス』のレコーディング・セッションの音源)。他方、B面(6.~10.)は、1974年の音源で、アルバム『心の壁、愛の橋』のリハーサル・セッションに由来する。 まずはA面から注目の曲を見ていきたい。1.「ヒア・ウィ・ゴー・アゲイン」は、カバー・アルバムである『ロックン・ロール』のレコーディングで唯一録音された自作曲。実にジョンらしい曲で、彼が亡くなった後となってはないものねだりなのだが、これが煮詰まっていつか公表されるようになったかもしれないヴァージョンを聴いてみたかった。2.「ロック・アンド・ロール・ピープル」は、上述のように、別のセッションの音源のものだが、キレのある好曲でアレンジと演奏の完成度も高い。3.~5.のカバー曲はどれも出来がよいのだけれど、筆者の個人的好みで一つ挙げると、R&Bナンバーの4.「マイ・ベイビー・レフト・ミー」ということになるだろうか。 B面に移って、こちらは『心の壁、愛の橋』のリハ音源ということもあってややマニア向けかもしれない。6.~10.の楽曲はどれもアルバムとして一度発表されている楽曲であるが、いずれの曲もジョンの“生の声”に近いヴォーカルと言える。個人的好みからすれば、7.「心のしとねは何処」や8.「枯れた道」がおすすめと言える。[収録曲]1. Here We Go Again2. Rock 'n' Roll People3. Angel Baby4. Since My Baby Left Me5. To Know Her Is To Love Her6. Steel and Glass7. Scared8. Old Dirt Road9. Nobody Loves You (When You're Down and Out)10. Bless You1986年リリース。 【中古】 メンローヴ・アヴェニュー/ジョン・レノン 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2024年11月11日
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ネルソン・リドルによるプロデュース三部作の始まり リンダ・ロンシュタット(Linda Ronstadt)は、1970年代にポップ/ロックの世界でシンガーとして開花し、人気を得るに至った。そんな彼女が、1980年代には趣向を変えてジャズ・スタンダードに挑み、結果的には大きな成功を収めた。最初にその方向性が見られたのは、1982年の『ゲット・クローザー』だったが、その後、有名な編曲家・プロデューサーである晩年のネルソン・リドルが手掛けた三部作が大きなヒットとなった。その三部作の最初の盤となったのが、この『ホワッツ・ニュー(What’s New)』というアルバムである。ジャケットの表記されているように、リンダ・ロンシュタット&ザ・ネルソン・リドル・オーケストラによるアルバムということになる。 正直なところ、リンダ・ロンシュタットの歌唱力を考えれば、この成功は必然だった。ただし、これをジャズ・ヴォーカル・アルバムだと思って聴くと、ジャズ・ヴォーカル好きの人からは不満が出るかもしれない。本盤は、リンダ・ロンシュタットがジャズに挑戦したという盤ではなく、ポップ・ヴォーカリストの彼女が1920~40年代のスタンダード曲を解釈したものというスタンスで聴くのが正しい聴き方ということになるんじゃないかと思う。 冒頭の1.「ホワッツ・ニュー」からして歌唱力に圧倒される。考えてみるに、その圧倒的な理由は次のようなところにあるように思う。“きれいに”歌うことができるのは、彼女のヴォーカルの実力ではあるのだけれど、感情に任せて熱唱するのではなく、おそらくは意図的に抑揚をつけて楽曲を落ち着けたり盛り上げたりする。ここの加減が絶妙に働いているというように感じる。 上記の1.に加えて、私的な好みで他に注目と言えそうな曲を挙げておきたい。ガーシュウィン曲の2.「クラッシュ・オン・ユー」や5.「やさしき伴侶を(サムワン・トゥ・ウォッチ・オーバー・ミー)」は地味ながらお気に入りの歌唱。6.「ほのかな望みもなく(アイ・ドント・スタンド・ア・ゴースト・オブ・ア・チャンス・ウィズ・ユー)」や7.「どうしたらいいの(ホワットル・アイ・ドゥー)」は、ボブ・クーパーのテナーが歌唱に華を添えるが、7.のヴォーカルの声の伸びはなかなか印象的。また、トロンボーン(チャウンシー・ウェルシュ)をフィーチャーした8.「ラヴァー・マン」もいい雰囲気を演出している。さらに、アルバム最後の9.「グッドバイ」は、1.と並ぶ圧倒的なヴォーカルの力が発揮されたナンバーだと思う。[収録曲]1. What's New?2. I've Got a Crush on You3. Guess I'll Hang My Tears Out to Dry4. Crazy He Calls Me5. Someone to Watch Over Me6. I Don't Stand a Ghost of a Chance with You7. What'll I Do8. Lover Man (Oh Where Can You Be?)9. Goodbye1983年リリース。 ホワッツ・ニュー [ リンダ・ロンシュタット&ザ・ネルソン・リドル・オーケストラ ] 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2024年11月08日
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実力発揮のソロ第1作 アマイア・モンテロ(またはモンテーロ,Amaia Montero)は、スペインの女性シンガーで、1990年代に音楽界で名を知られるようになった。スペイン北部のサン・セバスチャンで結成されたバンドにヴォーカリストとして1996年に加入し、このグループ(ラ・オレハ・デ・バン・ゴッホ,La Oreja de Van Gogh)は国内だけでなく、国際的にも大きな成功を収めた。 10年ほどのバンドでの活動後、アマイアはこのバンドを去ることになり、ソロ・アーティストとしての道を歩み始める。2007年末から制作を始め、翌2008年11月にリリースされたのが、セルフタイトルの本盤『アマイア・モンテロ(Amaia Montero)』だった。ソロ・デビュー盤とはいえ、既に大物シンガーとして知られている人物による作品であり、スペインでアルバムチャート1位になったほか、スペイン語圏諸国(アルゼンチン、チリ、ウルグアイなど)でトップ10入りするヒットとなった。 冒頭の1.「キエロ・セール」は、先行シングルとしてヒットし、スペインのチャートで1位となる成功を収めた。本盤収録曲の中でもインパクトが強く、彼女のヴォーカルのよさが存分に発揮されている。筆者的には、このコケティッシュな声と歌のうまさに一発でノックアウトされるといったナンバーである。 これ以外に特に聴き逃がせない曲としては、2.「ミランド・アル・マール」、4.「407」、6.「ニ・プエド・ニ・キエロ」、9.「ラ・バイーア・デル・シレンシオ」、11.「ポル・トダ・ウナ・ビーダ」なんかが筆者の好みとしては挙げられる。アルバムのコンセプト性やストーリー性という意味では特に秀でたアルバムというわけではないかもしれない。けれども、個々の楽曲のヴォーカルの素晴らしさは、この声質が好みに合うならば“どハマり”する人が続出しそうな作品だと言えるように思う。日本では南欧系ポップ・アーティストの作品に触れる機会はあまりないけれど、私的にはかなりお気に入りのヴォーカリストだったりする。[収録曲]1. Quiero ser2. Mirando al mar3. 4"4. 4075. Tulipán6. Ni puedo ni quiero7. Te falta rock8. Círculos9. La bahía del silencio10. Te voy a decir una cosa11. Por toda una vida2008年リリース。 【中古】 【輸入盤】Amaia Montero/AmaiaMontero(アーティスト) 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2024年11月05日
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商業的な成功はさておき、玄人好みの上質なロック グレアム・パーカー(Graham Parker)は、1950年、英国ロンドン生まれのミュージシャン。アーティストとしての出自はパブ・ロックにタグづけされるものの、何かの狭いジャンル分けで“この分野を代表する”といった感じがしないアーティストだと思う。ニュー・ウェーヴしかりで、『スパーク!(スクイージング・アウト・スパークス)』のような作品があったものの、どこか控えめで、万人向けの派手さがなく、玄人好みな印象が付きまとうように感じる。 実際、セールス面での成功という意味では、1970年代末がその時期に当たり、1980年代以降のグレアム・パーカーの作品はさしたる商業的成功を収めなかった。そんな彼が1990年代に入ってリリースしたのが、本盤『ストラック・バイ・ライトニング(Struck By Lightning)』だった。大きなチャートアクションはなかったものの、40歳代に入ってもはや“若さ”の勢いだけではないロック・ミュージシャンの姿を示した好作だった。 1.「シー・ウォンツ・ソー・メニー・シングズ」は、肩の力の抜けた、さらりとしたかっこよさが魅力である。3.「ストロング・ウィンズ」と4.「ザ・キッズ・ウィズ・ザ・バタフライ・ネット」では、ガース・ハドソン(元ザ・バンド)のアコーディオンがいい味を出している。いい意味で肩の力が抜けた感じという意味で魅力的な曲としては、7.「ザッツ・ホエア・シー・エンズ・アップ」も聴き逃がせない。 8.「ア・ブランド・ニュー・ブック」はパブ・ロッカーらしさが前面に出たノリのいい好曲である。9.「ウィーピング・スタチューズ」もロック・アーティストとしてのグレアム・パーカーの魅力が発揮された隠れ名曲的なナンバー。14.「テン・ガールズ・アゴー」も円熟味のある軽妙な好ナンバー。さらに、アルバム末尾の15.「ザ・サン・イズ・ゴナ・シャイン・アゲイン」は一層リラックスした円熟のよさを聴かせてくれる。 個人的に気になる曲を中心にざっとアルバムを追ってみたけれど、全体を通して聴いた時に、ロック・アーティストしての本領発揮の楽曲、円熟味に溢れる楽曲とヴァラエティに富んでいるのが特徴になっているように思う。つまりは、一本調子ではなく、押したり引いたり、時は軽く肩をすかしたりと、これもまたアーティストとしての成熟の成果ということなのだろう。[収録曲]1. She Wants So Many Things2. They Murdered the Clown3. Strong Winds4. The Kid with The Butterfly Net5. And It Shook Me6. Wrapping Paper7. That's Where She Ends Up8. A Brand New Book9. Weeping Statues10. Guardian Angels11. Children and Dogs12. Over the Border (To America)13. When I Was King14. Ten Girls Ago15. The Sun Is Gonna Shine Again1991年リリース。 輸入盤 GRAHAM PARKER / STRUCK BY LIGHTNING (EXPANDED EDITION) [CD] 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーをクリックして応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2024年11月02日
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