『エリック・クラプトン・ライヴ(原題:E.C. Was Here)』は、1975年発表のライヴ盤である。周知のようにクラプトンは、ヤードバーズやブルースブレーカーズでの活躍によって、若くして功を成し名声をとどろかせ、20歳そこそこで「神」とまで形容されるようになった。その後、クリームで成功を収め、クリーム解散後はブラインド・フェイスやデレク&ドミノスといったグループへと活動の場を変えていくが、やがてドラッグに溺れ、一時は覇気を無くしていった。そんなクラプトンがようやく立ち直り、今度はソロとしての成功を収めていく過程で生み出されたのが『461オーシャン・ブールヴァード』(1974年)や、『安息の地を求めて(There’s One in Every Crowd)』(1975年)といった諸作であった。このソロとしての成功に伴って、クラプトンのミュージシャンとしての力点は、ギタリストからヴォーカリストよりに変わっていく。
以前にも述べたように(『ミー・アンド・Mr・ジョンソン』の項を参照)、クラプトンのギター・プレイはブルースそのものではない。ブルースを極めようとしながらも、良くも悪くもブルースとは明らかに違う方向に行き着き、結果として、新しい世界を開拓するに至ったと言っていいと思う。そのクラプトンのギターの世界を堪能するなら、本盤はうってつけだ。ちなみに、裸の女性の後ろ姿に「E.C. Was Here」と赤色の字で記されたジャケットは、正直、趣味がよくない。他のアルバムのジャケットと一緒に並べられていたら、敢えてこれを買おうという意欲はわかないかもしれない(実は筆者もこのジャケのせいで、長らく避けていたという過去がある)。しかし、ジャケのイメージと中身は全く違っている。クラプトンのギターを堪能したい、あるいはその凄さを実感したいと思う人には、二重丸の推奨盤である。
1. Have You Ever Loved a Woman 2. Presence of the Lord 3. Driftin' Blues 4. Can't Find My Way Home 5. Ramblin' on My Mind 6. Further on up the Road