ダイビングガイドの屋久島移住日記

ダイビングガイドの屋久島移住日記

ウミガメが直面している問題


原因は多くのことが考えられますが、下記は主な人為的要因です。

1. 直接の消費
  (ベッコウ細工、剥製、食習慣(卵・肉))
2. 生活環境の破壊
  (砂浜の減少、護岸工事、リゾート開発、四輪駆動車)
3. 汚染
  (重金属、ゴミ)
4. 混獲
  (延縄漁業、エビ漁業など)


1. 直接の消費
装飾品利用を目的としたベッコウや剥製として捕獲されています。
タイマイの甲羅は日本の伝統的工芸であるベッコウ細工の原料として用いられます。
また、日本を含め世界中でウミガメを食べる地域があります。
食糧事情の悪かった昔の日本では貴重なタンパク源としてウミガメの卵や肉をべる地域がありました。
ところが、食糧事情が改善された現代でもその食習慣は残り卵が乱獲されてきました。
しかし、ワシントン条約によってウミガメが保護されるようになって以来、先進諸国でウミガメを食べる習慣は減ってきているようです。


2. 生活環境の破壊
ウミガメにとって、理想的な産卵環境がしばしば侵害されています。
ウミガメの産卵は真っ暗で、静かな砂浜で行なわれます。
しかし、近年の護岸工事はウミガメの産卵場所を破壊してきました。
また消波ブロックや堤防はウミガメの砂浜への往来を困難にします。
夜に砂浜に人影があったり騒いだり、海辺に建設されたリゾートホテルや自動車のライトで
砂浜が明るく照らされていたりするとウミガメは上陸を控えてしまいます。

そして人工の光は産まれたばかりの子ガメたちの帰海をも妨げます。
その光に引き寄せられて、海から離れていってしまうものもあります。
砂浜を四輪駆動車などで走ることの悪影響もあります。
巣穴の上を車が走ると脱出前の子ガメ達が生き埋めになったり、砂浜に残されたわだちに、
孵化した子ガメ達が落っこち、海に行けず体の乾燥や体力の消耗などによって死亡する例もあります。
海岸のゴミも障害物となって子ガメの帰海の妨げになります。


3. 汚染
ヒ素、カドミウム、銅、水銀などの重金属が、打ち上げられたウミガメの腎臓や肝臓などに残留していることが分かっています。
これらの毒性金属は、体内に取り込まれるとなかなか体外に排出されず、そのまま長期間蓄積され、
高濃度に蓄積されると障害が現れます。
海生生物のすみかの多くは、人間が多く住む地上排水の近くにあるのです。
沿岸域が汚染されるとウミガメ達はこの影響を受けやすい生物であるといえます。
その他の海洋汚染物質である固形のゴミも、ウミガメに影響を及ぼします。
タールの塊や、釣り糸、プラスチックバッグやボトルなどです。
こうした腐らないゴミは海の中に長い間残留します。
餌と間違え食べてしまい、胃や腸につまって死亡したり、直接飲み込まなくてもそれに絡まり、
肢をなくしたり、窒息や溺死したりすることがあります。
人間が何気なく捨てたゴミがウミガメたちにとっては命取りなのです。


4. 混獲
混獲(誤って漁網にかかってしまうこと)は、ウミガメの命を奪う、大きな脅威です。
その犠牲になるウミガメは、年間20万頭とも30万頭とも言われます。
船に網を引かせて海底の魚をとるトロール網、餌の付いた釣り針を数多くロープにつけたマグロの延縄漁業、
海の中にフェンスをはっているような刺し網などによる被害が大きいのです。
網や釣り糸にかかったウミガメは水中で引き回され、水面に浮かび上がることができず、
溺死することになります(肢がなくなってしまう場合もあります)。

そこでアメリカは、エビは獲れるがウミガメは逃げる「ウミガメ除去装置(TED)」を開発しました。
こうして、混獲は97%も減らすことができました。

他の漁業でもウミガメが網や釣り針にかからない方法や、かかっても脱出できる仕組みが使われれば多くのウミガメが助かるでしょう。

子ガメが成長し産卵のために戻ってくるには20~30年かかるそうです。
その間、多くの困難が待ち受けていますが、それは自然環境によるものよりも人間に起因することの方が遥かに大きいかもしれません。

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