BLUE ODYSSEY

BLUE ODYSSEY

ミルクちゃんの恋


ミルクちゃんの恋 [act.1]


本作は →『ココアちゃんの恋』 の続編に当たります。
もしよろしければ、そちらを先にご覧ください。












 ここは魔法学校。



本日の授業も全て終わり、その学校の校舎から”黒いローブの魔術師の男の子”がいつものように飛び出して来ました。今はもう下校時間です。

そこへ、その校門脇のゴミ箱の後から、サッと飛び出してくる人物がありました。

”ココアちゃん”です。

ココアちゃんはその男の子の目を真剣に見つめながら、彼の元へ一歩一歩近づいて来ました。
普段は明るく、笑顔を絶やさない女の子ココアちゃん。しかし、今日は少しも笑っていません。
じっと真っ直ぐ男の子の瞳を見つめていました。
男の子の方も普段と違うココアちゃんの態度にすぐ気が付きました。

男の子「………………。」

そして、ココアちゃんは男の子に向かって何かを喋り始めました。








 ミルクちゃんは今日も下駄箱で急いで靴を履き替えていました。
そして黒いローブを着た魔術師の男の子の所に急ぐのです。
普段は、慌てたり感情を外に出したりはしない女の子ですが…、いつもこの時だけは慌てて飛び出して行きます。

それでも、下駄箱の壁にかかっている鏡で一応自分の姿はチェックしていきます。
ミルクちゃんの髪の毛は柔らかいので、よく乱れている事があるからです。
鏡で自分の姿を見て、髪の毛をさっと手で整え、

「よし!」

と、言ってミルクちゃんはさっそうと走り始めました。
身にまとっている白いローブをはためかせながら、校門の所まで走って来るとミルクちゃんの好きなあの男の子の姿が見えました。

ミルク「(ああ……v)」

さあミルクちゃんに取って1日で一番楽しい時間の始まりです。
彼女はいつものようにその男の子を呼び止めようとしました。



その時!



魔術師の男の子のローブは風になびいて横に大きく広がっていたのですが、風が止んでそれがストンと下に垂れ下がると、そこにもう1つの薄茶色のローブが”いる”事に気が付きました。

ミルク「(はっ?!)」

その薄茶色のローブはいつもミルクちゃんがいる位置を占領していました。

ミルク「……………………。」

ココアちゃんです。
あの薄茶色のローブ、風になびく柔らかいココア色の髪。ココアちゃんに間違いありません!

ミルク「(こっ、”ココア”?!)」

ミルクちゃんはそれでも勇気を振り絞って男の子の名前を呼んでみました。

男の子はそれに気が付いて、後にいるミルクちゃんの方を振り返りました。何か気まずそうな表情をしています。

すると……、男の子の腕をしっかりつかんでいた茶色いローブの人物が、ミルクちゃんの方を振り向きもせずに男の子の腕をグイグイ引っ張って行きました。
しかも男の子の方に大きく身体を傾けながら………。

そして、男の子は連れて行かれました。







 さすがの強気なミルクちゃんも成すすべも無くその場に呆然と立ち尽くしていました。
もし男の子がココアちゃんの腕を振り解いて、ミルクちゃんの名前を呼んでくれたなら、そこまで走って行った事でしょう。
でも、それはありませんでした……。

偶然にも、ちょうどこの間ココアちゃんが立ち尽くしていた位置にミルクちゃんは立っていました……。
彼女は頭の中が真っ白になり、しばらく何も考えられませんでした。

これまでずっと楽しく、そしてこれから先もっと楽しくなるだろうと、そう思っていた矢先に…………。






 やがてミルクちゃんはこの突然の出来事に立っている力も無くなって、その場にしゃがみ込みました。
そして自分の膝を抱いて顔を下に向けました。

ミルクちゃんがそうやって地面に座っているのは珍しい事です。
ローブが汚れる事もかまわず、ミルクちゃんはその場に座り続けました。

周りの下校して行く生徒達もミルクちゃんの姿に気が付きました。
けれど女の子達は誰も彼女に声をかけません。
ミルクちゃんの様子を見て、何が起こったか察しが付いていたからです。
女の子達は、ミルクちゃんがあの男の子を好きな事は知っていました。
でも、ミルクちゃんの最近のあからさまな行動は、周りの女の子達に良い印象を与えていなかったのです。それは”ぬけがけ”のように映っていました。他にもあの男の子の事を狙っていた女の子は多かったからです。






 ミルクちゃんは悲しさをこらえていました。涙は流しませんでした。
でも、気落ちしてその場から動けなくなっていました。

しばらくそこに座っていると……、ある男の子が声をかけて来ました。
この男の子は赤いローブを身にまとっていました。この男の子もここの学生の魔術師です。

「なにしてるの?」

ミルク「……………………。」

「元気なさそうだね。大丈夫?」

ミルク「……………………。」

「僕に何か出来る事があったら言ってよ。」

するとミルクちゃんは……、

ミルク「あの黒いローブの男の子に、

”私といっしょに行く筈だった魔法博物館、あれまだ行くかどうか”

聞いて来て。」

そうミルクちゃんはつぶやくように言いました。
ミルクちゃんの態度が尋常では無かったので、すぐに赤いローブの男の子は

「じゃあ、ちょっとそこで待ってて」

と言い、走ってあの黒いローブの男の子を追いかけました。
どうも、ミルクちゃんがいつもその男の子といっしょに帰っている事は知っていたようです。今や有名な事ですから。

ミルクちゃんはこの時、人を使い走りみたいにしましたが…、もちろんいつもはこんな事はしません。
ミルクちゃんは今、頭の中では何も考えられなくなっていたのです。







 そして、さっきの赤いローブの男の子が息を切らせながら戻って来ました。

「はぁはぁ………。あの、黒いローブの男の子から伝言があるんだけど…………。





ええと、





その……、





”ミルクちゃんへ、
あの約束は果たせなくなりました。ごめんなさい。
今度ちゃんと謝りに行きますから。”」





それを聞いて、ミルクちゃんは立ち上がって、その場から走り去りました。








ミルクちゃんの恋 [act.2]



「あの、ちょっと!」


赤いローブの男の子が話しかけたのも聞かず、ミルクちゃんは、ココアちゃんと黒いローブの男の子が帰って行った方向と反対方向に走って行きました。

そのままミルクちゃんは腕で顔を覆いながら走り続けました。

そして自分の家に着きました。それから急いで自分の部屋に行き、机の上に顔を伏せました。

ミルクちゃんのお母さんが「夕食は?」と聞きに来ましたが、ミルクちゃんは返事をしませんでした。
そしてじっと自分の腕に頭を置いたままにしていました。




 ミルクちゃんは生まれて初めての悲しさを体験しました。
いままで生きて来て、こんなに悲しかった事はありません。胸が張り裂けそうです。
声を上げて泣き出したかったのですが、それはこらえました。
”そうすればココアちゃんに対して負けを認める事になるから”と思ったのです。
そうしてミルクちゃんは悲しさに耐えていました。





その夜、………ミルクちゃんは夕食を口にしませんでした。









 次の日になりました。今日は学校はお休みです。

本当なら黒いローブの男の子といっしょに魔法博物館で初めてのデートをする日でした。
でも、それはかないませんでした。

あの男の子が楽しそうにココアちゃんと手を繋いで魔法博物館に行く様子が頭の中に浮かんで来ました。

ミルク「ココアのヤツ~~~~~!!!!」

怒ったミルクちゃんは……、ある事を思い付きました。

ミルク「魔法アイテム!!」

魔法学に詳しいミルクちゃんは、魔法アイテムの力で何とかできないかと考えたのです。

そして……、魔法学の分厚い教科書を本棚から出して来て、ページをめくり始めました。
もちろん『恋』についてのページを中心に目を通しました。

その中でも特にミルクちゃんの目を惹いた項目は、



『恋敵を呪う魔法』

『恋敵の恋を破局に導く魔法』

『恋敵を事故死に見せかける魔法』




等など……。
普段のミルクちゃんならほとんど見ない危ないページばかりを開いていました。

そんな中……、

『ほれ薬』

という項目を見つけました。





『絶対に効く”ほれ薬”これを飲ませれば相手もイチコロ!』




と、なにやらセンスの悪いキャッチコピーのような見出しが書かれていました。ミルクちゃんは思わずその項目に目が釘付けになりました。




『必ず恋を実らせられる』

『ほれ薬に自分の頭髪を混ぜて飲ませると、相手は必ず自分を恋するようになる。』

『相手の心の中には恋の炎が燃え上がり、いてもたってもいられなくなる』





[注意書き]

『すでにほれ薬を飲んだ相手に、後からほれ薬を飲ませても効果は無い。自分が飲ませるほれ薬が”最初”でなくてはならない。』

『効果はほれ薬を飲んでから時間後に発揮される。』






ミルク「ようし!それなら急いでほれ薬を作るわ!あの男の子が先にココアにほれ薬を飲まされたら、それこそ何もかも終わりだもの!」






ミルクちゃんの恋 [act.3]


 ミルクちゃんはこうして自宅の地下室にある魔法薬調合室に入りました。

部屋の真ん中には黒い金属製の釜がかかってました。その下には火を焚く囲炉裏みたいな物がありました。
そして壁際にはビンに入った魔法薬の材料が所狭しと並べられてありました。
中には木の根っこから干乾びた昆虫の死骸まで入っていました。
大変おどろおどろしい物が並んでいましたが、今のミルクちゃんは全然平気でした。元気に動き始めていました。沈み込んでいた彼女はいったいどこにいったのでしょう?

大きな魔法薬調合のレシピ本をドカッと木製の小さな机の上に放り投げ、『ほれ薬』のページを開きました。
そして自分の服の袖を捲り上げて、早速釜に材料を放り込み始めました。

ミルク「えーーーーーと、まずは”ベラドンナ”というハーブね。
なになに、”少し幻覚作用を引き起こす事があるので、入れる量に注意する事”……。」

それを棚の薬品ビンの中から探して来て、釜に放り込みました。

ミルク「次に”ペパーミント”の花を少量…………。」

ミルク「あとはネギ少々と、ダチョウの羽。
サイクロプスの角の粉と……。

そして…………………、



”イモリの黒焼き”かあ。」



 ビンの中に入った乾燥した”イモリの黒焼き”見つけて、それを取り出しました。
それはまだイモリの原型を留めていました。

ミルク「うえええええ~~~~~~。」

それを口の中に入れるイメージを頭の中に描いてしまい,思わずむせ返るミルクちゃんでした。

でも、我慢してそれをハサミで細かく切りました。
異様に硬く、石のような感じがしました。それをすり鉢ですりつぶして粉にしました。そして釜に放り込みます。
そこにリキュールを加えて、煮込みました。


グツグツグツ……。


今度は散髪用のハサミで自分の頭髪を切りました。
切ったのが他人にわからないように、後頭部の裏側の髪を切りました。
それはまさに宝石のような輝きを持つ薄いブルーの髪の毛でした。

その時、またココアちゃんの顔が頭に浮かんだものだから、ミルクちゃんはけっこう思い切って大量に自分の髪の毛を切りました。

ミルク「今ごろ黒いローブの男の子はあのココアのヤツといっしょに魔法博物館の中でイチャイチャしてるんだわ!!!!!」

そして頭髪を細かく切って、釜の中に入れました。


グツグツグツ……。


ハーブやリキュールなどを入れてあるので、いい香りがしてくる筈ですが……、釜の中からは腐葉土のような匂いが立ち登って来ました。





ミルク「うえ~~~~~~~~。うっぷ!うっぷ!イモリのせいね!」







ミルクちゃんの恋 [act.4]


 煮込む事さらに2時間。火加減にも注意しながら、加熱を続けました。
そして、やっと出来上がりました。

でもその時、魔法薬調合室には異様な匂いが立ち込めていました。

ミルク「うえ~~~~~~~~~~~、ごほっ、ごほっ」

さすがのミルクちゃんも泣きそうです。

出来上がった物を見ますと、うす茶色の土のようなドロドロした物が釜の底の方に溜まっていました。

ミルク「うえ~~~~~~、マズそう~~~~~。」

ミルクちゃんはスプーンに一口、それをすくってみました。
そして味見をしました。

ミルク「……………………。」

ミルクちゃんは目をつぶって顔をしかめました。

ミルク「のっ、飲めたものじゃないわ!!!!」








 肝心のほれ薬は完成したものの…………。
とても飲めないシロモノだとわかりました。

ミルク「あの男の子に”これを飲んで”と頼んでも……、おそらく飲んでくれないわ。
それに”ほれ薬”だとバレてしまうかも知れない!!」

ミルクちゃんはため息をついて、その場に座り込みました。

ミルク「せっかく作ったのにぃ~~~~~。はぁ~~~~~。」

困ったミルクちゃんは必死で考えました。なにかいい方法はないかと。
すると………、




ミルク「そうだわ!”チョコレートケーキ”に仕立てるのよ!
そうすれば、味と臭いを誤魔化せるかも!」




こうして『チョコレートケーキ擬装化作戦』が始まりました。

まずは苦味のあるチョコレートをたくさん用意しました。
そして普通にケーキの生地を作り、そこにチョコレートとほれ薬を混ぜていきました。そしてそれを焼きます。
焼きあがったスポンジケーキの周りにも、チョコレートをたっぷり塗り付けました。
最後に生クリームでハート型の模様をデコレーションしました。
そしてそこに「MILK」と名前を書き添えました。



ミルク「完成だわ!」



ミルクちゃんは喜びました。

ミルク「あの腐葉土の匂いも、チョコレートの香りと苦味で何とか誤魔化せたわ!!」






ミルクちゃんはすっかり元気になりました。

ミルク「後はどうやって食べてもらうかだわ……。」


もちろんココアちゃんがいる前で食べさせるワケには行きません。
もしそんな事をしたら気付かれて、食べないようにさせられるかも知れません。
男の子には、コッソリと食べてもらうしかありません。






ミルクちゃんの恋 [act.5]


 次の日の登校日。

男子は体育の授業(箒での飛行訓練)が終わって更衣室に行きました。
着替えを終わった他の男の子達はさっさとそこを出ました。
黒いローブの男の子も着替えが終わったので、そこから出て行こうとしましたが…、それを呼びとめる者がいました。
赤いローブの男の子です。
彼は更衣室に他に誰もいないのを確かめると、

「頼まれた物があるんだ。」

と言って例の『ミルクちゃん特製ほれ薬入りチョコレートケーキ』を出して来ました。







 それから時間が経って……、その日の授業が全て終わりました。

黒いローブの男の子はまたいつものように校舎から出て来ました。
その後を、男の子の名を呼びながら追いかけて来るココアちゃんの姿がありました。

ココアちゃんは男の子に追い付きました。
男の子の方も笑顔で彼女を待っていました。
そして2人は仲良く手を繋いで帰りました。

しかし、それを近くのゴミ箱の影から覗き見する人影がありました。
ミルクちゃんです。

ミルク「もし、作戦が上手くいっていれば……、そろそろ男の子は私の事を想って側に来てくれる筈だわ!
男子更衣室なら女子は入って来れないから、きっと”ココア”に邪魔されずに食べてくれた筈だわ。」

そう思って2人の帰る姿をじっと眺めていました。

ところが……、
男の子とココアちゃんはずっと先の方まで仲むつまじく歩いて行き、その姿はついに見えなくなりました。



ミルク「ほれ薬の効果はまだなのかしら?」



そのままミルクちゃんはそこで待ち続けました。
男の子が戻って来る事を期待して待っていたのですが………、やって来ません。
それにあの赤いローブの男の子にもケーキを食べさせる事に成功したのか聞いて確かめなくてはなりませんでした。


30分ほどそこで待っていると……、やっとあの赤いローブの男の子が現れました。



ミルク「(もーーーー!彼はいつもやる事が遅いんだから!)」



普段人の事は悪く言わないミルクちゃんですが……、この時はイライラしていました。
ミルクちゃんはゴミ箱の後から姿を表しました。そして、彼を人目に付かない校舎の裏手まで引っ張って行きました。






赤いローブの男の子「いやーーーー、遅れてごめん、ごめん!」

ミルク「そんな事より……、私のチョコレートケーキを食べてもらう事に成功したの?」

「それより、聞いておきたんだけど……、あの”チョコレートケーキ”っていったい何なの?」

ミルク「えっ?いえ、あはは!何でもないわ!ただのケーキよ!あははは!」

「いや、実は彼もなんだか疑っていたよ。

”誕生日でもないのに突然ケーキを贈られて、しかも更衣室ですぐに食べろ”

だなんて……。」

ミルク「いえ、別に何もないわよ!あのケーキには!!!ホントよ! (汗」

「……………………。」

ミルク「でっ、食べてくれたの?彼は!」

「そっ、それが…………………、」

ミルク「”それが”?」

「食べなかった!」

ミルク「なんですってーー!!」







ミルクちゃんの恋 [act.6]

「彼が、

”なんで今ごろケーキをくれるんだろ?それに彼女が直に渡して来ないのは変だ。
何かの魔法でもかかっているんじゃないか?”

と言ってね。食べなかった……。」

ミルクちゃんは気落ちしました。

あの男の子にこんな態度を取られるのは「もう気持ちが無い」って事の証明ような気がしました。
もう普通にお菓子を作って行っても、彼は食べてくれないかも知れません。

ミルクちゃんは下を向きました。
涙が零れ落ちそうです。

「大丈夫?ミルクちゃん」

そう言って赤いローブの男の子は心配そうに声をかけてくれました。

「約束の方は大丈夫だよね?」

ミルク「えっ、約束?」

「ああ、”僕が彼にケーキを食べさせたら、いっしょに図書館で僕の研究課題の調べ物を手伝ってくれる”っていうのは。」

ミルク「あーーーーーーーーーーー!そっ、そうだったわね。でも、彼は食べなかったんでしょう!
じゃあ、悪いけど、その約束は無しね!」

「それはないよ!ちゃんと言われた通りの事はしたんだし。
それに彼はもう食べないよ。
だって、彼は僕にこう言ったんだよ。




”悪いけど僕はココアちゃんの事が好きなんだ。
だから、ミルクちゃんの作った物はもう受け取れない。
受け取ったら、また彼女を苦しめる事になるから。”」





ミルクちゃんはショックを受けました。
そして、いままでこらえていた涙が頬を伝って流れ落ちました。




ミルク「うううう……、グスッ。」




しばらくミルクちゃんはその場で立ったまま泣いていました。

赤いローブの男の子もそれにつきあってその場に立っていました。









 すると……、

そこに一匹のオス猫が現れて、ミルクちゃんの足元に擦り寄って来ました。
この辺りでは見た事も無い猫です。
猫は馴れ馴れしくミルクちゃんの足に何度も身体を摺り寄せていました。
ミルクちゃんはしばらく考えた後、ある事が頭に浮かびました。

ミルク「その残ったケーキはどうしたの?!まさか、ほったらかしにしたとか?!
ゴミ箱に捨てたとか?!
それとも猫にあげたとか?!」

そういえば、男の子は手にケーキらしき物を持っていませんでした。

ミルク「ゴミ箱に捨てちゃいけないわ!猫が食べたらどうするのよ!」

「えっ!何か毒でも入っていたの!」

男の子は大変驚きました。

でもミルクちゃんは「ほれ薬」を入れていた事を気付かれてはいけないので、平静を装いました。

「いえ、もしかしたら、その内カビが生えてくるかも知れないでしょ。
学校のゴミ箱に入れておくと猫が食べてしまう事もあるから。
そしたら、猫がお腹を壊すでしょ。」

「うわあ、君ってそこまで考えているんだね。やさしいんだね。


……実は僕はココアちゃんの事が好きだったんだ。

でも黒いローブの男の子も、以前からココアちゃんの事を好きだという感じだったし…、ココアちゃんもあの男の子が好きなのはもうわかっていた事だし……。

今回、彼の口から”ココアちゃんが好きだ”とはっきり聞かされた時、僕は失恋した事がわかったんだ。

それで悪いんだけど……、

ヤケ食いをしたんだ。

その………、

君の作ったケーキ、
あれは、僕が全部食べてしまった。」





ミルク「えーーーーーーーーーーーーーー!!!」





「スッゴクおいしかったよ、あのケーキ!!今まで食べた事の無い味だった。
僕の感覚にぴったり合ってたんだ。

あっ、勝手に食べたのは謝るよ。ごめん。ケーキはお店で買って返すよ。

そうだ。
図書館に調べ物に行く時、ケーキ屋に寄ろうよ。2人で。そこでいっしょにケーキを食べない?




なんだか僕、君と図書館に行くのがすっごく楽しみになって来たんだ!」










THE END






フッ、またラブコメかぁww


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