BLUE ODYSSEY

BLUE ODYSSEY

ココアちゃんの恋 


ココアちゃんの恋 [act.1]


 魔法使いの少女ココアちゃん。



いつも魔法使い用の淡い茶色のローブを被り、さっそうと街を歩く女の子ココアちゃん。
重たそうな魔法学の分厚い教科書をベルトで結んで持ち歩くその姿は、まさに”かわいい”の一言でした。
性格も良くて、普段は明るくて活発。
それに誰に対してもメッタに怒る事はありません。性格の良い女の子でした。







 今日もココアちゃんは魔法学校へ登校します。

最近ココアちゃんには気になって仕方がない人がいたのです。
それは同じ魔法学校に通う”魔術師の男の子”です。
その男の子はココアちゃんと同じく、いつも魔法使い用の黒いローブを被っていました。それがまた似合ってかっこいいのでした。

この男の子とたまにいっしょの教室で勉強する事もありました。
その時、ココアちゃんは頑張って、この男の子に何度か話しかけていたのですが…、なかなかそれ以上は仲が深まりません。
そればかりか、その男の子はなんだか自分に対していつもそっけない態度を取っているように感じられました。

「このままずっと並行線が続きそう………。」そうココアちゃんは思い始めていました。




ココアちゃん「そうだわ!魔法の力を少し借りて、恋を実らせる事は出来ないかしら?」




そこでこの状況を進展させるべく、ココアちゃんは「魔法アイテムの老舗」と言われる『婆様のお店』に行きました。
その店の屋根にかかった大きな看板には


『創業120年。どんな魔法アイテムでもそろう』


と書かれてありました。


ココアちゃん達学校の生徒は、授業で使う教材をいつもここに買いに来ていました。ここは学校指定の販売店でもあります。
でも、学校の授業で使うような品はどれも安いのですが…、本当に効果が高い魔法の品々はやはり目の玉が飛び出る程の高額さでした。


今日はもちろんその高い方のアイテムを見なくてはなりません。
ココアちゃんは意を決してその店のドアノブを引き、中に入りました。
店内には写真や図鑑でしか見た事の無い珍しい魔法アイテムの数々が並んでいました。
そして、店に奥のカウンターにはいつもの婆様が座っていました。

ココア「婆様(ばさま)!
あのーーーーー!!!今日も買い物に来ましたーーーーー!!!」

いつも元気なココアちゃん。

婆様 「今日は何を買うのかのう?確か……、学校指定の教材は今は必要無いハズじゃが?
何か買い忘れかね?それとも教材のアイテムを壊したかね?」

ココア「いっ、いいえ。今日はそのう…………………、ちょっと魔法アイテムの見学に……………。」

しかし、その後の言葉が続きませんでした。

婆様 「はははは!そうかい、そうかい。それは良い心がけじゃ!魔法アイテムに興味を持つとはね!
最近の子らは教材以外の物にはあまり興味を示してくれんのでな。
気に入った物があったら買っていっておくれ。高額じゃがの!あははは!」

ココア「まあ、その……、買うのはちょっと苦しいのですが…………。あはははは!」





 店のカウンターの一番近くには、一際高そうなガラス張りのショーケースが置いてありました。
ケースも高額ですが、その中にあるアイテムも極めて高額な物が置いてありました。でもそこには女の子達に人気のあるアイテムが並べられていました。
”ほれ薬”などもあります。その値札の数字には信じられないほど0が並んでいましたが。

いつもはこのショーケースの中は冷やかし程度にしか見ないココアちゃんでしたが……、今日はマジで見ていました。
ここには「恋」に関する魔法アイテムがいくつもあるのです。

その品物とは………、




『相手の心を打つ魔法紙に書かれたラブレター』      →値段、50万ゴールド

『絶対成功する、恋のまじない全書』の本。         →値段、130万ゴールド

『インスタント恋のキューピット』を創造できるセット。    →値段、150万ゴールド

『相手に送ると絶対に恋が実るコイン』            →値段、170万ゴールド




等など……。
どれも目の玉が飛び出すぐらい高価でした。


ココア「品物は良さそうなんだけどなぁーーーー、どれも高くて買えないなあ~~~」

ココアちゃんは魔法使い用の”がま口のサイフ”を取り出しました。そしてその口を”パチン!”と開きましたが……、中にはあまりコインやお札は入っていませんでした。

ココア「はぁ~~~~~~~~~。」

婆様はカウンター越しにココアちゃんの事を眺めていました。

婆様 「何をお探しですかのぅ?」

ココア「あの……。恋に効く魔法アイテムはありませんか?お安いので」

婆様 「ああ、それなら、ちょうどいいのがあるよ。」

と言って婆様が出して来たのは……。
小さな”コンパクトケース”でした。







ココアちゃんの恋 [act.2]


婆様 「ちょうど、この間1点入荷したばかりなんじゃよ。これも珍しい品じゃ。
値段の方は……まあ、お手頃じゃな。なにせ今なら”超特価価格”じゃからのう!!」

ココア「まあ、なぜ超特価なんですか?」

すると婆様は笑いながら大げさに手を振った。

婆様 「いやだ、理由なんてありませんよ。アンタがかわいいから安くするんですよ。」

ココアちゃんは婆様を信じました。

ココア「おくらですか?」

婆様「”10万ゴールド”!」

ココアちゃんは目を回しました。
あまりお安く感じられません。

婆様 「これは不思議な品じゃ。このコンパクトの鏡に向かって呪文を唱えると、”別の人間の姿に変身”できるのじゃ。
しかも、”理想の姿”に成れるんじゃ。
このコンパクトに向かって”あの人の好む、理想の姿になれ!”と唱えると、その”想いを寄せている人が理想とする姿”に変身できる!」

ココア「ホントですか?!!」

婆様 「ああ!それに”変身効果”は一生続く。
でも、万が一それが気に入らなくなり、元の姿に戻りたくなったら、”元に戻る呪文”を唱えればよい。そうすれば元に戻る。簡単じゃろ?」

ココアはその話が本当なら、すごく良いアイテムだと思いました。

婆様 「でも”一度”しか変身できんよ。」

ココア「え?1回切りですか?」

婆様 「そうじゃよ!これは”使い捨て変身コンパクト”じゃ。たから10万ゴールドという破格の値段なのじゃ!
たった10万ゴールドで、そう何回も変身できるワケが無かろう。そんなシロモノなら1000万ゴールドぐらいの値打ちがあるじゃろうて!」

ココア「えーーーーーーーーーーーーーー!!」

婆様 「当たり前じゃ!考えても見なさい!そんな物があれば、いくらでも悪い事ができる!
まあ、アンタもそっちの”何回でも無制限に変身できるタイプ”の物がご入用なら………、うちでも、お取り寄せしてあげん事もないよ。1000万ゴールド払うなら。
でも、そのコンパクトは普通は持つのに許可がいる。もしどうしても欲しいと言うのなら…………、”違法商品扱い”となるがのう!あははは!」

ココア「まあーーーーーーーーーー!」

ココアちゃんは少し婆様にからかわれているようです。

婆様 「でも、安心せい!このコンパクトは”合法商品”じゃ!」

ココア「……それで、あの、効果の方は確かなんですか?」

婆様 「もちろんじゃとも!確かに変身できる!」

ココア「でも、よく見ると……、このコンパクト、表面にわずかに傷がありますねえ。”中古品”じゃないんですか?」

婆様 「ウホン!中古かもしれんが…、まだ、魔法は使われておらんよ。たぶんね!オホン!オホン!
それより……、それを使えば、すごい美人になれる可能性もあるんじゃ!」

ココアちゃんは、なんだか婆様が”中古品”である事から話をそらしたように聞こえました。

婆様 「だって、男というもんはいつも頭の中では”美人”をイメージしておるからのう。
でも、そうだから、”その男性の理想の姿”になると言う事は、”すごい美人”に成れるという事なのじゃ。
男性は、いつも勝手な理想像をイメージしておるからのう。」





でもココアちゃんはよく考えた末……、いったんコンパクトを婆様に返しました。

ココア「中古品みたいですし、本当に魔法が効くかどうか、少し疑問の余地がありますから。」

婆様 「そんな事はない!オホン、オホン!私を信じて!」

ココア「でも、高額な買い物ですし………。」

結局その日、ココアちゃんはコンパクトを買いませんでした。







ココアちゃんの恋 [act.3]


 そんな中、最近になって、ココアちゃんの好きな魔術師の男の子に言い寄る女の子が現れました。

”ミルクちゃん”です。
最近この辺りに引っ越して来た女の子でした。
ココアちゃんと同い年。そして、ココアちゃんと同じ学校に編入して来ました。

彼女は白魔法を使うため、いつも真っ白なローブを身にまとっていました。
それがまたよく似合って彼女の魅力を引き立てていました。
そして薄いブルーの透き通るような髪の毛がとても印象的でした。
顔立ちの方は少し冷たい感じがしましたが…、それでも美少女に間違いありません。なんと言いましょうか、男の子が好みそうなちょっとミステリアスな感じの顔立ちでした。

性格の方は、猫をかぶっていてよくわかりませんが…、頭の方は良さそうで、魔法学に関してはかなり成績優秀みたいでした。








 この強力なライバルの出現にココアちゃんは焦りました。

そして……、今日もココアちゃんは「偵察活動」をしていました。




例の想いを寄せる魔術師の男の子が学校から出て来ました。
そして1人で校門に向かって歩き始めました。

先回りしていたココアちゃんは、大きな木の幹の後に隠れて、その様子をうかがっていました。
男の子の姿を見つけ、ココアちゃんは思わず吐息をもらしました。

ココア「(はぁ~~~~~。いいなぁv)」

すると………、その後からミルクちゃんが追いかけて来ました。

魔術師の男の子はミルクちゃんの呼び声に振り返りました。
そしてミルクちゃんが追い着くまでじっとそこで待っていました。
ミルクちゃんは息を切らせながら、男の子の前までやって来て、嬉しそうに微笑みました。

その様子を見ていたココアちゃん。手には、その隠れていた木の幹から生えている細い小枝をつかんでいましたが、バキッ!と音を立てながらその枝を折ってしまいました。
それでココアちゃんは、慌てて頭を引っ込めました。
その後、再び頭を出すと、魔術師の男の子とミルクちゃんが仲良く手を繋いで歩いて行くのが見えました。





ココア「(まーーーーーーーーーーーーーー!!わっ、”わたしの人”に!!!!)」





さらに、魔術師の男の子とミルクちゃんは、2人とも自然に立ち止まり、お互いの目を見つめ合いました。
いい感じです。
そしてミルクちゃんは、次の休みの日に魔法博物館へ2人だけで遊びに行くという約束を取り付けました。




ココア「(もーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!私を差し置いて!!)」




ココアちゃんは怒って、お家にすっ飛んで帰りました。ココアちゃんが怒るのは珍しい事です。
そして、バイトで貯めたなけなしのお金を握り締めて、婆様のお店へと走りました。





ココア「はぁはぁ…、婆様!!!あのコンパクトをください!!!」







 ココアちゃんは一年間一生懸命バイトして貯めたお金と引き換えに、あの魔法のコンパクトを手に入れました。
しかし、どう見ても中古品のような感じは否めませんが…。
でも、ココアちゃんはそれを握り締め、勇んで魔術師の男の子とミルクちゃんがいた所に戻って来ました!




………そこには、もう2人の姿はありませんでした。それもその筈、あれからずいぶん時間が経っていたのです。




でもココアちゃんは興奮が収まり切らず、その周辺を探し回りました。ですが、ついに2人の姿を探し出す事は出来ませんでした。

それでトボトボと自分のお家に帰りました。





 ご飯を食べた後、魔法のコンパクトを開いて見ました。
そこには自分の顔が映りました。
ココアちゃんはこの顔が決して嫌いではなかったのですが……、意中の男の子が全然振り向いてくれず、今では”別の顔になりたい”と考えるようになっていました。


ココア「明日になれば、きっとすごい美人になれるんだわ。
あの”ミルク”が驚くぐらいの顔になれるんだわ!」






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そして魔術師の男の子が、

「ココアちゃん、綺麗だよ。」

と言ってココアちゃんに近づいて来て………、それから2人は仲むつまじく手を取っていっしょに帰るのでした。



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………と、いうイメージを想像して、ココアちゃんは胸がいっぱいになりました。明日が楽しみです。
その日、ココアちゃんは、胸元にコンパクトを抱いて眠りました。







ココアちゃんの恋 [act.4]


 次の日。

ココアちゃんはずっと変身するチャンスをうかがっていました。
そしてそのコンパクトを買った時、婆様に言われた”使用する際の注意事項”を思い出していました。




婆様 「変身する時は、相手と自分以外周りに誰もいないか確かめるのじゃ!
いると変身が中途半端に終わる事がある。もしくは変身できない!

そうさな、相手の10メートル以内で変身すると良い。その半径10メートル以内に誰もいなければ、かならず変身は成功する!」








 学校の校門の所にココアちゃんは先回りして待っていました。
すると、例の魔術師の男の子が校舎から出て来ました。

しばらくするとミルクちゃんが男の子を追いかけて出て来る筈です。
いつもそうなのです。なら、チャンスは今しかありません!

ココアちゃんはあらかじめ、そこに置かれていた大きなゴミ箱の裏に身をかがめて隠れていました。
そして、魔術師の男の子がそこに近づいて来ました。
こっそり辺りを見回しましたが……、他に誰もいません。



今です!



ココアちゃんはコンパクトを開きました。
そこに映った自分の顔。

ココア「ああ、この顔とも今日でお別れね。以前は気に入っていたんだけどね。」

そして祈るように魔法呪文を唱え始めました。

ココア「父と子の精霊の御名において、我の姿を、我の恋する者の望む姿へと変えたまえ~!
ああ、父と子の精霊の御名において、我の姿を、我の恋する者の望む姿へと変えたまえ~!」

コンパクトから美しい光が発せられました。
それはココアちゃんを包み込みました。

男の子「あっ!」

その光に魔術師の男の子も気が付いたようです。そして、何事かと思ってココアちゃんに近づいて来ました。
その時、ココアちゃんは自分がどんな顔になったかぐらいは確認しておきたかったのですが………、男の子が近づいて来たので、すぐにコンパクトを閉じてポケットに隠しました。魔法を使って変身した事がバレるとやはり気まずいです。

立ち上がって、その姿を見せるココアちゃん。心持ち自信あり気に胸を張っています。男の子の方はビックリした顔をしています。

ココア「(うふふ、驚いているわ!きっとすごい美人になっているんだわ!彼の好みの。)」

男の子「こっ、”ココアちゃん”?」

ココアちゃんはそれを聞いてガッカリしました。
てっきり自分が誰だか分からないぐらいの別人になっていると思ったからです。
すぐに自分だと言い当てられて、気落ちしました。
でも、よく考えると……、いつも着ている茶色いローブのせいで、気付かれたのかも知れません。

男の子「ココアちゃん、なんだい?今の光は?」

ココア「うふふふ。ナ・イ・ショ!
あのーーーー、今日の私、綺麗になってますか?」

男の子「え?」

魔術師の男の子はこの唐突な質問に驚きましたが………、
しかし、女の子にこう聞かれたら返答しないわけにはいきません。それで答えました。

男の子「え、まあ………、いつもと同じレベルだよ………。」





ココア「(ガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!)




あの、それって、どういう意味?」

その時、あのミルクちゃんがやって来ました。
薄いブルーの髪の毛を風にそよめかせながら、スキップしながらやって来ました。
そして、ココアちゃんの姿を見つけると、その目を睨み付けました。
それからワザとその魔術師の男の子の腕をギュッとつかみました。

ミルク 「帰ろ!」

そう言って、男の子の腕をグイグイ引っ張って行きました。

男の子「あっ、あっ、ちょっと待って……………、あっ!」

男の子はココアちゃんの顔を見ましたが…、ミルクちゃんに無理矢理連れて行かれました。そして、その姿は見えなくなりました。








……呆然とその場に立ち尽すココアちゃん。もう言葉もありません。






しばらくしてからやっと我に返ったココアちゃんは少し涙ぐみました。

ココア「こっ、こんな筈じゃなかったのにーーーーーー!」

そしてコンパクトを取り出して、自分の顔を見ました……。





















すると…………、




















そこにはなんと……………、




















いつもと変わらぬ自分の顔がありました。





















ココア「え?」








いえ、正確にはその顔は涙ぐんでいて、いつもより寂しく悲しげに見えました。それにしても、顔立ちは変わっていません。変身していないのです。





ココア「うそーーーーーーーーーー?!!」








ココアちゃんの恋 [act.5]


ココアちゃんは慌てて、婆様のお店まで走りました。
すると、『婆様のお店』は扉がきっちりと鍵をかけて閉められ、内側から分厚いカーテンがかけられていました。
カーテンのわずかな隙間から店内を覗くと、たくさん置いてあった魔法の品々が、綺麗さっぱり無くなっているのがわかりました。





ココア「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」





よく見ると、ドアのノブの所に小さな木の看板がかけてあり、『お店をたたみました。』と書かれていました。





ココア「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」





ココアちゃんはまた驚きました。











 ココアちゃんの家。

あれから、ココアちゃんは自分の家に帰り、自室のベッドの上に身を横たえていました。

ココア「はあ~~~~~~~。」

夕食も喉を通りませんでした。もう何も考えたくありません。

ココア「はあ~~~~~~~。」

ため息も止まりませんでした。

ココア「詐欺だわ。騙されていたんだわ。
あ~~~~~、苦労して貯めた10万ゴールドがぁーーーー!!
これじゃ、お金が無いからヤケ食いも出来ないわ!」

こうして、泣きながらココアちゃんは眠りに付きました。
その日、枕を濡らしたのは言うまでもありません。







 次の日、ココアちゃんの目の前で、また魔術師の男の子とミルクちゃんは手を繋いで帰りました。
男の子はココアちゃんの姿を見つけて、そちらの方に顔を向けました。
何か言いたそうでしたが……、ミルクちゃんがココアちゃんがいる事に気が付き、今度は男の子の腕をつかんでグイグイ引っ張って行きました。





ココア「くわーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」





ココアちゃんは怒ってポケットからコンパクトを取り出し、高くかかげました。そして、地面に叩きつけようとしました。




しかし……………、




思い止まりました。




ココア「(これをあのお店の婆様に突っ返さないと!そしてお金を返してもらわないと!)」







ココアちゃんの恋 [act.6]


 それからというもの、ココアちゃんは独自の調査であの婆様の行方を捜しました。
そして、ついに突き止めました。




『今、婆様はあの店から遠く離れた自分の家に住んでいる。』



という事を。








 ココアちゃんはコンパクトを握り締めて、その婆様宅を訪ねました。
ココアちゃんが訪ねて行った時、婆様は庭先にいました。
膝宛をかけて、ユラユラ揺れる椅子に座って日向ぼっこをしていました。そして眼鏡の奥からココアちゃんの姿を見つけて、

婆様 「あっ、いつぞやのお客さん?!」

と言いました。そこでココアちゃんは挨拶も抜きで喋り始めました。

ココア「お店はどうしたんですか?!行っても閉まっていたので、ずいぶん探しましたよ!逃げないでください!」

婆様 「”逃げる”?まあ、そんな風にも言う事ができるかのう。
でも、アタシはもう歳だから、あれでお店を引退したんじゃよ。
後は隠居してここで余生を送るのみじゃ。」

なんとなく、それが言い訳のように聞こえたココアちゃん。それで婆様に詰め寄りました。

ココア「あっ、あの!この商品、使えませんでした!!お金を返してください!」

ココアちゃんは”ズイッ!”と例のコンパクトを婆様の目の前に突き出しました。

婆様はびっくりしたような表情で、そのコンパクトを受け取りました。
そして、眼鏡の縁を指で動かしてピントを合わせ、よくそのコンパクトを見てみましたが………、

婆様 「別に壊れたりしていないようじゃが?」

ココア「でも、変身する事が出来ませんでした!」

婆様 「変身する時、半径10メートル以内に誰もいなかったかね?」

ココア「はい、いませんでした。確かです!」

そしてココアちゃんはこれまでの経緯を事細かに説明しました。

すると婆様はそのコンパクトを庭先の大きな石目掛けて投げ付けました。
石に当ってコンパクトの鏡は割れてしまいました。

ココア「なっ、なにするんですか?!!」

婆様 「いや、何、念のためじゃよ。変身が戻らないようにね。
と言っても、全然変わらんかったんじゃろ?
まあいい。
鏡を壊せば、これで”変身”は一生固定される。
まあでも、変わらなかったんだから、意味ないかも知れないが。」

ココア「でも、壊す事ないじゃないですか?!」

婆様 「いや、この品はこうするものじゃよ。
変身が完了したら、”間違って呪文を唱えて元に戻らないように”たいてい壊してしまうんじゃよ。」

ココア「? でも変身が……、」

婆様 「”できなかった”と言うんじゃろ?いや、たぶん変身は出来たさ。その相手の男の子が描いている理想の女性の姿にな」

ココア「???????」

婆様 「まあ、その男の子と良く話してみる事じゃよ。」

ココア「はあ?”話す”?何の事です?
いえ、そうじゃなくて、”変身”できなかったんだから……、お金返してください!!」

婆様は笑っていました。

そして、こう言いました。






婆様 「だから、変身はできたんじゃよ!
その男の子が理想とする女の子の姿に!
だからお金は返さない。

ただ、このコンパクトを使えば”必ず恋が実る”とまでは私は一度も言っとらんよ。

後は自分の力でやる事じゃな。
その方がいい結果を生むじゃろうて!」












THE END





まあ、ラブコメです。ラブコメww

あっ、そこ!石を投げない!石を…w

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