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BLUE ODYSSEY
人材紹介所
人材紹介所 [act.1]
まだドラゴンのヤツが大手を振って幅をきかせている時代のお話。
”カイ”は少年の剣士だった。
年齢は16歳。少々おっちょこちょいな所はあるが、腕の方は確かだった。でも、あくまで16歳としてだが……。彼はこの歳の少年としては落ち着きのある方だった。
彼はもうすぐ17になる。
そろそろ1人前の”勇者”の仲間入りがしたくてウズウズしている年頃だった。
そこで、はるばるこの街にある『人材紹介所』にやって来た。
ここはパーティーに必要な人材を紹介してくれる所。
カイが家族と住んでいた村はここからかなり離れた場所にあった。
人の足で3日歩かなくてはならない距離だった。
カイはこの歳になって、やっと初めて両親の許しを得てこの街にやって来たのだ。
自分のいた村は小さくて、そこでパーティーのパートナーを見つける事は出来なかった。
「このような人の往来の多い街の大きな紹介所に来れば、きっと探している人は見つかるだろう。」
そう思っていた。
ここの紹介所はかなり名の知れた所で、遠く離れた街から多くの人々がここに集まって来ていた。今では登録している人の人数はかなりの数にのぼった。
また登録者にはいろんな職業の人達がいた。
剣士・特殊な専門の剣士・鍵開け職人・魔術師(攻撃系)・
魔術師(回復魔法系)・アイテム鑑定士・魔法薬調合師・
拳法の使い手・アーチャー……。
ここには主に”ハンター”や”賞金稼ぎ”といった人達がやって来る。
自分の街が魔物に襲われて、仕方なくパーティーの人材を求めてやってくる者。
あるいはモンスターを退治して生計を立てている者。
そしてカイのように、”勇者”という職業に憧れてそれを目指す若者もやってくる。
その人達がここでパーティーを組むパートナーを探すのだ。
なぜなら剣士が一人切りでモンスターと戦うのは危険だからだ。傷を負ってその場で動けなくなればそれで終わりである。最低でももう1人の剣士か回復魔法を持つ魔術師が必要なのである。
カイが紹介所の中に入るとそこは賑わっていた。
さすがに名の知れた紹介所、ゴツイ体格の男達が何人も来ていた。
傷つき汚れた歴戦の鎧を着込み、筋肉ばかりの太い腕には戦闘の後の傷が何本も走っていた。
いかにも強そうな顔付きの男達ばかりである。
また、盗賊みたいな顔の男もいた。無精ひげを生やし、鷹のようにするどい眼光をしていた。
カイ 「(ああいう人達とはパーティーを組みたくないな)」
どうも、ここでは”剣士系の人が魔術師系の人を紹介してもらう”というパターンが多いそうだ。
なかなか剣士と魔術師が出会う機会はあまり無い様である。
剣士はたいてい酒場か訓練所にいるし、魔術師は図書館か自分の家に引きこもりがちだからだ。
でも、ここに来れば、運が良ければ強力なパートナーが見つかる。
カイは期待してここに入った。カイも魔術師みたいな人かもしくは魔術が使える剣士を探そうと思った。
人材紹介所 [act.2]
巻紙が束ねて大きなカゴの中に置かれている場所があった。
その巻紙1枚には登録者1名分の簡単な紹介文が書かれていた。
「雇われる側希望の人」の登録者達だ。
ここでその人物を「紹介」してもらい、人材紹介所に”紹介料”を支払う。
その人とパーティーを組む事が決まれば「成立」としてまたお金を紹介所に支払う。
そしてその後は、まあ、人によってさまざまだが、個人的にその雇い入れた人に「雇い料」を払うのが普通である。
巻紙は5つのカゴの中に入れられて分類して置かれていた。
それは紹介料ごとに分けられていて、”ランクが5段階ある”と言う意味だった。
一番高価な紹介料を取るカゴの中には、のきなみ強力な人材が揃っていた。
かつて大きなドラゴンを退治した剣士だとか、
悪魔を封印した事のある僧侶だとか。
すでに実績のある勇者達がそろっていた。
カイ 「(ドラゴンを倒せるのは相当経験を積んだ者でないとなかなか難しいというのに……。)」
それらの者を紹介してもらうにはかなりのお金が必要だった。
それに紹介してもらっても、彼らを雇うのは現実的には難しい。
自分にもそれなりの技量が無くてはならないし、第一”雇い料”さえ支払えない。
逆に一番安いランクのは、かなり現実的だった。
”成立料”も1月の稼ぎの10分の1程度ぐらいの金額で済んだ。
そして雇い料も安いのが普通だった。
カイはこの一番安いカゴの中から選ぼうと思った。
まず、紹介所の職員に「雇い主」として登録して、その登録料と利用料を払った。
これだけでもけっこうな出費だ。
そして一通り登録書類を書いて提出した。
それから、再びカゴの所へ戻って来た。
とにかくこの建物の中にいる人達は皆巻紙を見るのに必死だ。
ゴツイ男達の中にカイのような少年が1人いても誰も彼の事を気に留めない。
カイは人ごみを掻き分けて、巻紙をひとつ手に取ってみた。
その分厚い羊皮紙の巻き癖のある紙をほどくと……。
==================================
【数字はランクを示す。大きいほど能力が高い】
年齢16
分類 剣士・魔術師
手持ちの剣は細身のソード。
剣術の腕前 1
魔術
回復系 1
防御系 1
攻撃系 1
まやかし1
石化 1
探索系 1
鍵開け 1
スキル
識別・鑑定 1
魔法薬調合 1
==================================
カイは驚いた!
カイ 「すごい!これだけの種類の魔法が使える剣士なんてそうザラにはいない!
それに、魔法薬も調合できる!こいつはいい!
どうせ、自分の懐具合では1人を雇うのが精一杯だし……、この人なら、1人で2役ぐらいこなせるだろう。
あっ、でも魔法や技量のレベルは全部1か…。」
レベル1と言う事は初歩的な魔法しか使えない。
カイはしばらく考えたが、いったんその巻紙をカゴの中に戻した。
そして他の巻紙を探してみる事にした。
他にもっと良い人が見つかるかも知れないと思って……。
人材紹介所 [act.3]
なお、ここは
『1人につき、1度に1枚の巻紙しかカゴから取り出してはならない』
というルールがある。なぜなら他の大勢の人も人材を探しているので。
1人でたくさん巻紙を取られては他の人が見れない。
カイは一通り一番安いカゴの中を見たが……、いい人はいない。
あまり技量の高い人は見当たらなかった。
皆技量は低く、魔法が使えない剣士ばかりだった。
魔術師はいなかった。
次に「ちょっと高い」ランクのカゴの中を探したのだが……。ここも残念な事に”これ”という人はいなかった。
やはりここにも魔術師はいない。魔術師は需要が高いのだろう。
”鍵開け職人”なんてのもあるが、そんなのいらないし。
そこで、一番最初に引いた人の巻紙をもう一度見ようとしたのだが……、それはちょうど別の男が手に取って見ているところだった。
カイ 「(しまったあ!あれが一番良い人だったのに!)」
その男は頑丈そうな革鎧を着て、しかも腰に長い剣を挿していた。身長は1メートル90センチぐらい!
真剣な目でジッと巻紙を見ている。
カイ 「(うわあ、さっき、あの人に決めておけば良かったなあ!)」
さらに男性は顎に手を当てて何か考え込み始めた。どうやら巻紙に書かれた人物にそうとう興味があるらしい。
何せ魔法を使える者はあまりいない。いや、今はその巻紙の人しかいない。
もっとも、高いランクのカゴの中には居るのだろうが…………。
カイ 「(置いてくれ!その巻紙をカゴの中に戻すんだよ!アンタならもっと金が出せるだろう?!
俺にはその人しか雇えないんだ!この持ち金の少ない若者に、勇者への道を開かせてくれよ!)」
すると願いが通じたのか、男性は巻紙をカゴの中に戻した。
戻し終わるかどうかという時に、カイは素早くその巻紙を手に取った!
その男性から少しにらまれたが、とにかく巻紙を手に入れる事が出来た。
もしかすると、その男性もカイのように「いったんカゴの中に戻した」だけかも知れない。別のを見てからその人にしようと思っていたのかも知れない。
でもカイはすごくうれしくなって、紹介所のカウンターに行った。
そしてさっきの巻紙を差し出し、
カイ 「この人を紹介してください!」
と言った。
紹介所職員「わかりました。
まず紹介料として”300グロッグ”支払ってください。
ええと、この人は今この街にある”自分の家”にいますね。
まず最初は、”この建物内の部屋で会う”というのが決まりです。
そして、そこでお互いにパーティーとして契約が成立したら、その時に”成立料”として”1000グロッグ”を支払ってもらいます。」
カイ 「わかりました。ぜひ紹介をお願いします」
紹介所職員「あっ、でも申し訳ない。ここの面接室はいま予約で一杯なんです。4~5日待ってもらえますか?」
カイ 「そうですか………。」
紹介所職員「あっ、でも、成立料を先払いしてくれるなら、他の場所で自由に会ってもいいですよ。
なにせ”ここの建物内で会う”と言うのは、”成立したのに成立料を支払わない人”が多いからなんです。」
カイ 「でも、実際に会ってからでないと、ホントにその人とパーティーを組むかどうかわりませんが」
紹介所職員「それは心配ないです。”不成立”の場合はお金はお返しします。
ただし、不成立の場合、相手の方の巻紙はまたすぐにカゴの中に戻される決まりなっています。その方の登録の解除はすぐには出来ませんから。
そうしないと、これも不正を働く人がいるからなんですが、本当は”成立”したのに私どもには”不成立”に終わったと申告し、すぐに登録の解除を申し入れて”成立料”の支払いから逃れようとする人がいるのです。」
カイ 「……なるほど。
わかりました。では”成立料”を先払いします」
カイはなけなしのお金を支払った。
ここのところ出費続きで大変痛い。
しかしまあ、成立したらどうせ払わなくてはいけないのだ。
紹介所職員「では、明日、またここに来てください。相手の方には連絡を取っておきますから」
カイ「よろしくお願いします」
人材紹介所 [act.4]
カイは「やったー!」という感じで紹介所を出た。
なかなかこれと言った人が見つからず、中には長い間ここに通っている人もいると聞く。
それがこんなに早く見つかったのは幸運だった。
これで憧れの”勇者”への第一歩が開ける。
後は、その人が自分と気が合うかどうかが問題だが。
カイはこの街で部屋を借りた宿屋へ戻った。そしてベッドの中で寝た。
期待に胸を膨らませて。
翌朝、紹介所に行くと、「近くの食堂で落ち合うとの伝言がありました。」と聞かされ、その場所を教えてもらって、約束の食堂までやって来た。
中にあまり人はいなかった。朝食の時間は過ぎていたし、カイだって宿屋で朝食をすませてきた。
だから人の姿もまばら。これなら、落ち着いて話せそうである。
でも、他にも自分と同じように剣士の格好をした男性と魔術師のローブを着た男性がテーブルで話しているのを見かけた。
相手の技量が高くとも、気が合わなければそれまで。
まあ、雇い入れる時のお金がその溝を埋めてくれる場合もあるが………。
さりとて今のカイには低い金額しか払えない。
カイ 「(しかし相手は16歳。自分としてはそのぐらいの人が一番扱い安い年齢だ。
16歳以下でも登録している人はいるが、なかなか使いにくい部分もある。
また年上の人を雇っても見下される事もあると思う。
それにヒドイ場合は、冒険中に相手にお金を盗まれる事だってある………。
でもたとえ相手が同じ歳だとしても、気が合わなければいっしょに旅は出来ない。
生意気な人間や信用出来ない人間でない事を祈るばかりだ。
でも、今回の相手は魔法も一通りできる剣士。こんな人は滅多にいない。それに、この金額では普通なら雇えない。
その人が登録した時に、自分が偶然その人の巻紙を見つけたのだろう。でなければこんな幸運は来ない。だってその巻き紙でさえ、その時、すぐに別の人も見つけて読んだのだから。)」
そう考えたものの……、相手に高額の”雇い料”を請求される可能性も残されていた。
カイ 「(でもある程度の事は我慢しなくちゃ。こっちの希望ばかり述べていてもしかたがない。)」
人材紹介所 [act.5]
食堂に座って、木のコップの中のうまい井戸水を飲んで待っていた。
テーブルの上には目印代わりに紹介所から借りた巻紙を置いていた。
するとほどなくして、真新しい革鎧を身に着けた剣士が食堂へ入って来た。
わりと上等な値段の高い剣を腰にさげ、汚れや傷一つ無い新品とおぼしき鎧をきっちり着込んでいた。そしてその人はカイの姿と紹介所の巻紙を見つけると足早にテーブルにやって来た。
「こんにちは。カイさんですね。私は”シャミー”と言います。よろしくね。
わーーー、ホントに同い年なんですね!良かったー!」
女の子だった……。
カイ 「(げっ!)」
わりあい身長が低くて小さい。髪は70センチほどあって、束ねて後に伸ばしている。
健康的な体つきで、元気よさそう。
顔は……、少女そのままといった感じだ。
シャミー「わーーーー、良かったーーー!やさしそうな人で!
もっといかつい人が来たらどうしようかと思ってたんですーーー!」
カイは初対面なのにノリが良すぎる彼女にちょっと不満を覚えた。
カイ 「(……………………。
じゃ、登録すんなよ)」
シャミー「あそこに登録するの勇気がいりました。
でも、私も一人前の勇者になりたくて、思い切って登録したんです!
冒険って素敵ですよね!モンスターを退治しに行くような冒険を小さい時からずっと夢見てたんです!」
カイ 「(今でも充分”小さい”が……)」
シャミー「最初あそこに行った時、ゴツイ体格の人達ばかりなので、ちょっと不安でした。
そんな人に雇われたらやっていけるのかなーーーー?なんて。
でも、貴方みたいな方が雇ってくれてホントに良かった!」
カイ 「(まだ、正式には雇ってねーーーよ。)」
シャミー「私、まだまだ騙されやすい性格なんです。ホント、世間知らずで。
貴方みたいな信用できそうな人で良かったです!」
カイ 「(そりゃどうも。まだ一言も話してないのに信用してくれて!)」
シャミー「私は”シャミー”。あっ、それはさっき言いましたか!で、貴方のお名前は?」
カイ 「”カイ”だよ」
シャミー「まーーーーーーーーーーーー!”カイ”って言うんですか!
かっこいーーーーー名前ですねーーーー!!」
カイ 「…………………そりゃどうも。(普通ジャン!カイなんて名前どこにでもあるしさ!!)
とっ、ところで契約の話なんだど…………。」
シャミー「あっ、契約します!」
カイ 「へっ?」
シャミー「私、一目見て貴方の事が気に入りました。ぜひご一緒させてください!」
カイ 「(こっちに君を雇う気があるのかまだ聞いてないジャン!
それに雇い料の金額とかどうするんだよ?まだぜんぜん話して無いよ)」
カイはあまりに軽率な女の子に少々嫌気がさした。
ふと見ると、向こうのテーブルで、大声で怒鳴り合っている人達がいた。
それはさっきの剣士と魔術師で、どうも交渉していた話がまとまらなかった様だ。
カイはそれを見て、「(僕達の方はそこまで相性が合わない事はない)」と思った。
それで、彼女を雇いたいとは思った。
しかし、どのくらいの雇い料を払えば良いのかわからなかった。
カイ 「とりあえず君の技量を見てみたいんだけど…。
それから雇い料を決めて、紹介所の方で正式に”成立”した事を認める書類にサインするよ」
シャミー「やったーーーー!!良かったですーーーーーー!!
これが”勇者”への第一歩ですーーーーー!」
彼女はそう言って喜んでいた。
人材紹介所 [act.6]
彼女を連れて森の入り口付近に建つカイの宿泊している宿屋に向かった。
そこの建物の裏手には薪をたくさん置いている場所があり、ここの宿に泊まっている客は薪を自由に使っていい事になっていた。
そこに彼女を連れて行った。
切り株の上に、まだ細かく切られていない薪を1つ置いた。
カイ 「じゃあ、これを斬ってみて。その剣で」
シャミー「わかりました!」
彼女は剣を引き抜いた。その動作は少々ぎこちなく、その剣先がカイの鼻先をかすめた!
カイ 「危ない!」
シャミー「あっ、ごめんなさい!」
カイ 「(ふ~~~~~~~~~、危ない、危ない……。)
いいからやってみて」
シャミー「はい!」
彼女が引き抜いた剣はまっさらで刃の部分が鏡の様になって辺りの景色を映し込んでいた。
シャミーは力一杯剣を振り下ろした。しかし、なんとなく弱々しい。
スコン!
”剣を振り下ろした”というより、ただ”剣の重みに任せて下ろした”と言う感じ。
見事シャミーの剣は……、
薪の上部に頼りなく突き刺さった。
本来は一振りで真っ二つにしなければならない……………………。
カイ 「……………………。」
シャミー「当った!当った!」
カイ 「(当ったじゃねえよ!斬るんだよ!斬るの!)
……………あのねえ、これは薪なんだから、2つに切らないとね」
シャミー「あーーーーーー。でも大丈夫です。もう一回すれば斬れますから」
カイ 「ホント?」
シャミー「ええ」
カイ 「じゃっ、やってみて」
シャミーは薪に刺さった剣を抜こうとした。
シャミー「えい!」
また剣先が横にいたカイをかすめた。それでカイは彼女から少し離れた位置に立った。
シャミーはまた剣を振り下ろした。
シャミー「えーーーーーーーーい!」
ズコ!
また剣先が薪に突き刺さった。
カイ 「……………………。」
シャミー「1回では無理のようですね。だいぶ硬い木です」
そう言って剣を薪から引き抜き始めた。しかし抜けないので、足を薪に添えてから剣をやっと引き抜いた。その拍子に後に倒れそうになった。
カイ 「……………………。」
カイは自分の剣を抜いた。それは訓練で使い込まれた剣であったが、手入れがよく行き届いていて、刃の部分はシャミーと同じ鏡面の輝きを見せていた。それを握りしめて、軽く薪に振り下ろした。
スパッ!
薪は綺麗に二つに割れた。
パチパチパチパチパチ……。
シャミーは手を叩いた。
シャミー「わーーーーー!すごい!見事です!」
カイは思わず、額に手を当てて両目を覆った。
人材紹介所 [act.7]
それから魔法の技量も見せてもらう事にした。
大きな石の上に薪を置いて、攻撃魔法をかけてもらった。
一瞬炎のような火が、薪の上部の空間に現れたが…………、
すぐに消えた。
シャミー「どうです!火が出ましたよ!」
カイ 「……………………。
あのねえ、薪に火を点けるんだよ!」
シャミー「やってるんですけど……、なかなか」
そこでカイは指をパチッと鳴らして、魔法で薪に火を点けた。
パチパチパチパチパチ……。
シャミー「わーーーーー!すごい!魔法出来るんですね!!!」
カイ 「いや、これは護身用さ。これぐらいしか出来ないけどね。
でもまあ、これは初歩レベルの魔法だからね……………。あっ、今のイヤミを言ったわけじゃないよ。」
しかし、その後彼女は何度と無く薪を相手に魔法をかけたが……、
ついに薪に火が点く事はなかった。
さらに彼女に話を聞くと……、魔法薬の調合の方もまだ勉強中であり、今までは初歩の魔法薬しか調合した事がないそうである。
カイ 「……………………。」
さすがにシャミーは「あーーーー、失望しましたか?やっぱりーーーーーーー。
じゃあ、雇い料は安くていいですから」と言った。
でもカイにはすっかり彼女を雇う気が無くなっていた。
カイ 「あのねえ、悪いんだけどさあ。君やっぱり無理じゃないのかなあーーー?
ちょっと技量の方がさーーーー。」
シャミー「でも!決意はあるんです!りっぱな勇者になるって!私、りっぱな勇者になってこの街…、いいえ、この国を魔物の手から守りたいんです!!」
カイ 「(それは……、けっこうなご決意です……………………。)
でもねえ、その技量が…………。」
それを聞いて、シャミーは急に悲しそうな顔をした。
シャミー「せっかく良い人と巡り会えたと思ったのに……。
そうですか。やっぱり私ではダメですか。」
カイ 「今の君では危険すぎると思うんだ。まだ冒険に出ないほうが…………。」
シャミー「いいです!もういいです!
”成立”しなかった事にしてください!
私は別の人とパーティーを組みますから!」
カイ 「そう……………。残念だ。
でも君のためだよ。いや、僕のためでもあるし……。
とにかく紹介所にいっしょに行かないか?
そこに”不成立”だって報告しなきゃ」
そしてカイはシャミーを連れて紹介所まで歩いた。
悲しそうな表情で歩くシャミー。視線はずっと下の方を向いている。
さっきまではすごく元気で健康的な女の子だったのに……、
今はまるで別人のように暗く沈んでいた。
何も喋らずに歩く2人。
人材紹介所 [act.8]
シャミーを連れて紹介所に行くと、その建物の周辺にたむろしていた男達が皆シャミーの方を見た。
この美しく真新しい鎧に身を包んだ少女が珍しいのだろうか?
それともここにいる全員が男だからであろうか。なにかニヤニヤしながらシャミーを見ていた。
しかし、シャミーを見た後は、カイの方に視線を移し、突き刺さるような眼光を向けた。
カイはその視線を振り払いつつ、紹介所のカウンターまでやって来た。
すぐ横のカウンターに肘を着いている男がまだカイの方をにらんでいた。
カイはカウンターの向こうの紹介所職員に言った。
「すみません。こちらで紹介された人と会って話をしたんですが……、
あのーーーー、そのーーーーー、今回は”不成立”と……………………。」
すると横にいた男が目の色を変えて話に割り込んできた。瞳がギラギラした異様な光を放っていた。
男 「”不成立”?!!ならこの俺がその子を雇うぜ!金はたんまり払う!よし、俺と契約だ!」
すると紹介所の職員は実に落ち着いた口調でこう言った。
「まだ”不成立”は成立しておりません。席にかけてお待ちください。
この方に”不成立”の書類にサインをしてもらわないと。」
男 「そんなもんいいじゃねえか!俺はその女が気に入ったんだよ!早くよこせ!」
紹介所職員「お待ちください。ここでは”順番”は絶対なのです。」
男 「くそーーーーー!おい、お前!早く”不成立”の書類にサインしやがれ!」
カイ 「……………………。」
男 「てめえにゃ、まだ女は早えよ!俺によこしな!」
それを聞いてカイは怒った。そして考えを変えた。
カイ 「あのーーーーーー”不成立”じゃないんです。”成立”です。
成立の方の書類にサインします!」
それを聞いて男は怒り立った!
男 「いま”不成立”と言ったじゃないか?!なんだよ!!!」
カイ 「いえ、”不成立とならなかった”と言うつもりだったのです。」
男 「なんだよ!それは!!!!」
うるさい男がいるので職員はすぐに”成立”の書類を用意してくれた。
カイはその書類にサッとサインした。
シャミーもうれしそうにそこに自分のサインを書きくわえた。
紹介所職員「これで貴方のパーティーは”成立”しました。後は貴方がたの判断で動いてください」
男 「ききしょーーーーー!!!」
男はじだんだを踏んだ。でもすぐに顔を上げて直接シャミーに話しかけた。
男 「なあ、俺のところに来いよ。こいつの倍は金を払うぜ!」
すると紹介所職員はその男に注意した。
「ここに登録された方は、ここ以外での部外取引をいっさい禁じております。全てここを通してください。
さもないと、ここや他の紹介所からも永久に除名されますよ」
カイは男に向かって言った。
カイ 「今、僕は他の人を雇い入れる気はないし、彼女を手放すつもりもありません!」
男 「くそーーーーーー!!覚えてやがれ!」
それだけ言って、男は怒ってその場から立ち去った。
そうしてカイとシャミーは建物の外に出た。
天気は良かった。
シャミーは笑顔である。すごくウキウキしてカイに話しかけた。
「こうなると思ってましたよーー!!
私、こう見えてもけっこう人を見る目あるんです!
良かったですーーー!ごいっしょ出来て!
最初見た時から、”この人とパーティーを組む事になるって”感じてたんですよーーーーーー!!」
カイ 「……………………。」
その明るい元気な声を聞いて、紹介所の周りの男達がいっせいに2人の方を見た。
そしてカイをうらやましそうな目で見てから、突き刺すような視線をまた送った。
ある者の目は、隙あらば獲物を狙おうとする盗人かオオカミの目に似ていた。
カイはこう思った。
カイ 「(他の人がどうも羨望の眼差しを向けているみたいだ……。
すると彼女も何かの”役に立つ”という事だろうか?
そう、きっとそうだよ!
今は嫌だけど、その内彼女の喋り方にも慣れてくるだろうし…………。
はぁ~~~~~~~~~~~~。」
でもやっぱりタメ息が止まらないカイだった。
シャミー「ドラゴンですよ!まずは2人でドラゴンを退治しに行きましょう!」
THE END
この話の続きはあるのですが、長いのでここでいったん終了と…………。
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