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BLUE ODYSSEY
第3話 消えたアンナ act.31~40
スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.31]
それだけ言うと、男性はクルリとアンナに背を向けて歩き始めた。あまりにも唐突でぶっきら棒な態度。
アンナはその男性の背中を追いかけて、後を付いて行った。
後など付けたくは無いが、約束は守ってもらわなくてはならない。
だが男性はもうアンナには興味が無いといった感じで、ただひたすら前へ歩き続けた。
それからもかなりの道のりを歩いた。
男性の歩幅は一定。妙に規則正しい。それにいくら歩いてもまったく疲れて来ないようだ。
アンナはこの男性の変わりように不信を抱いた。
やがてこの男性は勝手にいろいろな道筋を歩いた。それには何の規則性も目的も無さそうだった。
ついにアンナはこの男性の歩みを静止するような形でその前方へ回りこんだ。
すると……、
そこにあった男性の顔は……、
別人になっており、ロボットのように無表情だった。
アンナ「これは……?」
NPCだった。
あの男性がオンライン状態からログアウトしたという事だろうか?
そのキャラは凡庸のNPCに変わっていた。
無表情で冷たいアンドロイドのような顔。
アンナは呆然とした。
アンナ「(約束は守られなかった……。)」
しかし………、
周りを見ると………………、
近くにあのニュータウンがあった。
そう、真新しいあの白いニュータウンが。
委員長「アンナ!どこ?!応答して!」
委員長は[バーチャルリアリティーシステム]の外からインカムを使ってカプセル内のアンナに呼びかけた。
クリス・委員長・豪・神田の4人は、姿の見えなくなったアンナを心配して基地内を探していたのだ。
そしてアンナの携帯が矢樹の研究室に置かれている事を付きとめ、ここにやって来た。そして、矢樹にアンナの事を聞いたのだ。
委員長はシステムの外からアンナの座標を確認し、彼女に呼びかけた。
アンナは没入してからは擬似の携帯電話を持っている。それを使ってバーチャルシティー内のアンナと通話が出来る筈だった……。
だが、アンナは携帯に出なかった。
まもなく、皆はアンナの反応を見失う。
委員長「矢樹博士!アンナと交信できません!」
神田 「おい、どうなっているんや?!アンナちゃんの位置もわからなくなったで!」
追跡の座標の表示が消えており、アンナの所在が分からなくなった。
矢樹はすぐにアンナの座標を走査し始めた。
その頃アンナはニュータウンの中に入り、一路自分の”家”を目指して幅の広い階段をかけ上がっていた。
アンナ「はぁはぁ……。」
そして例の頂上のあの場所へとたどり着いた。
そこに3階建ての建物があった。
いやおう無しにアンナの期待が高まる。
その建物の向こう側。目指した場所には……、
やはり空き地があった。
アンナ「こんな事って……。これが私の”家”?!」
そこはがらんとしていた。乾いた土があり、雑草が所々に生えているだけだった。
アンナ「これはいったい……?」
スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.32]
アンナの追跡表示は消えたままだった。
それによりアンナがバーチャルシティーのどこにいるのかわからなくなった。
矢樹はカプセルを開ける事を決めた。
矢樹「心配ない。何らかのトラブルで回線が遮断されただけだろう。
アンナはこの中にいる。」
矢樹は非常用のコードを入力してロックを外し、外からカプセルを開けた。
しかし、カプセルの中には人の姿は無く、アンナは消失していた。
配線やコネクター、チューブだけがむなしくベッドの上に残っていた。
矢樹 「これは?」
矢樹は思わず目を見開いた。クリス達も驚いていた。
クリス「僕らの来る前にアンナはここから出たんですか?」
矢樹 「いいや、それはありえない。
カプセルのロックは今外された事になってる。その前にアンナが出た形跡は無い。」
委員長「じゃあ、アンナはどうなったんですか?!」
矢樹は直ちにシステムのログを調べた。
アンナのデータはある所から途切れていた。
ログアウトした形跡は無い。
しかし、擬似世界からいなくなった事になっていた。
クリス「やはりカプセルから出たという事ですか?僕らが目の前にいたのに?!」
矢樹 「こんな事になるなんて予想していなかった。」
委員長「アンナは死んだんですか?」
矢樹 「まだ何も判断する材料が無い。これは予想外の出来事だ。」
神田 「なんとかせんかいな!アンタのせいや!」
矢後 「もともとこの筐体には没入先のバーチャルシティーからの神経的な影響を受けるシステムになっていた。
バーチャルシティー内での感覚が全て実際の感覚として反映される。
つまり、バーチャルシティーで殺されかけると、それが少なからず”本体”にも影響する。」
神田 「なんやて?!」
矢樹 「だが、普段は安全装置が働いている為に、そのような危険な事態になる前に回線がシャットダウンされる。
つまり本体に影響が出る前に回線が切れるのだ。思考は守られる。」
神田 「で?」
矢樹 「普通なら本体はそこで眠りから覚める。
夢から覚めるようにな。
それだけだ。本体が消えるという事はない。」
豪 「じゃあ?!これはいったい!」
矢樹 「アンナはバーチャルシティーで何をしていた?何をするために潜った?」
神田 「なんやて?それも聞かずにアンナにマシンを貸したのかいな?」
矢樹 「”自分の家を探す”とは聞いている。」
クリス 「もしかすると………、アンナはバーチャルシティーでまた正体不明の人物と会っていたのかも………。」
矢樹 「正体不明の人物?誰だ?」
クリスはアンナから聞いた話を矢樹に伝えた。あのレイドと同じ感覚を放つ男の事を。
クリス「相手は名乗りませんでした。それに正体も明かしませんでした。」
矢樹はカプセルに入ってからのアンナの会話記録を調べた。
バーチャルシティー内でアンナが喋った会話のログが出て来た。
スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.33]
============================================================
男性「退屈過ぎると人類は生きて行けない。敵を作り、戦わなくては生きて行けない。」
アンナ「それがレイド?!」
男性「フッ!だが、私はレイドとは明言していない。」
アンナ「じゃあ、その敵と言うのは?」
男性「今、その質問に答えるわけにはいかない。」
============================================================
豪 「……………………。」
============================================================
アンナ「……………………。じゃあ、質問を代えるわ。貴方はいったい誰?」
男性「私の正体?勝手に想像すればいいさ。
私の正体など、君は本当は興味ない筈だ。
君が興味あるのは[マギ クリス]。彼だけだ。」
============================================================
委員長「……………………。」
会話を聞いて矢樹の目の虹彩が怪しく輝き始めた。
異常な興奮状態に入りつつある証拠だ。研究者としての興味に火が点いたのだ。
矢樹があのオペレーションルームで見せるようなマッドサイエンティスト的な口調と表情に変わった。
矢樹 「面白い!その男レイドか?!」
神田 「なにが面白いや?!アンナちゃんを早よう助けんかい?!」
矢樹 「おそらくアンナは………、”向こうの世界”に行ったのだ。」
矢樹が奇妙な事を口走った。
豪 「”向こうの世界”?」
矢樹 「くくく…、トップシークレットに触れる事になるが……、話してやる。
だが絶対に他言してはならんぞ。」
矢樹はそれだけ言うと話し始めた。
実はクリスや委員長やスポルティーファイブのメンバーは入隊する時に、山のような書類の束にサインさせられた。
それは秘密厳守の誓約の為の書類だった。あの信用されてない感じはなんとも言えない。
それに引きかえ矢樹は……、あっさりトップシークレットについてクリスらに話してくれると言う。クリスはノアボックスよりも矢樹の方が自分達を認めてくれているという事を知った。
矢樹 「この世界はいつわりの世界かも知れない。そう”擬似の世界”だ。バーチャルリアリティーシステムの中の都市と同じくバーチャルな世界だ。」
神田 「この世界って?この今の現実の事?」
神田は思わず床を指差して見せた。
矢樹 「そうだ。今、この瞬間我々のいる世界の事だ。」
矢樹は落ち着いた口調で喋った。それはまさに科学者の目で、知的な印象を受けた。
さっき一瞬見せたいつものイヤミがかった口調はどこにいったのだろう?
皆は矢樹の違う一面を見た気がした。
矢樹 「レイドの事が世間一般に知られるようになった頃、それを追って調査している内に我々は[この世界]の別な一面を見つけた。
それはまるで作られた法則があるかのような世界だった。」
委員長「作られた法則って……?」
矢樹 「君たちが良く知っているゲームやバーチャルシティーのように、ある法則に従って作られた世界、つまりプログラムで出来たような世界の事だ。」
委員長「それって、ホントに”この世界”の事を言ってるんですよね?」
思わず委員長も神田を真似て床を指差した。
矢樹 「素粒子やニュートリノ等、この世界に存在する物には確かに一定の法則はある。
それはともすれば誰かによって創られたかのように思える時がある。
今まで科学者達はそこに”神”という存在を当てて、彼が作ったものだと信じる事にしていた。
しかし、レイドがこの世界に訪れるようになってからは、レイド自身がごく微量ながらこの世界の法則を曲げている事が分かった。
レイドの持つ兵器にしてもそうだ。それらは、光の法則や重力の法則を少しばかり無視していた。
さらに彼らは別の次元からこちらの世界に出現して来る事もわかった。」
クリス「別の次元?」
スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.34]
矢樹 「ザークの軌跡を追跡すると、ある地点から突然反応が現れる。消える時も同じだ。
そして、ザークが消える瞬間、少しだけ向こうの世界が覗ける時がある。
それはあたかも、ザークが”この世界を仕切るカーテン”をくぐる時に、そのカーテンの端が少しだけひるがえったような感じだ。」
豪 「向こうの世界が垣間見える???!」
矢樹 「そうだ。ホンのわずかな時間だけ、別の次元の反応が計器上に現れる。」
クリス「……………。」
矢樹「また向こうはこちらとは時間軸も少し違うようだ。
まだはっきりした事は何もわからないが……。
それに、向こうの世界の方が”本物”かも知れない。
我々が住んでいるこの世界の方が”擬似”であるのかも知れん。」
クリス「我々のいる世界の方が擬似?」
矢樹 「君達もアンナが潜ったバーチャルリアリティーシステムを体験すれば、少しはそれを信じるようになるだろう。精巧に再現された擬似空間に長く居ると、そこが本物だか擬似世界だか見分けがつかなくなるのだ。」
クリス「そこに慣れてしまうという事ですか?」
矢樹 「そうだ。人間は周りの環境に適応する。そして、慣れてしまう。
擬似の世界に長くいると、本物がどんな物だったか忘れてしまう。
つまり人類はこの世界に長く居過ぎた為、ここが擬似だった事も忘れている……、
との仮説も成り立つ。」
クリス「……。」
矢樹「それにアンナが消えたのは、[アンナの本体]はもともと”こちらの世界にいた”のでは無く、実は”向こうの世界”に存在していて、その接続が一時的に途切れたという事かも知れない。
いや、アンナだけでなく、我々人類はコンピューターゲームのキャラクターのように、”向こうの世界”にいる者の操作が反映されたに形態に過ぎないのかも知れ無い。」
神田 「そんな事って……。
するとなんですか?俺はキャラクターで、この世界の人間じゃないっての?誰かが俺を操作しているって???!」
矢樹 「”向こうの世界”にいる人間がログアウトすれば………、我々の姿は消えるのかも知れない。」
委員長「そんな……。」
豪 「その話はどこまで確かなんですか?」
矢樹 「確証をつかむにはいたっていない。”向こうの世界”はまだ誰も行った事が無いからな。」
クリス 「今回初めてアンナが行ったんですね?」
矢樹 「そうだ。
もし、向こうにアンナの本体がいるなら、ネットに繋ぎ直せばこちら側のアンナは再生されるかも知れない。もちろんそれは仮説に過ぎないが。
案外、向こうの世界に吸い込まれたアンナを運良く見つけられて、彼女を連れて帰るだけで済む事かも知れない。
そうなれば、我々は擬似のキャラクターではなく、”確かな存在”と言える可能性が高くなる。」
クリス「………。」
委員長「………。」
豪 「……。」
神田 「……。」
突拍子も無い話に皆驚いていた。
スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.35]
クリス「とにかく向こうに行きたいんです。行く方法は無いんですか?」
矢樹 「向こうがどんな世界か正確にはわからない。
我々が本当に単なるプログラムに過ぎないのなら…、向こうの世界へ渡ったら、そこで再生されるかどうかわからない。」
豪 「再生?」
矢樹 「我々はこの[現実]という世界で常に[再生]されている。だから”目に見えている”。
だが、向こうに行っても必ず再生されるとは限らない。そんな保証はどこにも無い。
我々はデータに過ぎないかも知れないからだ。」
豪 「俺達が単なるデータ?」
クリス「でも、それは確証じゃないんですよね?我々がデータに過ぎないという事は。
それならとにかく向こうへ行きたいんです。何か行く方法は無いんですか?」
矢樹 「1つだけある。」
クリス「どんな方法です?それは?」
矢樹 「向こうに行けるマシンがある。それに乗ればいい。
向こうの世界ではそのマシン自体がコンピューターとなり、そのマシンが存在しうる限り君達は向こうで再生され続けるだろう。理論上はだが………。」
神田 「さすがノアボックス。もうそんなマシンを開発しとったなんて!」
委員長「………。」
豪 「……。」
クリス「わかりました。そのマシンに乗せてください!」
矢樹「危険だ。まだそのマシンは”向こうへ行く”テストもして無いのだ。」
クリス「構いません。アンナの事には代えられない。」
矢樹 「………いいだろう。」
矢樹は話を瞬時に理解してくれたようだ。
矢樹はオペレーションルームでは時としてクリス達を物のように扱う。だが、今日は「アンナの為」という意味を事を言っただけで理解してくれたようだ。
彼は普段、作戦の優先順位として人を物扱いしていただけのようだ。冷たい人間に見えたが、本当は人間個々の気持ちを分かってくれるような感じがあった。矢樹という人物は実に奥深い。
矢樹は研究室の大パネルのモニターのスイッチを押した。
そこに”向こうへ行くマシン”が映し出される筈であった。
だが、そこに映ったのはスポルティーファイブの機体だった。
神田 「なんや、これは……?」
クリス「スポルティーファイブが?!」
矢樹 「そうだ。唯一向こうの世界へ行けるマシン。それがスポルティーファイブの機体なのだ。」
スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.36]
矢樹とクリス・委員長・神田・豪はレッドノアのオペレーションルームに上がった。
郷田指令もそこに呼ばれた。
郷田指令「なんだって?!向こうの世界に行かせるだと?!」
郷田指令は酷く驚いていた。そして硬い表情になった。そこには不安とクリス達を心配する気持ちが入り乱れていた。
矢樹 「ああ。」
郷田指令「彼らにトップシークレットについて話したのか?」
矢樹 「しかたあるまい。神津アンナが消えたんだ。悠長な事は言ってられない!」
郷田指令「しかし……。」
クリス「郷田指令、アンナを助けに行かせてください!」
郷田指令「……まだ誰も”向こう”に行った事が無い。
ザークの消滅時にそのような数値が現れる現象があっただけで、”それ”が存在するかどうかも確かな事ではない。それは単なる数値データの誤差に過ぎない可能性がある。
”向こうの世界が存在する”という事自体が間違いかも知れん。」
クリス「でも……。」
郷田指令「スポルティーファイブはすでに実戦投入されたとは言え、まだ個々の性能については”運用テスト段階”にあるのだ。
徐々に複雑な項目のテストに移る予定だった。向こうの世界に行くにはスポルティーファイブが他の全テストをクリアした後に実施する予定だった。」
クリス「しかし、今行かなくてはアンナが!」
ナターシャ「危険だわ。何が起きるかわからないのよ。向こうの世界についてはまだよく分かってない事が多いの。」
郷田指令「矢樹博士、アンナの消えた位置は正確にわかるのか?」
矢樹 「おおよその座標しかわからない。単に反応が消えた時の座標の記録が残っているだけだ。そこからアンナが移動した可能性もある。
後は現地に行って探すしかない。」
郷田指令「なんだって?現地で……?
危険だ!
向こうに長くいる事には賛成できない。」
矢樹 「それなら、わざわざ向こうへ行かなくとも……、
アンナの本体が向こうで再びネットに繋がれば、こちらの世界でのアンナは再生されるかも知れない。」
郷田指令「本当か?」
矢樹 「確証はまったく無い。それにこちらはただ待つ事しかできないからな。」
クリス「なら、やはり行かせてください!」
郷田指令「もう少し様子を見よう。日を置くのだ。アンナが戻って来るも知れない。」
神田 「なんやて?!アンナちゃんを見捨てると言うんかいな?!」
郷田指令「行くだけでも危険なのだ。向こうまでたどり着ける保証がない。
未完成の技術だ。そうだろ?矢樹博士。」
矢樹 「そうだな……。その通りだ。3日ほど待つのもいいかも知れない。」
クリス「何ですって?!すぐに救出に向かわなければアンナが危険ではないですか?」
矢樹 「もう諦めて置け!」
クリス「え?!」
矢樹 「向こうの世界に行ってしまった以上、それは死んだもの同じだ。
こちらから行って二重遭難する必要はない。」
神田 「なんやて?」
矢樹 「それよりも、こちらの世界で出来る限りアンナの軌跡をだどろう。
どのみち、それが済まなければ向こうに行っても効果的な捜索が出来ないからな。」
クリス「”軌跡”とは?」
矢樹 「アンナ自体はどこにいるかわからない。だが探してた”家”の順路なら見つける事が出来るかも知れない。アンナは”向こうの世界”でもその”家”を探している可能性が高い。」
神田 「なるほど!アンナちゃんが家を探そうとしていた気持ちには並々ならぬ物があったからな。」
委員長「あの謎の男性についてはどうかしら?アンナは”家”の他に、その男性も探してないかしら?そう言えばアンナは夢の中であの男性に会ったと言ってたわ。」
クリス「確かにアンナは現実の世界でその男性と会い、さらに夢の中でもあったらしい。また[タイムトリップ2100 エクストラ]のソフトの中でもその男性と会った。
この事はすぐには信じがたい話ではあるんだけど……。」
矢樹 「現実に出会った人物を夢で見るというのは理解できる。記憶に入った物が夢で再現されたに過ぎない。
それに[タイムトリップ2100]というソフトは、現実の世界を自動でそのままデータ化したストラクチャーを使っているのだ。
現実にいた人物がモデルとなってデータ化されていたとしても不思議ではない。
だが、一応その線からたどろう。今はそこからしか調べる物が無いからな。」
スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.37]
郷田指令がスポルティーファイブの発進を許可しなかったため、4人のメンバーは矢樹について行くしかなかった。
特例処置としてアンナの部屋が開けられ、そこに置いてあったパソコンにキーカードが差し込まれた。するとアンナがプレイした[タイムトリップ2100]の記録の中にその男性の物と思われるログが見つかった。
そのログをたどると…、男の記録が映像として再現された。
だが、それはなぜか小さくてドットが粗く、どんな顔をしているかも判別できなかった。
委員長「誰かしら?」
矢樹 「さあな。」
矢樹は今度はノアボックス内の[バーチャルルーム]へ行き、そこからログを元にたどり始めた。
幸い基地内の施設なのでこれを利用する者は少なく、アンナが潜ったログはほぼ完全に残っていた。そこからアンナの軌跡はすぐにたどれた。
そしてやはりさっきと同じ男の記録が見つかった。
だがここでも、小さくてドットが粗くどんな顔をしているか判別できなかった。
再び、矢樹の研究室に戻る。
クリス「アンナが探していた”家”はわかりますか?」
矢樹 「いや、たどれんね。プログラムが壊れている。A12223からB13まで処理がスキップされている。」
クリス「では、最後にアンナがたどり着いた座標は?」
矢樹 「X 20000047 Y 200000025 Z 245886366 タイムテーブル 2074/6/8だ。」
クリス「まず、そこへ行きましょう。」
これはつまり、アンナが自分の”家”に行こうとして、”ここまでは歩けたポイント”だった。その先は記憶が途切れて進めなくなったのだ。
大型スクリーンにその地点の映像が映し出された。
そこはまったくなにげない風景だった。
矢樹 「これより先のプログラムは壊れている。
そしてその部分の処理は飛ばされ、代わりに壊れたデータを補うプログラムが入れられ、凡庸の地形データが挿入されている。その為、見た目には空間は繋がっているように見える。
その飛ばされた処理の中にこそ、アンナが目指そうとしていた本当の座標がある筈だ。
飛ばされたプログラムはかつては存在していたが、アンナが行った時にはすでにこのように壊されていた。」
クリス「プログラムが壊された?」
矢樹 「そうだ。どこからどこまでが壊されたプログラムなのかは正確にはわからない。
処理のスキップはおおざっぱにされているからな。
空間が正常になっている所を全て検索してその場所をマーキングするプログラムを作る。
それで正常部分を全て埋めてみる。そこに引っかからなかった地点こそ、破壊されたプログラムがいる場所だ。」
スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.38]
矢樹はさっそくプログラムを作った。
既存のプログラムに改良を加えた簡単な物だ。
そして[タイムトリップ2100]の中でそのプログラムを走らせた。
矢樹 「検索したら、1024箇所の不正なプログラムが見つかった。」
委員長「そんなに?!」
矢樹 「いや、これでも絞った数字だ。わずかなバグらしき物まで加えると40000箇所以上になる。」
クリス「……………………。それでも1024箇所ですか。」
矢樹 「ああ、だがそこから私が一つ一つ見て怪しそうでない箇所は除外した。
これにより112ポイントまでに絞った。」
クリス「112ポイント。」
矢樹 「しかも一応優先順位をつけておいた。一番怪しそうな場所から回るといい。」
クリス「そうですか!ではスポルティーファイブでさっそく”向こうの世界”のその座標に行きます。」
矢樹 「それは待て。」
クリス「え?」
矢樹 「まずは今の現実世界でその座標の地点に行け。
その方がいい。そこに何が存在しているか確かめてからにしろ」
神田 「そんな悠長な事言ってられへんで!アンナちゃんが!」
矢樹 「急がすに、まずはその座標を調べろ。
向こうの世界では長居する事は出来ないのだ。
私はさらに情報を絞ってアンナが向かった場所の特定を試みる。」
クリス「わかりました………。」
クリス達は優先順位が一番高い地点に向かった。その場所はアンナといっしょに向かったあの街にあった。
メンバーはノアボックスが用意してくれたスポルティーファイブ専用車に便乗していた。
これはコンピューターが運転を補助するので、クリスの年齢でも運転できた。
クリスがハンドルを握って、その場所を目指した。
程なくして、その場所に着いた。
そこはアンナと一緒に捜索した付近から少し離れた場所に位置していた。
小さな山に囲まれ、周囲から遮断されたような地形をしていた。
そこは廃墟のニュータウンだった。もう使われなくなって長い時間が経過したようだ。
地面にはさまざまな種類の雑草が不ぞろいに生えていた。
かつては整っていただろう並木も、奇妙に折れ曲がりさながら生物のように見えた。
よく見ると建物に亀裂が入っている箇所も多くあり、そこにつる草が絡んでいた。
雨水の配管は詰まり、その周囲は雨水で変色していた。
16年でこうなるとはとても思えなかった。もっと長い年月放置されたかのようだった。
車から下りるクリス達。
クリス「これはどういう事だ?」
神田 「100年ぐらい経過したみたいな有様やな。」
クリス「とにかく、アンナが目指した場所はこのニュータウンの奥にある。そこに行ってみよう。」
スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.39]
階段状の広い中央の通路を皆で駆け上がった。
すると3階建ての建物の影に隠れるように存在している例の場所に着いた。
その場所は空き地だったが、建物が建てられた跡が残っていた。地面に穴のような物があったのだ。委員長はその穴に手の平を差し伸べた。
委員長「……感じるわ。何か特別な物を。きっと以前はここに重要な建物が建っていたんだわ。」
クリス「そうか……。」
クリスも手を差し伸べてみる。
クリス「僕もアンナの波動を少し感じる。でも、僕にはそれ以上わからない。」
神田 「以前ここには何が建っとったんやろ?」
クリス達は矢樹の元に帰った。
クリス 「この座標で間違いありません。ここに以前建っていた建物が怪しいと思います。
ただ、そう感じただけで具体的な確証はありませんでしたが。」
矢樹 「こちらで調べたのだが、その土地に建物を建築したという施工記録は残っていなかった。」
クリス「記録が無い……?」
矢樹 「よし、ここへ向かうのだ。向こうの世界の!」
矢樹は自信があるような気迫で言い放った。
クリス「はい。」
神田 「よっしゃーーーーーーーーーーーーー!いよいよ出発かあ!向こうの世界へ!」
その場で矢樹は大きなスクリーンを前にして簡単な説明を始めた。
矢樹 「”向こう”に君達が行く事に成功しても、こちらからの通信が届くかどうかは分からない。」
豪 「オペレーションルームと通信出来ないという事ですか?」
矢樹 「出来ないと思ってくれ。
それに、我々ノアボックスの専用回線以外は使ってはならない。
向こうの世界の通信帯で通信してはならない。
向こうの世界に干渉する事はしない方がいいだろう。現段階ではな。
だが、非常事態に陥ればこの限りではない。
そこは自分達で判断しろ。」
クリス「……。」
スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.40]
矢樹 「こちらからのサポートはまったく見込めない。
だが、1つ救いがある。向こうの世界でもこの世界と同じような地図が使えるのでは無いかと思われる事だ。
向こうも同じ地球だ。
我々の今いる世界は多分”理想の世界”の方だと思う。そして向こうが”現実”。
おそらく、その様子はこちらとはうって変わった物だろう。
だが、地形そのものはあまり変わってないかも知れ無い。」
クリス「向こうが”理想の世界”で、こちらが”現実”というのはどういう意味です?」
矢樹 「ここは”人類の理想が現実化した世界”である可能性が高い。平和でクリーンで、困り事のあまり無い世界だ。
困り事があってもそれは我々の目を誤魔化すためのダミーに過ぎない。
さすがに全ての困り事が無くなると不審に思う者が出て来るだろうからな。
まあ、それは向こうに行けばよくわかるだろう。」
委員長「はあ?」
矢樹 「アンナの軌跡をたどった座標を入力しておいたから、”向こう”でそれをたどれ。」
クリス「はい。」
矢樹 「”向こう”からの帰り方だが……、スポルティーファイブのコンピューターにそれに必要な計算式を入れて置いた。
後は現地の情報を入力して計算を行う必要がある。
複雑な計算だ。いろんな情報を間違いなく入力しなくてはならない。ミスは命取りになる。
アンナなら間違いなく出来るだろう。
通信さえ上手く行けばこちらからサポートはできるのだが…。
私がマニュアルを入れて置いたからそれをアンナに読ませて、後は任せるしかない。」
クリス「わかりました。」
クリス達メンバーはスポルティーファイブ各機に分乗した。
今日はいつもと違いレッドノアのフロントベイは閉まったままだった。
代わりに何か大きな物体が先の方の甲板に競り出して来た。
それはかなりの重量があるのかゆっくりとせり上がった。
全体が金属版で覆われており、冷たい光沢が鈍く光っていた。
神田 「なんや?これは?」
それは大きな箱状の物体で、こちら側に向けた面だけネオンの光を放つような虹彩が薄く輝き始めていた。それはパソコンのスクリーンセーバーみたいに色が微妙に変化していた。
じっと、見つめていると眠たくなりそうである。
矢樹 「これが向こうの世界へのゲートだ。」
クリス「これが?」
矢樹 「ここに飛び込め。ただしある程度の速度が無くては入りにくい。
速力を通常の発進時と同じだけ上げなくてはならない。」
神田 「本当に通れるんやろな?!失敗したら壁に激突してペシャンコやで!」
矢樹 「嘘は言いたくないのではっきり言おう。
その通りだ。失敗すれば機体はゲートに激突し大破する。」
クリス「成功の確率は?テスト機は無いのですか?」
矢樹 「まず、オートで神津機を飛ばせ。それが失敗したら作戦中止だ。」
クリス「わかりました。」
矢樹 「よし、ナターシャ。神津機スタンバイ!消化作業班も待機させろ!」
ナターシャ「わかりました。オートパイロットで神津機を発進させます。消化作業班、待機してください。」
矢樹 「よし、発進させろ!」
ナターシャ「発進!カタパルトGO!」
滑るように無人の神津機が滑って行く。
そして壁に接触!
それを見ていた委員長は思わず両手で顔を覆った。
だが………、
爆発は怒らず、機体はそのまま壁に吸い込まれて行った。
まるで夢を見ているかのようだった。
矢樹 「成功だ!」
郷田指令「よし!」
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