このセッション、私の知る限りでは最もバップっぽいチェット作品である。"Chet Baker in Nwe York"とか"Chet & Crew"あたりも熱い演奏ではあるが、逞しさという点でマラソン・セッションの方が一枚上である。ジョージ・コールマンとの2管でも(それほど)吹き負けていないし、知らずに聴いたらチェットかどうか悩むほど元気の良い演奏なのである。当時のチェットは、愛用していたトランペットを盗まれ、知り合いからもらった(拝借した?)セルマーのフリューゲルホーンを吹いていたらしい。このフリューゲルがいい具合に音程のゴマカシが効いていて、チェットにはピッタリ(?)の音色なのである。ヴォーカルの曲が1曲もなく「バップ命」なこの作品、チェットのファンには評判良くないかもしれないが、バップファンにはガツンと来る作品となった。サイドマンの好サポートもあって、聴きどころ満載である。
1曲目"Go-Go"は「ご挨拶代わりに一発」といった感じの曲。コールマンのソロから始まるため、全体的な作品のイメージが黒人系バップとなっているのかもしれない。 2曲目"Lament For The Living"はタッド・ダメロンの曲。ダメロン自身の演奏は聴いたことがなく、allmusicでもチェットの演奏しか出てこないこの曲、ひょっとしてチェットのためにダメロンが書き下ろした曲なのだろうか?ダメロンにしては珍しく深刻な曲である。カーク・ライトシーの伴奏が泣ける(ダメロンより良い)。 3曲目"Pot Luck"はミディアムテンポの曲。箸休めのような曲にもかかわらず、コールマンのソロはお見事で、ライトシーの伴奏とハーマン・ライトのウォーキング・ベースが心地よい。チェットのフリューゲルはようやく50年代のチェットを髣髴とさせるようになるが、それでも以前よりは遥かに逞しい演奏。 4曲目"Bud's Blues"では、コールマンのタイトなソロから始まる。コールマンのソロを聴いていると、チェットのリーダーセッションであることをすっかり忘れてしまいそうになる。その後に出てくるチェットのソロも悪くはないのだが、やや見劣りするのは仕方ないだろう。 5曲目"Romas"もダメロンの曲だが、中身はブルース。この曲でもコールマンのソロは見事であるが、それ以上にチェットが頑張っている。 6曲目もダメロンの曲で"On A Misty Night"。曲だけで泣けてしまうほどのいい曲。コールマンのソロはキレがあって、やっぱり良い。チェットはサビのコード進行をごまかし過ぎ。(仕方ないよねー、チェットは半音進行苦手なんだから。)