読書日記blog

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2006.06.22
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カテゴリ: ノンフィクション


文春文庫

関東大震災新装版

最近『日本沈没』の映画がリメイクされ、今年の夏は自然災害への関心が高まることが予測される。私もこの前『日本沈没』を読んだが、この『関東大震災』の方が、実話ゆえに恐ろしかった。

地震やそれに伴なう火災等の描写は、活字で読んでいるのに生々しく目に浮かぶ気がするほど克明。被服廠跡での大旋風と荷物の燃焼による大火災や、浅草区吉原公園で娼婦たちが池に飛び込んで次々と溺死するシーンなど、想像を絶する凄まじい光景である。

しかし本当の悲劇は、震災後の人心の錯乱だろう。流言飛語が飛び交い、朝鮮人襲来説を信じて暴徒と化した自警団が、無実の朝鮮人や日本人に暴行を加え虐殺。混乱に乗じて、大杉栄ら社会主義者も殺害される。
平時には善良だった市民らが、混乱と恐怖から常軌を逸した行動をとってしまった。もし当時、私が混乱の真っ只中にいたならば、暴行には加わらないだろうが、嬉々として虚言を方々に言いふらしていたかもしれない。騒擾を好む傾向は多かれ少なかれ誰しも持っているだろう。
しかし、混乱の中でこそ平常心と、冷静さが求められる。阪神大震災では、状況が違ったとはいえ、疑心暗鬼と暴力ではなく、思いやりと助け合いの光景があちらこちらで展開された。
天災を回避することは不可能だろうが、その天災から人災に進むことを食い止めることは出来る。関東大震災の悲劇を繰り返さぬよう、過去の失敗に学びたい。





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Last updated  2006.06.23 01:40:10
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