読書日記blog

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2006.08.12
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カテゴリ: 教養・実用


文春新書

戦争を知らない人のための靖国問題

戦犯問題や東京裁判、サンフランシスコ平和条約の観点から靖国問題を読み解く。

本書の冒頭に「戦争も、戦時下の緊張も、靖国神社なるものが戦時下で果たした役割も、まったく知らない人が圧倒的多数を閉めているときに、参拝を続けたほうがいいか、悪いかと問い掛けることにどれほどの意味があるというのか」という一節がある。知らないなら黙っていろと言っているのではない。事実を知った上で判断しなければいけないという意味だ。

靖国問題にはさまざまな論点があるが、最大の問題点は、靖国神社をめぐる中国・韓国の姿勢だろう。私は国際法に疎いので本書を読むまで知らなかったのだが、サンフランシスコ平和条約に署名も批准もしていない中国・韓国には、戦犯問題に関するいかなる権利も権限も利益も与えられていない。
どんな内容でも、大きな声で何度も繰り返されると正当性があるように思えてくるのは、靖国問題にもいえるようである。事実や国際法を知らずに、また学ぼうともせずに、雰囲気だけで靖国問題を論じる無責任な日本人が多いことは恐ろしいことである。

私の周りにも「そうは言っても、実際に中国・韓国が批判してくるのだから仕方がない。分祀するなり、政治家の参拝を止めるなりすれば問題は解決する」と主張する人もいる。当時の事実や国際法よりも、今の現実を見て判断すればそうなるということなのだろう。
しかし、私は反論したい。「分祀すれば満足しますか?参拝を止めればそれで解決しますか?」靖国問題のみで見れば、中国・韓国の言いなりになれば、国内的にはさておき、外交上の問題は「解決」したことになるのかもしれない。しかし、そのことで日中、日韓の友情が実現する、もしくは近づくと考えるのは早計だ。靖国問題は数ある対日外交カードの一つに過ぎず、他にも教科書問題や領土問題などたくさんのカードがある。こっちが一歩退いても、向こうはさらに付け込んできて別のカードを突きつけてくるだけだ。最近、中国で発売された「江沢民文選」によると、中国の江沢民・前国家主席が1998年に、在外大使ら外交当局者を一堂に集めた会議の席上で「日本に対しては歴史問題を永遠に言い続けなければならない」との指示を出したそうだ。歴史カードで対日圧力をかけ続けるという方針はいまの胡錦濤政権にも継承されていることからも、靖国問題での妥協による日中の歩み寄りなど幻想に過ぎないことがわかるだろう。

もちろん、中国や韓国との友好はとても大切だ。しかし友好は日本の妥協によって手に入れることができるものではない。時間がかかることを覚悟の上で、相互理解を目指す必要があるのではないだろうか。安易な事なかれ主義でもなく、感情による偏向でもなく、ただ真実を説明することがいま求められていることだろう。小泉総理も靖国神社に行く際には、なぜ参拝するのかを国内外にもっとアピールするべきだろう。
日本も、中国も、韓国も平和を求めていながら緊張が高まるとは、お互いにとって実に不幸なことだ。日本人の中には、中国・韓国が平和を望んでいないと考える人が増えてきている。
本書の筆者である上坂冬子さんは、胡錦濤主席・盧武鉉大統領への声明書案を次の言葉で締めくくっている。





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Last updated  2006.08.12 17:44:04
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