ボロ邸生活日記

ボロ邸生活日記

2080-07


 椙山の機体に、山本機からレーザー通信が入る。
 音声と共にディスプレイに表示された映像には、通りを索敵しつつ進むファントムの姿が確認できた。
 「俺達と同じ戦術なのか、それとも囮か」
 「わからんが……この場合は先制攻撃するべきだと思うが」
 「そうだな」
 敵の数がわかっている以上、先に機体を撃破出来ればこちらに圧倒的に有利な状況が生まれる。
 つまり、この状況では囮を使用する事は決していい作戦とは言えないのだ。
 椙山はレーザー通信の照準を背後の鈴木機に切り替えると、指示を発した。
 「単独行動中の敵機発見。山本が攻撃をかける。俺と鈴木は援護する」
 「了解!幸先がいいねぇ」
 通信が終わると、鈴木機はクロウラーでこちらに移動を開始した。
 「よし、行くぞ」
 山本機のモーターの回転数が上がる。
 「気を付けろよ」
 「わかってるって」
 クロウラーが唸りを上げ、山本機のデュラハンはファントムの側面に飛び出した。
 デュラハンの肩に設置されたATGMがファントムに向かって発射される。
 山本機からは、こちらに気づいたファントムが移動しようとするのを確認できた。
 「気づいてからじゃ遅いよ!」
 そう言って、ニヤリと笑みを浮かべる。
 しかし、予想に反する事が起こった。
 「……何!?」
 ミサイルが発射されてから動き出したはずのファントムは、爆発的な加速力によってそれを避けて見せたのだ。
 「まずい、山本!囲まれるぞ!」
 椙山がそう言った直後、残りの二機のファントムが山本機を囲むようにして現れた。
 「やべ、突破する!引き続き援護頼む」
 そう言って山本は、30mmガトリングガンで牽制しながら側面の路地へと入って行った。
 「そっちに行っちゃ援護もなにもないだろうに」
 鈴木がそう漏らしたが、その通信は届いてはいないだろう。
 「……予定が狂ったが、仕方が無い。現状なら二対二だ。なんとかするしかないな」
 そう言いながら椙山は自機を建造物の裏に移動させた。
 直後、いままで居た場所にファントム二機からの銃弾が浴びせられる。
 「全く、想像以上に出来がいい新人だな!」
 鈴木がそう言いながら、腰部のショットランサーを展開する。
 「だが、負けるわけにはいかないさ。……行くぞ」
 そうして彼らが走り出すとほぼ同時に、市街の向こう側で爆発が起こるのが見えた。



 「さすがセンパイ、カンタンに近づかせてはくれないかぁ」
 山本機を追っていたフォウは、その牽制の弾幕のために接近できないでいた。
 「なら、これを使おうかな」
 そう言うと、フォウはディスプレイの横からキーボードを取り出し、何かを入力し始めた。
 「よし、発射!」
 フォウが武器管制装置のボタンを押すと、デュラハンの肩に備え付けられた多目的ミサイルポッドから二発のミサイルが発射された。
 「さて、これでなんとかなるかな?」



 「なんだ?」
 山本は後方カメラの映像に、上空に向かってミサイルを発射するファントムの姿を見た。
 その狙いは、この機体から大きく外れており、まともな攻撃には見えない。
 ミサイルはデュラハンを飛び越えると、数百メートル前方に落下した。
 「あ、……やられた!」
 ファントムの追跡をかわしながら道を曲がると、そこは先ほどのミサイルで崩れた建造物で埋まっていた。
 「軌道プログラム式ミサイルか……」
 本来、それはプログラムを組み込む余裕のある固定式ランチャーに搭載されるものである。
 (それを、さっきの銃撃戦中にやったってか)
 それも、フェリスの能力というものなのか。
 停止せざるを得なくなった山本機の後ろに、ファントムが迫る。
 「まだ、終わってないぜ!」
 山本はありったけの弾丸をファントムに発射する。
 しかし、回避と同時にフォウの機体が放った銃弾が山本機の胴体を確実に捉えていた。
 ――ゲームオーバー。
 ディスプレイに表示された「被撃墜」の文字を見て、山本は苦笑しながら頭を掻いていた。

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