ココロの森

ココロの森

2008.04.09
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昨日の記事 (『競伊勢物語』)の続きです。

今回の上演パンフレットのインタビュー記事の中で
今春、朝日賞を受賞された文楽技芸員・竹本住大夫さんは次のように語っていらっしゃいます。

 - * - * - * - * - * -

(『競伊勢物語』の)作品そのものは、一級品やのうて二番手ぐらいやと思いますが、
それだけに勉強になりまんなあ。
完成度の高い演目は演者を助けてくれますけど、
二番手を上演する時は、よっぽど自分が勉強せんと、お客さんに理解してもらえまへん。


 - * - * - * - * - * -



『競伊勢物語』が二番手ならば、続く 『勧進帳』 は間違いなく一級品でしょう。

<あらすじ> 『勧進帳』

兄・源頼朝から追われる身となった弟の 源義経
武蔵坊弁慶 ほか数人の従者をしたがえて、山伏の姿に身をやつし、
奥州・藤原氏を頼って落ち延びる途中、加賀の国の関所で止められる。
我々は東大寺大仏殿建立を勧進するものとして義経らは関所を通ろうするが
山伏はひとりも通すなとのおふれが出ており関は通れない。
そこへ関守である 富樫介正広 (とがしのすけまさひろ)が登場し
本当でれば勧進帳を持っているはず、読み上げよ、と弁慶にせまる。
弁慶は白紙の巻き物をさもそのものであるかのように朗々と読み上げる。
それでもなおも怪しむ富樫は、自身が多少仏教に通じていることから
山伏の修験法や秘密の法、なぜ僧であるのに脇差しを指しているのか、等を弁慶に問い詰める。
それに少しもひるむことなく、よどみなく応える弁慶に感じ入った富樫は通行を許可する。
ほっとしたのもつかの間、強力(ごうりき・荷物持ち)に扮した義経が
顔が似ているとして役人に呼び止められる。
弁慶は「疑われるのはお前のせいだ」と、主君である義経を 杖で滅多打ち!
なおも 撲殺しよう とする弁慶に、
富樫らは疑いは晴れたと止めに入り、ようやく一行は関を抜ける。

抜群の機転に感心する従者らに、弁慶が主君を打った悔いを吐露しているところへ
先の富樫らが追いつき(!)先ほどの詫びにと弁慶に酒を勧める。
弁慶は喜んで受け、延年の舞を舞う。



関所を留守にしていいのか、富樫! とか
山伏が優雅に舞を舞っていいのか? とかいう突っ込みどころもあるが
個人的には、弁慶が妙に山伏について詳しいことに感心。



「シテ篠懸の因縁は」
「これぞ九会曼荼羅(くえまんだら)を表す」
「黒き脚絆は」
「胎蔵界の黒色なり」
「八つ目の草鞋は」
「八葉の蓮花を踏むに象る」
「シテ山伏のいでたちは」
「すなわちその身を不動明王の尊容に象るなり」
「出る入る息は」
「阿吽(あうん)の二字」
                (床本より)


富樫と弁慶の掛け合いが絶妙。

九字の真言 が法華経からとったものだということも初めて知った。
今まで知らずに 「九字切り」 などということばを使っていた事よ(滝汗)



それにしても、この演目はなんと言うか、もう完璧に弁慶の独り舞台、
まるで『歌舞伎』でした。
普段はあまり動かない人形の表情がめまぐるしく動き、表情で演技するかんじ。
それだけ、人形(弁慶)が主役ということ。

普通、人形さんは
主遣い(頭と右手担当)さんだけが顔を出し、
あとのふたり(左手さんと足遣いさん)は黒子として顔を隠しているのですが
3人ともばっちり顔見せ!
桐竹勘十郎さん ♪)
床には
三味線さん7人、大夫さん9人 がずらりとならんで壮観!!!
演奏も大迫力なら、人形もすごい!

最初の弁慶と富樫のやりとりのところは、

それがラストの舞の場面では、もう、ほんとうに人が舞うように人形が舞うのです!!
これがすごい!!!
めっちゃくちゃすごい!!!
右に左に扇をもちかえ、見えを切り、地団駄を踏み、
上手(かみて)から下手(しもて)へ、下手から上手へと走り回り
三味線の演奏と相まって大迫力!!!
あまりの激しい舞い踊りに、若い足遣いさんが全くついていけてません(笑)
『足10年』といわれる文楽世界のようですが、おそらく10年近くになるであろう
若手の中でも割合年上の、『兄さん』格であろう人でもそんな風ですから
その激しさは相当なもの。
でも勘十郎さんは涼しげな表情。
ぴしっと背筋も腕ものびていて、表情ひとつ変わらず。

あまりのかっこよさに私、 惚れてしまいそう でした(ぽ)





先のインタビューで竹本住大夫さんはこのようにも語っていらっしゃいます。

- * - * - * - * - * -

文楽は教養番組やのうて娯楽番組でんねん。
とにかく肩の凝らんようにしたいものです。
ああしんど、はよ帰って楽になりたいわ、とお客さんに思わせたらあきまへんなあ。
いかにも浄瑠璃語ってまっせ、というのやのうて、浄瑠璃を語らんと語ってる様、
客席に自然にとけこんでいくような浄瑠璃が理想でんな。

- * - * - * - * - * -




元々庶民の娯楽であった文楽や歌舞伎。

それが時が経つにつれ、作品中の言い回しや登場人物の思考/価値観のの古くささに
だんだんと客の足が遠のき、
(不思議と少し前のもののほうが、うんと昔のものよりも古くさく感じるものだ)
いつの間にか、お手軽で「カッコいい」とされる西洋文化の
ライブやミュージカルなどにとって代わられてしまった。
自分も今までそうだったので、それを批判はできないけれど
こんなにもおもしろいもの、
しかも2等席ならたったの¥2300で観られるものを観ずにおくのは
ほんとうに、ほんとうにもったいない事だと思う。
下手なドラマなんか観るよりも、文楽はダイナミックで、洒落も効いていて
設定もある意味めちゃくちゃで、すごくおもしろいものなのだ。

何故か、日本人は西洋の文化を変に崇拝する傾向にある。
同じ古典芸能なのに
オペラやバレエだと「カッコいい」「オシャレ」と言われ
歌舞伎や能だと、同じ言葉を言われても、その裏に
『一風変わったひと』『通ぶった人』といった皮肉な意味が込められてしまう気がする。

オペラだってバレエだって、大抵の人は
外国語で上演されるものは、台詞や設定がわかりづらいから
大抵パンフレットなどで予めあらすじをアタマに入れておくだろう。
それは現代人では理解しにくい古い言葉で上演される歌舞伎や文楽だって同じだ。
オペラやバレエは外国の文化が下地にあり、わかりづらいけれど
歌舞伎や文楽が日本の文化であるぶん、ずっと馴染むしわかりやすい。
上演前の十数分、ちょっと予習するだけで、
正確な言葉はわからずとも、そのニュアンスや
大夫三味線の迫力だけで十分伝わって来るものがある。





小さな人形が演じているのに
人間が演じるよりダイナミックで楽しい文楽。
素晴らしい。

これから益々、のめり込んで行きそうな予感です♪






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最終更新日  2008.04.09 22:06:20
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