ココロの森

ココロの森

2009.01.20
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生と死、ターミナルケア、看取りに真正面から挑んだ衝撃作!
「死」を捉えようとする田口に突きつけられた父の看取りという現実。
これは偶然なのか。
生、死、ターミナルケア、意識、
エリザベス・キューブラー・ロスの真意に迫る衝撃作!

【内容情報】(「BOOK」データベースより)

生涯を「死と死に逝くこと」の研究に捧げたエリザベス・キューブラー・ロス。
ロスが残した「蝶」の謎を追い、田口はポーランドの強制収容所跡へと向かう。
生と死をめぐるシンクロニシティのなかで、
看取りという現実に直面しながらロスを追い求め、捉まえた「死」と「意識」とは。







読後、しばし呆然。

紹介文の中に二度も書かれた 「衝撃作!」 の文字は伊達ではなかった。


とにかく、すごい。
なんというか、すごい。


これではまるで小学生の感想文みたいだけれど
もう「すごい」としか言いようがない。



私はランディさんの著作が好きで、全部読んでいるし
ブログも更新のたびに目を通している。


半年後の昨年のはじめにお亡くなりになったことも、ブログで読んで知っていたし、
今までに書かれたエッセイやご自身の体験を基にした小説などで、
お父様のアルコール依存や家庭内暴力で心身ともに疲れ果てたこと、
大人になっても昔年の怒りが消えなかったことも知っていたつもりでいた。

でも、今までの著書で散々語られていたこれらのことが
いざ「看取り」となると、今までの視点全く違ってくる。

まずそこに驚いた。

今までのランディさんのエッセイは
いい意味でも悪い意味でもどこか独善的であり、
そこが魅力でもあったのだけれど
このエッセイ、、、もとい、ノンフィクションは違う。

奔走し、悩み、疲れ果てる自分を眺めるもう一人の自分、
のような視点で書かれている。
今までのような、先へ先へと突っ走ってしまう主観が殆ど見られない。

これは、エッセイとノンフィクションの違いなのだろうか。
それとも「看取り」という大波を超えた境地なのか。






本書はまず、エリザベス・キューブラー・ロスというアメリカの精神科医が残した
「蝶の謎」を追ってポーランドに行くことから始まる。
ロスは、ターミナルケアという医療施設の必要性を最初に説いた医師であり、
「死後の五段階」 という論文を発表して一躍時の人となったが、
「死は、人生の最終ステージではなく、次のステージへの扉であり、
 さなぎから蝶が羽化するように、人は死んでもその形がかわるだけ」

と霊的な思想を確信するようになってからは、学会や医師会から排除される。
そんなロスが若い頃にポーランドの収容所で見たという
「壁にかかれた蝶」を探すためにランディさんは渡欧したのだが
驚くべきことに、収容所の壁に蝶は存在しなかった。
あれだけ強くインスパイアされたと公言していたものが嘘だったというのか?

腑に落ちぬまま帰国すると、ランディさんの父が骨折で入院しており、
その検査の過程で末期癌が見つかり、余命半年と宣告される。
アルコール依存と、骨折と、鎮静剤の投与から発症した認知症。
そんな3つの病をかかえた厄介な老人の受け入れ先はどこにもない。
ランディさんは中断せざるを得なくなったロスの一件を思いながら
『偶然は、すべて必然』 という言葉を思う。

終盤は、看取り終えてから
あらためてロスの人生や考え、蝶の意味を問い直しているのだけれど
なんといっても、この終盤のロスの心理分析に感嘆した。
もちろん、ランディさんの仮説が正しいとは限らないけれど
なるほど、そういう見方もあるのかと、眼から鱗が何枚も落ちた。




* - * - * - *


無償の愛や、死後について語る人は、普通の人間に平安を与えはしない。
本気で無償の愛を生きようとしたら、私たち凡人には苦しいのだ。
そんな偉大なことはとてもじゃないができない。
無償の愛など与えていたら生活できないし、身が持たない。
だから、正義を語る人間は、実は私たちの心に平安ではなく
重たい石を投げ込んでいるのだ。


 - - - - - - -


社会は人がバラバラでは都合が悪いことがたくさんある、
全体でまとまっていてほしい、それが暗黙の社会のプレッシャーだ。
私のやり方、私のスタイルを貫こうとすれば、
学校では問題児、親とは衝突し、組織では上司といざこざを起こし、友達とは喧嘩する。

人はみな違う。すべての人とうまくやることはできない。

その葛藤の中にこそ人生の学びがある。
そのことを、ロスは繰り返し繰り返し、私たちに教えようとしている。
でも、そんなこと誰が聞きたいだろうか。
真実なんて、知ったら苦しいだけだ。
皆が耳を塞ぐから、彼女はTシャツにプリントしたんだろう。

私は大丈夫でない。あなたも大丈夫でない。
 だからそれで大丈夫。





                 ( 本書より抜粋 )

* - * - * - *



他にも、ランディさんのお父様が『退院』するとき
ホスピスの正面玄関からおくられて
ランディさんの10才になる娘さんがボロボロ涙をこぼす話や、
ロスの著書の引用など、
興味深くて抜き出したい箇所がたくさんあったけれど、
上記に引用した241ページ以降は、本当に読んでいて感慨深かった。




 それは受け入れ難い父親を受け入れようと努力すること。
 それに尽きる。
 自分に侵入して来る強烈な個性にたじろがず、飲み込まれず、
 どうやって相手と共存するか。(中略)
 自分に危害を加えて来る理解不能な相手を、
 親として認め、恨まないこと、憎まないこと。



と本書中、序盤で語ったランディさん。


そのレッスンは、合格点を遥かに超えて、クリアされていた。













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最終更新日  2009.01.21 00:12:28
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