Precious Precious

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アロマテラピーと化学



 高校生の化学に対するイメージアップをはかるという、わたしの初任者研修「課題研究」の一環で、研究授業を行いました。柑橘類という1つの素材に注目して酸の復習、電池作り、そしてエッセンシャルオイルの抽出など、いくつかの実験ができることで普段と違うようでありながら、実は化学の復習や予習になっていることを伝えました。ここでは、高校の化学実験でもできるエッセンシャルオイルの取り出し方をご紹介します。 


---- 実験プリント ----


【実験の目的】柑橘類(オレンジ・レモン・グレープフルーツなど)の果物を用いて「蒸留」を行い、エッセンシャルオイル(精油)を取り出す。このオイルが化学に大きく関わっていることを学ぶ。

【材料・道具】 柑橘類の果皮(自分が選んだ柑橘類は=      )←オレンジ、グレープフルーツ、温州みかん、いよかん、メロゴールドの中から好きな物を選んで記入する。
 200ml三角フラスコ ガラス管付きゴム栓 ゴム管 300mlビーカー はさみ ガスバーナー 三脚 金網 試験管(3~4本) 沸騰石 純水

【方法】
(1)果皮を剥き、はさみで5mm角に刻む。内側の白い部分は極力削ぐこと。200ml三角フラスコに、果皮(オレンジで1個分)を入れ、純水100mlと沸騰石2、3粒を入れる。

オレンジ1989.jpg  グレープフルーツ2011.jpg

(2)下の写真のように装置を組み立てる。ビーカーには水道水をいれておき、穏やかな炎で加熱する。
2005.jpg


(3)フラスコ内で沸騰が始まると、ガラス管から液体が出てくるので、1mlくらいたまったら別の試験管に取り替え、同じようにして3本に分けて取る。様子を見て濡らしたティッシュでガラス管を冷やす。
2025.jpg
2003.jpg


 ※ 火を止める前に必ずガラス管を試験管から抜くこと!!!
 ※ ガラス管と試験管の口は熱いので、十分注意すること。

【確認】
(1)この操作方法を何といいますか?《蒸留》
(2)試験管にとった水に、油(これがリモネン)が浮いていることを確認しよう。
(3)それぞれの試験管の香りを嗅いでみよう。だんだん後の試験管になるにつれ、香りは変化するだろうか?《だんだん苦みを帯びてくる。》

2047.jpg



【参考】 精油の作り方  ~精油は植物から取り出した天然の素材で、揮発性(=気体になりやすい)の芳香物質です。植物の特性によってさまざまな方法があるが、ここでは4つの方法を紹介します。~

(1)直接蒸留法 今回行った方法。

(2)水蒸気蒸留法 植物だけを(つまり水を入れずに)蒸して、香りのエッセンスを含んだ蒸気を大量に集め、冷却して液体にする。これをためておくと、精油は水より軽いので上部に浮かんでくる。大部分の植物にこの方法が用いられる。

(3)圧搾法 本来、柑橘類の精油はこの方法で取り出される。果皮の色のついた部分を機械で搾り、低温で回収する。ただし、加熱しないので変質しやすい。

(4)有機溶剤法 ジエチルエーテルやヘキサンなどの有機溶剤に精油を溶かし出す。有機溶剤は揮発しやすいので、純粋な精油が得られる。ただし、有機溶剤は毒性が強いので、最近では液体の二酸化炭素が主に使われている。(直接蒸留法と同様の装置でできる。ただし、ガスバーナーではなく電気のクッキングヒーターなどで慎重に加熱し、そばに濡れた雑巾などを置いておく。(生徒には見本でやって見せました)


---- さらに配布した資料プリント ----

アロマテラピーについて

アロマテラピーとは、AROMA=芳香・香り、THERAPY=治療法 という二つのラテン語の組み合わせでできた言葉で「芳香療法」を意味します。
精油(エッセンシャルオイルともいう。)を利用して、心身をリラックス・リフレッシュさせたり、健康を維持させることを目的としています。用途に応じて数百種類もの精油が使われています。


精油の正体は、炭素C、水素H、酸素Oがさまざまな組み合わせで結合した、有機化合物です。ある植物から取り出された精油は独自の成分を持っています。このため、精油ごとに独特の香り、効果が生まれるのです。 今回、柑橘系果物の果皮から取り出した精油には、共通して リモネン というオレンジ香の原因物質が含まれています。


《リモネンの効果》
リモネンは、空気中の酸素O 2 と一緒に肺にたどりつく。

肺の粘膜を通過し、血液に吸収される。

血液に入ったリモネンが、全身を通って臓器に働きかける。

血行促進効果・リラックス効果⇒食欲増進作用・解熱鎮静作用・安眠作用


??はじめから果物を食べたほうが、リモネンを摂取できるのでは??


食べる  ⇒ 肝臓で分解される    →血液に入るのはわずか10%。
嗅 ぐ  ⇒ 肺の粘膜から吸収される →ほとんど100%が血液に入る。

ただし、アロマテラピーに用いられる天然のオレンジオイルには、リモネンが90%、ほかに190種類もの香気成分が含まれています。現在では環境へのやさしさと洗浄効果の高さから、洗剤やシャンプーなどにも添加されています。




 実験、プリント記入(感想)、片付けが終わったら、果実を食べてもよい!ってことにしてスムーズな作業をすすめました。

この実験のためにアロマテラピーの「精油化学」の部分だけを少しだけ齧りましたが、長い歴史をもち、ヒトの心身と精油がからみあうアロマテラピー、本格的に勉強したいと思っています。


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