わんこでちゅ

4 ヤマダくんとのくされ縁












聖夜の奇跡が解決しないうちに、話はあらぬ方向へと展開してまいります。

ない!!!いつも誰かしら患者(古い年代の先生は患畜というが、おれはつかいたくない)がいて、ばたばたするのに、今日に限って患者どころか電話の一本もない。忙しければ気にもならないが、こう暇だと昨日のカーク君のその後が気になって仕方ない。いったいどうなったんだ。たとえ事態に変わりがなくとも、おれがこれだけ心配しているんだ。電話の一本もよこしてくれればいいじゃないか。それとも今暇なんだから、こちらからかけてみるか。おれは意を決して電話に手をのばした。

「うわぁ~、ヤマダせ~んせい。今日は暇だから、彼女に電話ですかぁ~!?ぐふぅふぅ~」

はぁ~あ、みかちゃんは、あいも変わらずタイミング悪いというか、聞いてほしくないことを聞いてくる。

「そういえば、せ~んせいの彼女、ここ最近電話かけてきませんねぇ。」

「別れたよっ!!!」

電話をかける気力も失せ、おれは力なく手をおろした。

「え~、なんでぇ?」

「カーク君のせいだよっ!」

「はぁ!?なんでカーク君のせいで彼女と別れるんですか。せ~んせい、ふられて格好悪いからって、変な言い訳しちゃだめだよう。」

なんだ、そのえらそうな口の利き方は、、、。おれは久々に怒りというものを覚えた。

「事実なの、うそじゃなくて、カーク君のせいなの。」

「あはは、な~んでまた、、、。でも事実ならカーク君って、うちの病院とくされ縁というか、本当あの子と色々ありますよね~。んでんで、どんな事実なんですか?」

こうなったらもうみかちゃんはとめられない。みかちゃんは目をぎらぎらさせて、椅子に座るおれの顔をのぞきこむように、かがみこんできた。いくら暇だからといったって、カルテの整理、細かいところの掃除いくらでもやることがあるだろうが、、。

「だからくされ縁だけに、くさってたの、、。」

「はぁ?せ~んせい、それじゃ答えになってないよう。」

仕方ないなぁ、話すと長くなるけど、今日はひまだしなぁ。第一みかちゃんの魔の手からは、いつも結局逃げられないしなぁ。俺は観念して、話はじめた。

「まえにこんくらい暇で、あとの患者もきそうにないんで、みかちゃんを早くかえしてやったときがあるだろう。デートがあるっていってたし。」

「あ~はいはい♪あのときねぇ、おかげでいつもホテル直行だったのに、ゆっくり食事楽しめましたよ♪」

「、、、」

あけすけで、みもふたもない女だ。

「俺も彼女に電話して、とっとと戸締りして、みかちゃんとおんなじくデートだって、いそいそしてたんだ。」

「ふん、ふん」

相槌うつのは絶妙のタイミングで、うまいなみかちゃん。

「そしたら、診察終了時間ぎりぎりにやってきたんだ、くされ縁が、、、」









ルナと花
カークの娘犬ルナ


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