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2007.02.15
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カテゴリ: BLマンガ
『翡翠のためいき』
3冊シリーズの終わりから読んでしまったので「?」だったけど、やっとシリーズ開始からの一冊目を読んでいろいろな謎が解けた。
この本はカラー口絵がラファエル前派の「オフェーリア」。扉絵はアルフォンス・ミュシャとビアズリーとくれば、どれだけ19世紀ヨーロッパが好きなのか、手に取るようにわかって嬉しい。

この絵の風味は、昨年末に続く2冊を読んだ時には思いつかなかったけど、豪華になった坂田靖子さんだよね。彼女の絵をもっと耽美にするとこうなる。時代的にも70年代後半~80年代前半、坂田さんが活躍していた頃のテイストを感じる。甘野さんにとっての神作家の一人であることは疑う余地がない(なに勝手に断定してんだか……)。自分もイギリス貴族なんかは、坂田さんの作品で随分興味をもった。坂田さんはその後絵がどんどんデフォルメされて、不思議なコメディとか4コマ描くようになって、自分は離れてしまったけど、あの時代の金沢作家グループはすごかったな。ブラッドベリのアンソロジーはお宝の一冊だ。

バーンスタイン家の、年中胃に穴があいていそうな心配性の執事とか、東洋人を差別もせずに仲間として認めている使用人たちとか(これは不自然だな)、相変わらずキャラが明確。弟とその妻ビアトリスの謎も解けた。しかも弟は1冊目ではまだごくまっとうだ。
なにより昼行灯で極楽トンボなご主人と、聡明で心は純情なのにフェロモン出しまくりの李悠のコンビがいいな。このご主人の嫁取り問題は、すでにこの頃お屋敷中の心配の種になっているのに、2冊目、3冊目に行くにしたがって話題にのぼらなくなるのは、もうみんな諦めちゃったわけね。

でも、今の時代にこれだけ濃厚なパックス・ブリタニカをちらつかせて、喰いついてくる若いファンはそうそういるとは思えない。お話が壮大でドラマティック、または悲劇なりコメディに大きく傾いているならともかく、そうじゃないからなあ。言いたいのはラブなのかもしれないけれど、あまりに背景や時代性が濃厚すぎるとそちらに気を取られちゃってBLからもはみだしちゃってる。大好きだけどなあ。最後のエピソードは、李悠の顔を見たくてやってきた昔の仲間(というか李悠に憧れていて、今は立派な男娼)が、人知れず静かに病死していくシーンをさりげなく描いていて、胸がつまった。古い手だけど、永遠不滅の乙女の泣き所だな。

ところで、甘野さんて短編巧者なのかな。「幻の都」もそうだったけど、どれもワンエピソード・ワンストーリーで、続けて読むと飽きちゃう。もう少し伏線張って、他のエピソードもからめて、複雑なお話づくりにすれば読み応えがあるのになあ。もったいない。ああでも、今のBLの主流の設定じゃないからページたくさんもらえないのかな。


『真緋の月』



でも後半に2本、好きなあまりに狂気に駆られる人物が登場して、こういう救いのないサスペンスタッチは後味が悪くて苦手だった。と、時折、死んでいるような生気のない目が頻出していて、これもダメ。翡翠シリーズのほうが自分的には好き。

相変わらず時代の雰囲気を出すのがうまいなあ。T型フォードっぽい車が走っているので、大正~昭和初期かな。背景とか、建物とか、アシさん使っているにしても、すごいよ。いったいどれだけ時間かけて描いているんだろうと関心する。

古いものへの愛はしっかり伝わる。だからそれはそれとして、もっとお話づくりの技を磨こうよ、と。それから、現代ものは誰にでも描けるんだから、仕事なくなっても過去に執着し続けてほしい。波津さんあたりのポジションはねらえると思うから。あとは、乙女の萌えツボ刺激するキャラクターを生み出せればなあ。李悠じゃ弱いんだ。






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Last updated  2007.02.15 08:07:13
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