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2007.03.16
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カテゴリ: BLマンガ

『夏の名残のばら』藤たまき

そろそろ仕事が佳境に入ろうとするのに、今頃になってピアノのモチベーションが戻ってきた。なんか久しぶりに弾き始めたエオリアンハープが楽しくて。手首の旋回思い出してきたし。今朝も久々にショパンの舟歌だのノクターンの13番をざらーっと弾き飛ばしていたら、遅刻しそうになってタクシー出勤しちゃったよお。
しかも、今日から読み始めた活字のほうで、とんでもないのにひっかかって救いがなさそうなので、マンガのほうはきれいな作品を読もうと決めて帰宅した。

で、藤さんのこの本。音楽マンガだったよ。タイトルはイギリスのフォークソングだね。母が好きな曲だった。
いい話だったよ~。藤さんの作品にしては珍しく、本当に奇跡的に、トラウマなし、人死になし、精神障害なしのまとも設定。そして「キャラ」連載なのにBLですらない! これは驚いた。まあちょっとはニアフォモの香りはするんだけど。

99年に発表された1回目は読みきりの形で描かれ、4年後に連載開始で全7回。藤さんのほうにネタがあったのか、ファンのリクエストか、編集さんの要望なのかは謎。で、ほぼ1回ごとに視点が変わる。これも藤さんの得意技かな。「アナトミア」にもあったな。

1回ごとのナンバリングがさ、POSITION 1、2、…と続いて、凝ってるなあと。そう、ヴァイオリンかじった人間にはおなじみのヴァイオリンの基本フォームの呼称だ。や、自分はヴァイオリン好きだったのにこればっかりは本当に適性がなくて、短期間で脱落したけど、このポジションはちゃんと憶えているぞ。

ええと、受け・攻めの関係が成立していないので、登場人物の名前覚えられないと、書けないことが発覚! おいおい、どうしよう。
仕方がないから、も一回ページをめくる。……ああ、あった。ヴァイオリン職人(でも少年)データと、学校にも行かず、亡くなった兄の親友だという男と暮らしているヴァイオリンの上手い少年ルース。データは自分の作ったヴァイオリンを弾いてくれたルースの演奏に魅入られ、ちゃんとした教育を受けるよう勧める。でもルースと一緒に暮らすアッシェは音楽を習うことに反対している。その理由とは……。という導入。

データも子供なのに働いているせいか、大人でね。思いやりがあって、ルースの才能に惚れ抜いている。ルースはまた、ストラディヴァリやガルネリに囲まれて暮らしているのに、その価値に気づいていない。保護者のアッシェなんてそんな名器を雨のなか、外で弾くという暴挙にでる。これには泣きそうになった。


ルースがアッシェの元を去り、学校の寮に入るあたりから、「あ、アッシェは死ぬな」と思ったんだけどな。こういう予想は外れないのに、死ななかったよ(笑)。自分の愛する人(ルースの兄)を殺した音楽に没頭するルースに絶望するか、病気になって死ぬ運命のように思えたのに。蓮實重彦仕込みの説話論的先読み手法もたまには外れるんだな。

で、ラストの2回ぐらいがいいんだよ~。ルースが、周囲の期待と正規の音楽教育受けることで壊れていく自分の音楽に絶望しかかったところに、データがやってきて救いの手を差し伸べるところ。悲劇でもドラマティックでも、トラウマも人死にもないのに(笑)、ゆるゆると涙腺が膨張してきた。もう、こんなさらっとした作品で泣かせるなんて、やっぱり藤たまきはおそろしい。

ヴァイオリンが主役の音楽マンガというと、竹宮恵子の変奏曲を思い出すけど、やっぱりあの時代のあのテの作品群って、「何も知らない日本の少女たちを私たちが啓蒙しちゃる」ムードに溢れていて、今読み返すとことごとく大袈裟で恥ずかしい。藤さんもどちらかというと耽美を引きずっている人だけど、この作品は「教えてやるもんね」ムードはなくて、二人の少年の深い、そして未来へと続く友情の話なのがよかった。
音楽も、ラヴェルのツィガーヌが出てきたあたりで「む、やるな」と思ったけど、本当に心揺さぶる演奏は、誰でも知っているフォークロア(その代表が「夏の名残のばら」)なんだということを教えてくれて、クラシックバカの自分でも、そのテーマ提示には賛成。まあポリーニ聴いていた人が、フジコ・ヘミングにも感動できる、みたいな感じかな。







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Last updated  2007.03.17 01:27:47
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