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2007.03.22
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カテゴリ: BL小説
前半は鬼畜の限りを尽くしたえろ、後半はジェットコースター・トラジック・ラブストーリーだった。ストーリーの構成としてめちゃくちゃバランス悪いのに、これまたおもしろくて一気よみした。

しかも、結末知っている、あらすじみたいな話に泣かされたのははじめてだ。登場人物の名前をほとんど覚える気のない自分が、あのどうしようもない人間のクズみたいな医師の名前、覚えちゃったじゃないか。谷脇、おまえだよ。

『WEED』に続く鬼畜医師ものの続編。前作で腑抜けになった医師の同僚で、10ページ目でかわいそうなノンケを3Pで襲っちゃうえろ外科医、谷脇。前作の医師以上に心をどっかに置き忘れてきた冷酷薄情魔人。こういう人間が出てくる話は面白いに決まっているじゃないか!


ミステリーでもなんでも後ろから読んでも全然平気で楽しめるタイプなので、この話も、どこまであるのかな~と何気にページをめくったら、最後がわかってしまった。であるにもかかわらず、その最後までまっすぐ突き進むんじゃなくて、途中で「えっ?」「ええっ?」「えええぇ~っ!」という小エピソードで紆余曲折し、でも谷脇の利己的な脳みそ以外、登場人物の心の動きや葛藤はほとんど語られなくて、ただ事実が時間経過とともに客観的に説明されるだけで、まるであらすじを読んでいるような話。

なのに、結末知っているから、半分読み終わったあたりですでに涙腺と鼻の奥にビンビン刺激がきていた。こんなとこで、こんな文章で、こんな破天荒な筋書きで泣かされたらたまらないと思いつつ、敵の術中の嵌る心地よさ(笑)。
これが計算した上での作戦なのか、何も考えずに書いてこういう話になったのかがわからないよ。どうなんだろう。

前半はあのラストを導くための長~いプロローグなんだろうな。どれだけ谷脇が面白半分に受けをもて遊んだかを、これでもかと描くことで、急転直下なあらすじだけの後半を修飾している。このプロットで丁寧に心理描写描いたり、セリフの応酬書いたりしたら、上下巻の本がかけるぐらい濃い内容なのに、心理描写も時間経過もすごく大雑把であっという間に読み終わって、なおかつ最高の悲劇。同時にあまりに不幸が重なりすぎて笑うしかない受けと、どこまでいっても人間らしさのかけらもない利己主義魔人な谷脇は喜劇の人でもある。ああ面白かった。

ツボだったのは「骨」だな。からかい半分に身体をむさぼった受けの、自分が執刀して内臓のほとんどを切除した恋人の、焼き場に行って自分で拾った自分になびかなかった男の、骨のかけら。BLじゃなくて普通の小説読んでいるみたいだったよ。なんでもない(でも日常からは乖離した)こういうシーンに色気を感じてどきどきした。

森博嗣のミステリーに出てくる人間が、たいがい理科系で、殺人現場で惨殺死体を見ても「あら、人が死んでるわ」という爽やかさで新鮮だったけど、この谷脇の冷たい心臓はそれ以上だな。世の中の外科医ってみんな、近しい人が死んでも毛ほども心乱さないものだろうかと思う。でも予想以上に浸潤していた細胞を、鮮やかな手つきでバンバン切り取っていくところは男前だったよ。リンパ腫とか難しいって聞いているのに。ブラックジャック~!



こういうどうしようもない人間を主役に据えてお話最後まで書いてしまうことにも驚きだが、最後は「ざまあみろ」と「やっとわかったか」となぜか勧善懲悪ドラマ読んだ後のすっきり感におそわれた。木原さん、最近の作品はそれほど痛い系じゃないのに、この頃はすさまじいな。

「GREEN GREEN」
表題作より長い収録作。6歳下の弟攻めのキンシンソーカンもの。小説だと抵抗ないなあ。自分にきょうだいがいないせいか? 基本設定は、このシリーズの通奏低音になっているプライド破壊大作戦な話。こういう優等生いるいる、と思う。なにがなんでも自分は正しい、自分が法律、自分は正義って人。どうしてこう、嫌な奴書くのうまいかな、木原さん。





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Last updated  2008.09.14 10:27:03
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