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2010.01.06
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カテゴリ: BL小説

『上海』かわい有美子

名作との誉れ高いかわいさんの「上海」が、大好きな竹美家ららさんの挿絵で文庫化されたと知って、さっそく読んだ。新書版のほうは時折古書店で見かけたけど、挿絵が本仁戻さんだったか、その系統のくっきりした主線のイラストで、どうもイメージじゃなかった。今回は、玄上八絹さんの挿絵で初めて認識して、雰囲気のある絵が好みだったので古いマンガまで集めた竹美家さんだったの読む気になったけど、最近になって玄上さん以外の人の挿絵もやっているようだったので、うれしかった。

で、『上海』は年末に読み始めて、30ページぐらいのところでバッグに入れっぱなしで年を越してしまったので、あしかけ2年かかったことになる(笑)。いまどきのBLに比べると、いらいらするほど丁寧な描写や動きの少ないじれったいラブなんだけど、時代も設定も登場人物の行動も、めっちゃ好みだった。

自分はやっぱりこういう、ちょっと古いタイプのつつましやかなラブが好きなんだな。
上海租界は、マンガでは昔、森川久美さんが描いていたし、BLでも水原とほるさんや和泉桂さんが舞台にしている。映画でもたびたび登場していて、「上海の伯爵夫人」はマーチャント=アイヴォリー=カズオ・イシグロのトリオにしては駄作だったが、設定はむちゃくちゃ好きだった。かわいさんも観ているだろうとは思うけど、映画よりこの小説のほうがずっと先に書かれているし、歴史的な背景をかなり調べて書いているのがわかる。



上海租界に暮らす裕福な英国人伯爵家(絹織物の輸出とかのビジネスもしている)の嫡男と、親に捨てられた名もなき中国人の子供の運命の出会い。上に立つ者として生まれついた人間特有の大らかさと寛容さで中国人の召使をそばに置く主人がクセがなくて、ほんとうにいいやつだった。普通のBLなら、こんな「いい人」に魅力は感じないんだが、これだけ立場が異なる二人だと、上位者がいい人でないと接点が生まれない。

そしてまた、受けるほうも、幼い頃一緒に遊んだ、そしてかばってくれた将来の自分の主への思慕を心に秘めつつ仕える。なんとストイックな愛。このまま何も起きなくても、十分面白いと思えたのは、ひとえにかわいさんの筆力の成せる業だろう。

出てくる人間がみんな魅力的。攻の両親や、執事のウォレスや料理長の王まで。親の一存で婚約を破棄させられたアメリカの成金令嬢が、嫌っていた中国人のエドワードに声をかけるシーンでまず泣けた。こういう、時としてプライドも立場も超えてしまう人の思いというものを、ナチュラルに書ける作家さんは好きだ。

後半、戦渦が激しくなって二人が離ればなれになってからは、先の予測がつくだけに泣かずにはいられない感じだった。ハンカチ準備オッケー、てな感じだったな。ラストまでがちょっとあわただしかったけど、すれ違いのまま6年がたち、受は大切な指輪を主人に届けるために命がけの旅をしてイギリスにたどり着く。なにやらディ○ニーの「三匹荒野を行く」みたいに思えたのは、人がまだ平等でなかった時代の話だったから、どうしても受がアクセサリーとかペットのように思えてしまうからなんだな。

いい話だったよ。こんな人のいい中国人にはお目にかかったことがないし、こんな素敵な性格の伯爵ばかりだと英国の上流階級はあっという間に死に絶えてしまうがな(笑)。あーそうだな、「上海の伯爵夫人」の映画のセットをそのまま使って、この小説を映画化したいとぼんやり思う。無論、エドワード(受の中国人)は若い頃のジョン・ローンでお願いしたい。





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Last updated  2010.01.06 22:27:00
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