日記の抜粋です。時間が出来次第編集・更新いたします。
秋はパン作りに向いていると考えられがちだが、蒸し暑い地獄のような夏からやっとさわやかな季節に移るために単に体が楽になるに過ぎない。もちろん高すぎる温度はパン作りには不向きだが、じめじめした湿度はパンには不可欠なものである。
その湿度が、秋には乏しくなってくる。パン作り初心者の頃、ただ材料をセットすればHBが勝手に焼いてくれるはずと頼り切っていた頃、9月に入って突然パンが膨らまなくなった事があった。その時は原因がわからず、お徳用で買った粉のせいにしていた。しかし粉を責めたところでパンは膨らんでくれないので、しまいにはイーストを増やす始末。これが空気の乾燥によるものとわかったのはなんと2年後で、仕込み水を増やすだけで解決したのにはそれこそ目からウロコが音を立てて落下したものである。
とにかく、おいしいパンのためには乾燥は敵である。レシピの水分量は絶対的な数値ではなく、常に湿度によって変えるのが好ましい。HBでも手ごねでも、常に多めの水分を用意しておくと慌てずに済む。1次発酵はもちろんだが、ベンチタイム時の濡れ布巾も必ず用意しておいたほうが無難である。小さく分割して成形するパンなどは、1度に天板1枚分の生地を交互に触る事で乾燥を防ぎ、残りの天板1枚分の生地はパンマットなどでしっかりくるんでおきたい。生地が乾燥してしまうと伸びが悪くなるし、中にクリームやあんを包むときに生地同士がくっつかないために中身が出てきてしまう事がある。乾燥の激しい時には、パンマットの上からも濡れ布巾をかけておくと安心である。
2次発酵をオーブン内で行う方は多いと思うが、オーブン予熱に入る時には生地は室内に放置される。この時点で生地が乾燥してしまって釜伸びが悪いという事も少なくない。これは私のいつものやり方だが、オーブンから出した天板を2枚並べ、2枚の中心に足の長い網を置く。この時網の足で生地を踏まないように注意する。当たり前の事だが、私は時々2個ほどつぶしてしまうのである。この網の上にゆるめに絞った濡れ布巾を乗せ、この網と天板全体を大きなビニールですっぽりと覆う。これでオーブン予熱の間もパンは乾燥せずに済む。またクグロフ型などに入れた生地の場合だが、この場合オーブン内ではターンテーブルにお湯を張って発酵させる事が多い。型が直接お湯に触れないように足の短い網を置いてその上に型を乗せるのだが、オーブン予熱に入る時にはこのターンテーブルごと取り出して使う。つまり、室内に出したらそのままビニールで覆うだけでいいのである。生地が型からはみ出すほど発酵させる必要のある場合は、ビニールにくっつかないようにやはり足の長い網で高さを出してからビニールをかける。室温が低ければターンテーブルのお湯を少し温めてもいいし、予熱に時間がかかるためにあまり速く発酵させたくない時には冷たい水で硬く絞った布巾を型にかけるだけにとどめる。
以上の事は私に都合のいいやり方なのであって、台所そのものの環境やお使いのオーブンによってそれぞれに最適な方法があるはずである。オーブンの発酵機能についてであるが、実は私はこれを使っていない。オーブンでもレンジでも発酵でも、とにかくファンが回ってしまうからである。生地に風が当たると表面が乾燥してしまい、やはり釜伸びが悪かったりパンがパサついたりする事がある。成形やベンチタイムの時も同様で、いくら気持ちがいいからと言って窓を開け放して作業をするのは控えたほうが無難。また、人の出入りの激しい所でパン作りをするのも乾燥の原因になるかもしれない。もっとも、大勢でワイワイ楽しみながら作る場合は、あまり細かい事は気にしないほうがおいしいパン作りの時間が持てるかもしれないが。
出来上がったパンも、冷め切ったものを放置するうちにパサついてしまう事がある。湿度の低い時はカビの心配はないので、パンの中心部だけがまだ温かいうちにビニールに入れておくとしっとり感が保てる。ビニールに汗をかくようなら、口を開けておくかペーパータオルなどを入れておくとよい。もちろん完全に冷めてから冷凍保存するとなお安心。冷凍庫の中でも乾燥するので、ポリ袋に入れてからジップロックに入れるなどして大切に保存したいものである。