《櫻井ジャーナル》

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2014.01.23
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 反シリア政府軍のひとつ、ISIL(イラク・レバントのイスラム国、ISISやIEILとも表記)はシリア政府軍の手先だとする話が伝わっている。リビアやシリアの情勢に余り関心のない人は信じるかもしれないが、これまでの流れをウォッチしている人には効果がないだろう。

 繰り返しになるが、現在、シリアで政府軍と戦っている主な戦闘集団は3組織。つまり、イスラム戦線、アル・ヌスラ戦線、ISILだ。イスラム戦線はサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官が昨年11月に諸団体を再編成して組織、アル・ヌスラ戦線はカタールに近く、トルコの司法当局や警察によると、ISILはトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相が秘密裏に創設したのだという。カタールとエルドアン首相はムスリム同胞団と緊密な関係にある。

 自分たちに対する批判を敵にぶつけるのは「西側」の手口。ユーゴスラビアへの先制攻撃以来、「西側」は「人道」や「人権」を破壊と殺戮を正当化するために使っているのだが、ラテン・アメリカではアメリカが「人道」や「人権」を踏みにじっていると批判されていた。(詳しくは拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を)

 例えば、1954年にグアテマラでは選挙で圧勝して誕生したヤコボ・アルベンス政権をアメリカ政府はクーデターで倒している。PBSUCCESSと呼ばれる作戦だが、目的はアメリカのボーダーレス資本、ユナイテッド・フルーツの利権を守ることだった。1973年にはチリでもクーデターで合法的に成立した政権を倒し、「左翼」と見なされた約2万人が殺害さている。黒幕はヘンリー・キッシンジャーだった。

 1980年代にアメリカはニカラグアの革命政権を倒すために反政府ゲリラ「コントラ」を組織する。アメリカの傀儡だったアナスタシオ・ソモサ政権時代の国家警備隊メンバーや革命政権から離脱したエデン・パストーラの部隊で編成されていたが、資金稼ぎのためにコカインを密輸していたことが明らかになっている。

 その一方、コントラ支援工作をしていたオリバー・ノース中佐たちはニカラグアの革命政権が麻薬密輸に関与しているとする情報を流そうと計画、DEA(麻薬捜査局)の反対を押し切ってメディアへリーク、ロナルド・レーガン大統領は声高にサンディニスタを非難したのだが、偽情報だということはすぐに判明してしまう。

 ニカラグアの隣国、エル・サルバドルでは1980年にオスカル・ロメロ大司教が暗殺されているが、この暗殺にはニカラグアの反政府ゲリラの核になった「9月15日軍」が協力している。

 大司教殺害の首謀者はエル・サルバドル国家警備隊の元少佐、ロベルト・ダビッソン。エル・サルバドル駐在のアメリカ大使だったロバート・ホワイトは、大司教暗殺にダビッソンがどのように関わったかを詳細に述べた電文をワシントンに送っている。この人物が暗殺後に「ニカラグア人」へ合計12万ドル寄付していることを示す記述が発見されているのだ。

 1981年にはエル・サルバドルの北部で女性や子供を含む村民、約800名が殺害されている。殺戮は大人の男性から始まり、若い女性は殺害の前にレイプされ、子供はナタやライフルで頭蓋骨を割られたという。



 それに対し、ロナルド・レーガン政権は大使館の報告書を無視、国務次官補のトーマス・エンダースとエイリオット・エイブラムズ(中東での工作でも名前が出てくる)は虐殺に関する記事を誤報だと非難した。カークパトリック、エンダース、エイブラムス、ネオコン(親イスラエル派)。

 メディア内に張り巡らされた権力者のネットワークも機能、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の論説欄がボンナー記者たちを激しく攻撃、ニューヨーク・タイムズ紙の幹部編集者エイブ・ローゼンタールはボンナーを1983年にアメリカへ呼び戻し、その直後にボンナーは同紙を辞めている。勿論、今ではこの虐殺は歴史的な事実として認められている。

 ホンジュラスでも「死の部隊」が反体制派を殺害、1980年代の前半に200名近くが行方不明になったというが、この時のホンジュラス駐在アメリカ大使はジョン・ネグロポンテだ。ジョージ・W・ブッシュ政権で国連大使、イラク駐在大使、国家情報長官、国務副長官を務めることになる。

 中東/北アフリカでアメリカはレーガン政権の時代と似たことを行っているのだが、今回は「人道」や「人権」を隠れ蓑に使い、「人権擁護団体」の支援を受けている。アメリカの支配層は過去の失敗をこのような形で学んでいる。





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最終更新日  2014.01.24 02:52:06


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