日本でもヒットした『ラスベガスをぶっつぶせ』に出演した韓国系米国人俳優アーロン・ヨーが今回釜山を訪れていた。そして、アメリカ人の原作、ニューヨークで活動中のソン・スボム監督、ソン・ヘギョ主演の組み合わせの『嫁入り/Make Yourself at Home』で、韓国とアメリカ、ふたつの社会が接近した時についてしばし考えた。
ヒロインを演じたキム・イェリは短編『春に咲く/Blooming in Spring』(チョン・ジヨン監督)でもそうだったが、韓国を代表するフィギュア・スケート選手、キム・ヨナのような涼しげなまなざしと清楚な姿が印象的だった。
『春に咲く/Blooming in Spring』
外国人の視線
今回の釜山国際映画祭では、長編『かかしたちの土地/Land of Scarecrows』や『ヒマラヤ、風がとどまるところ/Himalaya, Where the Wind Dwells』、短編の『ハイブリッド/Hybrid』、『ミートピア/Meatopia』などで、それぞれ主要な人物として外国人が登場していた。もちろん多様化、多国籍化した現代社会の現状を表現しているのだが、外国人の視線を通して韓国の地、もしくは韓国人の生を相対的に捉え、描こうとしている印象を受けた。10年前のユン・イノ監督『バリケード』を原点とするなら、水がとどまらずにそこから四方に流れ続け水脈を継いでいる感もある。
もうひとつアニメーション作品を観た。『五月の思い出/Memory of May』。タイトルでお気づきになる方もいるかもしれないが、光州事件をテーマにしたアニメーションである。アニメーションといっても、5編のミュージックビデオに近い趣もある。韓国を代表するアニメーター、チョン・スンイル監督によると、民主化運動の時に歌われていた歌がだんだん忘れ去られていくのが残念だったので、製作にあたって、まず曲を選んだそうだ。映画に使われているミッシェル・ポルナレフ Michel Polnareff のシャンソンは民主化運動の時によく歌われていた、と386世代の監督は話していた。とても愛らしい子どもたちのキャラクターの背景には禍々しい戦車や、「戒厳令を解除せよ」の文字が映り、一部当時の写真や映像なども交えて、忘れてはならない光州事件を伝え、鎮魂している。