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January 16, 2006
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立川談志遺言大全集(1)
立川談志遺言大全集(1)


談志師匠が「読む」ことを前提として「書いた落語」。


<ガマの油>
大道商人の言い立てが読みどころ(って使い方していいのかね?)。
酔った商人が、もうひと仕事しようとするが、台詞や段取りを間違えて失敗してしまう。
解説に書かれた『夜店風景』がいい。
「ひと月十銭で食える法」を始めとした、いろいろな倹約術が載っている小冊子を売っている商人の噺。
「ひと月十銭」は、「ところてん一突き十銭」とくだらないのだが、「電気、ガス無くして明るくなる方法」は「夜明けを待つべし」、「釜無くして飯を炊く方法」は「鍋で炊け」などなど……。
倹約術にはなってないが、嘘ではない。
夜、暗くなって明かりが勿体無かったら寝ちまえばいいし、釜がなけりゃ鍋でも炊けるし、もっとも今は炊飯ジャーか。

五十銭が当時、高いかどうかは別にしてネ。
でも、ホチキスで数枚を綴じただけの本に文庫本ほどのお金を取られたのであれば、よっぽど上等に見えない限り、いくら「洒落がわかる」ってんでも怒りますよ、私ャ。


<やかん>
八五郎の質問攻めを御隠居がヒラリヒラリとかわす噺。
本来のサゲは「やかんは何故『やかん』と言うんです?」に御隠居が答えて終わり。
今回の『やかん』は、興味深い一席。
八五郎と御隠居の会話だが、御隠居が談志師匠そのものみたいに思えるし、もっと言えば談志師匠の自問自答とも読める。
と言うのも、八五郎は物事を知らないから訊いてるのではなく、知っていて敢えて訊いているようにも思えるからだ。
御隠居の話を聞くのが好き、御隠居の思考が好き、御隠居の解釈にスッと胸が晴れてしまうのだろう。
解説に談志師匠が書かれたように、談志版『やかん』のテーマは「思考ストップ」である。
それは「とりあえず答えがあればそれでいい」であり、「どこまでいっても際限がないから、どっかで止めておく」である。

それを知らなくたって生きていけるのに、知りたくてしょうがない、もっと性質の悪いのになると、「突き止めたくてしょうがない」。
ゆえにバスコ・ダ・ガマ、コロンブス、マゼラン、海を渡りたがる。ガガーリン、宇宙に行きたがる。
昔の人類の「海の向こうは滝になっている」だの「象だとか亀だとかが大地を支えている」でも、人間、死にァしまい。
日本とて同じこと。九州の先には明国がある、明国の先には天竺がある、天竺の先には南蛮がある、それでも良かったんじゃないか?
むしろ知らないことのほうが幸せだってこともあるし、「海はなんで広いんです?」「狭いと池と間違えるからだ」で本人が納得すれば、それでいいんじゃなかろうか。

「『学問』てなんですか?」
「『貧乏人の暇つぶし』だ」
「努力じゃないんですね?」
「当たり前だ。『努力』なんてなァ、バカに与えた夢だ」


<紺屋高尾>
付属CDで談志師匠いわく、「そのころの吉原のシステムで初めて来た客のところに高尾がくるわけがない」。
つまり、そのころのシステムでは、客は何度も足繁く御茶屋に通い、花魁と馴染みになってから男女の仲になるのだという。
この噺は花魁のトップである高尾に一目惚れした職人の久蔵が、三年間、高尾と一晩遊ぶ金を貯めて、十五両貯まったところで、吉原へ行く。たまたまその日の相手がいなかった高尾は久蔵の相手をし、最初、久蔵はどっかの若旦那を装っていたが、嘘を付き通しづらくなり、職人であること、高尾に会うために三年間金を貯めてきたことを正直に話す。其の心に惚れた高尾が「来年の三月、年季があけたらあなたの女房になります」と約束。舞い上がった久蔵が職人仲間に話してもみんな「その場の冗談なんだ」と相手にしない。年が明けて三月、高尾は本当に久蔵のところにやってきて、二人の染物屋は大繁盛した、とこういうあらすじ。
とにかく、「?」だらけの噺である。
最初に言った、そのころの吉原のシステム上のこともあるし、久蔵に高尾がなぜ惚れたのかもわからない。
そこは紙面では伝わらない、久蔵が無理して若旦那のふりをする、そして自分から正直に打ち明ける、これらの演技によって見せる場所なのだろう。
でも高尾は花魁のトップであり、「大名道具」と呼ばれ、相手をするには大名ほどの財力・権力がないと手の届かない存在である。
よって、年季が明けても気に入られた大名の側室になれる可能性が十分にある、いや、その人気ぶりから、そのような話は高尾のもとに何件もあっただろう。
そんなほぼ大名の側室になる暮らしを捨てて、染物屋の女将になる道を選んだ高尾。
その決意をした高尾の心理描写、「染物屋の女将がいい」と判断せざるを得ない、高尾の日常と普段の相手客はどんなものだったのか。
久蔵の人柄に加えて、これらの高尾の話を盛り込めば、良くなるんじゃないかと素人考えながら思うのでアリマス。
でも、やっぱり「落語だからいいじゃない、そんな細かいことは」てなことになるのかなぁ。
古今亭志ん生師匠が『幾代餅』という噺を演ってらしたけど、あらすじは『紺屋高尾』とほぼ一緒。
この二つは、もとは同じ噺だったのが、餅屋になるのか(『幾代餅』)、染物屋になるのか(『紺屋高尾』)と、ラストだけ違う噺になったのか、それとも、元々二つは違う話だったのか。
この辺は調査中であり、詳しい方は是非教えていただきたいです。
でも、餅屋になる方が私は好きだな。
だって、当時のトップアイドル(トップフードル?)がこねた餅、食べたいと思うでしょ?





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Last updated  January 21, 2006 12:01:43 PM
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