プチストーカー男


(この当時、まだ「ストーカー」という言葉は一般的に使われていなかった。)
 この人は恋話とはちょっと違うんだけどねぇ。(私は恋してないから。)
最初に勤めた会社で、私は企画の部署にいた。取引先の広告代理店と広告やパンフレットの作成などの仕事もしていたので、よく代理店の人と打合せをしていた。
この人は愛想のいいおじさんで、いつも楽しく仕事をしていた。
 ある日、おじさんは自分の部下を伴ってきた。その部下と言うのが私と同じ年の若造くんである。ただ、このとき挨拶した程度だったのであまり記憶にはなかった。

 いつものように、仕事を終え家路に着くところだった。
電車を降り、改札を出るとふいに、「○○さん!」声をかけられた。見ると「誰だっけ?見たことあるような・・・」程度の認識しかない人だった。すると彼は「わかりますか?先日、仕事でお会いした△△です。」と名乗った。「あー、、、あの代理店の・・・」そう、その代理店の若造くんだった。なして彼がここにいるの?するとおもむろに一通の手紙を渡された。「これ読んでください。。。」と、言って彼は帰って行った。
 家に着いて、読んでみるとそれは所謂、ラブレターであった。
自己紹介と、私への気持ちと「付き合ってほしい」という言葉。。。そんなこと言われてもねぇ。(このとき私は前述の二股男と付き合っていた。)
まるでその気はなかったし、そのままこちらからアクションは起こさなかった。
 すると、一週間後、、、また帰宅時、改札を出たところで声をかけられた。見ると例の若造くんである。だいたいこの人なんで私が使ってる駅知ってるのよ!それに何時に帰ってくるかわからない私を待ってるわけ?
彼は「この前の手紙読んでくれました?」と、言った。私は「あの、今お付き合いしている方がいるので、悪いのですが。。。」とお断りした。すると「友達でもだめですか?」と言われ、「だめです」と答えるのも変な話なので、「友達なら」と私もその気もないのに返事をしてしまった。これが後悔につながるのだが。

 そのうち彼は私の家に電話をしてきたりするようになった。いったいどこで調べているんだ!私は彼に自分のフルネームさえも自ら言ったことはない。その仕事で会ったときに苗字を名乗っただけである。どこに住んでいるなんて話もしていない。だんだん、気分が悪くなっていった。

私はその当時、通勤には家から駅まで車で行き、駅近くの駐車場に車を停めそこから電車に乗って会社に通っていた。と、いうわけで帰りは駅から駐車場に向かう。
 ある日、いつものように駐車場に向かうと私の車のボンネットに何やら乗っている。「???」もう暗かったので、その白っぽいものがなんだかわからなかった。近くにいくと、それはなんと大きな「カスミ草」の花束だった。
「やだぁー、気持ち悪い。」ふつうはお花をもらうと嬉しいものだが、こんな妙なもらい方は初めてだった。もちろん、若造くんの仕業である。
お花には罪はないし、そこに捨てていくわけにもいかないのでとりあえず家に持って帰ったが、、、なんで駐車場まで知ってるのでしょうか?こわっ。。。
 もういい加減まいってきた。と、いうか怖かった。毎日、帰り改札を出るといるんじゃないかってドキドキだった。

そうこうしているうちに私の誕生日がやってきた。その日は私は友達と食事をして帰った。とりあえず改札に彼の姿はなかったので一安心。車に乗り家のそばの駐車場(私は一軒家ではないので、駐車場をまた違う場所に借りていた)に車を停め、家まで2,3分の道程を歩いていた。
すると、なんとそこにいたのである。彼が。
彼は自分の車から降りてきて、「今日、誕生日だよね?はい、これ」と言って、プレゼントを渡してきた。私は「もらえません」と拒否した。「でももらってもらわないと、これ捨てなくちゃいけないし。。。」と言われた。ここであまりに拒否して何されるかわからなかったので、とりあえず受け取った。でも家まで知ってるなんて。。。もうほんと困る。
今までも電話はかかってきていたがほとんど居留守を使っていた。電話の鳴るのも怖くなっていた。その為、一度ちゃんと言わないと。。。と思って、次にかかってきた時に、「もう電話も困ります。私がどこに住んでるとかどうして知ってるのですか?」と聞いてみた。すると私の会社の人に何線を使い、どの駅を使ってるというのをさりげなく聞きだしていた。そして、そこから電話番号、住所を調べたのである。すごい根性だわ。
だとしても私はそういうのも許せないし、事実彼に対して気持ちはないので、その旨を伝えた。そして、そのときには会社を辞め、海外に行くことを決めていたのでもうこの家も出るから会うこともできませんときっぱり言った。彼は納得していないようだったが、それでも待ち伏せはなくなった。以後、無言電話は何度もあったが、彼だったかは定かではない。。。



© Rakuten Group, Inc.

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: