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しばらく更新が滞ってしまいました。トンガの話の続きを…。トンガへは日本からニュージーランド(NZ)を経由し向かいます。成田ーオークランド(NZ)-ヌクアロファ(トンガ)と、オークランドでトランジットを行うわけですが、航空会社はいづれもニュージーランド航空を利用しました。ニュージーランド航空といえば、昨年、一部の航空マニアの間で話題になったのがこちら。機内で上映される、非常用設備等のガイダンスビデオです。どうして話題になったのかは、ご覧いただければ一目瞭然?素肌にボディペインティングされたユニフォームを纏ったスタッフが登場してますね。こちらは、メイキングビデオです。このビデオが流れるのは、国内線と国際線の一部。残念ながら日本路線では採用されていないようです。で、このビデオ、オークランドーヌクアロファ間の往路で上映されていました。ビデオが終ると、多くの乗客から拍手が…。面白い機内非常用設備の説明と言えば、こちらのセブパシフィック航空も負けていません。CAさんがレディ・ガガやケイティ・ペリーの歌にあわせて踊りながら実演しています。こちらも、乗客が拍手してますね。機内用非常設備の説明なんて、普通はほとんどの人が気にしないものだと思いますが、エンターテイメント性を持たせることで、しっかり見てくれるようになるんですね。日本の航空会社でも、一工夫欲しいところですが、生真面目な日本企業では難しいいでしょうね。写真は、成田ーオークランドー成田で利用したボーイング777-200のビジネスクラスです。ANAのマイルのスターアライアンス枠で利用しました。ご覧のように、座席がヘリンボーン型に配置され、オットマンと座面を繋げる事で、フルフラットベッドとして使用できます。
2010/10/06
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英BBC製作のドキュメンタリーシリーズの新作ネイチャー編である、「BBC EARTH LIFE」のBDBOXを先日購入しました。制作費35億円とEARTHシリーズ最大規模の作品で、2011年の映画化が予定されており、BDBOXでは、500分を超える全編を5枚のディスクに収められています。EPISODE3「哺乳類」では、トンガ・ババウ諸島で撮影されたザトウクジラの水中映像が収録されており、母子やヒートランなど迫力のシーンを捉えるまでのメイキング(特典映像)が興味深かったです。その他にも、さまざまな生物の驚愕のシーンが、超ハイクオリティーな圧巻の映像美で津波のように押し寄せてくる、非常に完成度の高い作品となっています。写真は、以前撮影したザトウクジラのヒートランです。ヒートランは、メスとの繁殖権を複数のオスが争う状況で、先頭を全速力で進むメスの真後ろに当たる優位置を奪い合うための戦いです。これらは2007年の写真ですが、私自身はこの年、2度撮影できたのを最後に、08年以降水中撮影はできていません。
2010/09/26
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以前、このブログでザトウクジラのシンガーについて書いたことがあります。そのときの内容は・・・ ・ザトウクジラは鳴き声を発する。 ・鳴き声は、特徴的なフレーズが繰り返されるため「ソング」と呼ばれ、 クジラが歌っているようだと、形容されている。 ・「ソング」を発するのは、繁殖海域にいる単独の雄のみで、 同じ一海域にいるクジラは同じ「ソング」を歌う。 ・「ソング」の目的は諸説あるが、 以前は求愛のためにメスに向けて発せられるとの説が有力だった。 しかし、近年の研究・観察結果から、雌に対してではなく、 雄同士の交信に用いられているとの説が支持されつつある。 ・実際2007年に、雄同士の交信に用いられていることが推察される事象を観察した。 ・雄同士の交信の目的は、ライバル同士の宣戦布告や、 逆に、雌との交尾に関して優先権を持っている雄に対しての、 共同戦線を行う呼びかけなどが考えられる。 ・・・というものでした。ところが、今回2日目に母子とエスコートを観察していたとき、間近でシンガーのソングが響き渡っていたんです。はじめは、私が観察していた母子とエスコートの3頭とは別の、単独雄が近くにいて歌っているのかと思ったのですが、この日のガイドのえみさんの話では、歌っているのはエスコートだとのことでした。ザトウクジラのシンガーについては、その対象・目的は別にして、歌い手は繁殖海域にいる単独雄ということが定説になっているようなのですが、実際は、採餌海域での観察例や、今回のように、母子に付きまとうエスコートが歌うことも観察されているそうです。それにしても、エスコートが歌う理由は何なのでしょう?やはり目の前にいる雌クジラへの求愛なのでしょうか。しかし、育児中の母クジラが、繁殖行動を受け入れる事は考えにくいと思われますし、近年の観察例を鑑みても、雌に投げかけられている可能性は低そうです。ザトウクジラと同じ鯨類であるハンドウイルカでは、雄が集団で子イルカを攻撃し、殺してしまうことが観察されています。子イルカの死亡後に、元母親との交尾の確率を高めることが理由の一つとして考えられるようですが、この事が、ザトウクジラにも当てはまるということが言えなくはないかもしれません。つまり、エスコートとして母子に付きまとっていても、雌クジラは子育てに夢中で、全く新たな繁殖に興味を示さない場合、エスコートにとって、邪魔者である子クジラを排除するために、仲間となりうる別の雄クジラを呼び集めるための行動としてソングを発することが、仮説として考えられるかもしれません。写真は、以前撮影したエスコート。このときは、母子に我々が接近することを嫌ってか?母子と私達の間に割って入るような行動をしていました。
2010/09/19
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3日目に撮影したペアのザトウクジラです。ペアといっても、オス同士なんですが…。
2010/09/14
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トンガでのクジラの水中撮影も3日目、連日、好天続きで海も穏やかな海況が続いています。この日は、ババウ諸島北西部のかなり外洋側で船を走らせていました。はじめに多数のイルカの群れが現れました。しばらくイルカを追走していましたが、少し先に大きなブローが3つ、ザトウクジラです。やがて、イルカの群れがクジラに追いつきました。ザトウクジラはイルカの群れを嫌がっている様子で、群れから離れようと、速度を上げて泳ぎ続けています。この状況で水中撮影ができれば、とてもラッキーなのですが、なかなか入水のタイミングがつかめません。そうこうしているうちに、船の後方水中に別の影が。ガイドのエミさんが、「ジンベイかもしれない」と確認のために海の入ります。エミさんから、「ジンベイッ!!」との声。そのとき撮影した写真がこちらです。大きさは、赤ちゃんクジラと大人の雄クジラの間ぐらいで6-7mほど。インド洋・西部太平洋でダイバーがよく遭遇するサイズでした。エミさんと4日間船でご一緒させていただいたA姉妹は、先週もジンベイザメに遭遇しているラッキーガールたちでした。今回の出会いは、彼女たちのおこぼれに預かった結果でしょうね。
2010/09/11
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日本からトンガに向かうにはニュージーランドのオークランドを経由します。NZ-トンガの接続がよくないため、往路復路ともに1泊が必要です。往路、成田を夕刻出発したNZ90便は翌朝8時ごろオークランドに到着します。ですので翌朝搭乗するトンガ便までの時間は、NZの観光が可能です。(もちろん、同日乗り継ぎ可能なのがベストですが・・・)ただ、入国審査や税関等に時間が取られるため実質的に観光ができるのは、10時くらいからでしょうか。オークランドとその近郊の観光地といえば、鍾乳洞やツチボタルのワイトモや間欠泉やマオリ文化のロトルアがハイライトのようなのですが、オークランドからは、朝早く出発して何とか日帰り可能な距離のようで、日本から到着したその日に向かうことは難しいようです。というわけで、オークランド観光は市内とその近郊部のみをぐるぐるしている程度なのですが、撮りためた写真をご紹介します。オークランド空港の近郊で撮影。北海道のような感じもします。8月のNZは冬。庭先にレモンがなっていました。空港からダウンタウンへ向かう途中のホテル。NZといえばやっぱりキウイですね。とりあえず、ダウンタウン(=CITY)を目指します。オークランドのランドマークと言えばこのスカイタワー。南半球で一番高い塔だそうです。早速、登ってみましょう。1階はショッピングモールのようになっています。展望台からの眺め。タワーの名物アトラクションと言えば、スカイウォークとバンジージャンプ。海には多数のヨットが風を受けています。ヨットハーバーにも、たくさんのヨット。オークランドの愛称は、「シティオブセイルズ(帆の街)」。港へ向かいましょう。街には、歴史を感じる建物が点在します。オークランドは、世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」の舞台にもなったことでも有名です。こちらは、海洋博物館前のチームニュージーランド艇の巨大なモニュメント。海洋博物館の側壁。「コビレゴンドウ」や「シロナガスクジラ」が描かれています。続いて、水族館「Kelly Tarlton Antarctic Encounter Underwater World」へ、SKYCITYから無料のシャトルが出ています。日本の「スーパー水族館」を見慣れたものからすれば、あまり見所はありませんが、看板アトラクションの南極探検隊体験はそれなりに楽しめました。このような、探検車に乗って南極大陸へ出発です!!展示されているのは、キングペンギン(大型、オレンジ色の首元)とジェンツーペンギン。(キングペンギンは南極大陸には居ないのですが、ご愛嬌ですね。)水族館をあとに、海沿いの道をミッションベイへ。ミッションベイは、海沿いの高級住宅地。美しいビーチと公園があり、食事や買い物もOKです。夕食はオークランド名物のマッスル(ムール貝)を。ライトアップされた、オークランドです。最後におまけのクジラです。2日目に撮影した母子ですが、非常に透明度の悪い海で、カメラのオートフォーカスも全く合わず、これが一番マシな写真です。
2010/09/10
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引き続き初日に撮影したザトウクジラの母子とエスコートの水中写真、縦位置で撮影したものです。
2010/09/03
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初日に出会った、ザトウクジラの母子とエスコートの水中写真です。エスコートは母子に付きまとって、次の交尾のチャンスをうかがうストーカーであると言われています。個体によって、人間に対して警戒心を抱くものいれば、逆に全く無関心なものなどもいます。警戒心の強いエスコートの場合、なかなか母子に近づかせてもらえません。しかし、幸い、このエスコートは、こちらには全く無頓着だったため、3頭へのアプローチは比較的容易でした。赤ちゃんは、こちらに興味を示している様子も伺え、もう少し、シャッターチャンスがあるかなと思っていたのですが、母親がすぐに遠くへ引き連れて行ってしまう感じで、ゆっくり撮影することはあまりかないませんでした。
2010/09/02
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今回のトンガでのクジラの撮影も、越智隆治氏とトニーウー氏のコーディネイトのもとで行えました。こちらが今回利用したゲスト3人乗りのフルーク、もう1艘プナという同タイプの船があり、どちらかに乗船しました。船足は速く小回りが利きますが、小型船なため波やうねりに弱く、少ししけるとまともに波しぶきがかかります。また、日陰になる場所もほとんど無いので、十分な日焼け対策が必要です。(2007)そして、こちらが最終日に予定外の乗船となったスパイホップ。フル-クよりも一回り大きい双胴船で、船外機2機駆なので、船足と耐波浪性のバランスがよく、屋根に登ればクジラの捜索や撮影もし易いので個人的には一番好きな船です。(2007)下の写真は、6人のゲストでチャーターするプロティウス。ご覧の通りの大型船で、(海況が整えばフルークやスパイホップでは行くことのできない)遠くの海域までの遠征が可能です。2007年に放送された、TBS世界ふしぎ発見 「トンガ ババウ諸島 クジラと一緒に泳ぐ海」のロケにも使用された船です。今回参加したゲストは12名、3隻の船に3人・3人・6人に分かれてババウ周辺のクジラを捜索します。それぞれの船にはガイドとして、越智さん・トニー・エミさんが乗船し、ほかのホエールスイムオペレータには判らない日本語での無線のやり取で、情報交換を行うことにより、クジラとの高い遭遇率を保っています。で、今回最初に遭遇したクジラたちをとりあえず1枚載せておきます。母子とエスコートです。海底が見えるぐらいの水深で3頭が休んでいるところです。
2010/08/30
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トンガへは4年続けての訪問なので、それほど目新しいことは見かけなくなったのですが、写真でトンガ行のダイジェストをUPします。トンガへはニュージーランドのオークランドを経由します。こちらはトンガへ向かうAir NZのAirbus A320トンガの主島、トンガタプ島のFUA'AMOTU INT AIRPORT。ターミナルは日本のODAで建てられたようです。(2007年撮影)国際空港ターミナル前で見かけた、トンガの喪服姿の人々。(2007)こちらは国内線のターミナル。かなり、ローカル色が濃くなりますね。(2007)毎年撮影している、DOMターミナル前の樹。トンガタプからババウに向かう国内線、Chatham PacificのConvair 580機、CV809便。尾翼にはNZのChatham Islands(チャタム諸島)がデザインされています。Convair 580の機内。カーテンはほぼ開いたままでした。なので、こんな写真も撮り放題です。Cv809便は、ha’apai諸島を経由します。ハァアパイ空港で駐機中です。ha’apai空港の滑走路。トラックが横断しています。作業用車両でしょうか?何やら、小さな点が移動していきます??ワオッ、自転車です!!どうやらこの空港の滑走路は、生活道路と交差しているらしく、滑走路として使用されるときは、一般道は踏み切りで遮断されるようです。vava’u諸島が見えてきました。ネイアフの町の前の入り江に多くのヨットが停泊しています。ババウ諸島は、いくつもの入り江が複雑に重なり合った地形をしていて、天然の良港として、世界中のヨットマンから憧れの地となっているそうです。ババウの空港ターミナル。貨物は手積み手降ろしです。ババウ諸島ネイアフの市街地から入り江を撮影。(2007)ネイアフの教会。トンガの人々は敬虔なクリスチャン。安息日である日曜日は、公共機関も含めて全てお休みとなります。「ぶた」です。トンガでは多くの家庭で豚が飼われています。お祝い事があるときに、子豚の丸焼きが振舞われるそうです。ネイアフの町では、ほとんどが放し飼いです。ネイアフのカフェからみた夕日さらに日は沈んで…こちらは、ホテルから撮影した朝焼けに染まる入り江。いよいよザトウクジラの水中撮影に出発です!!
2010/08/26
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またまたサボってしまった…。気が付けば、約2ヶ月ぶりの更新です。先日、ここ数年恒例となっている、トンガ王国ババウ諸島でのホエールスイミングから帰国しました。写真はまだ少ししか整理できていませんが、毎日ザトウクジラの水中撮影ができました。こちらは、往路のニュージーランド航空機内でずっと一緒に遊んでいたkiwi boy。so cute!!HOMEの写真、入れ替えました。
2010/08/24
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ここしばらくすっかり放置状態だったトンガのクジラの写真です。2日目に撮影したペアのものですが、このときは、曇天、透明度も悪い暗い海で、写真的には残念な結果となりました。ペアの撮影はギャンブル的な様相が強く、たいていの場合、泳ごうとエントリーした途端に、クジラ達は、つれなく泳ぎ去ってしまうことがほとんどです。しかし、おそらく愛の交歓に陶酔しきっているのであろうペアに遭遇すると、手で触れることができるほどの距離に近づくことができることがあります。この時は、まさに後者、かなりの長時間にわたって撮影ができました。(恥ずかしながら、撮影時には気づかずに)PCで写真を整理していて気づいたのですが、おそらくオスと思われる個体が、メスへの接近を嫌ってか、私たちとメスとの間に割って入ってくることが多くありました。やはり、彼らにとっては邪魔者でしかないことは事実のようです。人とクジラの大きさの対比がよく判る写真がありましたので載せておきます。人は足ヒレを履いているので、2m30cmほどだと思います。クジラの大きさは12-15m程度でしょうか。
2009/12/12
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数日前、南太平洋とインドネシアで大規模な地震が発生した。サモアやインドネシアでは甚大な被害が発生しているようだが、まだその全容さえつかめていない。また、サモアの隣国トンガでも死者が出ているようだ。そして、もうひとつ悲しいニュースがある。すでに、プロカメラマン越智隆治氏のサイトでご存知の方も多いかと思われるが、トンガのホエールウォッチングサービス、セーリングサファリの名スキッパーであったオンゴが、ひと月ほど前に亡くなった。日本から往復5日もかかる遠い地トンガで、偶然クジラが繋いでくれた縁だったが、彼の死に対してどう言葉を表現してよいのか、今でも見つからないのが偽らざるところだ。セーリングサファリにおいて、彼は鬼コーチであり、心優しい頑固親父だった。昨年あたりから、入退院を繰り返して、今年のクジラシーズンではほとんど、舵を握らなかったようなのだが、二人の息子を後身としてゆだね、彼自身は今でも大海原でクジラたちを追いかけ続けているのだろう。写真は、2日目に撮影したペア。立ち泳ぎをしているのがメスで、こちらを向いているのがオス。撮影にはまったく適さない濁った海での撮影だったため、暗い画になってしまった。
2009/10/04
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トンガでの2日目に撮影した、ザトウクジラです。ペアでいたうちのオスで、メスを守るかのように私たちとの間に割って入り鰭がギリギリの所をかすめて行くことが何度もありドキドキしながらの撮影でした。明日、9/13 NHKの「ダーウィンが来た」で、カナダ西岸で撮影されたザトウクジラが特集されます。
2009/09/12
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ここのところ、ちょっとバタバタしてまして、とりあえず写真だけUPします。初日に撮影したザトウクジラの母子です。
2009/09/06
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海は濁りがちで、天候も低い雲に覆われ続けた初日だったが、幸い母子のクジラに遭遇。何とか撮影も出来た。しかし、一点気になることがあった。特徴的な、母クジラの尾びれのことだ。両端が大きく欠落している母クジラ尾びれ、昨年遭遇した母クジラのものと(記憶の中では)そっくりだったのだ。しかし、同じ母クジラだったとしても、子クジラはその大きさからも、1年間まったく成長していないことになる。このことは、どう説明すればよいのか?帰港後夕食時に、別のボートのガイドをしていたプロカメラマンのトニーウー氏から、昨年撮影した写真と比較して、今日の母クジラは、尾びれの特徴・模様が一致するので同じ個体だが、子クジラは別だったとの話があった。ザトウクジラの繁殖・出産・子育ての海域は同じで、通常母クジラは2-3年周期で出産するのだが、おそらく昨年出産した子どもは、この海域で何らかの理由で死んでしまい、その後、新たに繁殖活動を行った結果が今年の子どもなのだろう。子どもが亡くなったのは、病気や鮫等に襲われたためか、ヒートランに巻き込まれたためなど種々考えられる。バンドウイルカやネズミイルカ、コビトイルカの観察事例では、新たな繁殖を行いがために、子イルカを殺すオスイルカの存在が確認されている。育児中の母イルカは新たな繁殖よりも育児に熱心であるため、オスイルカにとっては子イルカは邪魔な存在でしかないのだ。クジラとイルカは同じ鯨類。ザトウクジラにも同様なことがあってもおかしくない。いづれにせよ、昨年の母子・今年の母子にどのような出来事があったのかは推量の域を出ないのだが、2年続けて新たな出産を行ったクジラの確認は非常に稀なことになる。そしてトンガのババウ諸島という限定された海域であったにせよこの広い大海で2年続けて同じ母クジラとの再会ができたことに感慨深い思いをした。できることなら、今年は無事に子育てをまっとうしてほしいと強く願った。帰宅後、私も昨年撮影した写真との比較を行った。やはり、母クジラはひれの形・傷の付き方など一致したが、子クジラは明らかに別の個体だった。こちらは、今年撮影した母子。こちらは、昨年撮影した母子。
2009/08/31
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トンガでのザトウクジラの水中撮影初日、天候はあいにくの曇天、それほど暗くはないが、低い雲が空一面を覆っている。朝食を摂っていると、突然の突風ともにバケツをひっくり返したような雨。2年前のいやな記憶がよみがえる。風が強いと時化るため、船を海に出すことができなくなり、一昨年は1日キャンセルとなったのだ。しかし、風上の空を見ると明るくなってきている。短いスコールで収まりそうだ。嵐は1時間足らずで遠ざかり、水中カメラマン越智隆治氏のガイドで他のゲスト2名と海に出る。ボートのスキッパーはノア、トンガのホエールウォッチング船のスキッパーでは第一人者であろうオンゴの息子さんだそうだ。船は西のリーフ方面に向かう。先週から風の強い状況の影響のためか、うねりと波が残っている。これでは外洋に出ることは厳しいだろう。越智さんが、2つのブロー(しおふき)を発見する。一つは小さい。どうやら母子のようだ。幸い、動きはゆっくりしている。タイミングを計って船を少し遠めに寄せ、静かに海に入る。残念ながら相当濁っている。これではたとえクジラが見えても撮影にはむかない状況だ。クジラがいるであろう方向を目指して飛沫を上げないようゆっくりと静かにフィンをあおる。(母子のクジラと泳ぐ場合、子クジラにストレスを与えないように、 フィンで飛沫を立てない。 急なアプローチを避け慎重に接近する。 潜水せずに水面上での観察にとどめる。 などのルールが決められている。)やがて、母クジラの白い胸鰭がおぼろげに見えてくる。大きい。でっぷりと太っているクジラだ。尾鰭が見える、なにやら見覚えのある特徴的な形をしている。 昨年観察した母クジラの尾鰭によく似ているのだが、通常ザトウクジラは2-3年周期で出産を行うため、昨年出産したであろう同じ母クジラの可能性はないはずなのだが・・・。クジラが母親の影から姿を見せた。やはり小さい。数日前に生まれたばかりの赤ちゃんクジラのようだ。大きな母親の頭ほどの大きさしかない。ゆっくりと、母子に向けてアプローチを行うが、少し母親が警戒しているのかしばらくすると移動してしまう。いったん船に戻り、越智さんから「こちらに慣れさせる為に、しばらくはもっと慎重にアプローチしてクジラを追いかけないようにしましょう。」との指示が出る。クジラの移動が収まったのを確認して再度エントリー、慎重に慎重にアプローチを行う。何度かこのようなことを繰り返しているうちに、ほとんどこちらを気にすることがなくなってきた。相変わらず濁りのある海況だったため満足いく撮影はなかなか出来なかったが、初日にしては上々のスタートとなった。
2009/08/29
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日曜日深夜、トンガでのザトウクジラの水中撮影から帰宅しました。現地4日、往復の移動に5日と、いつもながらとんでもない行程でしたが、何とか水中撮影ができました。写真は、RAWデータからの現像作業をほとんど行っていないので、とりあえず1枚のみUPします。浅い砂地でうたた寝している?お母さんクジラと、寄り添う子クジラの「JAWS」君です。(「JAWS」君のことはまた後日)あいにく濁りがちな海でしたが、2頭の影が海底の砂に映るぐらいの晴天でした。
2009/08/25
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3年連続となる南太平洋トンガ王国でのザトウクジラの水中撮影に出発する。現地からの情報では、風が強く、芳しくない海況が続いているようだが、今年は、クジラたちとどんな出会いが待っているのか?写真は、以前HOMEに載せていた物。画像を入れ替えたためブログでは見れなくなっていたので再登場となった。
2009/08/15
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こちらのwebを久々に見てみたらトンガで今年初のザトウクジラの回遊が確認されたようです。越智さんのコメントを見た限りでは、例年より少し早いという事なのでしょうか?
2009/06/18
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トンガ・ホエールスイム、4日目天候はよいが、風がますます強まる。この状況では、船を進めることが出来るエリアも限定されることとなるだろう。ただでさえ、例年より発見数の少ない今年のトンガのクジラ事情、厳しい1日となることが予想される。今日のボートキャプテンはオンゴ、トンガ・ババウのホエールスイムオペレーターの中でもかなりのベテランで、その知識と経験は他人の追随を許さない第一人者だ。ホテルが面した入り江を出てしばらく直進する。四方が島々に囲まれ、風の影響を受けにくい場所で、他の2社のオペレーターの船が、それぞれ別の母子についているようだった。このあたりでは、他にブローは見当たらない。しかし、時化の影響もあり、このエリアから移動することも厳しい状況のようだ。はるか先の外洋は、相当時化ているような様子だった。はたして、どうするのかと、オンゴの様子を見ていると、無線を手に取り、他の船と連絡を取りはじめた。なんと、クジラに付いている船と交渉して、次に譲ってもらえるよう話をしてくれたようなのだ。これには、正直驚いた。先ほども書いたように、オンゴは自他共に認める第一人者、同じショップ(セーリングサファリ)の船からならともかく、他のオペレーターの船からクジラを譲ってもらうことなど彼のプライドが許さないと、聞いていたからだ。今日が我々の最終日である事や、海況、クジラの出現状況などを勘案して決断してくれた事なのだろう。ほどなく、我々の順番が回ってきた。これで、4日間全て母子のクジラと泳げた事になる。しかも、島々に囲まれたエリアだったにもかかわらず、今日が一番透明度も良く、まだ陽も高い日中だったので海中も明るく、今回の中ではベストのコンディションだった。また、母子も呼吸時に少し移動するが、ゆっくりとした動きだったので、わりと長い時間をかけ何度も間近で観察する事ができた。昨年は、ほんの一瞬の出会いしかできなかった母子クジラ。今年はぜひ、彼女達のと水中遭遇を果たしたいと切望していたが、結果的に、毎日一緒に泳ぐ事が出来た事は幸運だったといえるだろう。トンガでは母子のクジラと泳ぐ事が最も落ち着いて撮影するチャンスだといわれているが、シルバーバンクやルルツなど他の海域では母子と泳ぐ事が最も困難だと認識されていると聞いた事がある。はたしてほんとにそうなのか、私は知らないが、いずれにせよ、母子クジラの水中撮影を行った人はそう多くは無いだろう。昨年から2年続けて訪れたトンガでのホエールスイムだったが、本当に貴重な経験が出来たと思う。トンガから帰国後、既に1ヶ月以上たっているが、あの時の状況を思い返すと、今でもアドレナリンがあふれてくる感じがする。既に現地で来年の仮予約を行ってきたのだが、あと1年近くも我慢しなければならないのかと、ジリジリした思いを抱かずにはいられないのが正直なところだ。08221_DSF0084 posted by (C)anthias
2008/10/02
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私の愛用しているカメラ、FUJI S5Proのファームウェアの更新が先日アナウンスされました。内容は・・・「電池残量が充分にも関わらず、撮影中、 電池マークがまれに点滅してしまうことがある現象を修正しました。」って、トンガの初日に発生した現象だったりして。。。はーっ、FUJIFILMさん、不具合の解消を行ってくれるのはありがたいですが、あと2ヶ月早くやってほしかったっす。08221_DSF0078 posted by (C)anthias
2008/09/26
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ちょこっと出かけます行き先は石垣実に4ヶ月ぶりに、マクロレンズと格闘してきます写真は、ザトウクジラマクロレンズだと、目しか撮れませんねー08221_DSF0075 posted by (C)anthias
2008/09/19
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今回のトンガで私が乗船した船の船名はスパイホップ2。ゲスト4人にガイドとボートキャプテンの計6名の定員の船だ。_DSC0007 posted by (C)anthias写真では判りづらいが双胴船で、荒れた海でも安定した航行が可能なのがメリットといえる。また、屋根に上れば、よりクジラを探しやすくなるし、強い陽射しを避ける事ができるドライエリアもある、居住性の比較的高い船だ。_DSC0005 posted by (C)anthiasザトウクジラは大型鯨類の中で最も活動的なクジラとして知られている。先日ご紹介した、ブリーチングやテールスラップなどがその代表例だが、今回のトンガではこれら様々な行動を撮影する機会に恵まれた。こちらは船名の由来となっているスパイホップ。水面上に垂直に顔を突き出し辺りの様子を伺う行動と推測される。その姿は、彼らが意思を持つ哺乳類である事を強く感じさせる。08213_DSC0010 posted by (C)anthias
2008/09/17
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外洋で母子と1度泳いだ後、その場を離れた。この母子はエミさんの船から譲ってもらったものだった事と、かなり波が高かった事が理由かもしれない。(我々は、3隻に分かれて行動しており、 トニーがガイドする船も、私の船の後に泳いでいたので、 エミさんの船もかなりの時間ウェイティングしていたのだ。)その後、時化た海域を避けるように進路を東にとり、島々に囲まれたエリアまで引き返したが、なかなかクジラは見つからない。時間もかなり経過し、陽は傾きはじめている。もうそろそろ帰港の時間かと思われたところ、トニーから無線が入る。別の母子を発見し、泳いだとのことだった。幸い、トニーの船の近くにいた事もあり急行する。母子は、時化る外洋の方へ向かいつつあるが動きはゆっくりしている。丁度、トニーたちが船に戻ったところだったので、すぐにエントリー。いつものように赤ちゃんを驚かさないように静かにアプローチする。しかし、傾いた陽射しは完全に逆光。海中も暗く、撮影には厳しい環境だった。それにしても、今回のトンガはクジラが非常に少ない中、幸運にも、連日母子のクジラと泳げているが、透明度が悪かったり、夕刻の暗い海だったりと撮影には厳しい状況が続いている。もちろん、自然相手の撮影なので贅沢は言えないのだが、なんとか、陽が高いうちに透明度の良い環境で撮影したい気持ちも有る。
2008/09/15
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天候はますます回復。しかし風が上がりはじめる。ゲスト4人とボートキャプテンのJB、ガイドの越智さんの6人でクジラを探し始める。私は、いつものように船の屋根に陣取り、広範囲を見渡し続ける。今日は、いつも以上にブローが見つからない。ただでさえ、例年よりも集まりの悪い今年のトンガのクジラ事情。このまま1度のブローも発見できないまま終えるのではないかと不安がよぎる。西側の外洋に面したリーフ際をひとまわりしなんの収穫も無く、島々に囲まれたエリアまで戻ってきたところで、シングルのブローを発見する。その先にもブローがいくつか上がった。これで、3日連続私がこの船の第一発見者となった。しかし、昨日までの2日間はそのクジラたちとは泳げていない。はたして良い事なのか凶事なのか微妙だなと思いつつ、他のゲストからシンガーの声を聞いてみたいとのリクエストがあり、それらしき固体のブローのががった方へ向かう。(シンガーについてはこちらを参考にしてください。) 垂直に切り立つ島際の浅い海で歌っているようなので、発見できるかもしれないということになり、全員で海に入り海面から、中層に浮いているであろうクジラの影を探す。海面に耳を沈めて呼吸を止めると、キューーッという高音とグウッという低音をパートごとに織り交ぜたあの独特な歌声が聞こえる。しかし、離れているのか、かなり深いところに浮いているのか、昨年のような大音響ということではなく、耳を澄ませばわかるといった程度で、初めて聞いたゲストの多くは低音部のフレーズを認知できていないぐらいだった。それでも、声の聞こえてくる方向へ姿を求めてリサーチを続けたが、次にクジラが息継ぎのために浮上してきたところは、我々の捜索地点からはかなり離れていた。結局、シンガーとの水中での遭遇はあきらめたが、他に適当なクジラも見つかっていないし、しばらくこのクジラのブローを追いかけることになった。その後、複数のクジラが集まり始め、ヒートランが始まった。やはりシンガーの歌とヒートランは関係が有るのだろうか。ヒートランは、昨日ほどではなかったが、それでもかなり激しい動きをしており、海に入るタイミングが巡ってきそうな気配は無い。そうこうしているうちに、今日はゲスト2人乗りの船のガイドだったエミさんから無線で、母子と泳げているとの連絡が入り、そちらへ向かう事となった。西側の外洋に面したリーフあたりで、時化ぎみ海のだったがなんとか撮影することが出来た。08214_DSF0014 posted by (C)anthias08214_DSF0009 posted by (C)anthiasしかも、昨年に続き、海の中でブリーチングするクジラを見ることも出来た。が、昨年と違い、驚くほど浅いところからほとんど助走をすること無しのいきなりのジャンプだった為、カメラを構える事は出来なかった。
2008/09/13
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がっくし。。。SINLAKU posted by (C)anthias写真はザトウクジラのブリーチング祝! 初撮影 祝! 自己満足~♪08213_DSC0001 posted by (C)anthias08213_DSC0002 posted by (C)anthias08213_DSC0003 posted by (C)anthias08213_DSC0006 posted by (C)anthias東シナ海はこんな感じなんだろうな(涙)
2008/09/11
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ダイビングを始めた人々の多くが、マンタを代表とするいわゆる大物達との水中遭遇を夢見る事だと思う。実際、私が今までのダイビング経験の中で「最高の1本」を挙げるとすれば、間違いなく初めてマンタと出合った宮古島でのダイビングだといえる。当時はまだ30~40本ほどの経験しかなく、自己管理もままならない超初心者だったが、お正月休みに、初めての沖縄でのダイビング地として訪れた宮古島で、1/1の1本目に3匹のマンタの編隊に遭遇できたのだ。その時は、前日(大晦日)からマンタの遭遇情報があちらこちらから伝わっていたのだが、運悪く、私の乗った船ではニアミスすらなかった。で、大晦日の年越し大宴会の席上で、同席したマンタ遭遇者から、その時の感動話を聞かされ、よりいっそうマンタへの憧れが強くなり、羨ましさで、眠れぬ夜を過ごした事を覚えている。そして翌日、朝からずっと頭の中はマンタ・マンタ・マンタだったのだ。そんな中でのマンタとの出会いは、あまりの感動にその日一日天にも昇る気持ちだった。おそらく水深30m以上の深みから、3匹のマンタが一直線に連なりながらこちらへ向かってくる姿が、目に入ってきた時の光景は、今でもはっきりと私の瞼に焼き付いている。その後も、大物熱はさらに高まるばかりで、ハンマーヘッドシャークの群れやジンベイザメなどとの出会いを求めて世界中のダイビングポイントを訪れた。そんな中でも(ダイビングではないけれど)ザトウクジラとの水中遭遇は究極の出会いといえるかもしれない。彼ら自体の大きさも、また、水中遭遇という希少性も、特別なもがある。しかし、私にはまだ一度も夢を果たせていない大物が残っている。カジキ水中からジャンプしたのを見た事は何度かある。しかし、水中での出会いは1度たりとも無いのだ。元来カジキは外洋性で、一般的にダイバーが潜る沿岸域に現れることが非常に稀な種であり、マンタやハンマーヘッドなどのように決まった時期に決まった海へ行けば、比較的高い遭遇率になるというものではない。彼らとの出会いは、たまたま彼らが、ダイバーのテリトリーである海域に現れた、極めて低い確率での時にタイミングよく居合わせるしかないのだ。最大級の雌のブラックマーリンでも体長5mほどなので、ザトウクジラの赤ちゃん程度の大きさなのだが、特徴的な吻(ひらたく言えば口)に代表される、鋭角的なシルエットは非常にcoolだ。そんな、私にとっては幻の存在とも言えるカジキなのだが、今月号のナショナルジオグラフィック日本版に驚愕の写真が掲載されている。メキシコユカタン半島の沖合いで撮影されたそれらの写真には30~40匹ものバショウカジキが、一斉に餌となるニシンの仲間を襲っているシーンが捉えられているのだ。ナショジに掲載される写真には今までも何度と無く驚かされたが、今回ほど衝撃を受けた写真は無かった。なかでも、トップページに掲載された、興奮色で虹色に輝くその姿は、あまりのすごさに震えを覚えるほどだった。ナショジの写真と比べると、あまりにもチープかもしれないが今日の写真は、ザトウクジラの赤ちゃん。08221_DSF0013 posted by (C)anthias08221_DSF0062 posted by (C)anthias
2008/09/09
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かなりの時間にわたって、ヒートランに併走し、クジラたちの様々な行動の観察がつづいた。昨年は出会うこともなかった、ペダンクルスラップやスパイホップなどのシーンも撮影に成功した。しかし、本音では海に入ってクジラたちと泳ぎたいところだ。が、この激しく闘っているヒートランに割って入ることは自殺行為以外のなにものでもなく、他のクジラのブローらしきものは見あたらなく、彼らの動きがトーンダウンしてくれるのを待つしかなかった。そうこうする間に陽は傾きはじめ、今日はクジラと泳ぐのは無理か?と諦めかけた時、別の船でガイドをしていた越智さんから無線で、「母子のクジラと泳げるから、近くにいるのなら来れば?」との連絡が入る。幸い越智さんの船は我々とはそう遠くないところにいるようで、すぐに進路を変え急行する。母子のクジラは、ほとんど移動することなく、同じところにとどまっているようだ。今回も、赤ちゃんクジラにストレスを与えることを最小限に抑えるべく、出来るだけ飛沫を立てずにゆっくり近づいていく。まず、母親の大きな姿が、目に入ってくる。昨日撮影したあの特徴的な尾鰭が見えた。オッ、昨日の母子だ。我々の乗船する船は6人乗りの小型船で、それほど広範囲を走り回るということでもないが、それでも、この広い海で、偶然にも2日続けて同じ固体と遭遇したのは昨年も含めて初めてのことだった。透明度は昨日よりも若干マシといった程度、海に差し込む光も弱々しく、海中は暗い。やはり撮影には厳しい環境なのは変わらない。昨日、起きたカメラのトラブルはその後再現できなかった。私の単純なミスで、バッテリーの蓋がきっちり閉まっていなかっただけかもしれない。時間的にも、クジラと泳げるのはワンチャンスだろう。しかし、昨日悔しい思いをした分も、取り返したいところだ。昨日と同じく母親は水深10mあたりで留まっている。そして、呼吸間隔の短い赤ん坊クジラは、海面と母親の間を行ったり来たり。私は、母子がゆっくり進んでいくであろう方向の前方の水面に陣取り、2頭がともに上がってくるのを待ち伏せする作戦を取った。本来なら、母子が留まっている水深まで潜行し、横から撮影したいところなのだが、トンガのホエールスイムのルールで母子と泳ぐ場合は潜水が禁止されているので、ひたすら海面で待つしかないのだ。じりじりとした時間が過ぎていくが、焦りからいらぬ殺気を漂わせると、警戒してこちらに来なくなる可能性もある。のんびり待っていれば、何時かは上がってくるさ。と自分を落ち着かせる。やがて、浮上し始めた。彼女らの前方にいると、衝突する危険性があるのではないかと思われるかもしれないが、常に彼女らの視界の中に身をおくことで、母子は逆に安心し、自らの行動を決めやすくなるなるのだそうだ。2頭は、私のすぐ目の前にいる。慎重にフレーミングを行いシャッターをレリーズしていく。しかし、昨日もそうだったが、今回も思うような撮影が出来ない。08205_DSF0047 posted by (C)anthias08205_DSF0055 posted by (C)anthias透明度が悪いため、出来るだけ被写体との距離を詰めて撮影したいのだが、被写体に近づけば近づくほどレンズの画角が足りずに母親がフレームアウトしてしまうのだ。水中用に用意したレンズは昨年同様、12-24mmズーム(35mm換算18-36mm)。大きな母親を全て画角内に収めるには、12mm側でも相当後ろに下がらないといけない。しかし、距離を取ればとるほど、濁った海水のため、加速度的に画質が低下していくのだ。昨年はおおむね高い透明度だったこともあり、12-24ズームでもほとんど支障を感じることなく、むしろ、フィッシュアイでは画角をもてあましていたであろうことのほうが多かったのだが。越智さん・トニーの両プロカメラマンは、フィッシュアイとワイドズームの2セットのカメラを用意している。しかし、昨年は両名ともほとんどの場合、ワイドズームでの撮影だった。ところが、今年は私が見ている限り全てフィッシュアイで臨んでいる。やはり、低い透明度の環境下でも少しでもクリアーな写真を撮るために、被写体に近づいてもより広角な撮影が可能なフィッシュアイを用いているのだろう。私自身は、10-17mmでズーム可能なフィッシュアイレンズを持っている。昨年の経験から、今回は持参しなかったのだが、そのことが悔やまれる結果となった。
2008/09/05
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トンガホエールスイム、2日目。天候は回復、見上げる上空の半分程度に青空が見える。定刻通り出港する。今日も、船の屋根に陣取り、クジラのブローを捜す。1時間余り経過した頃に、シングルのブローを発見するも、やはり、今日もブローの数は少なそうだ。08202_DSC0023 posted by (C)anthias泳げる機会を伺い、並走するが、ブローを終えると直ぐに潜行してしまい、つぎの浮上は、かなり離れた所から上がるブローによる発見といった事が繰り返された。いつの間にか相当な距離を移動している。08202_DSC0067 posted by (C)anthias08202_DSC0068 posted by (C)anthias08202_DSC0069 posted by (C)anthias08202_DSC0070 posted by (C)anthias08202_DSC0071 posted by (C)anthias08202_DSC0072 posted by (C)anthiasしばらく後、我々が追っていた雄クジラは他の船が付いていたペアのクジラと合流した。ヒートランッ!1頭の雌を巡って、雄同士の闘いが始まったのだ。2頭の雄は、非常に激しく争っているようだ。「ボッフッ」1頭の雄が普段は決して聞くことの無い呼吸音を響かせて目の前で潜行を開始する。間髪いれずに、もう1頭が後を追う。おそらく水中では、相当な勢いで体をぶつけ合っているのだろう。水面では、体を横に向けたり、完全に仰向けになったりとかなり激しい動きが繰り返された。08203_DSC0048 posted by (C)anthias08203_DSC0061 posted by (C)anthias08204_DSC0050 posted by (C)anthiasこちらは尾鰭を高く持ち上げ、激しく海面に打ち付けるテールスラップを繰り返えすクジラ。先頭を泳ぐ個体だったので、おそらく雌だと思われる。08202_DSC0122 posted by (C)anthias08202_DSC0123 posted by (C)anthias08202_DSC0124 posted by (C)anthias08202_DSC0126 posted by (C)anthias昨年も何度かヒートランに遭遇し、水中での撮影にも成功したが、今回ほど激しく闘い合うクジラの駆け引きを目の当たりにしたのは初めてだった。念のため、この日のガイドのトニーに「入れない?」と聞いてみたが、「ダメ、危なすぎるよ」と一蹴されてされてしまうのも当然といえば当然の事だった。08204_DSC0005 posted by (C)anthias
2008/09/04
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今日の写真は、初日に遭遇した母子。泳ぎ去るところを後ろから撮影したもの。この母親の尾鰭だが、子どもの鰭と比較すると、ご覧のとおり先端部が欠損している。サメやシャチに襲われた痕なら、このように両端が同じように欠けることは考えにくい。撮影をしながら頭に浮かんだのが、沖縄美ら海水族館のバンドウイルカのフジのことだった。フジは感染症および循環不全を併発し、尾鰭の約75%を失なったイルカなのだ。この母クジラが、同様の病気に罹っているのか、過去に罹った事があったのか、または全く無関係なのかは不明だが、いずれにせよ、その生を全うし、生まれたばかりの赤ちゃんクジラが無事に独り立ちを遂げることを願ってやまない。
2008/09/02
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ホエールスイム初日昨晩見た満天の星空は夢幻だったのだろうかというくらいの荒天。雲は低く垂れ込め、時より激しく大粒の雨が落ちてくる。グレーに霞む空は、海との境目がわからない、これではクジラのブローを発見する事は非常に厳しくなるだろう。今回もガイド役をしてくださる、プロカメラマン越智隆治氏の話では今年は例年に無く、クジラのブローが少ないそうで、胃の痛む日々を送っているようだ。しかも、悪い事は重なり、度々船のトラブルが発生している。私が乗る船も前週は舵の故障で出港できない事があったようだ。今回、海に出られるのは4日間、1日たりとも無駄にはしたくない。幸い、船の修理も完了し、風も船が出せないというほどでもなかったので、予定時刻より少し送れての出港となった。ゲストはみな、船の屋根に陣取り、ひたすら遠方を注視する。しばらくして、シングルのブローを発見する。泳げるかどうかを見極める為に、船をよせようとするが、すぐに潜行してしまう。それも、奇麗なフルークアップを見せてくれるという事もなく、ヤル気無しに、なんとなく潜っていくといった感じ。何度かそんな事を繰り返したが、他のオペレータがー泳いでいたクジラを譲ってもらえることになり結局このシングルクジラを諦め、移動を始める。しかし、この譲ってもらえるはずのクジラには既に何隻かの順番待ちの船が付いていた。しかも、はじめに発見した船がなかなか、権利を放棄しない。トンガのホエールスイム団体のルールでは、1.5時間で権利を譲らないといけなくなっているそうなのだが。結局、数時間の待機の後、やっと我々の番となった。狙いは母子のクジラ、ほとんど移動することなくじっと留まっているようだ。準備を整え、エントリーする。心臓が早鐘を打っている。今年初めてのクジラとの水中遭遇に心地よいプレッシャーを感じる。時刻は既に夕刻、相変わらず天気は悪く、海の中は非常に暗い。しかも、透明度もお世辞にも良いとはいえない状況で、撮影するには全く適さない海境だった。母子のクジラと泳ぐ時は、子クジラに与えるインパクトを最小限にするために飛沫を立てずに出来るだけ慎重にアプローチする必要がある。ゆっくり、ゆっくりと、クジラとの距離を詰めていくが、その時間がもどかしく感じる。やがて、大きな胸鰭が水中に白く浮いているのを見つける。南太平洋産のザトウクジラの体色は、おおむね、背面が黒、腹側が白い個体が多く、その為、水中で彼らを探す場合に、青白く光を反射している部分が手がかりとなるのだ。クジラとの距離を詰めていくうちに、全体像が確認できるようになる。デカイ!!この母クジラ、私が今まで水中遭遇を果たしザトウクジラの中では群を抜く大きさだった。特に腹回りの太さが通常のクジラの1.5~2倍はある感じがする。その迫力に、ただただ見入ってしまう。どうやら、母親は眠っているようだ。そして、その周りと海面の間を子クジラが行ったり来たりしている。子クジラは、母親の胸鰭ほどの大きさしかない。巨大な母親と比べると、やはり幼く可愛く見える。それでも体長4~5mはあるのだが。しばらく、母子を観察した後、撮影に取り掛かる。が、ここで、痛恨のトラブルに見舞われてしまう。なんと、カメラのシャッターが下りないのだ。モニターを確認すると、バッテリー残量表示が、フル充電を示していたかと思うと、次の瞬間には残量0を示したりといったことを繰り返している。おかしい、カメラのセッティング時にフル充電を確認したし、陸上での試写では問題は無かった。水中でカメラのトラブルが起きた場合、どうする事もできない。カメラは強固なハウジング(防水ケース)の中に収められており、直接触る事は出来ないのだ。しかたなく、操作できるスイッチ類を押してみたりするが、症状はなにも改善されない。目の前には、念願の母子のクジラがゆっくり泳いでいるというのになにも出来ないもどかしさ、時間だけがただ過ぎていく焦り。撮影は断念して、観察に集中するしかないかと、諦めかけたが、カメラを下向きにして、その後横向きにするとしばらくの間、電源が正常に供給される事に気づく!シャッターチャンスに制限はあるが、これでなんとか撮影できる。ただ、かなりの時間が経過しており、まだ順番待ちしている船もあるので、残された時間は少ない。そんな、状況で、撮影したのがこの写真。先ほど書いたとおり、暗く濁った海では、写真にクオリティーを求める事はできなかったが、撮影できただけでもラッキーと自分に言い聞かせた1日だった。
2008/08/31
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日曜深夜、トンガから帰宅した。気づけば、既に5日。昨年もそうだったが、トンガでのホエールスイムを終えると、しばらく、無気力な状態になってしまう。翌日から仕事を終え帰宅後も何もすることなく、ただベットに向かう日々。大型のものになると体長15m体重30t にも及ぶザトウクジラとの水中遭遇という、尋常ではない体験に、知らず知らずに、エネルギーをすり減らしていたからなのかもしれない。はたして、予定通り無事たどり着けるのか何の保証も無い行程への不安が心労となって蓄積されていたのかもしれない。しかし、今年も彼らとの出会いを果たし、その圧倒的な存在感、強烈なエネルギーの爆発を目の当たりにすることが出来たのだ。今日から、このブログも再開し、その一端を、すこしでも紹介していければと思う。写真は、ザトウクジラの母子。母親の腹部についているコバンザメと比較するとその大きさを理解してもらえると思う。ザトウクジラ 母子1 posted by (C)anthias
2008/08/29
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いよいよ、明日出発です。こんな感じの、のんびりしたクジラだと落ち着いて撮影できるんですが・・・。ザトウクジラ posted by (C)anthias
2008/08/15
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周囲からは夏休みの声がチラホラと聞こえだしはじめましたが私の頭の中はMegaptera Megaptera Megaptera ・・・ザトウクジラの学名 Megaptera novaeangliae のMegapteraは 「大きな翼」という意味のラテン語です。クジラ類の中でも体長比で最大を誇るザトウクジラの胸鰭にちなんで付けられたものでしょう。昨年10日あまりに亘ってトンガで行ったザトウクジラの水中撮影ですが、今年は全日程9日(うち現地4日)で再度チャレンジしてきます。出発までは、あと10日余りありますが、現地からの情報を食い入る様に見ては、そわそわした日々を送っています。
2008/08/05
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ナショナルジオグラフィック日本版2007年11月号に「トンガに迫る決断のとき」という名の記事が掲載されている。トンガは南太平洋諸国の中で唯一、君主制の政治制度を敷く「王国」であり、また、唯一欧米の支配下にさらされた事がない国なのだ。(1900年に、イギリスとの条約でイギリス保護領となっているが、 自治は維持されたようだ。)900年前に成立した現王朝は、13世紀には周辺のフィジーやサモアを支配下に置き南太平洋地域の大国として君臨していた。このようにトンガ王国は南太平洋で、誇り高き孤高の存在として今日に至っている。しかし、前国王ツポウ4世の治世になると、国民の間から、王室への畏敬の念が徐々に薄れ始める事態が頻発するようになって来た。例えば、海水を天然ガスに転換する試みに数億円を投じたり、トンガ国内に放射性廃棄物の処分場を提供しようとしたり、地質学的な可能性がほとんど無いにもかかわらず、石油資源の調査に多額の費用をかけたりと、無謀な夢物語のような事を繰り返してきたそうだ。1980年代に入ると、国民の信頼を真底失いかける政策を始める。トンガ国籍の販売である。自国から追放された犯罪者紛いの人々が、この政策に飛びついた。かのイメルダ夫人(マルコス、元フィリピン大統領夫人)もそのうちの一人だったそうだ。国籍販売の売り上げは、2500万ドルに達したが、保険投機に失敗し、ほとんどの資金を失った。時を同じくして、国民の間から民主化を訴える声が上がり始めるようになる。徐々にその声は大きな広がりを見せ始め、2005年、ついに首島トンガタプ島での民衆の暴動へと発展した。この暴動は収束したが、翌2006年11月に民主化を訴える民衆の2度目の大暴動が発生。首都ヌクアロファのダウンタウンのほとんどが炎に包まれた。このときはトンガ国軍のみでは鎮圧が出来ず、NZとAUSの軍隊に派遣の要請を行い、終息させる事が出来たようだ。しかし、トンガ国民は、王朝の終焉を考えているわけではない。英国王室のような象徴的な役割を望んでいるようだ。本来、トンガ人は穏やかな国民性なのだ。現王、ツポウ5世はまさに岐路に立たされている。民衆の間に芽生え深く根を下ろした、民主化の潮流に身を任せるのか?はたまた、国民の姿に目を背けて、誇り高い王朝の体制を維持するのか?決断までの猶予はそれほど残されてはいないようである。写真は、トンガで撮影したザトウクジラの母子クジラたちにとって、掛替えの無いトンガの海が守られる事を願って止まない。
2007/10/31
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ダイバーの間ではわりと有名な話かもしれませんが生息する海域が異なる事で、本来同じ種である魚の色彩や形態が異なることがあります。例えば、タテジマキンチャクダイの背鰭の先端は、太平洋に住むものは角状に尖っていますが、インド洋に住むものの先端は丸くなっています。また、アケボノハゼの場合は太平洋に棲む個体よりインド洋に棲む個体の方が黄色味が強い体色をしていたりします。クジラ・イルカ類においても同じように、生息する海域によりその形態や・色彩が異なる場合があります。最もポピュラーな存在といえるバンドウイルカの場合は小笠原などで見られる大型のトランキータス型と、より南方に生息し、腹部に黒班があらわれる小型のアダンカス型に分かれます。ハシナガイルカでは、東部太平洋に住む種だけでも生息海域によって、全身がグレー一色のコスタリカ型、薄目のグレーから3段階のグラデーションのホワイトベリー型、濃い目のグレーから3段階のグラデーションのハワイ型、ほとんどの部分がグレーで、腹部のみにアイボリー色の斑紋を持つイースタン型と4つの異なる色彩を持つものが知られています。ザトウクジラの場合、生息海域による色彩変異はより顕著で、大西洋産の個体の胸鰭は表裏とも白い場合が一般的ですが、北半球太平洋に棲むものの胸鰭は裏側のみ白い個体が普通です。そして、これら2地域のものの腹部は、通常黒色部が大部分を占めます。しかし、同じ太平洋でも南半球産のもは、腹部の大部分が白色の個体がほとんどなのです。ザトウクジラの水中撮影を行う被写体として考えれば、南太平洋産の個体の方が、写真映えがすると思います。写真は、ホワイトバランスを調整して青カブリを除去しています。
2007/10/29
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今回も引き続きクジラの年齢に関することを書きます。クジラの年齢-1では、年齢査定のために耳垢栓に刻まれる年輪を数える手法があると書きましたが、さらに、この耳垢栓を調べる事で性成熟時の年齢が判るそうです。耳垢栓に刻まれる年輪には極端にその幅が変化するところが現れます。この幅の変化が現れたところを「耳垢栓変異相」と呼ぶそうですが、この変異層が出来る時と性成熟が起きる時とが一致するそうです。性成熟年齢といえば、前回ホッキョククジラは200歳近い固体が見つかっていると書きましたが、このホッキョククジラは90歳の高齢でも繁殖可能だとの報告があります。
2007/10/27
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前回ブログでは、クジラ類の年齢の調べ方について書きましたが、今日は、クジラの類の寿命について書きます。一般的には、大型のクジラ類ほど長寿といえます。ヒゲクジラ類では、特に大型のナガスクジラやシロナガスクジラなどは110歳以上の個体も見つかっていますし、なんと、ホッキョククジラでは200歳近い固体もいるそうです。また、ザトウクジラでも80歳前後のものが発見されています。一方、歯クジラの仲間でも、最も大型のマッコウクジラで、80歳近く生きるものもいるそうです。しかし、小型の歯クジラといえるイルカ類は長寿のもので50歳くらい、最も小型の種の一つといえるネズミイルカ類は10歳あまりといわれています。
2007/10/24
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以前のブログで魚の年齢について書いた事がありましたが、今日はクジラ・イルカ類(以下クジラ類)の年齢について書きます。クジラ類の年齢を調べる方法は、大きく分けて2通りあります。歯クジラ類(マッコウクジラ・シャチ・バンドウイルカなど)は歯に1年毎に積み重ねられた層の数を、歯の断面にあらわれる年輪を数えることで、判断します。一方、歯を持たないヒゲクジラ類(ザトウクジラ・シロナガスクジラ・コククジラなど)は歯クジラの歯に相当するヒゲで可能なのでしょうか?実際クジラヒゲにも層状の年輪が刻まれますが、クジラヒゲは材質的に弱い為、先端の磨耗が激しく正確な年齢を数える事はできないそうです。では何を手がかりにしているかというと、耳垢なのです。外耳道の内側にある耳垢を耳垢栓(=じこうせん)といって、耳をふせいでいる栓になっていて、その断面には1年ごとに刻まれる年輪が存在するのです。ただし、同じヒゲクジラ類でもセミクジラの仲間の耳垢栓には年輪がなく、この方法を用いる事ができないそうです。
2007/10/21
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ここのところ仕事が忙しすぎて、帰宅も深夜となる事が多く、ブログを書く気になれず、久々の更新です。10月2日のブログにイザリウオの改名の事について書きましたが、その事について加筆したいと思います。今回の改名では、今年初めに日本魚類学会にて次のような単語を含む魚類の名称の改定がなされました。「メクラ・セムシ・オシ・バカ・ミツクチ・アシナシ・テナシ・ イザリ・セッパリ」これらの言葉には、差別的な意味で一般的に通用し、日常的に使われている単語も多く含まれていると思います。そのような言葉を含む名前の魚類に対しては、今回の改訂について、個人的にも納得できます。イザリという言葉に関しては、私はその意味を知りませんでした。また、この言葉を日常会話の中で聞いた事は一度もありませんでしたし、文献中で使用されているのを見たこともありませんでした。私にとっては、イザリウオがイザリという言葉に触れた全てです。ちなみに私の周囲の人間にもこの言葉の意味が判るかを聞いてみましたが、知っていた人はいませんでした。しかし、主要な国語辞典で検索してみると、きちんと記載されています。イザリという言葉は、一般的にはほとんど使用されなくなった、消えつつある言葉では無いだろうかと推測できます。また、今回の言葉の中で、もう一つ「セッパリ」という言葉が気になります。この言葉も、私は全くその意味を知りません。出来る限りの手段でその意味を知ろうとしましたが、残念ながら判りませんでした。この言葉は、一般的な国語辞典にすら載っていない言葉なのです。もはや完全な死語でないかと思われます。そんな言葉を、いまさら差別的用語だと言って使用を規制する意味など何処にあるのでしょうか?今回の改訂で、セッパリホウボウはツマリホウボウにセッパリカジカはミナミコブシカジカにセッパリサギはセダカクロサギにそれぞれ改定されました。しかし、同じ海を舞台として暮らしている生き物であるイルカの仲間に「セッパリイルカ」という種がいます。彼ら魚類の分類学者にとっては、哺乳類であるイルカの名前なんてあずかり知らぬ事なのでしょうし、魚類の名前で上記の用語を使ってはいけないとの強制力があるのも日本魚類学会内部のみの事だというかもしれません。しかし、現実にはイザリウオは多くの人がカエルアンコウと呼び変えていますし、一般的な影響力は強いものだと思われます。セッパリホウボウは呼んではだめで、セッパリイルカは良いのでしょうか?トンガで撮影してきたザトウクジラに関しても気になる事があります。英名は「humpback whale」直訳すると、「セムシクジラ」です。英名は標準和名のように学者が正式に提唱するものではないのでおろかにも改名しようという事にはならないでしょうが、標準和名の「ザトウ」とは、その姿が琵琶を担いだ座頭に似ているためと言われています。「座頭」は江戸時代に用いられた盲目の人に対する呼称の一つです。座頭という言葉自体には差別的意味合いは無いようですが、ヒレナガナガスクジラなんて名前に改名されでもしたら、ほんとにがっかりです。言葉は時代の流れと共に、その使用頻度も意味合いも変化していくものだと思います。今回の改訂は、皮肉な事に、一般的には消えつつあった差別的用語を、再び呼び起こした結果となったと思います。
2007/10/13
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トンガホエールスイム11日目-2外洋で母子のブリーチングをしばらくの間観察していたが、母子は徐々に移動を始めた。時化た外洋の海を避けてリーフの内側へ向かってくれれば好都合なのだが、あいにくこちらの思いは伝わらなかったようだ。母子が進む先には島影すら見えない。ここまま母子を追っても、泳げる確率は低い。ノーファは、リーフの内側へ船先を変えた。比較的穏やかなリーフ内をしばらく進み、島々に囲まれた入り江で複数のブローを発見、それぞれのブローは、互いに離れたところから上がっている。どれもシンガーのようだ。そのうちの一つにアプローチを試みるトニー。呼吸の為に浮上してきたタイミングでエントリーし、クジラを追いかける。クジラが中層に止まったのを確認できたようだ。海に入るよう指示が出る。クジラは中層で頭を下に向けてじっとしたまま歌っている。クジラの真上に浮かぶと、前回もそうであったように歌声で体が震える。しかし、今回はより強烈な振動を感じる。表面だけでなく、内蔵を含めた体の内部もクジラの歌声に合わせて震えるのだ。この写真は、逆立ちのクジラを真上から撮影したところ。繁殖海域に集まるザトウクジラのオスは、その海域共通の歌を歌うことが知られている。この歌はいくつかのパートが組み合わさって一つの歌が構成されている。パートの各部分のフレーズはシーズン中、時間の経過と共に変化していくが(つまり1シーズンの初期と、終わりごろでは若干違った歌になっている。)その海域にいるオスは、同じ変化した歌を歌うのだ。面白い事に歌には、息継ぎの為の箇所まで決まっているそうだ。歌うのはオスの単体のみで、他のクジラがいるときは歌う事はない。先日放映された「世界 ふしぎ発見!」では「オスクジラの群れが途中から歌いながら泳ぎ去って行った。」と、コメントされていたが、にわかに信じがたい話だ。ザトウクジラが歌う理由は、諸説言われているようだが、最も一般的なものは、オスが繁殖相手のメスを誘っているという説だろう。ザトウクジラの歌は繁殖海域にいるオスのみが歌う事がその根拠となっているようだ。しかし、この説とは全く逆にオスは他のオスに向かって歌っているという説が近年の研究から裏付けられつつある。雑誌「NATIONAL GEOGRAPHIC 日本版2007年1月号」によると、1997年に行われた、録音したオスクジラの歌を水中スピーカーで流す実験では、スピーカーから流れる歌声に反応したのはオスのみで、メスはほとんど興味を示さなかったというのだ。また、自然下での行動観察においても、オスクジラの歌は、繁殖海域のオス同士の関係に何らかの役割を果たしているが、メスが引き寄せられた事を示す証拠は見つかっていないそうだ。実は、今回、我々はこの事を裏付ける行動を観察した。私達フルークのゲストがシンガーの観察を行っていた時、数百m離れた所で越智さんが乗っていたプナもシンガーの観察を行っていた。そして、さらに数百m離れたところには別のシンガーらしきブローが上がっていた。それら3頭のオスクジラが一箇所に集まり始めたのだ。そして、そのあと、しばらくして近くを通りかかった母子のクジラを追いかけ始めたのだ。繁殖海域で単体オスのザトウクジラが歌う訳は、やはり、メスを誘っているのではなく、オス同士での交信に用いられているようだ。それは、互いにライバルであるオス同士の宣戦布告とも考えられるし、優先権のあるエスコートを追いやる為の共同作戦への参加の呼びかけかもしれない。この事に遭遇したあとトニーに「ザトウの歌はオス同士の交信に使われているとナショジに出ていた。」と、話した所、「僕ら、何年もクジラの水中撮影をこなしてきたカメラマンの間では、 その事は以前から知られていた事だよ。」との返事が返ってきた。
2007/10/08
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トンガホエールスイム11日目長いようで短かった今回のトンガだが、いよいよ海に出る最終日だ。船はいつものフルーク、ゲストはIHさんと私の2人、ガイドはトニーそして、スキッパーはノーファ!!これで、格段にクジラと泳げる確率が上昇するはずだ。ネイアフの入り江を出て、北上する。外洋に面したリーフの内側で2つのブローを発見する。ブローの1つが弱々しかったので、はじめは母子かと思ったが、ペアのようだ。この2頭、水中でじゃれ合っているらしく、度々水面上に胸鰭や尾びれが現れる。海に入るタイミングを伺うが、なかなか止まってくれない。そうこうしている内に、周辺にいたシングルが1匹また1匹と合流しだした。ヒートランが始まった!!先頭のメスを追いかけて、複数のオスが猛スピードで泳ぎだした。これで、先ほどのペアのときよりも海に入るタイミングがつかみ易くなったようだ。トニーの合図で海に入る。何と、真下にクジラが居るではないか!あわてて潜水、あいにく透明度はそれほど良くなかったが、何カットか撮影できた。その後も、何度か泳げたが、透明度は悪化するばかりで撮影には不向きな状況だった。しかし、先日までのフィリッペの操船とはまるで違い、非常にタイミングよくクジラにアプローチできる。やはり、クジラと泳ぐ為には腕のよいスキッパーとガイドの存在が不可欠である事を再認識する。その後、ノーファが外洋で母子が盛んにブリーチングを行っているのを発見する。あいにく海は大時化、とても船上でもカメラをカメラを構えることができない。撮影はあきらめて観察に集中した。
2007/09/27
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トンガホエールスイム10日目 今日はぼやきを書きます。 不快に思われる方もいらっしゃるとおもいますので、 初めにお詫びしておきます。(自分のせいだが)昨日があまりにも勿体無い1日だったので、気合を入れなおして、海に向かう。船はフルーク、ガイドは越智さん、この船のゲストは私を含めて3人、スキッパーは・・・、あーー、フィリッペ。とりあえず全員乗船し、桟橋を離れる。フィリッペがはいていたショートパンツの裾から見える太ももに大きな傷が見えた。越智さんが、その傷はどうしたの?と聞くと、フィリッペ曰く、以前、ホエールスイムのガイド中に、タイガーシャークが襲ってきたことがあり、客を守るためにサメとの間に割って入った時に噛まれた傷跡だとの事。おーっ、こいつ操船は下手だけどプロ意識はあるんだと見直してしまった。出港した「フルーク」は北側の外洋を目指した。7日目にヒートランを撮影した近くの海域だ。もう一度ヒートランに遭遇できれば・・・、期待が膨らむ。遠くにブローを発見する。複数上がっている。やった!ヒートランだ。5頭いる。前回のヒートランの時は、スキッパーのオンゴが絶妙の位置取りとタイミングになるように操船してくれた事もあり、何度か撮影できるくらいの距離にまで接近する事が出来たが、今日のスキッパーは操船下手のフィリッペだ。はたして期待通りの位置取りをしてくれるだろうか? 不安がよぎる。しかし、不安は的中。全くよい位置取りが出来ない。全速で泳いでいるクジラたちの横あたりに来た瞬間に船の速度を落としてしまうのだ。これでは、エントリーした時にはクジラは先へ泳ぎ去っている。何度かエントリーしたが、接近できない。船に戻った我々はフィリッペにもっとクジラの前方に回りこんで、その時にエントリーしたいとリクエストする。しかし、聞く気が無いのか出来ないのか、毎回横に並んで船は減速。クジラはどんどん先に進んでいってしまう。こんな操船では見れるものも見れない。ほんとにイライラがつのってくる。2日前からフィリッペの操船には「???」の連続だったが、この日はついに来たかという感じだった。先ほど彼を見直した事は撤回。やはりツカエナイやつだ。出来るだけ撮影チャンスを増やす為に前週の8人乗りの船から(料金の高い)今回の船にスイッチしたにもかかわらず、スキッパーの腕のせいで目の前のチャンスが遠のいていくのだ。そんな事でヒートランは諦め、別のクジラを探す事になる。何度かクジラを発見するも、泳げるような感じではない。かなり広範囲に捜索したが、やがて、クジラ自体が見当たらなくなった。ゲスト4人乗船の「スパイホップ」は母子を発見、泳げるチャンスを伺っているとの連絡が入る。こちらはなかなか良いクジラに出会えないので、スパイホップがエントリーできた次に譲ってもらおうとの話になったが、なんと、このタイミングでガス欠。エマージェンシータンクのガソリンを補給。この直後シンガーを見つけるが、徐々に深いところへ移動している。浮上時にもかなり移動するので結局撮影できず。このまま漂流なんて事は勘弁願いたいので、母子はあきらめることにし、早々に帰港した。写真は別の日に撮ったもの。
2007/09/21
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トンガホエールスイム9日目今日も船はフルーク。ガイドはトニー、乗船するゲストは3人。スキッパーはフィリッペ。相変わらず、危なっかしい操船。今回のトンガは日記のようにレポートしているのでこの日のことを書いているが、実は、ほとんど記憶が無い。別段疲れがたまっていたという自覚は無いのだが、船上ではほとんどうたた寝していた。クジラはというと、度々発見するには発見したようだが、泳げるようなクジラには出会わなかったようだ。この日は、ほとんどのホエールスイム船がこのような状況だったらしい。写真が無いと寂しいので・・・これは、トンガタプの国内線ターミナル前で撮影。このー木、何の木、気になる木♪ モドキ?
2007/09/20
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8日目今日もフルークで海に出る。ガイドはエミさん。昨日トンガ入りしたIHさんと私で乗船するゲストは2人。ホテル裏のジェッティーで船を待つ。遠くにフルークの影が見え始める。どうやらまた別のキャプテンらしい。船を桟橋へ横付けさせようとするが上手く行かない。何度もコンクリートの護岸に船体をぶつけている。「だいじょうぶか?」今まで、1000回以上この手の船には乗船しているが、こんなに下手な操船は初めてだ。結局、皆が桟橋から船を引き寄せるようにして、やっと着岸した。彼の名はフィリッペ元ホエールスイムガイドだったがスキッパーに転身したそうだ。何とか無事出港する。昨日ほどではないが波は穏やか。南西方面を目指して、船は飛沫を上げていく。外洋に面したリーフの内側でいくつかブローを発見する。どれもシングルのようだ。そのうちの一つに、船を寄せようとブローが上がった方向を目指す。突然、船の横でブローが上がる。あまりにも呆気なくクジラが現れた。海に入る準備が間に合わない。あわてて、エントリーするがすぐに潜ってしまった。仕方なく船に戻る。クジラが消えていった方向を、再びブローが上がるのを探すべく注視する。絶好のチャンスを逃してしまった悔しさがにじむ。しかし、再び、船のすぐ横でブローが上がった!こんなことがあるのか?キツネにつままれた気分になりながらも入水。クジラと並泳を果たすも、しばらくすると、深淵に姿を見失う。船上からブローを探す。なんと、また、船のすぐ横でブローが上がるではないか!!どうやらこのクジラは船に興味があるらしい。好奇心旺盛な子クジラの場合はこのようなこともあるそうだが大人のクジラでは珍しいことのようだ。何度もエントリーし、しばらくして見失い、そして再び船の横にクジラが浮上。こんな事を何時間も繰り返していた。船上でランチを取っているときでもすぐ横で「ブシューッ」とブロー。「お昼ご飯ぐらい、ゆっくり食べさせてよー」うれしい悲鳴を上げつつ、マスクとフィンを装着して海に入る。真横に上がったクジラが、じっと動かないでいる。こうなれば、こちらにも余裕が出てくる。クジラへの性急なアプローチを避けて、あおり足でゆっくり進む。手を伸ばせば、触れるぐらいの距離まで近づく。まぶたを閉じているのが判る。どうやらこのクジラはうたた寝をしているようだ。 「!!!」こちらに気づいたクジラ、ゆっくりと潜り始めた。しかし、20mあたりの海底付近でじっとしたまま動かない。時には、海底で休んでいたクジラがお腹をこちらに向ける事もあった。エミさんの話では、かなりリラックスしている状態との事。写真から判別すると、どうやらメスのようだ。(クジラ・イルカ類は、生殖孔の外観で雌雄の区別が出来ます。)何度かこんなことを繰り返していたが、海底にいた彼女が、急に猛スピードで泳ぎだした。「やるっ!」直感した私はカメラを水面に上げて身構えた。目の前で30t の巨体が宙に舞う。ブリーチングだ!!まさか、海に入った状態でブリーチングが見られるとは予想もしていなかった。写真は、あいにくピントを外していたが、至近距離の海面から観察できたその迫力には圧倒されるのみだった。エミさんも大人のブリーチングを海に入った時に見たのは初めてだったそうで、かなり興奮していた。クジラの姿が消え、一面が白い波飛沫に覆われた海面を見ながら腹の底から笑いがこみ上げてきた。私は、水面でカメラを構えていた為、クジラが飛び出す瞬間と着水した時は見ていなかった。しかし、IHさんは、冷静に水中撮影をこなしていたそうだ。で、IHさんの写真とセットで次のような一連の行動が記録できた。IHさん撮影IHさん撮影IHさん撮影夕刻、船は島々に囲まれたエリアに引き返した。入り江の手前辺りの小さなビ-チのごく浅いところでペアを発見する。もう既に日は傾き、透明度も良くなかったが一応海に入ってみる事にした。暗く緑色の海だった。これでは、たとえ見れてもまともに撮影は出来ない。早々に諦め船に戻った。しばらく、船でペアを追走する。別の場所にいたクジラが、一頭また一頭と合流しだした。7-8頭のヒートランが始まった。絶壁の島の壁際ギリギリを何頭ものクジラが泳ぎすぎていく。いくつもが重るブローの音と飛沫の迫力に凄みを感じる。ペクトラルスラップやブリーチングが繰り広げられる。彼らは今、自分の命の証を残そうと全力で戦っている最中なのだ。帰港、船は桟橋に接岸しようとしている。”ガンッ”またぶつけたようだ。お世辞にも安心できるとはいえない操船にハラハラしながらも今日の出来事を思い返し、笑みがこぼれてきた。
2007/09/18
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防備録の意味で撮影機材について書きます。使用した機材は、船上用に、NIKON D200+AF-S VR NIKKOR 70-300mm 4.5-5.6G水中用に、FUJI S5Pro+AF-S DX NIKKOR 12-24mm 4G通常、船上ではAFを動態追尾モードで秒5コマの連写を行い、(海況によって、船が大きく揺れますので、)レンズの手振れ補正はアクティブモ-ドに設定し、その中から、使えそうなものを採用しました。船上での、クジラ撮影は高速連写機であればあるほど有利だと思います。連写間隔が広いとそれだけ良いタイミングを逃してしまうリスクが高くなります。ただし、ブリーチング(クジラのジャンプ)の撮影はAFでは時間的にフォーカスしきれない為、MF置きピン(あらかじめ距離値を固定してしまう撮影方法)で行うほうが良い様です。また、カメラには容赦なく波飛沫が掛かりますので、ハードケースかウォータープルーフバックで撮影時以外は保護し、撮影時はレインカバーとレンズプロテクタを装着した方が良いと思います。レンズに関しては、18-200mmの使用も検討しましたが、テレ側200mm(35mm換算300mm)では、すこし物足りないと思います。しかし、船のすぐ側に鯨が来ることも多々ありますので、その場合は18mm側が大いに有効だと思います。(テレ側はトリミングでしのぐという手もあります。)一方水中では、12-24mmのズ-ムレンズが非常に有効でした。10-17mmズームフィッシュアイの使用も考えましたが、このレンズでは、画角を持て余してしまう場合の方が多いと思います。フィッシュアイが活きるほどの距離にまではめったに近よれません。露出はマニュアルで、SSは最低1/200を確保、絞りを5.6~6.3に固定しました。クジラは非常に大きいので、ゆっくりした動きに見えてしまいますが、1/200よりも遅いSSだとたいてい被写体ブレを起こしてしまいます。絞りに関しては、ワイドレンズはもともと被写界深度が深いのでもっと開けても良いのかもしれませんが、必死に泳ぎながらの撮影では、目にきっちりとピントを合わすことは、私には至難の業なので、ある程度絞った訳です。光源は全て自然光です。ストロボは、光が届く距離にまでめったに近よることが出来ませんし、なにより泳ぐのに邪魔なので使用しません。SSと絞りを固定した場合、時間や天候、海水の濁り具合、撮影方向(下向き・横向きなど)によって露出値が大きく変わってくることになりますが、ISO値を自動制御にすることで適正露出になるようにしました。海の中は、肉眼で感じるよりも実際は暗く、よく晴れた日中の海面直下の順光横方向撮影でもISO320なんて事もありました。データ記録はRAWで行い、PC上でホワイトバランスを修正しています。ホワイトバランスについては、グレーピッカーが有効です。その場合、クジラの白い部分や自分の白いフィンで測定します。この作業で、比較的近寄れた、ある程度太陽光が当たっている被写体は青カブリを除去できます。ホワイトバランスに関してはあらかじめ、白フィンでプリセットしておくのも手かもしれません。こちらの写真は、先日ご紹介したシンガーが水面で見せたペクトラルスラップです。胸鰭をペクトラルフィンと呼びますが、胸鰭で水面を叩きつけることをさします。(横→縦へトリミングしています。)この時、水中はこんな様子でした。(まともに撮れてませんが・・・)こちらは、正面顔。結構可愛い顔をしています。
2007/09/15
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7日目ヒートランとの遭遇で、へとへとになりながらも撮影を終えた我々は別のクジラを探すべくボートを南西へ向けた。しかし、全く泳げそうなクジラとの遭遇とは果せないまま、日差しが傾き始めた。もうそろそろ寄港に向けて進路を変える頃かと思ったそのとき、複数のブローを発見、1つはかなり小さい、弱々しい噴気をあげている。母子!!ヴァヴァウでのホエールスイムは、子クジラを驚かせない手順さえ間違わなければ、母子のクジラがもっとも接近しやすいのだそうだ。こちらに来てから母子クジラとの遭遇を切望していた私としては、午前中の疲れも忘れ、子クジラとの出会いの可能性に心躍る瞬間だった。ところが、この母子にはもう一頭のクジラがついていた。「エスコート」と呼ばれるオスクジラだ。母子のクジラにつくオスクジラは、父親というわけではなく、メスとの次の交尾の機会をうかがう為に付きまとうのだ。エスコートの存在は、母子にとって有益な場合と有害な場合があるようだ。メリットとしては、外敵から母子を守ることがあげられる。もっとも、オスクジラとしては、メスとの繁殖を果したいがために、外敵を駆逐するだけであり、子クジラを守ろうとする気は毛頭ないと思われる。デメリットとしてはライバルの存在が考えられる。母子につくエスコートは、必ずしも1頭とは限らない。複数のオスがつくことで、オス同士の戦い(ヒートラン)が始まり子クジラが巻き込まれてしまう可能性が考えられる。母子クジラ観察の際、エスコートの存在が問題になることがある。エスコートの性格によっては、母子への接近を嫌って我々との間に割って入たり、また、母子のみの場合のほうが、彼女たち自身がよりリラックスしておりゆっくりと観察できるそうだ。ガイドのトニーから、母子観察に当たっての注意事項の説明がされる。入水も接近も静かにゆっくり行うこと、暫くはトニーよりも前に出ないこと潜水は禁止されていて、水面に浮いた状態での観察のみが許されているなどが注意事項だ。暫くの間はボートを少し離れた距離に保ち、彼女らにボートに対する警戒心がないことを確認する。そして、大人のクジラにエントリーするよりもすこし離れたところから入水。通常の接近もより慎重に何倍もの時間をかける。(通常でも禁止なのだが)フィンでの波飛沫は絶対に厳禁、水面をたたくバシャバシャ音で子クジラを驚かせないためだ。幸いクジラたちは落ち着いているようだ。(クジラの速度に追いつけないため通常は行わない)あおり足で徐々に接近する。ぼんやりと母子の姿を確認する。母親に比べて子どもの小ささが印象的だ。(と言っても、この頃の子どもは4~5mもある。ただし母親は12~15mあまり)さらに距離を縮めようとするが、母子の下にいたエスコートが浮上してきた。どうやら我々の存在が気になるらしい。こちらにどんどん接近してくる。エスコートに母子への視界をさえぎられる。彼はこちらを一瞥する。「ふん、人間か・・・」こちらを見下したかのように、そのまま母子の前方へ潜行していった。エスコートに導かれるように親子も速度を上げた。子クジラが大きく口を開けて、授乳をねだっている。撮影を試みるが、証拠写真にしかならなかった。(トリミングしています。)夕刻、今日到着したゲストからクジラの様子を聞かれる。私は、努めて冷静に話そうとするのだが、興奮を隠し切れない。残りは4日。更なるクジラとの出会いに胸が高鳴った。
2007/09/13
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7日目風はますます弱まり、ベタ凪だ。ホテルの窓から見える海を見て、思わずニヤついてしまう。海面に写る、朝焼けの残る雲が印象的だ。今日も残留組ゲスト3人で海に向かう。ガイドはトニー。ボートキャプテンは、今回初めてのオンゴ。オンゴはヴァヴァウのホエールスイム船のスキッパーの中でも1・2を争うベテランの名スキッパーで、越智さん・トニー共に一目を置いている存在のようだ。入り江を出てしばらく進むと、幸先よくいくつかのブローを発見した。既に他のボートが付いていたが、親子かもしくはペアらしきブローも見える。オンゴはそれらには目をくれず、一直線に北上、外洋を目指す。オンゴとトニーにはその先に多数のブローが見えていたのだろう。船をそれらのブローに近づける。1・2・3・4・5、5つのブローが見える。ヒートランだ!!この季節、トンガに集まるザトウクジラは、複数のオスが互いに牽制しながら、繁殖権を巡って、一頭のメスを追いかけあうことがある。この行動をヒートランと呼ぶのだが、(メイティングポッドとも、ラウディグループとも呼ぶ)体長15mにも達する大人のクジラが激しくもつれ合いながら泳ぐ様の迫力には圧倒される。ヒートランと泳ぐ場合、このクジラの群れにタイミングを合わせてエントリーするのだが、全速力の彼らについて泳ぐことなど到底出来るわけがない。そこで、彼らが進む斜め前方へボートが回り込み、彼らがいるであろう方向ではなくて、彼が進んで行くであろう方向へ、斜めから合流できるように泳ぐのだ。斜めに泳いでいる時は、当然クジラの姿は確認できない。ただひたすら、タイミングが合うことを願いながら一心不乱に泳ぎ続けた。やがて、私の右後方にクジラのシルエットが見えてきた。私は泳ぐのをやめて身構えた。真正面だ!!前々回、クジラと泳いだ時も真正面に出てしまったがその時はゆっくり泳いでいるクジラだった。しかし、今回はヒートラン。彼らは全身全霊の力で戦っている最中なのだ。もうどうすることも出来ない。下手にかわそうとしても、彼らの動きに合わせて身を翻すことなど不可能だ。私は、肝を据えてこのまま撮影することにした。目前で、先頭のメスがやや右へ進路を変えた。私の目の前を次々にクジラが泳ぎ去っていく・・・後ろを通ったクジラもいたようだ。しかし、今、現実に展開されたシーンがウソのように思えた。なぜか現実感を感じないのだ。あまりにも呆気なくヒートランに遭遇出来た為だろうか?それとも、一瞬にして彼らが通り過ぎたからであろうか?トニーは、ただ一人、群れを追いかけている。彼らプロカメラマンとの違いを痛感したのは、体力と泳力の根本的な差だった。体力的にも泳力的にもとても追いつけないと、早々とあきらめてしまうような状況でも、彼らプロカメラマンは、クジラに追いすがり撮影をこなしていくのだ。結局、我々はこのグループに4・5回チャレンジした。上手く、撮影できた時もあれば、タイミングが合わずに、後姿だけを確認した時もあった。しかし、彼らの勢いから感じる凄まじいエネルギーは毎回、体中が痺れる様な感覚になるほどのものだった。
2007/09/11
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6日目悪戯好きの天使に魅入られた一行がトンガを離れると同じくして、風が弱まり始めた。昨日までに、2日も強風の為に海に出るのをあきらめていた我々としては、いやをなしに期待に胸が膨らむ。今日から乗船する船は「フルーク」このボートを2or3人でシェアすることになる。スキッパーは今日もノーファ、ガイドは越智さんという陣容。昨日までの強風が若干収まり、クジラのブローもいくらかは見つけやすくなっているのだが、泳げるクジラとはなかなか出会えない。昼食を食べ、気分一新したところで、しばらくすると、1頭のクジラが浮上してきたところに出くわした。越智さんによると、シンガーだとのこと。繁殖海域に集まるザトウクジラのオスは、その海域共通の歌を歌うことが知られている。彼らのことをシンガーと呼ぶのだ。冬の沖縄でダイビングをしていると、まれにクジラの歌声が聞こえてくることが有るが、彼らとは、何キロもの距離を隔てている為、その姿を見ることはない。しかし、今は、ボートの真下で歌っているのだ。耳を澄ませば、エンジンを切った船上でもその歌声がわかるくらいだった。越智さんは、水中で歌っているクジラを探す為にエントリー。首尾よくクジラを発見したようだ。海に入るよう合図が出る。中層に浮かんで歌っているオスクジラを確認する。今回はじめて知ったことなのだが、シンガーは頭を下にした逆立ちのような状態で歌うのだ。この写真は、斜め上から撮影した。クジラの頭は真下を向いている。 間近かで聴くクジラの歌声からは、大太鼓をおもいきり叩いた直後に体を押し付けたような振動を感じる。体全体がクジラの歌にあわせて震えるのだ。こんな経験をするとは予想もしていなかったので、驚きと感動で頭の中が真っ白になった。 歌い終えた直後呼吸の為、浮上してきたところ。告知:10月頭のTBS系「世界、ふしぎ発見」で トンガのホエールスイムが特集されます。 ちょうどトンガにいた頃に、取材チームも来ていました。 興味がある方は、是非ご覧ください。
2007/09/10
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