魔法戦記 第四章

魔法戦記ロゴ

魔法戦記 第四章「戦乱 再び」(後編)


イザレスの前に二十人以上はいるだろうか、大勢の天界軍兵が立ちふさがった。
「我ら天界人に新たな楽園(ヴァルハラ)を!!!」
「貴様らぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!邪魔だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
イザレスは居合い抜きの体勢から、天界軍兵をすれ違いざまに斬り抜けた。
「神影流居合剣『雲斬りの太刀』(しんかげりゅういあいけん『くもぎりのたち』)!!!」
剣を鞘に収めると同時に、天界軍兵は血を噴き出して倒れた。イザレスは高笑いをし、
「ははははは!!!ドミニオンッ!!!お前の兵はこんな程度か!!!この地を奪うつもりならば、本気でかかって来い!!!」
町の外にいるシークたちは、この戦いを見ていた。流石に自分の父が戦う姿には唖然としていた・・・。
「強い・・・・、強すぎる・・・!!これが父さんの力なのか・・・。」
「シーク、イザレスさんの戦い方を見て、何か気づかない?」
「・・・。そういえば、父さんの戦い方・・・、日本っていう国にだけいるという天下無双の剣士『サムライ』に似ている・・・。」
「そう、イザレスさんは小さい頃から日本にある忍者の村神影村で、剣匠であり、上級忍者の神影村村長、松尾芭蕉に侍の極意という極意、奥義という奥義を習っていたの。そして、全ての奥義を身につけてまさに最強の剣士になったの。このときからイザレスさんはこう呼ばれるようになった・・。『サムライマスター』と・・・。」
「そうか・・・。だから『サムライマスター』と呼ばれているんだね、母さん。」
「その通り!!」
「よおし、頑張れ、父さん!!!」
イザレスは次々と襲い掛かってくる天界軍兵を切り払いながらドミニオンのほうへ向かっていた。もちろんシークたちの応援の声は聞こえていた。
「まったく・・・。あれだけ逃げろといったのに・・。これだと戦いづらいよ・・・。でも、俺は負けない!!ドミニオン、貴様をこの手で倒すまでは、死んでたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
イザレスは、ついにドミニオンのいる場所までたどり着いた・・・。

ドミニオン・・・。ドミニオン・クルーゼ・カイゼル、天界軍の総帥である。
黒いマントを着ていて、腰には剣を身につけ、背中にはなにやら阿弥陀仏の後光のようなものを装備している。一番の特徴は、黒い仮面で顔を隠していることだ。
背丈は大体180センチぐらいで、性別は不明である・・。
「・・・、やっと見つけたぞ・・・ドミニオンッ!!!!!!」
「ふん、きたかイザレス・レイム。待ちくたびれたぞ・・・・。どうだ・・・。面白かったか?」
「これはこれはご丁寧にご挨拶までいただいて誠に有難う御座いました。お返しに貴公にあたたかな死をこのイザレスがお送りします・・・。」
「フッ・・。やってみるがいい。」
イザレスは剣を抜き、ドミニオンのほうへ向かって走っていった。
「神影流神速剣『神威の太刀』(しんかげりゅうしんそくけん『かむいのたち』)!!!」
イザレスはドミニオンに目にも見えない速さの連続斬りを放った。しかし、ドミニオンはいかにも簡単によける。だが、この攻撃はフェイントだったのか、ドミニオンが『神威の太刀』の連続攻撃の回避でよろけたときに攻撃をやめ、高く跳び上がった。
「ぐっ・・・しまっ・・」
「よくぞ『神威の太刀』を避けたものだ・・。しかし、隙を見せたのが命取りだったな!!!」
イザレスは剣に指を当て、なにやら呪文を唱え始めた。
オンカラハッタ ウンハッタ ヴァジラガソワカ ヴァジソワカッ!!!!
すると妖刀朔夜が紅く光り、その光からは凶々しい(まがまがしい)気を放っていた。
「我、全を制し、全を越す(えっす)!!神影流奥義凶滅羅刹剣『天裂の太刀』(しんかげりゅうおうぎきょうめつらせつけん『てんれつのたち』)!!
イザレスは、地面に剣をたたきつけた。そこから死霊の魂が吹き出て、爆発を起こした!!!
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
ドミニオンは爆発に巻き込まれ、後ろに20メートルくらい吹き飛ばされ、家の壁にたたきつけられた。
「げはぁっ!!!」
ドミニオンは血を吐いて倒れた。イザレスはドミニオンにむかってこういった。
「お前とは敵同士だったが、こうやって戦えてよかった・・・・。」

もちろんこの戦いを見ていたシークたちは声を張り上げて喜んだ。
「やった!!やっぱり父さんはとても強ぇぇぇっ!!!!」
「イザレスさん・・・。ご苦労様!!」
「きゃーーーっ!!!やった!!やった!!これで終わったんだね!!!」
だが、これで終わりではなかった・・・。
ズビュゥゥゥゥン!!イザレスの後ろ側からビームが放たれ、イザレスを貫いた・・・。
「がっ・・、がはぁっ!!しまった・・・。エーテリオン・ビット(魔力誘導式遠隔攻撃モジュール)かっ・・!!!」
イザレスの腹からは大量の血が流れていた・・・。エーテリオン・ビットと呼ばれる球状の物体は、ドミニオンの背中の後光のようなもののほうへ戻っていった。
「ドミニオン・・・、き・・貴様・・・、生きて・・・いたのか・・・。」」
「これで・・・五分五分だな・・・。」
シークたちは・・・。
「父さんっ!!!」
「イザレスさんっ!!にげてぇっ!!!!」
だが、この声はもはや戦いに集中しているイザレスには聞こえていなかった・・・。
「俺は・・・・必ず・・守ってみせる・・・。この・・クロンバレイを・・・。命を懸けてもぉっ!!」
イザレスは両手の人差し指と中指をクロスさせて前に突き出した・・。
「・・・、本当は使いたくなかったが・・・。もう、後戻りはできないからな!!ようし!!!最後の切り札だ!!」
アムド ジャスベル ヴィスケル ヴィロウル ゼム ガ ライズメラガ クラウゼ ジェスマラガイラム!!!全ての大気を司りし森羅万象の精霊マジョリカ・マジョルカよ・・・。今、我の全ての言葉を聞け!!我に、究極の重力を操る力を授け給え・・・。そう、この命と引き換えに・・・!!!!
「こ・・・この呪文は・・・!!貴様ぁっ!!!」
「究極臨界超重力魔法(ヴィグレ・ズ・グラヴィゼオ)!!?まさか、ドミニオンを道連れにして自分も死ぬ気なの!!?やめて、イザレスさんっ!!!!」
「グラヴィティ・フィールドッ・・・展開!!」
イザレスとドミニオンの周りに紫色の半球状バリアが張られた。もちろんこのバリアは、超重力による破壊を最小限に防ぐためである。
「イザレスゥゥゥゥゥゥッ!!!きさまぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「くらえ、ドミニオン!!!!!そして永遠の闇に滅せよ!! 究極臨界超重力魔法(ヴィグレ・ズ・グラヴィゼオ)ォォォッ !!!!
」 「グラヴィティ・フィールド」内の地面がひび割れ始めた。この中の重力は100G、つまり、地球上の重力の100倍である・・・。
「がぁっ!!!くっ・・・、おのれ・・・。」
「ほう・・・、100Gといったら普通の人間だったら、とっくにせんべいになっちまう重力なのに・・・。ドミニオン、お前ただの人間じゃないな・・・。」
「フン、あんな下等動物と一緒にするな!!!」
「バーカ、俺らは下等じゃねぇ!!くたばれ!!!!10000Gだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
イザレスは思いっきり手を下に振り下ろした。すると、ドミニオンから骨の折れる音が聞こえた。ドミニオンは大量の血を吐き、地面に押し付けられた。しかし、ドミニオンの顔は笑っていた・・。
「ふっははははは!!イザレス・レイム!!たとえ私を倒したとしても、貴様が倒したのは10人のドミニオンのうちの一人に過ぎないのだ!!!」
「何っ!!!」
「また新しいドミニオンが貴様ら邪魔な地球人を粛清しに来る・・・。ふっふっふっ・・・・・、ぐあぁぁぁぁっ!!!」
ドミニオンは、そういい残し、押し潰された・・・。同時にグラヴィティ・フィールドも消滅し・・・・、イザレスは力尽きて膝をつき、地面に倒れた・・・。

シークたちは急いでイザレスのもとへ走る。ウィオラはイザレスに向かって手を突き出し、呪文を唱えていた。シークとシエラは、心配な顔つきで見守っていた。
「ホーレン ケルヴェラ メルガ ファライム・・・・・」
「母さん・・・、どう?」
「どっちみち無理よ・・・。今あたしができることは、イザレスさんの傷を癒すことだけ・・・。たとえ外見が治っても、あの魔法で魔力と生命力を使い切っちゃったから・・・・。どっちみち治らないわ。」
シークとシエラの目から、一筋の涙が出てきた・・・。シークとシエラは悔しかった・・・、自分の非力さが・・・・、自分たちでは何もできなかったことが・・・・。
「もっと強くなりたい」、二人は改めてそう思った・・・・・。

「ウィ・・・ウィ・・オ・・ラ・・。なぜ・・・、逃げなかった・・・。シークに・・、シエラも・・・。」
「父さんっ!!!」
イザレスが目を覚ました・・・。しかし、イザレスの体は消えかけていた・・・。
「ははは・・・。まあ、魔力だけじゃなく、体の全てのエネルギーがからんからんだからな。シーク・・・、どうやらさっき俺が倒したドミニオンは偽者だったらしい・・・。」
「何だって!!?じゃ・・・じゃあ父さんと戦っていたのは・・・・。」
「ホムンクルス・・・。人造人間だよ・・・。あいつそっっくりのな・・・。」
「父さん・・・・。」
「そこでだ・・・、シーク、無理は言わない・・・。俺の代わりに・・・ドミニオンを・・・、倒してくれないか・・・。この地球を・・・・・やつらに渡すな・・・。」
「・・・。分かった。約束するよ・・・。だけど、俺には力がないよ・・・・。とても一人では・・・・。」
「聖ラヴィスにリョウコという人がいる・・・。その人にこれを見せれば、きっとわかってくれる・・・。片目を黒い包帯で隠しているから、絶対わかるだろう・・・。」
イザレスは、首にかけてたネックレスを外し、シークに手渡した・・・。もうイザレスの体は半分以上消えていた・・・。
「シーク・・・、シエラ・・、ウィオラ・・、ブレイヴナイトの・・・未来を・・・、お前たちの手で・・・築いていけ・・・。たの・・ん・・だ・・・ぞ・・。」
イザレスの体は完全に消え、天へと上っていった・・・・。
「父さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!!!」

イザレスの死・・・。このことはすぐに世界中に広まった・・・・。イザレスは・・・、この時、真の『勇敢な騎士(ブレイヴナイト)』と認められた・・・。
そう・・・『ブレイヴナイトの英雄』として・・・・
第一幕 完結!!  第五章から第二幕スタートだ!!!

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: