大天使旅団 #1

大天使旅団 〈アークエンジェル・ブリゲード〉#1『封じられし神の聖域へ』(1)

時は今から10000年前・・・。超巨大戦艦『ヴォルデモート』を旗艦とした巡礼旅団『ゲヒルンの巡礼旅団』が、宇宙の果てに眠りし至宝『神の知恵〈ハーロー〉』を回収するため、宇宙へと飛び立った・・・。『ハーロー』・・・、それは灰色のおよそ20メートルくらいのさまざまな魔方陣が刻まれた巨大な長方形の石盤のような物体で、その中心には直径5メートルくらいの巨大な『魔源石〈スフィア〉』と呼ばれる球体がはめ込まれている・・・。『ゲヒルンの巡礼旅団』は教会直属の『旅団組合〈ブリゲード・ギルド〉』で、団員の200人のうち8割が教会の僧侶で構成されており、旅団長であり旗艦の艦長であるアルフォンス・ゼオートを中心にまとまっている大規模な旅団である。
この物語を語る前には10000年前に飛び立った『ゲヒルンの巡礼旅団』の話をしなければならない・・・・。なぜならばこれが全ての始まりであるのだから・・・・。

「ゼオート艦長、まもなく太陽系惑星群を抜けます。目標座標X:0,Y:0,Z:0地点まではここから空間転移移動〈ゲートジャンプ〉を行っても大体2時間くらいかかりますね・・・。」
『ゲヒルンの巡礼旅団』の旗艦『ヴォルデモート』は太陽系惑星群を抜け出し、高エネルギー源を発している地点へ向かっていた・・・。艦長であるアルフォンスは艦橋〈ブリッジ〉の中心のいすに座り、前方の巨大モニターに映る果てしなく広がる宇宙を眺めていた・・・。艦長のいすの前方の周りをまるで弧を描くかのように操舵手やオペレーター、砲撃手などの人がいろいろと調整のため機械と向き合っている。総勢5、60人ほどブリッジに居た・・・。そのほかの人は大抵はメカニック担当であり、巡礼旅団の団員の乗る人型機動兵器『AA〈ダブルエー〉(Artificial Angels)』のメンテナンスに明け暮れていた・・・。『ヴォルデモート』は全長約1280メートルの巨大戦艦で、収容できる『AA』の数は100体、武装は200cm亜光速レール砲『ゲヒト』を左舷右舷一門ずつ、200mmレーザー砲門『ヴァイス』を十箇所、そして艦首に装備された主砲120cm拡散陽電子〈ポジトロン〉ビーム破砕砲『デスペラード』である。
「そうか・・・、ならば空間転移移動〈ゲートジャンプ〉を!!!それと転移空間内で戦闘があるかもしれないので各砲門砲撃準備!!噂によると最近になって全宙域で『ヴェギル』という化け物〈クリーチャー〉が出始めたらしいからな」
「了解!!艦外ブレイズプロテクト展開!!総員衝撃に備えよ!!ゲートジャンプ開始!!!」
するとヴォルデモートの前方に空間のゆがみが現れ、ヴォルデモートはまるでその空間のゆがみに吸い込まれるかのようにして消え、空間のゆがみも消滅した・・・。

「転移空間にワープインしました。ブレイズプロテクト解除、これより戦闘時に備えマニュアル操作から自動航行モードに切り替えます・・・。そして亜光速移動フェイズ1からフェイズ2に移行します。」
「各推進系統のシステムに問題はありません。目標地点までの予想到達時間は約1時間半程度です。」
「分かった・・・。ふう・・・、ようやく我らは神の知恵を得ることができるのだ・・・。ここまでたどり着くまでどれだけ頑張ったか・・・。」
転移空間へのワープインも完了し、このままいけると誰もが思ったその時、艦内がものすごい爆音と共に大きく揺れた!!
「ぐぅっっ!!!ど・・・どうした!!エンジン系統のトラブルか!!」
「それはありえません!!なっっ、ぜ・・・前方に多数のエネルギー反応!!!今『人工知能システム〈A・D・A・M〉(Advanced Data Analyze Machine brains)』でこのエネルギー源を照合します。・・・・・!!!だめです、このエネルギー源はどの事象にも当てはまりません!!!正体不明です!!!」
「まさか・・・!!『化け物〈ヴェギル〉』!!やはりあのうわさは本当だったか・・・。各砲座、前方の化け物〈クリーチャー〉どもにヴォルデモートの艦砲をブチかましてやれ!!左舷、右舷『ゲヒト』『ヴァイス』・・・、撃てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!!」
アルフォンスの「撃て」の声と共に艦首の右側と左側それぞれ5門ずつ直径200mmの細いレーザー砲身が現れ、放射線状に青い光が放たれた。それと同時に艦の側面に装備されている全長300メートルくらいある長いレール砲からものすごい速さで直径200cmの実弾がそれぞれ5発ずつ撃ちだされた!!!撃ちだされた青い光の放射線と亜光速弾頭は、15メートル以上はあるだろうか、巨大な『ヴェギル』とよばれる生物に命中し、爆破していった。しかし、一向に減る様子もなく『ヴェギル』たちはヴォルデモートに襲い掛かる!!
「艦長!!『ヴェギル』の奴ら、ぜんぜんびくともしません!!はっ!!艦の装甲に『ヴェギル』が何体かくっついてきました!!!!」
ヴォルデモートにしがみついてきた『ヴェギル』達は腕を剣状に変形させて、艦を攻撃し始めた!!!攻撃のたびに艦内が大きく揺れる。
「左舷1番核パルスエンジン大破!!!ブレイズプロテクト発生装置機能完全沈黙!!!まずいですよ艦長、このままでは転移空間抜ける前に・・・。」
「ちいぃっ!!!流石にこの艦のみで『ヴェギル』の殲滅は無理にも程があるな・・・。AA隊の発進準備はできているか!!!AAドックの方へ通信をつなげ!!!」
すると、前方の巨大モニターに小さく、ヘルメットをかぶったAAのパイロットらしき一人の男性が映った。巡礼旅団のAA隊のエースパイロットのクラウゼ・オルキンス・・・、歳は30代前半くらいで銀縁のめがねをかけていて、かなり知的な男性である。
「こちらAA隊長クラウゼ・オルキンス。いつでも出撃OKです!!!早く出撃命令を!!!」
「ふむ、分かった!!!AA隊、発進せよ!!!!」
「了解!!!みんな、自分のAAに乗り込んで!!外にへばりついた『ヴェギル』を一匹も残さず蹴散らしますよ!!!」
クラウゼはドックに収容されている巨大なロボットの方へ向かった。そう、そのロボットこそ先ほどからよく出てきた『AA〈ダブルエー〉』である。『AA』とは、本来は宇宙や地上などで至宝などを発掘するための作業用ロボットとして造られる予定だったが、宇宙や地上に『ヴェギル』と呼ばれる謎の生命体が出没し始め人々を襲うようになってきたので、急遽ヴェギル掃討用の機動兵器として造られるようになった。『AA』という名は、「人造的な天使」を意味する英語『Artificial Angels〈アーティフィシャル・エンジェルス〉』の頭文字をとって名づけられた。その名のとおりその機動兵器はあらゆるところに天使らしい武装が施されている・・・。例えば『AA』の頭の上には天使の輪が浮いていたり、背中には白い天使の翼の形をした『ウイングスラスター』と呼ばれる加速ブースター兼エネルギー集約装置が装備されていたりなど、さまざまな点で天使と酷似させる部分がある。
ここにあるAAは全て型式番号AVM-021A、『アイオーン』と呼ばれている種類である。『アイオーン』は背中のウイングスラスターの翼の部分に高熱振動刃〈ヒートブレード〉が仕組まれており、ウイングカッターとしても使うことができるようになっている変わったAAである。他の武装は弐拾七式(試行錯誤を繰り返し、二十七番目のものがようやく完成体となったので)ビームソードや肩部400mmレール砲など一般的にAAに使われている武器ばかりである。巡礼旅団のAA隊長であるクラウゼの『アイオーン』は特別仕様で、主な武装におよそ8メートルほどの長さの500mm超高インパルスプラズマビーム砲『アフロディーテ』を装備していて、機体のカラーリングも本来の白色に肩や、腕や足の関節の部分に青色の塗装が施されている。
「全アーティフィシャルエンジェル、カタパルトへ移動完了。スライドレール展開!!発進経路、進路クリア!!!AA隊、発進どうぞ!!!!」
「分かりました!!クラウゼ・オルキンス、『アイオーン・カスタム』発進します!!!」
カタパルトに居た全ての『アイオーン』が、この一声と共にスライドレールを通って次々と艦の外へと飛び立っていった。
「全AA発進しました!!」
「よし、AA隊はヴォルデモートにくっついてくるやつ等を蹴散らしてやれ!!!本艦はできるだけ前方の敵を蹴散らす!!とにかくこの艦に化け物どもを近づけさせるな!!」
「了解!!みんな、まずはあの『ヴェギル』を倒してください!!私は艦首について『アフロディーテ』による遠距離射撃で前方から来る『ヴェギル』を攻撃します!!その『ヴェギル』を倒したら私の方を援護してください!!!」
「了解、あとで隊長を援護しますから!!!俺達も頑張ります、安心してください!!!」
クラウゼの『アイオーン』は艦首につき、背中に装着された『アフロディーテ』を外し前に構えた。背中の四枚のウイングスラスターが大きく広がり激しく赤熱して火花が散る。『アフロディーテ』の銃口に紅い光が集まりその周辺でパチパチと電磁波がわずかに発生し始めた。
「さて・・・、往生際が悪いクリーチャーさんたちに一発食らわしてやりますか!!!『アフロディーテ』、発射〈シュート〉ッッッ!!!」
まるで雷が鳴ったようなものすごい轟音と共に紅い光の波動が放たれた。その紅い波動に触れた『ヴェギル』は粉々に吹き飛ばされていった。そして艦にくっついた『ヴェギル』も他の隊員によって撃破されていった。
「目標地点到達まであと10分!!」
「ようし!!操舵手!!ゲートアウトの準備を!!!!それと、初めて使うが・・・拡散ポジトロンビーム破砕砲〈デスペラード〉を使えるように準備してくれ!!」
「無茶です!!!『デスペラード』はエネルギーを多く食います!!ここで使ってしまったら帰る分のエネルギーもなくなっちゃいますよ!!!やはりここは切り抜けたほうが・・・」
「ここでやらなければ俺達は死ぬ!!『化け物〈ヴェギル〉』に全てを破壊されつくして・・・。それでもいいのか!!!!」
「しかし、艦長!!!!」
「核パルスは使えなくなるが、そのためにあるのが予備燃料ブースターだろう。心配は要らないさ・・・。」
「そうか・・・それがありましたね、まあ危険な賭けになるかもしれないがやってみます!!!1番核パルスエンジン最大稼動・・・、艦首衝角〈ラム〉展開、主砲ジェネレーター接続・・・、陽電子収束開始!!!」
すると、艦首の衝角が縦に分かれて左右に開き、その左右に分かれた艦首の切れ口のような部分に左と右合わせて20箇所のビーム砲の砲身と、2つに分かれた艦首の間には大口径のビーム砲の砲口がのぞいていた。そして、左右対称的に外側から順に紫色の光が集まり始めた。艦首についていたクラウゼは急いでその場を離れ、変形した艦を見た・・。
「とうとう使いますか・・・『デスペラード』を・・・・。戦艦では珍しく艦の内部に忍び込ませた武装のうえ、主砲では珍しい拡散タイプですね・・・。これは見ものです・・・。おっといけない、またいつもの癖が・・・ここは急いでこの場を抜けるべきですね・・・。みなさん、まもなく主砲が発射されます。早く艦の中へ!!!!」
クラウゼたちAA隊の『アイオーン』は急いで艦のカタパルトへと帰還していった・・・。そのうちにもデスペラードのビーム砲口に次々と光が集まっていく・・・。
「エネルギーチャージ率80%を突破、84・・・87・・・・92・・・94・・・」
「ターゲット複数広域ロックオン完了!!!」
「97・・・99・・・100%!!!エネルギーチャージ完了!!!主砲射程上進路クリア!!!!」
「これで最後だぁぁぁっっ!!!『デスペラード』・・・、撃てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!!!」
左右に分かれた艦首についている20箇所のビーム砲口と、中心の大口径拡散ビーム砲口から一斉に紫色で、ものすごい量の電気を帯びた光が放射線状に放たれた・・・、轟音と共に。この紫色の陽電子〈ポジトロン〉を収束して得られた滅びの光は前方の『ヴェギル』を跡形もなく粉砕していく・・・。その後奥の方から大きな爆音と共にまばゆいほどの白い閃光がほとばしった!!!ヴォルデモートのクルー達は、はじめて見た主砲のすさまじい威力の前に唖然となった・・・・。
「これが・・・・、主砲の威力・・・・。」
「すごい・・・・・・・・。」
「おっと・・・、まもなく目標地点に到達します・・・。」
「よし、ついにたどり着くぞ・・・。座標X:0,Y:0,Z:0・・・、封じられし地『神の聖域〈シオニエン〉』へ・・・。ゲートアウト!!!!」

#2へ続く

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