大天使旅団 #3

大天使旅団〈アークエンジェル・ブリゲード〉#3『封じられし神の聖域へ』(3:『死の螺旋』)


アルフォンス達が『シオニエン』の内部に入った瞬間、爆音が響き始めた・・・。かなり激しい戦闘が起きているようだ。
「始まったな・・・。さあ艦長たち、僕達も早いところ最深部へ行って『ハーロー』を回収しましょう。」
「あ・・・ああ。」
アルフォンス達は奥の巨大な自動扉を通って、かなり広い部屋に出た。そこは円形の回廊があり、その中心は空洞になっているが、魔方陣がその空洞をふさぐように描かれているのでいくらAAでも入ることができない。
「な・・・なんじゃこりゃ?」
「魔方陣だ・・・、まあこんなものがあっても決しておかしくはないですがね。何かの進入防止システムでしょうね・・・。」
「隊長・・・、ということは・・・」
「そう、どこかにこの魔方陣を制御する端末があるはず・・・。ここは後回しにして先に進みましょう。」
このまま向こう側の扉を開けようとしたが、どうしても開かない。その扉にも魔方陣が描かれてあるが、床にある魔方陣と色が違う。床のものは金色、扉のものは緑色である。しかし、その近くにも扉があったが、とてもAAでは入れないくらいの大きさである。
「あの部屋・・・、明らかににおいますね・・・。おそらくあの部屋に魔方陣の制御端末があるのでしょう。ここでこの僕の出番と言うわけです。」
「待て・・、ここにも『ヴェギル』が居るのかもしれないんだぞ!!!一人じゃ危険だ!!!!」
するとクラウゼはコクピットを開けて、椅子から立ち上がって腰に装備している銀色の片手持ち拳銃を取り出してアルフォンスのAAを向いてこう言った。
「大丈夫、僕にはこの44〈フォーティーフォー〉マグナムと念力があるのですから。艦長たちは心配しないでそこから動かないでくださいね。」
クラウゼはAAを座らせてから、コクピットからAAの手や足に上手く飛び移りながら下に降りた。そしてその隣の部屋のドアを開いて中に入った。
「あった・・・。これが魔方陣の制御端末・・・・、『Magic Canceler System Green』・・・、なるほど、これは緑の魔方陣を制御している端末らしいな。」
クラウゼは端末をいじり始めた。その端末の画面にやたらと難しい文字や数字が現れてきた。しかしクラウゼは余裕な表情で端末のキーボードを打ち続ける。
「流石に魔方陣を制御する端末だからかなり手ごわいと思っていたが・・・、これは楽勝ですね。」
そして起動スイッチらしいものを押すと、画面に「Magic Canceler System Start」という文字が現れた。その頃外に居たアルフォンス達は緑の魔方陣の描かれた扉の前で待っていた。すると扉の緑色の魔方陣が消えていった。
「おっ、クラウゼのやつ上手くいったようだな。これでこの先に行けるというわけだ・・。クラウゼが戻ってきたらこの先へ進もうぜ。」

その頃、『神の聖域』の外ではヴォルデモートのAA隊とヴァルハラの自動防衛システムとの激しい戦闘が行われていた。自動防衛システムのAAは機動性が高く、AA隊の攻撃をいとも簡単に避けながらヴォルデモートに攻撃を仕掛けていった。
「くそぉっ!!!何だよあの機動性は!!こっちの攻撃が全然当たらないじゃないか!!!」
AA隊は防衛システムのAAにレール砲を連発して攻撃を仕掛けるものの、やはり簡単に避けられてしまう。するとヴォルデモートを攻撃していた防衛システムのAAはAA隊の方へ向かってきた。
「こ・・・こっちに向かってきたぞ!!!とにかく接近戦で敵を倒していくぞ!!!」
ヴォルデモートのAA隊は、腰に装備されている弐拾七式ビームソードを取り出して防衛システムのAAに向かって突撃を仕掛けた。しかし、その何機かは誰もいないはずの後ろ側から放たれたビームにコクピットを貫かれ四散していった・・・。AA隊のAAの何機かが後ろを見ると、そこには剣先にブースターをつけたようなものが20個くらいあった・・・。
「こ・・・これは『エイラム』!!!!みんな、ここを離れ・・・・ぐあぁぁぁっ!!!!!」
その『エイラム』と呼ばれる物体の先から緑色のビームが放たれAA隊のAAを次々と破壊していった・・・。しかし、その中で激しい『エイラム』の攻撃を全て避けきるAA隊のパイロットが居た。アシェル・アルスタイン・・・、若干17歳のAA隊の副隊長であり、彼の乗る『アイオーン』も特別仕様である。彼の『アイオーン』はとにかく火力を重視した武装を搭載しているので動きは鈍いと思われるのだが、機動性は強化ブースターである『イグニス』を使用しているので通常の『アイオーン』と同じ位に向上させた。
「くっ・・・、しぶとい!!!クラウゼさんたちが帰ってくるまで僕達もつかなぁ・・・・。いやっ、ここで弱気になってはいけない!!!まずは邪魔な『エイラム』を撃ち落さなければ・・・・。」
アシェルの明らかに重そうなAAはとても外見からは想像できない動きで『エイラム』のビームの雨をくぐり抜け、両腰についている長いビーム砲で正確に『エイラム』を捉え撃ち落していった。だが、何基かの『エイラム』はアシェルの後ろ側に回り込んでビームを放とうとしてきたが、
「おっと、この『V・B・R〈ヴァリアブル・ビーム・ランチャー〉』の性能をなめてもらっちゃ困るなぁ♪」
と余裕な表情でアシェルがいうと、腰のビーム砲の側面が開いて、そこからミサイルが後ろ側に撃たれて後ろにあった『エイラム』がそのミサイルのかなり大きな爆発に巻き込まれて粉々に砕け散った・・・。
「どーだい、僕の作った改良型広域範囲ミサイル『バベル』の威力は?って、こんなところで自慢してる場合じゃない、早くこいつらを何とかしなきゃ・・・ん?ヴォルデモートから通信?こんな時になんだろう・・・つないでみよう。」
するとコクピットの前方のモニターに小さくオペレーターが映って、そのオペレーターはアシェルに不安げな顔でこう言った。
「アルスタイン副隊長、ここから二時の方向より高エネルギー源が感知されました。このパターンはおそらくAAでしょう・・・。とんでもないスピードでこの宙域へ向かってきます。敵なのかは知りませんが、注意しておいてください。」
「わかりました、なんだろう・・・こんなところに単体のAAで向かってくるなんて・・・?」
そしてヴォルデモートでは、必死に砲撃手が近づいてくるAAを迎撃していた。そして、オペレーターの一人が肉眼で高エネルギー源を発していたAAを確認した・・・。しかし、そのAAは普段のAAとは何か雰囲気が違った・・・・。
「な・・・何だあのAA・・・・。あの背中の翼・・・、あれ本物の翼じゃないのか?とても人工の物とは思えない・・・。それにしてもあのAA、アイオーンとかとぜんぜん雰囲気が違うのは何故だろう・・・。」
そのAAはほぼ全身が赤く、他の部分は黒色であり、AAの特徴である『ウイングスラスター』の翼もとても人工の物とは思えない純白の翼を生やしている。そして、両肩の後ろ側と両腰に20mほどあるビーム砲を装備していて、両腕にはそれぞれ110mm口径のビームガンを二門ずつ装備されている。そして胸の部分からは緑色の光が放たれていた。
その機体はヴォルデモートのブリッジのほうに背を向けて停止し、背中の純白の翼を思いっきり広げ、背中から細かい光の粒子が噴き出された。すると、ヴォルデモートのブリッジの前方巨大モニターにあのAAのパイロットだろうか、額に何かの紋章が浮かび上がらせた紅い目をした謎の少女が映った・・・。その少女は白色の髪で、片方の目が髪の毛で隠れている。その少女はヴォルデモートのクルーにこう問いかけた。
「貴方達この地に何の用なの・・・・?」

「まったく・・・どこまで続くんだ?この螺旋階段・・・・・・。」
クラウゼたち『神の聖域』探索チームは、上まで続く螺旋階段を上っている途中だった・・・・。
「くそ~~っ・・・、こんな天井なければ一っ飛びで上までいけるのに・・・。」
「我慢しましょう艦長、この上を行けば赤の魔方陣を解除できる端末があるかもしれませんから・・・。」
緑の魔方陣の描かれていた扉の向こうが今上っている螺旋階段だったのだが、下へも続いていたが赤の魔方陣によって阻まれていた。クラウゼはきっとこの上に赤の魔方陣の端末があるだろうと言っているのだ。そしてようやく長い螺旋階段を上りきったクラウゼたちの見たものは3つの扉だった。一つはAAで入れる大きさだったが、もう二つは人間でなければ入れなさそうだ。
「扉が三つ・・・?二つのうちおそらく一つは魔方陣の端末でしょう。だけどもう一つの方もなんか気になりますね・・・。どうします?このあたりには敵の気配もなさそうだし、僕達全員で調べてみませんか?」
「ああ、それがいい。よし、全員AAから降りてクラウゼと行動を共にしよう。」
アルフォンス達は機体から降りて、まずはむかって一番右側の扉から入ることにした。
「うわっ!!!何だこれは・・・・・!!!」
入った瞬間アルフォンスは驚いた。クラウゼも目の前の光景を見て口を手で押さえた・・・。他の隊員も叫び声を上げて後ずさりした。
「ひ・・・酷い・・・・いくらなんでもこれは酷すぎる・・・・・・。」
地獄だった・・・。目の前にあった光景はまさに現実に存在する地獄だった・・・・。この部屋は中央の通路を挟んで右側も左側も、緑色の不気味な液体が入ったカプセルがズラリと並んでいたのだ。その不気味な液体の中には人間のものだろうか、腸や心臓などの内臓や、手足、胴体、そして脳を取り出された人間の頭部が入っていた。右側のものは男性、左側のものは女性のものだった。その頭部の額には何かの刻印が刻まれていた・・・。まるで仏教によく使うインドの文字「サンスクリット」みたいな形の刻印が・・・。その時、クラウゼの額が激しく光り始めた・・・。
「ぐっ・・・あぁ・・あぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「どうしたんだクラウゼ!!?しっかりしろ、クラウゼ!!!!!」
「頭が・・・・頭の奥が・・・熱い・・・!!!」
アルフォンスはクラウゼの前髪を上に捲(まく)り上げると、その額にはカプセルの中に入っていた頭部の額に刻まれていた刻印に似たものが刻まれていた・・・。
「お・・・お前・・・。」
「あのカプセルに・・・入っているのは・・・、僕と同じ『教会』の『ジューダス収容教育所』で覚醒した人間『サイコリンカー』・・・・、『Project P-Linker』の犠牲になった生体兵器・・・。」
「『サイコリンカー』?『生体兵器』?それに『プロジェクトピーリンカー』って何なんだよ?俺にはさっぱり分からねえな・・・。」
「説明は・・後で・・・しますから・・・、今はこんなところ出ましょう・・・。気味が悪くなりますから・・・・・・。」
「ああ・・・、ん?クラウゼ・・・、お前の気は進まないかもしれないが・・・、この先に何かあるぞ?」
「えっ・・・!?」
その通路の先にはもう一つ扉があった・・・。その扉の上には『The intruder automatic countering system』と書かれていた・・・。
「英語で書いてあるが・・・、わりぃ、俺英語あまり得意じゃないんだ。クラウゼ、訳してくれ。」
「まったく・・・、しっかりして下さいよ・・・。こんなことでよく旅団長になりましたね・・・。『侵入者自動迎撃システム』って書かれているんですよ・・・って、侵入者自動迎撃システム!!?」
「というと今うちのAA隊が戦っているあのAAのことか!!!ここがあのAAを動かしているところなのか・・!?」
「と、いうことは・・・ここにあるものはひょっとして・・・・。艦長、先に進んでみましょう。この先に進めば今まで疑われていた『教会』の実態が分かるかもしれませんよ・・・。」
「あ・・・ああ。おい、お前ら!!いつまでも怯えてないでさっさと来い!!!!置いていくぞ!!」
「ま・・・待ってくださいよ~~~、艦長、隊長~~~~~~っ!!!」
クラウゼは自分の仲間だった人たちの成れの果てを見て体を震わせながらもこの先にある扉へ向かった・・・。その扉の先にあったものは、高さは300メートルはあるだろうか巨大なコントロールタワーが立っていて、その周りにはまた緑色の液体の入ったカプセルが中央のタワーにエネルギーパイプのようなものでつながれていた・・・。そして、そのカプセルにはさっきの頭部から取り出されたものだろうか・・・、人間の脳がカプセルの上側から出ている何本かに分かれた回路のようなものでつながれていた。おそらくこの脳があのAAたちを動かしていたのだろう・・・。
「頭部から取り出した脳が・・・、自動防衛システムのAAを動かしていたのか・・・・。つまり、昔の『教会』の野郎どもはこのヴァルハラの自動防衛システムをより完全なものにしようとするためだけに・・・、こんなむごい事を・・・・。」
「畜生ぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!!こんな・・・、こんな事のためだけに僕らは生きていたというのか!!!こんなくだらない戦争の道具のためだけに人の人権を奪い取りやがって!!!!可愛そうじゃないか!!!そう思わないか艦長!!?」
「クラウゼ・・・・。お前・・・・。」
「この人たちだってもっと生きたい、もっといろんなことがしたい、もっと笑いたい、もっと幸せになりたいってそう思っていた筈だ!!!なのに・・・なのに!!!!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」
「隊長が・・・・、めったに感情を変えない隊長があんな怒りの感情を表すなんて・・・・。よっぽどショックだったんだ・・・・。」
「泣いている・・・、あの隊長が・・・。どんなに悲しいことがあっても我慢していた隊長が・・・。」
クラウゼは目から大粒の涙を流しながら自動防衛システムに怒りをぶつけていた・・・。アルフォンス達は心配そうな顔でクラウゼを見ていることしかできなかった・・・。

「だ・・・誰なんだ君は・・・?」
ヴォルデモートのクルーの一人が謎の少女に問いかけた・・・。
「私の名はアイン・・・、数多(あまた)の時をわたり、破壊と鮮血の記憶に歯止めをつける『輪廻〈りんえ〉を断ち切る者』・・・・。」
アインと呼ばれる少女はクルーに向かいこう答えた。そして再びアインに問いかける。
「君は・・・、俺達の味方なのか・・・?教えてくれ・・・!!」
するとアインがクルー達を皮肉る感じで答えた。
「仲間だと思えば仲間、敵だと思えば敵だと思ってくれてもかまわないですわ・・・。でも、楽園を汚す人たちは私にとってはみんな敵ですわ・・・・・。」
「楽園・・・・。」
その時、ヴォルデモートに向かってくる自動防衛システムのAAが向かってきた・・・。するとアインのAAの腕から紅いビームの刃が現れ、向かってきたAAのコクピットを貫いた・・・。ヴォルデモートのモニターが爆風で一瞬前の様子が見えなくなった。それから再びアインがヴォルデモートのクルーにこう問いかけた。
「貴方達・・・、あの機体が邪魔だと思っているわね・・・・・。壊してあげましょうか?」
「えっ・・・?」
「大丈夫です、ほんの一瞬で終わりますから・・・・・。」
#4へ続く

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