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東京大学グローバルCOE市民講座5回シリーズの最終回。
国立教育政策研究所の小倉先生は、理科離れが言われているが、実際は他の教科に比べて、特別に理科嫌いというわけではない。しかし、理科を学習することに意義を見出せないのが現在の中高生の現状と言う。
昭和26年のカリキュラムを見ると、「科学技術」という科目の比重が高かったが、それに対して現在のカリキュラムは物理、化学、生物、地学など、個別に学ぶカリキュラムなっており、分野横断的な学習が成り立ちにくい。これが理科は覚えることばかりで面白くないと生徒が感じ、理科学習に意義を見出せない原因となっていると分析。
岡山一宮高校の三島先生からは、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の研究指定校としての理数科授業についての紹介があり、「課題研究」「自然科学」など、既存の教科にとらわれず、ディスカッションを中心とする学術的研究に近い授業を行っていること、生徒たちは、課題研究を通じて、「協力の大切さ」を学び、「将来の目標(キャリア目標)」を具体的にイメージすることが容易になるという話があった。
大学の立場からは、お茶の水女子大の千葉先生による、市民に「科学技術リテラシー」を獲得する手助けをする、「サイエンスコミュニケーター」養成についてのお話。小学校の指導要領では「見通しを持って、予想や仮説を立て、実験し結果を見直し、検討する」ことを目標としているが、現実は、大学生でも対照実験の立て方を知らず、理論構成が苦手な学生が多いという。つまり、小学校の指導要領が実現されていないのだという。
千葉さんは、このような現実の中で、サイエンスコミュニケーターが、市民が科学技術リテラシーを獲得するための橋渡しの役割を担うとして、養成講座の様子や、受講生の感想などを、ビデオ映像も交えながら、紹介された。
SSHはとても良い取り組みだと思うが、大学入試ではどう評価するかが難しいのでは、との意見もパネルセッションで出た。モデレーターの斑目教授もこれには苦笑い。東大生はペーパーテストは出来るが、実際に伸びる人材は仮説を立てて実験・検証することが出来る生徒だが、このような生徒が必ずしもペーパーテストが出来るとは限らないところが選抜の難しさだと言う。
フロアからはあまり質問など出なかったが、最後に挙手した、自閉症や高齢者の介護の仕事をされている方からの、「教える側が楽しんでいる様子や熱意が教わる側に伝われば、自然とまなぶ意欲がわく」との趣旨の発言が印象的だった。