D・N小説①~大助の幼い頃~



 「お母さん、今日のおやつ何?」
幼い少年の声がした。この少年の名前は丹羽大助。
顔は整っているが、「格好いい」よりかは、「可愛い」のほうが合っている。
そのうえ、少し小柄なのでまるで少女ようだった。
「今日は、お母さんお手製のアップルパイよ。」
とても若い少女のような声がした。この女性は大助の母、笑子である。
いつもフリルのついたエプロンをしているので女子大生と言っても通じそうだ。
「やった~!僕、アップルパイ大好き。」大助は喜んだ。
しかし
「でもね大ちゃん、この鍵開けないとあげない」
という笑子の一声で喜びは小さな悲しみに変わってしまった。
「そんな~。」
と大助は嘆きながらも1分もしないうちに”カチッ”と音がして鍵が開けてしまった。
「ま~、さすが大ちゃんえらい!」
「これくらい開けれて当然じゃ。もっと速く開けれんかのぉ~」
と不満を言いながらもうれしそうな笑みを浮かべながら大助の祖父、大樹は言った。
「それじゃ、みんなで食べましょうか。」
「わ~い!いただきま~す。」
「あっ!飲み物作ってなかったわ。ちょっとつくってくる。」
「うん」
大助が2つ切れ目のアップルパイに手を伸ばしたときだった。
「きゅ~」
と動物の鳴き声がした。丹羽家のペット、ウィズだ。
「ウィズも欲しいの?じゃぁ、これがウィズのぶん。」
「きゅ~!」
「美味しい、ウィズ?」
「きゅ」
30分ぐらいしたらアップルパイは無くなった。
「ふ~、おなか一杯。ごちそうさま~。」
「美味しかった、大ちゃん?」
「うん、すっごく美味しかった。また作ってね、お母さん。」
と大助は言うと玄関の方へ走り出した。
「ちょっと何処行くの、大ちゃん?」
呼び止められ急停止してから笑子の方に振り向き
「公園!冴原くんと遊ぶ約束してるから!」
と、言うとまた走り出した。
「気を付けて行ってらっしゃい。ただし、5時2分46秒までには帰ってくるのよ~!」
 なんだそりゃ といいながらドアノブに手を掛けた瞬間だった”ガコッ”と音がして玄関の床が消えてしまった。
「うわぁぁぁぁぁ~~~~!」
と大助は叫んだが、体が完全に落ちる寸前に手を穴の縁に伸ばした。
そして、体を半回転させながら玄関口に立てった。
「た、助かった。死ぬかと思ったよ。も~、お母さんは何でこんな仕掛けするのかな。僕が死んじゃったらどうするんだろう。」
と、グチをもらしつつ大助は公園へと行ってしまった。
大助は毎日こんな事をして怪盗の修行をしていたのだった。

   大助はそうとも知らずに・・・


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