つれづれなる徒然奇行

私的厳選本 恩田陸 

麦の海に沈む果実 麦の海に沈む果実

書籍名:麦の海に沈む果実
作家名:恩田陸
出版社:講談社

ようやく感想をUP出来ました・・・感無量。
1999年頃に文芸誌メフィストに連載されていた作品で、実は途中からこの雑誌を講読しているのですが、ハンパで分からずに本に纏まるのをまっていた作品。図書館で2度借り、文庫になったら即本屋で購入して多分3回は読んだであろうかなりお気に入りの作品です。

舞台は北海道の湿原の中にある隔離された学院。水野理瀬は2月の終わりに転校してきた。この学校では3月に入学することが当然で2月は不吉とされている。
なのに、校長がこの日に理瀬を呼び寄せたのは何故?
<ゆりかご><墓場><養成所>と暗喩される、隔離された少年少女たち。生徒は十人ほどの<パーティ>に組みこまれる中、はみ出し者のパーティに組み込まれた理瀬。仲間たちは、かつてこの学園で起こった出来事を理瀬に教える。突然消えたという仲間は本当に「家族が連れて帰った」のか? <墓場>組・・・誰にも必要とされていない子供なのに?
しかし不慮の失踪だけでなく、理瀬の近辺で謎の死を遂げる生徒まで出てきた。

「2月に転校してきたからよ」

校長の親衛隊たちはそう言うが、一連の失踪と死にはどんなカンケイがあるのか? というストーリー。
個性的なパーティのメンバーに加え、ルームメイトで女優志望の憂理と、音楽の才能のあるヨハン、女装趣味のある校長などが登場。
恩田作品には多々あるが、隔離された場所で話しが進む。この場合<学園>。そしてこの学園からは校長の許可なしに出ることは出来ないし、電話もない。
主人公であり、ストーリーテラーでありながらミステリアスな雰囲気のある美少女・理瀬のラストには、読んだ当初はビックリしたものだが、なおさら彼女が好きになってしまった。
さらに二作目では、舞台が私の出身地ということもあり喜んだものです。
2006~7あたりに、三作目が発表されるようなので、とてもたのしみ。






ネバーランド
書籍名:ネバーランド
著者名:恩田陸
出版社:集英社文庫

感想:
↓の作品とは違い、青春小説となります。美国・寛司・光浩・統の四人が年末の七日間を寮・松籟館(しょうらいかん)で過ごすお話。解説にも書いてありますが、とにかく、つかみが巧い! 飽きずに最後まで読んでしまえる構成も秀逸で、恩田作品では三本の指に入る好きな作品(ナンバー1は選べません。好きすぎて)です。
彼らは七日の間、ともに食事をし、ゲームをし、その罰ゲームとして「告白」をすることになりました。統の母親の不可思議な死、美国が何故、彼女と別れたのか? 光浩を時々尋ねる白い帽子の女性は? 寛司の両親の別れ話。寮で死んだ少年・・・。四人それぞれが、過去に影を持っていて、そしてそれを乗り切ろうとしている思春期。
特に私は、光浩の過去を知ったとき、ギュッっと抱きしめてやりたくなりました。彼の過去は重すぎて、それに縛られて生きているのだけど、突然過去に突き放されてしまって、光浩は途方にくれています。彼は家族には恵まれませんでしたが、程よいスタンスを守り、けれど、心配してくれる友人に恵まれました。その友人はずっと彼と共にいることはありません。が、何年後かに街で出会ったら、彼らはきっと光浩の肩を叩いて「よっ、久しぶり! 元気だったか?」と言ってくれるでしょう。そういう友人は得がたいものだと思います。なんというか・・・小説の登場人物だというのに、彼らの幸せを願わずにはいられない本です。


青春度  ☆☆☆☆☆
グルメ度 ☆☆☆☆★
満足度  ☆☆☆☆☆





黒と茶の幻想
書籍名:黒と茶の幻想
著者名:恩田陸
出版社:講談社

感想:
初めて読んだのは、雑誌メフィストでの連載作品。
「地味?」というのが初めの感想。中年男女4人組がY島に行く話。4人のそれぞれの視点で話が進みます。途中でY島が「屋久島」と気づく。遅い・・・。
しかし、文章の巧さと、4人のしっかりとした人物設定に、ぐいぐい引き込まれていって、「地味だけど、すごい面白い」に感想変更。
山に登り、降りて、もとの生活に戻る。山に登ったから、何かが変わったわけじゃない。山に居る間、自然を見、過去を見る。自分の前を、後ろを歩く友人のことを考える。
後日、旅行に行く話が出たとき、パンフ集め担当の私は「屋久島」を混ぜ込み、まんまと屋久島旅行にいけました。
不思議なことに、私もこの4人の主人公達と同じことを山に居る間考えました。
杉のこと。友達のこと。家に帰ったらしなくてはならないこと。学生時代のこと。
読みかけの本のことも(笑)
読んだ後、不思議な気持ちに包まれた本でした。大人に見てほしい本。


既視感  ☆☆☆☆★
安心感  ☆☆☆☆★
満足度  ☆☆☆☆☆





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