雫の水音

雫の水音

7章~風雷と闇の子達と白き龍:後半~


村人を騙すという作戦を立てた。

3人は眠っているふりをし、
少年が3人を祭壇までおもそうに引きずった。

そして、まだ夜明け前の暗き
祭壇から4人の村人が現れた。

「ご苦労だったな、ナナムー」
しわがれた声は、村長の声だった。

「さて、これで私どもも、あの方の力になれるというものだ・・・
さぁ、この者等の魂を喰らい。真の力に目覚めるのだ!!」
その大きな声と共に、祭壇の中央が光だし
途轍もない異様なオーラをだす悪魔が現れた。

「兄々(ニイニイ)何か出たよ!!」

その声と共に、三人は立ち上がったが
目の前に現れた悪魔に3人は驚いた。

「んー!何だこいつは!」
気の無い「んー」が今日は語尾が上がっている。

「ヤバイな、このままだとお陀仏だぜ」
ハリーが苦笑しながら叫んだ

「ヘンリー、ハリーの力で勝てないのか?旅してたんだろ?」
翔が2人に聞いた。


「おや?旅の方は目覚めていたのか。
まぁ良い。このドゥーム様の前ではどちらにしろ同じか」
村長がそう呟いた時。
祭壇の上にあった4人の人影が
音も無く消えてなくなった。

「クッハッハ!人間どもが、我と契りを交わそうなど
無礼極まりない・・・ただ、己の魂と引き換えに
我の力を目覚めさせた事は褒めて遣わそう」
そう言うと悪魔の3つの目が一斉に4人に向けられた。
4人は蛇に睨まれた蛙の様に動けなくなった。

「『バインド!!』今のうちに兄々達は攻撃して!!
逃げられりゅ相手、じゃないから」
ナナムーと呼ばれた少年が
始めに動いた。其れと同時に
3人は命一杯の攻撃を悪魔に食らわせてやった。

その場は一気に、昼のような閃光に包まれ
煙が辺りの視界を消した。

「ヤッタ、でしゅか?」
ナナムーが煙の中喋った

「分からない、まだ無闇に動くな」
とハリー
しかし、翔には長年剣道で培われていた
気配を読む力で、まだ相手はピンピンしている事が
煙の中だが感じ取られた

「儚い、何と儚いのだ、人間という者は
悪魔に闇の魔法が聞くと思うか?
7大悪魔と謳われた我にそんな飛び道具や
剣技が通用すると思ったのか?
クッハッハ!笑わせる出ない
見せてやろう、7大悪魔の力を!!光栄に思うんだな!」

悪魔の闇の中で赤黒く光る眼光が開き
悪魔の手から闇が手に吸い寄せられているかのように
黒い塊が出来てきた。

そして、その手のものが4人に放たれた・・・
ハリーが黒い塊の力を軽減しようと魔法を放っている
ヘンリーもハリーと協力している
ナナムーは恐怖のあまり立ちすくみ
翔には、その場を冷静に見ることが出来た
4人の村人も、翔には黒い塊で消されたことが分かっていたからだ・・・

しかし、翔は自身の心の中で何かが蠢いているのを感じ取った
そして、何かが自分の体を引き裂いて出てきそうな予感が・・・

「その魂、私が美味しく喰らってやる。
クッハッハ!!」
黒い塊は4人を包み込んだ、そして、4人は死んだと
悪魔は確信していた。

だが、数秒経っても4人を飲み込んで消えるはずの
黒い塊が消えないことに悪魔は目を細めた。

そして、次の瞬間、辺りに黒い塊が分散し飛び散った
破片は、地に穴を開け、木々を溶かし
悪魔自身の体を掠めた

「何事だ!!」
その瞬間悪魔は目を見張った。
そこには、白き毛並みと鱗に覆われた龍が居るではないか
この世界にすら居るはずの無い龍が
なぜなら龍は昔、滅んだはずだったのだから・・・



「何だ!竜だって?俺たちを守ったのか?」
ハリーは言った

「んー。滅んでいるはずだが。まぁ助けてくれたみたいだしいっか」
ヘンリーの楽観的な意見

「わぁ、カッコイイでしゅ!!ありがとう!!」
子供らしいナナムーの声

そして・・・

「まぁ正確には違うが、始めまして翔・・・
我が名は、白竜セティロム。
して、我はあの悪魔を倒せばよいのだな?」
そう言うと、白竜は大きな翼を広げ悪魔の方へと向かっていった

そして、悪魔も動きだし暗き夜空へと飛び上がり
戦い始めた。翔はただ呆然と其れを見つめることしか出来なかった

夜空が時々、竜の吹いた炎で明るく照らし出され
3人もその戦いをただ呆然と見つめていた・・・

そして、地平線から薄明の光が覗かせてきた頃
悪魔が狂いだした。

「見て見て!兄々達!祭壇!」
ナナムーが祭壇に指を刺した

そこには、サッキまで無かった大きな扉があった。

「竜よ。戦いをやめるんだ。その悪魔は魔の世界へと戻る
所詮は闇の物だ、闇の世界でしか生きられぬ・・・
まぁ、抜け出さないようにするのが俺の役目なのだがな・・・」
何処からとも無く、声が聞こえてきて
扉が開き、悪魔がその扉に引きずられていく・・・

「久しいな、だが、お前が扉を開くとは・・」
竜が言った

「何せ魂を沢山喰らって、力を貯めていたからな・・・
まぁ、お前のおかげで力を使って、その上、日の光が射したから
魔の世界へと送れる。」
また、声が聞こえる。

そして、悪魔は門の奥へと消えていった。
ギギィーッと音と共に門は閉まり
門も消えていった・・・

天空から白き竜が舞い降りた

「ふう、終わったか・・・」
白竜が疲れたように
翔たちの周りを囲み
寝そべった

「竜は大昔に滅んでいるはずだぞ!」
ハリーが質問を投げかけた

「フム、滅んではいない・・・しかし、滅んだともいえる・・・
竜は大昔に人間と神と竜の戦いにおいて
強大な力を持つがゆえに
敵である双方にレアクリスタルと呼ばれる水晶に封じられた・・・
その水晶は、魔法も打撃も寄せ付けないばかりか
魔力を吸収する・・・そして、魔力を強大にして解き放つことが出来るのだ・・・
レアクリスタルで封印された物は
内側からの強大な力しか寄せ付けない・・・
故に、竜は滅んだとされる・・・
しかし、魂だけは自由に動くことが出来るのだ・・・
そして俺は翔を選んだ・・・」

「選んだ?何故俺を?」
翔が竜に問うた

「地球とこの世界では、魂の力を行使できるのだ・・・」
竜は細くした目で翔を見つめた

「んー、それなら知ってるが・・・」
ヘンリーがだるそうに答えた

「地球では行使は出来ないがな・・・
そして、俺はお前を選んだ・・・
何故か・・・君の魂に引き寄せられたからだ・・・
まぁ、文献等の言い方をすれば、白の者と呼ばれる・・・
他にも3人、お前に似た奴が居る・・・
俺の魂の力を、翔が行使し
俺の体が具現化する・・・
ただし、その為には莫大な力も必要で
水晶の封印は解けては無いので
行使をやめれば
また俺は封印される・・・
そろそろ時間だな・・・
暫く俺は、眠るとしよう・・・」
竜は光の粒子になって消えた。

「光の物・・・か・・・」
ハリーが呟く。

「んー、森の中だから元の場所に戻るにはどうしたらいいんだ?」
ヘンリーは、母親が苦手なのに
早く風の国に戻りたいみたいだ。

「ぼきゅなら、知ってるでしゅよ!!兄々たちは何処行きゅんでしゅか?」
ナナムーがはしゃぎながら言った

「風の国だ・・・」
翔が言った

「風のきゅにへの近道も知ってりゅでしょよ!教える代わりにぼきゅも連れて
行ってきゅださいね」
ナナムーが笑いながら逼って来た。

「どうする?」

「んー、早く戻りたいしな・・・」

「まぁ、子供といっても強いし、悪魔との戦いのときも
助けようとしてくれたし、良いんじゃないか?」
ハリーが答えた

「じゃぁ決まりだな!!」

「ヤッタァー!!」
ナナムーがジャンプしながら万歳をしている。


そして、新たな仲間を加え
一向は風の国へと向かう・・・

8章~はこびる暗雲

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