火には油を 炎に火薬を。

火には油を 炎に火薬を。

ストーリー解説 後編


------《   神 々 と の 戦 い  編   》------





第七章 神々の降臨

 インフェルシアを滅ぼしたマジレンジャーだが、ヒカルはライジェルが死に際に言っていた言葉が気にかかっていた。
「インフェルシアの神々が蘇り、地上と天空聖界に裁きの時が訪れる」

スノウジェルにこのことを相談すると、マジトピアに伝わるある伝承を教わる・・・。そしてスノウジェルはこう忠言する。
「闇のオーロラに気を付けよ」

 小津家では、ついに麗の水晶が母・深雪の気配を捕らえた。茨の園(いばらのその)。そこが深雪のいる場所だ。
ヒカルによると、どうやらウルザードがマジマザーを斬った時、かすかに残っていたブレイジェルの意思が彼女を魂の状態にして別の場所へ転送したようだ。


 その頃インフェルシアでは、ナイ&メアが廃墟となった冥府で「預言の書」を発見する。

「これ、私達とあの魔法使いのやつらとの今までの戦いなんじゃない!?」
「だねだね!ということはこの先には未来のことが・・・」

未来の内容を読もうとするが、本は何かへ導くように宙を飛び逃げていってしまう。預言の書を追ってナイ&メアは、インフェルシアの伝説に歌われる「神々の谷」へ迷い込んでしまう。そこで彼女達は、巨大の大きさのインフェルシアの神々と出会う。

身も心も熱いイフリート、力持ちのティターン、
食いしん坊のトード、射撃の名手サイクロプス、
腕の立つワイバーン、賢い女神スフィンクス、
ずる賢い女神ゴーゴン、頼りになるスレイプニル、
乱暴者のドレイク、そして実質上のリーダー・ダゴン。

「冥獣帝ン・マが滅びた。さあ、裁きの時だ!」



 地上界に突如として闇のオーロラがかかり、神々の谷が現れる。

「人間どもよ!我々はインフェルシアの神、冥府十神!我々は我々の運命に従い、人間界と天空聖界に裁きを下す!今回は宣戦布告の儀式だけだが、裁きはこれからだ。心して神罰を受けよ!」

 マジレンジャーはマジレンジェンドとなって冥府十神に立ち向かうが、全く歯が立たずに逃げられてしまう・・・。


 「裁き」とやらに真っ向から立ち向かうと闘志を燃やすマジレンジャーにヒカルは「君達は戦ってはいけない」と言う。

「冥府の神々、破壊の限り尽くすとも、地上の民決して刃向かうこと許されず」というマジトピアの言い伝えを守るため、この戦いは天空聖者である自分がやらなければいけないと言い張る。


 最初の神罰執行神として選ばれたイフリートにたった一人で突っ込むマジシャインだが、その身をまとう炎の前ではあらゆる攻撃が蒸発してしまう。
 あっという間にピンチに追い込まれるマジシャインを、レジェンドマジレンジャーが助ける。
「君達、来てはいけないと言ったはずだ!」
「可能性は『自分で』作るもの、だろ?」

 神々の出現により失っていた冷静さを取り戻したヒカルは、「仲間の絆の強さ」と「言い伝え」を天秤にかけた自分を恥じる。


「君達がブレイジェルの息子だということを忘れていたよ。すまなかった。一緒に戦ってくれ!」


結託を取り戻した6人の戦士は、イフリートが下した“炎が消えるまでに6人全員を倒せばイフリートの勝ち、一人でも残れば6人の勝ち”という神罰のルールを見事にこなすのだった。

ルールにそむいたイフリートは、仲間の手により殺される。これが「神罰執行」のルール。

 神罰執行は常に一人の冥府神により行われ、何らかのルールが決められる。そこに勝利の鍵は必ずある!!
 もう後戻りは出来ない。6人は、地上とマジトピアの運命を変える決意を固めるのだった。






第八章 お母さん

 神々の宣戦布告があってからというもの、冥府十神と戦い続けるマジレンジャーとマジシャイン。戦いの中、お互いの足りないところを補い合うことで自分の過ちに気付き、絆はより深く、勇気はより大きく、心と力は何倍にも成長していた。


兄としての使命感と自分自身の夢、その間に生じる葛藤から吹っ切れた蒔人。
多くの恋をすることをステータスと思っていた自分自身の浅はかさに気付いた芳香。
母のため、家族のため、苦手なものを克服した麗。
兄弟と助け合い自分の言動に責任を持つことの重みを知った翼。
熱くなるだけでなく、周りと協調し楽しくやることの大切さを知った魁。
頭で考えてばかりの自分を諌め、まず行動して初めてわかることに気付いたヒカル。


 着実に強くなっていく6人は力を合わせて神罰執行のルールをこなし、既にイフリート、サイクロプス、ゴーゴン、ドレイクを倒していた。
 その4人との戦いのさなか、冥府神や母に関する様々な情報を聞きだした。
 どうやら冥府神神は冥獣帝ン・マの魂を「絶対神ン・マ」に転生させるために神罰執行を行っているようだ。

 そして最近翼と麗が夢に見る母・深雪の夢。麗の予知能力が、母さんと茨の園は冥府神トードが守っていると告げていた。

 母さんに会いたい。その一心でついにマジレンジャーはトードのマルデヨーナ世界に来ていた。トードの部屋にはやはり、深雪の魂が!
トードが言うには、「さ迷える魂の園」で捕まえた自分の宝物らしい。ウルザード(ブレイジェル)はマジマザーを斬った時、わずかに残っていた勇の心が、魔法で深雪の魂を魂の園に転送したのだ。

「母さんを返せ!」

母を想う気持ちはトードの世界を壊す程の魔法力を発揮し、マジレジェンドの必殺技がついにトードを倒す!



 母を想う気持ちがマジレンジャーに「あらゆるものを一つに集める呪文」を与え、深雪の魂は集まりその身体が姿を現す。


「みんな、やっと会えたわね。」

母との再会に感極まる魁達を、冥府神スフィンクスは興味深げに見つめていた。

「これが、ハハオヤの力・・・」



 一方インフェルシアでは、冥府神達が焦り始めていた。

「おかしい。闇の戒律に従い儀式を進めているのに、何故絶対神誕生の兆し
すら現れない?」

 何かが計画を邪魔している。そう感じたダゴンは真実を映し出す“真実の影よどみし沼”へと赴き、泉に移る邪魔者の陰を見る。それは、ン・マと共に消えてしまったはずの魔導騎士ウルザード(の姿をしたブレイジェル)だった。

 「面白い。天空聖者め、ン・マの魂を自らの身体に隠したか。」


 早速タゴン・ワイバーン・ティターンの3人はブレイジェルをバンキュリアに捜索させ、ついに魔法で見えなくされていたその姿を発見する。

 ン・マの魂を持ったウルザードの姿では全力で戦えないブレイジェル。ワイバーンと互角の戦いをするが、助太刀したティターンとダゴンに身体を貫かれ、ン・マの魂を奪われてしまう。

「これでお前は用済みだ。闇に散るが良い!天空聖者!」

ダゴンの手によりブレイジェルは、手傷を負った体でインフェルシアの深い闇の淵へと突き落とされてしまうのであった・・・。



 同じ頃、深雪が戻り賑やかさが一層増した小津家で、深雪はインフェルシアから夫・勇の気配を感じ取っていた・・・。






第九章 絶対神 ン・マ 

「勇さん・・・」

 夫の気配を感じた深雪は、秘密の魔法隠し部屋で「精神を肉体から飛ばす魔法」を使う。インフェルシアへと精神を飛ばし、勇を探すつもりなのだ。



 その頃地上には、次の神罰執行神ティターンが現れた。
「ティターンのだした光球が町中の電気を奪い、その電力が満ちた時世界を稲妻が滅ぼす」というルールの神罰を行おうとするティターン。

 駆けつけたマジレンジャーに
「邪魔をするな。私は無益な殺生は好まない。神罰が執行されるその時まで、何もせず待っていてくれ。痛みは無い。一瞬だ。」
と告げ姿をくらます。

 ティターンのなるべく苦痛を与えまいとするその姿勢に、芳香は「あの人は良い人かもしれない」と言い始める。そんな芳香が蒔人は心配でならないようだ。



 一方インフェルシアでは、ついにン・マの魂が躍動し始めていた。
「絶対神ン・マ様は我々冥府神のうち一人の身体を依り代(よりしろ)とし、その命が消えることで復活を果たすのだ。」

残る冥府神は五人。ダゴン・ワイバーン・スフィンクス・スレイプニル・ティターン。その中からついに、絶対神ン・マへの生贄が選ばれる。




 マジレンジャーとの戦いを避けたティターンは、人間の町を見下ろしていた。
「ここが人間の世界・・・。」
と、足元に子犬が寄ってきたティターンは、興味深げに子犬を撫で、話しかける。
「お前は何だ?」
「それは子犬って言うのよ」
「!?」
ティターンを探しに来た芳香だった。
子犬とじゃれあうティターンを見て、芳香は確信する。
「貴方は命の大切さを知っている、いい人。私達はもう友達よ、アフロくん(ティターンの髪型を指して)。」
「友達・・・。」

 芳香と握手を交わそうとするティターンを、蒔人のマジボルトが襲う。芳香が襲われていると勘違いしたのだ。ティターンを庇う芳香だが、蒔人は芳香を心配する余り「冥府神に良い奴なんているわけがない」と決め付け信じようとしない。
 そこで芳香は、ティターンに味方であることを証明するために神罰執行を取りやめるよう頼む。
「この子犬も、皆死んじゃってもいいの?」
「・・・。」

しばらく黙考したティターンは、ついに口を開く。
「・・・神罰、解除!!」
すると宙に浮かんでいた光球は消え、街に電力が戻った。多くの命を守るため、本当に神罰執行を解除したのだ。

 冥府神のその姿に混乱する蒔人だが、その時ティターンの身体を謎の炎が包み込む。
「ぐおぉぉぉぉぉっ!!」
 炎はすぐに治まったが、何が起こったのかわからないティターン達の前に、ワイバーンとスフィンクスが現れる。

「おめでとうティターン!君は絶対神ン・マ様の依り代に選ばれたんだよ!さあ、早く君の命を捧げ、その身体を絶対神にお出しするんだ!」


 しかしティターンは「やるべきことが見付かった」と言ってそれを拒否する。ティターンの裏切りに怒ったワイバーンは、裏切り者ティターンの命を断ちン・マを転生させようと彼に襲い掛かる!

 駆けつけた他のマジレンジャー達は、冥府神vs冥府神という状況を見て混乱する。

「どうなってるんだ!?」

 呆然とするヒカルから芳香はグリップフォンとマジチケットを奪うと、スモーキー(運転手係w)とティターンを連れ魔法特急トラベリオンエクスプレスに乗って行ってしまう。

「ま、待て芳香!」

 敵味方の壁に悩む蒔人も、何とかトラベリオンエクスプレスに乗り込む。


後を追おうとする他のマジレンジャーとヒカルを、スフィンクスが呼び止める。
「前から気になっていたことに答えて貰おう。」



所変わって魔法特急。なんとかワイバーンの追撃を退けた芳香達。
世界を守る決意を固めたティターンは、芳香と蒔人にこう述べる。

「ン・マを転生させない、世界の命を守る方法がひとつだけある。マルデヨーナ世界“永遠の樹海”にある“眠りの湖”に行き、私の身体を沈め永遠の眠りに付けばいいのだ。」

ティターンの覚悟に、ついに蒔人と芳香も心の底から彼を信用する。
トラベリオンエクスプレスは永遠の樹海へと向かった。



一方魁達は、スフィンクスによって不思議な空間の中に拘束され、強力な力を持つ冥府神を次々と倒すことができた力の源は何なのかと質問されていた。質問に答えさえすれば彼女が永遠の樹海へと案内してくれるらしい。

「仲間との絆・・・それに勇気!それさえあれば何でも出来る!」

スフィンクスは今の冥府神の持っていない答えに戸惑いを隠せないようだが、約束通り魁達を永遠の樹海へと導くのだった。



永遠の樹海へと着いた芳香達は、マジピンクの変身魔法を駆使することで、追ってきたワイバーンをうまく騙し、ティターンが眠りの湖へと向かう時間を稼ぐことに成功する。

だが罠に嵌められたことに気付き怒り狂ったワイバーンは、今までとは比べ物にならない動きで芳香達を襲う!
駆けつけた魁達と合流しレジェンドマジレンジャーになるが、鳥のように宙を舞うワイバーンの巧みな戦い方の前に上手く対応できない。
ついにレジェンドマジレンジャーは全滅してしまう・・・。

だが、ワイバーンがとどめを刺そうとしたその時、ワイバーンの身体を巨大な炎が飲み込む!

なんと、冥府帝の滅亡と共に滅びたと思われていたブレイジェルが、新たな姿“ウルザード・ファイヤー”となって甦ったのだ!

妻・深雪の助けで闇の淵から舞い戻り、暗黒の力を勇気に変えたその赤いウルザードの驚異的な力は、ワイバーンを押している!
そしてついに、ウルザード・ファイヤーはワイバーンを倒すことに成功するのであった・・・!


「これでン・マの転生は防ぐことができた!」




グオオオオオオオォォオオォォォォォ!!!


歓喜の声をかき消して、大地を揺るがす地獄の咆哮が鳴り響いた。


「なんだ!?この魔力は!?」

「残念だったな魔法使いどもよ。」

戸惑うマジレンジャー達の前に現れたのは冥府神ダゴン!


「ティターンは先程俺が始末した!ン・マはすぐにティターンの身体を蝕む。 絶対神ン・マは見事に転生したのだ!


ティターンを守れなかったことに落胆し、ン・マの転生に恐怖するマジレンジャー達を残し、冥府神はインフェルシアへと戻っていくのだった・・・。











第十章 魔法 それは 勇気の証!


絶対神ン・マが転生し実体を得たことで、地上界だけでなく冥府インフェルシア・天空聖界マジトピアのバランスまでも崩れ始めていた。
あらゆる天災が人々を襲い、ただ人々は恐怖し絶望するだけ・・・。


スノウジェルの話では、ン・マの転生はまだ完全ではないが、まもなくン・マはその恐ろしさの真髄“秘密の力”を取り戻す。そしてその時が、全世界の最後なのだ。事は急を要していた。



するべきことは2つ。


第一に、ブレイジェルとサンジェルは天空聖界へ戻り、天空大聖者マジエル達の助けを求めなければならない。

第二に、本格的に神罰執行を畳み掛けてくるであろう冥府神から、地上界を死守しなければならない。



小津兄弟の魔法を鍛えたヒカルと過ごせるのも、もう最後かもしれない。

ヒカル(先生!)と麗(生徒!)は、お互いの気持ちに気付いてはいるが、最後の戦いへの恐怖と覚悟から、素直になれないでいた。だが母・深雪や他の兄弟達の言葉から、そんな覚悟は間違っていたのだと気付く。愛する人を傷つけないために愛することすらやめてしまってはいけない。愛する気持ちさえあれば、2人でどんな状況も乗り越えられるのだ!と。

そんな2人の様子を見ていた勇は、なんと戦いの前に2人の結婚式を行うと言い出した!




その頃インフェルシアでは、ン・マの命令でスフィンクスが次の神罰執行神に選ばれる。ン・マへ誓った忠誠を示すため一度は地上に降り立つスフィンクスだが、どうしても先日の魁達の言葉が耳から離れない。

「絆・・・仲間・・・。守りたい大切なものがある限り負け・・・ない?」

スフィンクスは自分達冥府神の触れたことの無い強い魔法を目の当たりにし、自分のしていることに疑問を感じ始めていたのだ。ついにスフィンクスは神罰執行を投げ出し、姿をくらましてしまう。


このスフィンクスの裏切りを知ったダゴンとスレイプニルは、すぐにスフィンクスの世界である“賢者の夜”へと赴いた。

 「三賢神スフィンクスともあろうものが血迷ったか!」

「魔法使い達は我々では到底持つことの無い力を持っている・・・。あの心がある限り、我々に彼らを破ることは出来ない!」

 「絶対神ン・マへの忠誠と使命を忘れ弱気になるとは・・・愚かだな。」

「使命とン・マに拘り続けるお前達こそ愚かだ!我々は魔法使いには勝てない!」

スフィンクスの必死の訴えも虚しく、闇の戒律に従ってダゴンとスレイプニルは彼女を粛正、殺してしまうのであった・・・。




一方、勇の特別な魔法で魔法結婚式場を用意し、最後の宴に賑わう小津家。
だが、式も終盤に差し掛かった時、傷だらけになったリン(ルナジェル)が式場に飛び込んできたのだ!

「ン・マが天空聖界に・・・。 マジトピアは、全・・・滅・・・。

力無く告げられたその言葉が、皆の予想以上に悪い戦況を物語る。



リンの話によれば、絶対神ン・マは早くも“秘密の力”を取り戻し始めており、まずはマジトピアを虚無で覆いつくそうとしてきたのだ。その恐ろしい力の前には、天空大聖者マジエルの至高魔法“ハロー・ミラージュ”すらきかなかったのだという。

マジエル達は倒され、天空聖界はン・マによって虚無に覆われた。最期にマジエルはルナジェルに伝書役を託し、ブレイジェルとスノウジェルの元へ向かわせたということらしい。



話を聞いた勇(ブレイジェル)は、すぐにリン(ルナジェル)をマルデヨーナ世界にいるスノウジェルの元へ向かわせ、自分はヒカル(サンジェル)と共にマジトピアを助けに行こうとする。


「父さんと一緒に戦う」と言う魁に、勇は決闘を申し込む。魁と勇が手合わせをし、魁が勝てば一緒に連れて行ってくれるというのだ。

だが、マジレッドはブレイジェルの驚くべき剣さばきに手も足も出ない。
敗北を悔しがるマジレッド。
最後にブレイジェルは奇跡の力を呼ぶ型“フェイタル・ブレイド”を魁に伝授する。

「自分の勇気を見つければ、お前は本当に強くなれる。その時、この構えを使うのだ。」

そう言い残すとブレイジェルは、ついにサンジェルと共にン・マの待つマジトピアへと発つのだった。




地上界では、守りを任されたマジレンジャー達に、早速ダゴンと二極神“最強の矛”スレイプニルが襲い掛かる。

ン・マの命令でついに闇の戒律を無視し、二人がかりの神罰執行を下そうとする冥府神達の猛攻に、マジレジェンドとマジマザー(巨大化)は大苦戦。
スレイプニルにはマジレジェンド、ダゴンにはマジマザーが応対するが、ついに魔法変身を解かれてしまう。


スレイプニルの強さに動揺するレジェンドマジレンジャー達だが、母・マジマザーの

「お父さんにできたことなら、小津 勇の子供の貴方達にもできるはず!」

という言葉に勇気を貰い、五人の魔力を合体させた新必殺技“ファイブ・ファンタスティック・エアリアル”でスレイプニルの槍との正面対決に勝利!

やっとのことで二極神・スレイプニルを撃破する!



間髪入れずに最後の冥府神ダゴンにも攻撃を仕掛けようとしたその時、世界が薄暗くなり、絶対神ン・マが地上界に姿を現した!



「どういうことだ!?父さんとヒカル先生はどうしたんだ!!」

突然のことに動揺するマジレンジャーに、恐ろしい言葉が突きつけられる。


ブレイジェル達にもう戦う力は無い・・・


そして地面へ投げ放たれる、ブレイジェルとサンジェルの骸。


なんということだ。
飢餓と虚無の渦巻く絶対神ン・マは完全転生を果たし、“秘密の力”すなわち“勇気を喰らう力”を手に入れてしまった!

ウルザード・ファイヤーとマジシャインに変身することも出来なくなった勇とヒカルを容易く蹴散らしたン・マは、ついに地上界をも虚無で覆い尽くそうとしているのだ!



「そんな・・・父さんが・・・ヒカル先生が・・・。」




『これを見るがいい・・・地上界の行く末だ・・・』


そう言うとン・マは時間を喰らい、世界を未来の世界へと変えてしまった。

いとも簡単にタイムスリップを起こしたのだ!




「こ、これが地上界の未来・・・!?」


そこにあったのは、ン・マの君臨により荒廃し、何もかも無くなってしまった地上界の姿だった・・・。


『そうだ。全ては虚無と飢餓に覆いつくされる運命。』



「じゃあ俺たちが、俺たちが今までやってきたことは、無駄だったというのか!?」

『ふはは、無駄ではない。私を楽しませてくれるのだからな!』



鋭い触手で四方八方から突き刺してくるン・マに今はとにかくやるしかないと、マジレジェンドはスクリューカリバー・ファイヤートルネードで対抗するが、スクリューカリバーは木っ端微塵に砕かれ、放った炎はン・マに喰い尽くされてしまった。

「くそ!あいつは時間だけじゃねぇ、魔法まで・・・勇気まで喰っちまうのか!」


『お前達の恐怖と苦しみに彩られた心を私が喰らう時、私の飢餓は満たされ、絶対支配は完成する!』

「ぐあぁ!」


情け容赦の無い猛攻。踏む、蹴る、握りつぶす、投げる、突き刺す、そして勇気を吸い取る!いつしかマジレジェンドの合体は解除され、五人もマジレンジャーから元の人間に戻ろうとしていた。


「ここまで・・・か・・・」
「もう一度、家族みんなでご飯を食べたかった・・・」


絶対神ン・マと荒廃した世界を前に、皆が諦めようとしていた。



その時麗が、荒野に咲く一輪の花を見つける。

「こんなン・マに支配された世界でも・・・闇に負けずに頑張ることが出来る・・・。」

翼が、最後の希望に気付く。

「魁・・・お前あの時父さんと何をしていたんだ?父さんとの最後の別れの時・・・。」

魁が、あの構えを思い出す。

「あの時・・・そう、フェイタルブレイドを伝授してもらったんだ!勇気の境地へ立つ時、奇跡を呼ぶ剣だって。でも、そんな父さんでさえン・マには敵わなかったのに・・・俺に出来るわけないよ・・・」

そんな魁を、芳香が励ます。

「そんなことないよ、魁ちゃん!可能性は自分で作るもの!可能性は、作る、作れるもの!でしょ?」

蒔人が、魁に全てを託す!

「魁!お前なら出来る!父さんはお前を信じて、お前なら奇跡を起こせると信じて全てを伝授したんじゃないのか?父さんに出来なかったことを、お前がやるんだ!」



『奇跡など起こらん!!』


一輪の花を踏み潰し、ン・マが五人の前に立ちふさがる。



『期は熟した!そろそろ喰らうとしよう!』


ン・マの体からとどめの闇のエネルギーが放たれる!



「「 ジンガ・マジュナ! 」」


麗・翼・芳香・蒔人の4人が防御魔法“マジカルカーテン”で対抗するが、4人は吹き飛ばされてしまう。


「か、魁!いくんだぁっ!」
「俺たち約束しただろ!必ず皆で家に帰るって!」
「大丈夫、魁ちゃんを信じてる!」
「魁なら出来るよ!」


皆の願いを託された魁は、父・勇の言葉を思い出していた。


俺が自分の勇気を見つけた時・・・奇跡は起こる・・・ 。俺の勇気・・・そうか!」

魁は辺りを見渡すと、魔法聖杖ダイヤル・ロッドとマジスティックソードの二刀流の構えを見せる。そう、フェイタル・ブレイドだ!

『小僧・・・貴様から喰らわれたいか。』

「聞け!絶対神ン・マ!俺の勇気は未来を切り開く勇気!可能性を掴み、未来を自分の手で作る力だ!!こんな未来、俺は認めない!」


魁の中に溢れる勇気が満ち足りる!燃える炎のエレメント、マジレッドの奇跡だ!

「マジーネ・ルルド!喰った時間を、勇気を、・・・吐き出せぇぇぇぇ!」

マジーネ・ルルド、飲み込まれたものを取り戻す錬金魔法、赤の魔法使いの魔法だ!
そして魁のフェイタル・ブレイドがン・マの腹部を突き刺す!


『何をする小僧! うぅおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!


魁が剣先から奇跡の力を送り込むと、ン・マの傷口から眩い光が漏れ始める。

「兄ちゃん姉ちゃん!俺の手を!」

蒔人達が魁の手をしっかり掴むと、5人の中に勇気が、そして奪われた時間が元に戻る!

『おぉのれぇぇぇぇぇぇ!』


眼を開けるとそこは、明るい、元の世界だった・・・!

「間違いない、俺達の世界だ!」
「私達、帰ってこれたんだね!」
「兄ちゃん姉ちゃんが信じてくれたからだよ!」


『おのれぇ・・・絶対神にあだなすとは、最大の冒涜と知れぇぇ!』


喜びもつかの間、魁の大反撃に怒ったン・マの触手攻撃が5人を襲う!

「・・・・!」
『・・・・・こ、これは!』

だがなんと次の瞬間、ン・マの触手は眩い光を発して砕け散ってしまった!


「それはマジエルの魔法“ハロー・ミラージュ”の効果じゃ。ダメージを負ったお前に今になって利いたようじゃな」

現れたのはスノウジェルだ!

『マジエルは死んだはず・・・!』

「お前がマジエルにとどめをさそうとした時、マジエルはご自身の体に魂化の魔法をかけたのよ!」

この声はリン(ルナジェル)だ!

「小津兄弟の父・勇が、母・深雪にしたようにな。今頃は魂の園で実体化なされていることじゃろう」

「天空大聖者マジエルさえご無事ならば、マジトピアは再び甦る!」


『くっ・・・!かくなる上はインフェルシアに戻り、我が力を再び虚無で満た・・・』
「インフェルシアに貴方の居場所はないわ!」

「母さん!」


現れたのはダゴンと戦っていた深雪と、そしてスフィンクスにヴァンキュリアだった!


『白の魔法使い、それにスフィンクス!何故お前が・・・ダゴンはどうした!』

「ダゴンは滅びました。己の弱さ故に・・・。」

スフィンクスは淡々と語り始める・・・。





時は数十分前にさかのぼる。
マジマザーは苦戦の末、ついにダゴンに追い詰められてしまう。

「これからン・マ様の支配する新しい世界をお前に見せてやろう。」

「そんなことさせない・・・。・・・貴女は!」


そこに現れたのが、スフィンクスとヴァンキュリアである。

「スフィンクス!?何故だ!お前は俺が確かにとどめを差したはず!」

   「妖幻密使の不死身の力で助かりました。」

「妖幻密使だと!?クィーンヴァンパイアか!」


なんと今までダゴン達の神罰に手を貸してきたヴァンキュリアが、クィーンヴァンパイアの持つ不死身の力でスフィンクスを甦らせたのだ!


「ダゴン様申し訳ございません。貴方の闇の戒律を都合よく曲げる姿を見て、我々はスフィンクス様にお仕えすることに決めたのです。」(バンキュリア)

「私達は今まで多くのものを奪い、失ってきました。もう失い、奪うのはよしましょう。それよりも私は“勇気”というものを知りたい。 ン・マの支配の下では無く、あの魔法使い達と共に、世界を自分自身の手で建て直したい! ダゴン、貴方も一緒に・・・」


「まだそのようなことをぬかすか!俺が望むのはン・マ様が絶対支配する虚無と永遠の闇の世界!ただそれのみだぁっ!」

「はぁっ!」

「ぐはぁっ」


スフィンクスの渾身の一撃が、矛を振り上げたダゴンにクリティカルヒットする!


「な・・・何故・・・闇の力は絶対では・・・無いのかぁぁ!お、俺は・・・・・・ぐふぁっ」

「残念ですダゴン。貴方はン・マに拘りすぎた・・・」





「・・・ということです、絶対神ン・マ。」

『くっ・・・ダゴンまでもが殺られたのか・・・!』

「インフェルシアはもう貴方の望む世界ではない!あなたの闇による絶対支配など必要としていないのです!」

「「私達がインフェルシアを変えてみせます!」」(ナイ&メア)


「妖幻密使よ、あの二人の命を・・・」

「「は~い^^」」


ナイ&メアの手から放たれたエネルギーが、勇とヒカルの骸に宿る!

「「クィーンヴァンパイアの不死の力をおすそわけ~♪」」



なんと、ン・マにやられたはずのブレイジェルとサンジェルが甦ったではないか!

「父さん!ヒカル先生!」

「皆・・・これは・・・?なるほど、そういうことか。(理解早っ)」



これでついに、ついに全ての魔法使いが一つになったのだ!



「ここまでのようだなン・マ。お前にもはや逃げる場所は無い!」

『だ、だまれだまれぇっ!いくらお前等が群れようと、魔法等私の前には非力!喰らい尽くしてくれる!くらぇぇ!』


だがン・マの体から放たれた闇の力も、未来への希望と家族の絆、そして溢れる勇気で満たされた今の魔法使い達には利かない!



「皆!変身だ!」



「猛る烈火のエレメント!天空勇者、ウルザード・ファイヤー!」

「輝く太陽のエレメント!天空勇者、マジシャイン!」

「きらめく氷のエレメント!白の魔法使い、マジマザー!」

「うなる大地のエレメント!緑の魔法使い、マジグリーン!」

「ふぶく風のエレメント!桃色の魔法使い、マジピンク!」

「たゆたう水のエレメント!青の魔法使い、マジブルー!」

「走る雷(いかずち)のエレメント!黄色の魔法使い、マジイエロー!」

「燃える炎のエレメント!赤の魔法使い、マジレッド!」


「   、   」 



「くらえ!これが最後の魔法だ!ン・マ!」


「「「「「「「「マージ・マジ・マジェンド!!」」」」」」」」

8人の力を合わせた究極の魔法が、ン・マに向かって放たれる!



『喰ってやる・・・喰ってやる・・・ぬぉぉぉぉぉぉぉ!!!』


あまりにも強く眩しいその力を喰らい尽くそうとするン・マだが、すぐにン・マの体が膨らみ始める。


『私が喰らい尽くせないほどの大きな力だと!?何なんだ魔法とは!!うぉおぉぉぉぉっ!!』



「魔法とは何か、教えてやるン・マ!よく聞くがいい!」




魔法!
           それは聖なる力!

魔法!
           それは未知への冒険!

魔法!
           そしてそれは、勇気の証!!





『ぐぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!これが・・・これが“真に”満たされるということなのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~っっっ』



ドゴォォォォォォォォォン









地上、マジトピア、マルデヨーナ世界、そしてインフェルシア・・・

この日、全ての世界に勇気の雨が降り注ぎ、世界は魔法の架け橋で結ばれた。






------《   神 々 と の 戦 い  編   》------
















終章 



勇気の雨で世界中が満たされたあの日からちょうど一年。

“メモリアルデイ”と称されるこの記念日に、小津家ではささやかなパーティが行われようとしていた。


「今日はアニキ農場サラダスペシャルバージョンだ!」
「芳香ちゃん目玉焼きスペシャルバージョンもあるよぉ~ん♪いっぱい食べてね、お父さん!」

「ああ。ははは。」

もちろん勇も深雪も席に付いている。小津家の大黒柱なのだから。

蒔人は戦いが終わった後すぐ農業の勉強を始めた。
ブラジルに大アニキ農場を開くという夢を追い始めたのだ。
のはずなのだが、弟や妹の行く末のことばかり気にしているように見えるのは、気の所為だろうか?まだまだ大アニキ農場への道のりは長いようだ。

芳香は相変わらずデート三昧だが、前のように適当な付き合いではなく、しっかりと未来を見据えた恋をしている。麗に先を越された結婚が、芳香にも近付いてきているのかもしれない。


「麗、マジトピアでの生活には慣れた?」

「うん!毎日が楽しいよ!」

  「小姑のルナジェルと、大姑のマジエルに虐められてるんだニャ」

「こらスモーキー、でたらめを言うな。本当はとてもよくしてもらってます、深雪さん。」


そう、麗は夫となったヒカルと(もちろんスモーキーも)一緒に今はマジトピアで生活しているのだ。ン・マに荒らされた世界の復興に、夫婦で力を注いでいるのである。


「そういえば、翼ちゃんは?」

「多分そろそろ・・・あ、来たんじゃない?」


ドアを開け入ってきたのは、トレーニングスーツに身を包んだ翼だった。


「大丈夫?なんだか疲れてるみたいだけど。」

「ああ、来週試合だからな。トレーニングで忙しいんだ。でも、今日だけは絶対来なきゃならねぇだろ?」

「そうね。でも、くれぐれも無理だけはしないでね、翼。」

「わかってるって。チー姉は心配性だな。」

元々ボクシングを習っていた翼は、特訓に特訓を重ね今やプロボクサー選手の仲間入りを果たそうとしていた。だがそんな中でも家族のことを考えるようになったあたり、翼はあの戦いで大きく成長したと言えるだろう。


「あれ?あいつは?まだなのか?」

「う~ん、インフェルシアに行ったきり帰って来ないね」

「必ず来るって言ってたんだけど・・・何かあったのかしら。」

「と言っても、魁ちんがいないと始まらないのでございますですよ」

「電話してみるわね。」


深雪がマージフォンでインフェルシアに電話をかけると、ウーザフォンで応えたのはナイ&メアだった。


ナイ&メア「魁ちん?とっくに帰ったよん?」

「そう・・・何してるのかしら。インフェルシアと地上界の親善大使になるんだ、って張り切ってたのはいいけど・・・心配だわ。」

スフィンクス「そのことなら心配ない。彼はよくやってくれている。今もゾビル・ハイゾビル達にインフェルシア再興の工事をやって貰っているのだが、彼の錬金術の知識が非常に役に立っている。」

「ならいいんだけど・・・。ありがとう。」


インフェルシアは地上界と手を結ぶ。スフィンクスが言っていたことは既に実行に移されているのだ。

と、廊下をあわただしく駆ける足音が・・・

「この足音・・・来たんじゃない?」

「そうだな。こんな落ち着きのねぇ音はあいつしか出せない。」



「遅れてごめん!ちょっと途中で山崎さんに会っちゃってさ、話し込んでたんだ」

「ふん、アツアツだな。」

「な、何言ってんだよチー兄、そんなんじゃねぇよ」

「それにしてもその服似合ってないねぇ。改めて眺めると・・・うん、似合わない!」

「うるさいなぁ芳香姉ちゃん。これは父さんの着てた服だからこれじゃなきゃダメなの!」

「に、兄ちゃんは魁の決めた相手なら信用するぞ!だ、だが魁まだお前にははや・・・」

「蒔人兄ちゃんまで何言ってんだよ!まだ俺と山崎さんはそんな関係じゃねぇの!」

「「「“まだ”、ということは!?」」」

「うぁ~もう!」


魁はインフェルシアの親善大使となり、両世界の架け橋となってはいるが、性格は相変わらずである。兄弟のいいおもちゃとなっている。


「はいはい、皆揃ったんだから記念撮影を撮りましょう!」


深雪の呼びかけで、皆が整列する。


深雪、勇、ヒカル、麗、翼、芳香、蒔人、魁、それに忘れちゃいけないマンドラ坊や。


「こうやって見ると、皆本当に大きくなったな。」

「お父さんそれ言うの何回目?芳香もう聞き飽きちゃったよぉ」

「ははは、そうだったな。すまないすまない。」



あれから一年。世界は平和を取り戻した。



「みんニャ!それじゃぁ撮るじぇぃ!タイマーをセットして・・・」



魔法使い達はそれぞれの夢に向かって走りだした。もう戦うべき敵もいない。



「スモーキー、早く早く入って入って!」
「待ってくれニャ~!」
「それじゃぁいくよぉ~、3!」


だが、未来は永遠と続く希望の道!その道はまだ始まったばかり!



「2!」



この希望の道を切り開くのは、家族の、皆の絆と・・・



「1!」



未来を信じることが出来る魔法、“勇気”なのだ!




「「「「「「「「「 チェック・メイト! 」」」」」」」」」







魔法戦隊マジレンジャー 完



※『魔法戦隊マジレンジャー』及びこのストーリーダイジェストはフィクションです。実在の個人、団体とは一切関係ありません。
また、このストーリーダイジェストを作成するにあたり、便宜上の都合で『魔法戦隊マジレンジャー』本編に無い台詞構成及び多少の脚色を組み込んだことを御了承下さい。

                 『火には油を炎に火薬を』管理人 NASUB


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『魔法戦隊マジレンジャー』公式サイト
http://www.tv-asahi.co.jp/magi/




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