まるごとの「いただきます」

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上海旅日記

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2006.03.25

上海初日の晩御飯は、
お義父さんたちの家の近くのレストランに行きました。

上海料理といえば‥
やはり上海カニ。
あと、川エビの炒め物なんかも、
結構いける。

だけど‥
MuMuに蕁麻疹が出ていることなどを
考えると‥エビ・カニなどの
海鮮類はちょっと避けた方がよさそうなので、
鶏やお肉の料理も頼んでもらった。

なんでもない人が海外で食事して、
蕁麻疹の出るもととなりやすいのは、
エビ・カニ類だと聞くからね。

そこで出てきたのは、
鶏のスープ。

脂がのっていて、こってり、まったり‥
ものすご～く美味しかった。
これぞ、鶏のスープ!!
それじゃ、今まで食べてきた鶏のスープは
一体ぜんたいなんだったの!!
‥ってくらい美味しかった。
スープは。

ただ‥

運ばれてきて、
どぉ～んと円卓に乗せられた大きな鉢。
さぁ、子ども達にとりわけてあげなさい。
‥と、すすめられて、
たちあがって、私がそこに見たものは‥

静かに目を閉じて、
スープの中に沈んでいる
まるごとの鶏さん。

)゜0゜( ヒィィ

一瞬‥動作が硬直してしまった。

相手が、鶏さん‥となると、
それをお魚のように、
尾頭付きの食物と見るのは難しく、
もはや‥亡き骸に見えてしまう。

こっ‥こわい。

幸い、うちの子たちは、
その鉢の中身を目撃していなかったので
よかったのだけれど、
もし、見ていたら‥
きっときっと、私以上にショックを受けて、
折角のスープを飲まなくなってしまう!!

勇気をふり絞り、
「鶏さんごめんなさい～」と、
心の中で手をあわせながら、
スープと身のところを
お玉でちょっとさばいて、
お椀にとりわけた。

本当に、本当に‥
おいしかったんだけどね。

その後出てきたのは、
豚の腿肉の蒸し焼きみたいなの。

お味もしっかりついていて、
身がと～ってもやわらかくて、
皮のところもプルプルとコラーゲンたっぷり。
本当に美味しかった。

でも、腿肉といったら、
本当に‥「腿」の形態で料理されているのね。
ちゃんと骨もついているし‥。
私としては‥
さっきの鶏のスープのショックが残っていて、
今度は、豚の亡き骸の一部に見えてしかたがない。

そして‥子ども達も
お肉は本当に美味しいのに、
ちょっとそのダイナミックな形態に
ビビリ気味。

思えば、豚にしろ、鶏にしろ。
私たちが普段食べるお肉は、
スーパーやお肉屋さんで
キレイにさばかれて、
スライスされて、店頭にならんでいる。
うちの子ども達が日常口にするのは、
そんなお肉のみである。

無理もないか‥

そう思う反面、
ふと、思い出した。

「いただきます」という言葉の意味。
この間終わったドラマ、
「食いタン」の中でも東山紀之が言ってた。

植物にせよ、動物にせよ‥
私たちは、他の生物の「命」をいただいている。
‥だから、
食事の前の「いただきます」には、
その生物に対する感謝の気持ちをこめて、
「あなたの命をいただきます」っていう
意味があるのだ‥ってこと。

どんな形態に料理をされて出てこようとも、
それが、まるごとであろうとも、
骨付きぶつ切りであろうとも、
キレイにスライスして並べられたものであろとも、
何かの生き物の亡き骸であることに変わりない。

まるごと料理を見て、
いやだぁ～、残酷～、こわいぃ～なんて、
思ってしまうのは、偽善なんじゃないかな。

私が、スープの中で静かに目を閉じて
沈んでいるまるごとの鶏さんに、
心の中で手をあわせた気持ち‥
あれこそ「いただきます」の原点なんじゃないだろうか。

考えようによっては、
まるごと‥っていうのは、
偽善とかでなく、心から食べ物に感謝するために
最もいいかたちの調理形態なんじゃないかな。

‥ふと、そんな風なことを考えた。

でも、怖いものはやっぱり怖いんだけどね。

ちなみに‥私は、
過去の中国旅行の経験の中で、

まるで居酒屋の小エビのから揚げのように、
お皿にてんこもりにされた
小ぶりなカエルさんのから揚げ。

頭も手も足もその爪も‥
しっかりついたままの
スッポンの姿煮。

茶碗蒸しよりちょっと大きなおわんの
フタをあけると、
これまた静かにスープの中に横たわる
鳩さん。

日本でもよく食べる食材だけど、
ペちゃんと開いて照り焼きにしたのでなく、
そのままぶつ切りにして、
とぐろをまいたような形にお皿に盛られた
ウナギさん。

‥等々に遭遇した経験あります。