なまけいぬの、お茶うけをひとつ。  

なまけいぬの、お茶うけをひとつ。  

2008年11月01日
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カテゴリ: 楽園に吼える豹
シン・藤堂が復帰を果たして一週間。

レオンの読みは当たった。
藤堂は、突如自分の上司となった年下の女性に対しても礼儀を欠くことなく、かといって媚びるわけでもなく―――実に冷静に、仕事をこなした。

のみならず、摩擦が絶えなかったユイとその部下たちの間に入り緩衝装置となることによって、悪化する一方だったユイの立場を守ることにもなった。

本人にはユイを庇うつもりなど毛頭なかっただろう。

どちらかといえば、自分の上司が男であろうと女であろうとどうでもいい、というある種無関心な態度である。

しかしユイは、彼のその態度に少なからず安堵していた。
彼女が婚約を破棄したという醜聞にも一切興味を示さない藤堂という部下の存在は、救いであった。




束の間とはいえ静かだった水面に波紋が生じ始めたのだとすれば、おそらくこの時からだったろう。





藤堂を除くその場にいた全員が、ユイの方を振り向き一瞬言葉を失った。

何せその部屋―――副長官の執務室だ―――には、藤堂とそのGSであるアスカ、同じく彼の秘書であるユキヒロ、そしてユイのGS・レオンが顔を揃えていたのだから。

こんな状況でいきなりデートの誘いとも取れる言葉が放たれたのだから、面食らうのも当然である。

しかもその言葉は、ユイの目線に鑑みて藤堂に向けられたものだった。


「ええ」


別段驚いた様子もなく、藤堂は淡々と答えた。

返答を受け取ったユイのほうもそれほど嬉々とした素振りを見せず、「そうですか」と言った後、


「では、お店の選択は私に任せてもらえますか」





一時間後、藤堂はセルムでも指折りの高級レストランにやってきた。
もちろんユイと共に、である。

政治家や実業家などの密談にも使われることの多いこの店は、全て個室席となっている。


彼女は藤堂と何を話そうというのだろう。

テーブルにはなぜか、三つの椅子が備えられている。


「…?」


藤堂の不審を敏感に察知して、ユイは早々と今日の用件を伝えた。


「実は、会って頂きたい人がいるんです」







つづく


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最終更新日  2008年11月06日 18時45分08秒
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