第1章 第2節「最初の出逢い」


第2節 「最初の出逢い」

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儂は最初…
ちいさなちいさな魚じゃった。
形はなんといえばいいのかのう、
メダカみたいなもんかのう。

しかし、海にいた。

海は広かったのう…。

どこまでも泳いでも果てが無かった。
儂は他の同じ形の魚たちと泳ぐよりも、
違う形の魚たちと泳ぐ方が
楽しかった…。

ある日のことじゃ今で言う、
鮫のような形をした暴れん坊達が、
儂らの領海内を
暴れたんじゃ…。

沢山の儂の仲間達が喰われ死んでいった。

儂は、怖れながらも死は怖くはなかった…。
故に、自らの命よりも仲間を助ける為の行為を
考えする実行することが出来た。

いつも自分と遊んでくれていた。一頭のイルカ…。
そいつに頼みにいったんじゃ…。

今、思うとのう…。
奴こそが「R」じゃったんじゃ…。

「R」は傷だらけになりながらも、儂らの仲間を助けてくれた。
しかし真にその場面で活躍したのはもう一頭の鯱(シャチ)…
凛々しくも勇ましい海の狼じゃった…。

鯱も、今思えば「Z」じゃったんじゃのう…。
その鯱はイルカの親友じゃったらしいからのう。
見るに見かねて、助けに来たんじゃろう。
いずこからはわからんが…

その事件があってからというもの
儂らは共に泳ぐようになったんじゃな…。

皆、自分たちの群からはハグレものじゃったし
というよりかは自ら選んで、群からはぐれて単独で行動していたんじゃな…。

多くの海を儂らは共に泳いだ。
様々な美しいものも見た…。
洋上を駆けるとき風の音も聞いた
儂は風の声も聞けたから
多くの新しい仲間の声も聞こえた
皆…肉体を欲しがっていた。

しかし儂は教えることが出来なかった

その時は儂はタダの魚じゃったから…

しかし、儂は孤独ではなかった
「R」と「Z」が儂のそばにいつもいたから…。

いつしか、儂の体は大きくなっていった。
今思えば、儂は鯨のような生き物じゃったのかもしれん…。

儂らの意見はいつも同じだった

危険よりも、大事なことがある。

多くのことを見たい
多くのものを感じたい
多くの真実を知りたい

その為ならどんな冒険もしたい…。

「R」よりも「Z」よりも儂が大きくなったある日のことじゃった
儂らは、この世のものとは思えない神秘的な生き物に出逢ったんじゃ。

今で言えば、人魚といえばいいのかのう。
おそらく他の星から肉体のまま来たんじゃろう…。

その海底の神殿というか
ある意味では乗り物のようなものじゃったな…
しかし、それはあまりにも巨大で…
なんというか…
そこにはひとつの街があり…
沢山の人魚達が光り輝く中で踊るように泳いでおったんじゃ…

今でも忘れられないのは
その中のひとりの人魚が群からはぐれて
こっちに来たんじゃ

そして…
儂らに向けて、微笑んだのじゃ…

この世で、あれほどまでに美しい笑顔に出逢ったことは儂には無かった…。
おそらく「R」も「Z」もそう感じたんじゃろう。
儂らは既に一心同体の仲間みたいなもんじゃったからな…。

そう…。
その時…。
儂らの…。
「R」、「Z」、そして儂「D」の…。
時は止まった…。

そう、その時こそ儂らに“新しい仲間”が出来た時の確信じゃった。

彼女の名は「K」
彼女も、自らの群から離れ、儂らとの冒険に参加することになった。

初めて逢った時から
「K」も儂らと同じだと儂らは感じたのじゃった…。

それは、間違いでは無かった…。

そして、儂らは共に力を合わせ
生涯に渡って…
多くの海を渡り…
多くの美しいものを見て
多くの素晴らしい体験をした。

しかし…
それらを話すだけでも…
おそらく何千ページの物語になってしまうじゃろう…。

いつかそれを話せるときが来るかもしれぬが、今はまだその時ではない…。

そう、儂らは初めて出逢ったのはそんな昔の海での話じゃった
今はそれだけ…
覚えていてくれればよい…
いや…。思い出してくれればよい…といった方が正しいかのう…。

たぶん、おぬしの心もこの話はどこかで知っていたはずじゃからな…。

話さなくてはならないことは
まだ無数にあるのじゃから…。


第2節 終わり
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