化粧 




空が抜けた様な雷雨の激しい音に
泥沼みたいな睡魔も
近づいたり 遠のいたりした昨夜
朝になっても薄暗い部屋の鏡台の前
椅子に腰掛けると
鏡の向こう側
いつもより 青白く皮肉な笑顔の彼女

彼女の顔に化粧水を強く叩きつける
乳液が指先と一緒に肌に吸い付く
彼女はひと言も口をきかず
私によってきれいな肌色の顔にされる
表情も徐々に作られたものとなる
アイシャドウを
おとなしく塗られる彼女のまぶた
眉は濃く長く描かれる

少しずつ鏡の向こう側の彼女は透き通っていく
最後に、
口紅をひくと
もう鏡の向こう側にいた彼女は
私と一体化して
いつもの変わらぬ私に・・・。


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