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子供の悲劇

５歳男児変死　虐待の母親逮捕　傷害致死容疑　腹部殴打で内臓損傷

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2005年12月9日

　愛知県尾張旭市の大工吉村浩一さん（３５）の長男で、保育園児の龍也ちゃん（５）が変死した事件で、同県警守山署は８日夜、母親の佑希容疑者（２６）を傷害致死の疑いで逮捕した。佑希容疑者は「暴力をふるっていない。あざはブランコから落ちてできた」などと容疑を否認しているが、龍也ちゃんの背中や腰などには殴打の跡とみられる複数のあざがあり、同署では佑希容疑者が日常的に虐待していたとみている。

　調べによると、佑希容疑者は７日午前７時５０分ごろ、同市城前町上大道の自宅で龍也ちゃんに暴行を加え、死亡させた疑い。司法解剖の結果、龍也ちゃんの死因は腹や胸などを殴打されたための内臓損傷による失血死だった。

　佑希容疑者は「龍也に２階の弟にミルクを飲ませるように指示し、自分は１階で家事をしていた。その後、２階に行ったら、龍也の意識がなかった」などと、犯行を否認している。

　一方、浩一さんは「しつけで、自分も妻も殴ったことはある。ただ、最近は妻に『殴ってはいけない』と言っていた」と話している。

　近所の住民によると、１年ぐらい前から佑希容疑者が「ばかやろう」などと叫び、龍也ちゃんを殴りつけるのが目撃されたといい、同署は長期間にわたって虐待があったとみている。

児童相談センター　両親には以前から接触　保育園　「たたかれた」聞き取り
　龍也ちゃん虐待死事件で、愛知県中央児童・障害者相談センターや通っていた保育園が、互いに虐待の兆候に気付きながら、情報交換をしていなかったことが８日、わかった。虐待が疑われる例では、関係機関が手持ちの情報を開示し合うことで、子どもを守れるが、この原則が生かされていなかった。

　同センターでは２００２年６月ごろに、龍也ちゃん一家が複雑な家庭環境にあったことから、問題が起こる可能性があるとして、両親と不定期に接触していたほか、引っ越し先の自治体などに連絡していた。

　しかし、今年５月に同県尾張旭市から、具体的な虐待情報が寄せられるまで、龍也ちゃんと直接接触したり、通っていた保育園から様子を聞いたりせず、「実際に虐待を受けていたかについては、把握できなかった」という。

　一方、龍也ちゃんがかつて通っていた名古屋市内の保育園では、今年３月ごろ顔のあざなどに３回ほど気付いた。龍也ちゃんから「両親にたたかれた」と聞き取っていたものの「関係機関に通報するのは時期尚早」と判断していた。同センターでは「関係機関との情報共有に問題があった」と、連絡のミスを認めている。

　児童虐待の実態や対策に詳しい高橋重宏・東洋大教授（子供家庭福祉論）は「虐待の疑いがあれば、関係機関は、早急に状況を把握することが必要だ。空騒ぎに終わっても構わないという気持ちで、すぐに行動すべきだろう」と話している。

支援中の児童ら　愛知県が点検へ　マニュアルも見直し
　龍也ちゃん虐待事件を受け、愛知県は８日、県の所管する９児童相談センターで抱えている虐待事案のうち、在宅で支援しているすべての案件について、対応が適切かどうか再点検する方針を明らかにした。

　県議会健康福祉委員会で示した。また、県中央児童・障害者相談センターが、龍也ちゃんの顔にあざがあるとの連絡を受けながら、特別な対応をしなかった事態を重視し、虐待対応マニュアルや職員の研修制度も見直す。

　母親の逮捕を受けて、今井秀明・県健康福祉部長は「もう一歩踏み込んだ対応が必要だったと痛感している。虐待の危険度評価方法を見直すなど再発防止に取り組みたい」とコメントした。

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■■■　　　　５歳児虐待死で母逮捕
■■■　　　　　　　　　　　愛知県警　死因は内臓破裂

　愛知県尾張旭市城前町上大道の吉村龍也（りゅうや）ちゃん（５つ）が七日午前、虐待の疑いで死亡した事件で、名古屋・守山署は八日、龍也ちゃんに暴行を加えて死亡させたとして、傷害致死の疑いで母親の無職吉村佑希容疑者（２６）を逮捕した。龍也ちゃんは恒常的に暴行を受けていたとみられる。父親（３５）も今回の容疑とは別に虐待に関与していたことを認めており、同県警は慎重に捜査する。

　調べでは、佑希容疑者は七日午前七時五十分ごろ、自宅で龍也ちゃんに暴行を加えて内臓を破裂させ、失血死させた疑い。佑希容疑者は「手は出していない」と容疑を否認している。

　八日の司法解剖の結果によると、龍也ちゃんの腹部には強い力がかかり、肝臓や肺が破裂、静脈も切断されていた。内臓破裂から失血死に至るのは短時間であることから、同署は一一九番通報の直前に龍也ちゃんに暴行を加えられるのは佑希容疑者しかいないとみて逮捕に踏み切った。

　龍也ちゃんの体には多数のあざなど虐待を受けたとみられる形跡があった。父親は犯行のあったとされる七日は午前五時半に出勤しており、「何も分からない」と話している。しかし過去に佑希容疑者とともに龍也ちゃんを殴るなどしたことを認めているという。

　佑希容疑者は同日の様子について「自分は一階にいたが、二階に上がると龍也の意識がなくなっていた」などと供述、一貫して否認している。龍也ちゃんは父親の元妻の子で養子縁組していた。

◆通報後、人目つかぬ場所に　長期虐待の可能性

　虐待で龍也ちゃんを死なせたとして逮捕された佑希容疑者（２６）は、虐待を近くの住民に知られると場所を変えては暴行を加えていたことが、名古屋・守山署の調べや住民の話で分かった。通報されたことを知ると激高し、住民に食ってかかることもあった。

　住民の話などによると、一家が住むアパートの部屋からは龍也ちゃんの泣き声や物を投げつけるような音が頻繁に聞こえた。しつけと称して龍也ちゃんを屋外で正座させる光景もしばしば見られた。雨の中、正座させられていたこともあった。

　佑希容疑者は当初、アパートの南側で正座させていたが、隣家の目を気にしてその後、北側の駐車場で暴行。これも見られると、車の陰に隠れるようにして正座させていたという。虐待を確信した住民は行政機関に通報。それを知った佑希容疑者が「尾張旭の人間は人付き合いを知らん」と怒鳴ったこともあった。

　龍也ちゃんの死因は、肝臓や太い静脈が破裂したことによる失血死。腹部を踏みつけるなど、かなり大きな力が加わったとみられる。ほかにも以前に暴行を受けたとみられる形跡が頭や背中など体中にあった。

◆愛知県が議会で陳謝

　吉村龍也ちゃんの虐待死をめぐり、愛知県の今井秀明健康福祉部長は八日の県議会健康福祉委員会で「中央児童・障害者相談センターが半年かかわってきたが、残念な結果になり申し訳なく思っている」と陳謝した。

　委員会で県側は「子どもの深刻な状況を読み取る面で甘い判断があった」と認め、理由として、大きなけががなく保護の見極めが難しかったことや、母親とは相談を受けるなど関係がとれていたことを挙げた。

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■■■　　　　　「うそつくから」虐待　母親が児童相談所に告白
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　愛知県尾張旭市の吉村龍也ちゃん（５つ）が虐待死した事件で、母親の佑希容疑者（２６）＝傷害致死容疑で逮捕＝が６月、児童相談所の職員が面談した際に、虐待がなかったか尋ねられ「龍也がうそをつくので、やっていた」と話していたことが９日、分かった。

　県が同日、会見し明らかにした。県健康福祉部長は「（虐待死を防げなかったことは）誠に申し訳ない」と謝罪した。

　佑希容疑者は２００５年３月にも、保育園の職員に龍也ちゃんの顔のあざを指摘され「ぐずったので、たたいた」と話したことも判明。県警は遺体の状況から日常的に虐待していたとみて、追及。同容疑者は「私は手を出していない」と否認している。

　守山署などの調べでは、佑希容疑者は７日午前７時５０分ごろ、龍也君の腹に暴行を加え、内臓破裂などで失血死させた疑い。「２階で生後３カ月の次男の世話をするよう頼み、１階で家事をしていた。下りてこないので２階に行ったら倒れていた」と容疑を否認しているという。

　８日に行った司法解剖の結果、龍也君は肝臓などが裂け、左右の肺にも挫傷があることが判明した。体の数カ所に打撲の跡や擦り傷などもあった。

　佑希容疑者は７日午前８時ごろ、「子どもがひきつけを起こした」と１１９番通報。救急隊員が吉村さん方に駆けつけた時には龍也君は意識不明で、心肺停止状態だった。吉村さんは午前５時半ごろに仕事に出ていて、留守だった。

　７日、８日と続いた県警の事情聴取に対し、佑希容疑者は「朝起きた時には異状はなかった。急にひきつけを起こし、気がついたら意識がなくなっていた。私は手を出していません」などと暴行を否定した。

　しかし県警は、現場検証や解剖の結果などから、龍也君がアパート室内で暴行され、死亡したと断定。状況から、佑希容疑者が関与したと判断した。

　龍也君は、吉村さんの元の妻の子どもで、離婚した際に引き取られ、吉村さんの養子となった。吉村さんとも佑希容疑者とも血のつながりはない。

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