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とてもとてもそんな歳には見えない。80代後半かな・・・とみんな勘違いしてしまう。
利用者処遇でサッチャーさんの案件になると、
『これはこうして、あれはこうして、こういう事ができるようになるようにもっていこう』
などという案が出ると、
「あ・でもサッチャーさんて もう○○歳なんだよね。あれだけできればスゴイかも。」
というオチになる事が多い。
歩行困難で車椅子だが、職員が実年齢を忘れるほどしっかりしていらっしゃるのだ。
フットレスト無しで自走するのだが、早い早い。普通の人が歩くより早っ。
もうちょっとお若い時は、入浴時、タオルに石鹸を泡立てて
背中に パーンッ!!
と叩きつけてゴシゴシあらう姿が女傑過ぎると言われていたらしい。
物忘れは歳相応?で、今飲んだばかりの薬を「飲んだかしら?」
入れ歯を外して鞄に入れたりベッドに置くので、どこ置いたか忘れた~とひと騒動し、
外したい時は職員に声をかけて頂き、預かるようにした。が「入れ歯どうしたっけ?」
数日前から廊下の壁に貼ってあるイベントの時の写真を
ジ~~~~~っと 何度も何度も見ていたサッチャーさん。
「あの洋服がタンスにないの。こう言ったら失礼だけど誰かが持って行ったのかも。」
おしゃれさんで洋服の拘りはスゴイ。自分でタンスを整理したりする。
季節変わりに家族が来て洋服の入れ替えをしていったので、
「あれは夏物だから家に持って帰ったんですよ。」と何度言っても了解が悪い。
確かに似たような服を着ている他利用者さんがいるのだが、
名前が書いてあるので持ってく事はない。というか、ここにはそんな事できる人いないよ。
あまりにもその洋服の事を職員に尋ねるので、居室担当の出番となり
仕事が終わるのが16時半だから、その後に一緒にタンスをもう一回見てみましょう。
それでなかったらご家族が持って帰ったという事で、と話をしておく。
仕事が終わり、一服してからサッチャーさんに声を掛けて・・・
と思っていたら、
「誰か来て~。部屋がめちゃくちゃになっちゃった~。」
あろうことかサッチャーさんは、高さ120cm程の木製5段タンスを倒すところだった。
ところだったというのは傾いてはいるが何故か途中で止まっていたから。
倒れてケガなどしようものなら『事故』
だ。血の気が引いちゃうよ。
タンスの上には人形やら壊れた時計やら、ガラスの花瓶に入ったドライフラワーやら。
それが全部 床に落ちて、大変な事になっていた。
「タンスの引き出しを開けようとしたらこんなんなっちゃったの。」
駆け付けた職員達は、もう笑うしかなく、さすがサッチャーさんだねと。
さすが女傑。部屋の惨状を見て笑ってしまったが、笑えるのも事故が無かったからだ。
花瓶は相当厚かったので割れなかったが、陶器の人形は首が捥げるもの、
足が捥げるものありで、「なんて残酷な~。ごめんなさいね~。」とサッチャーさん。
床のとんでもな物達を拾い集めて掃除機を掛け、
サッチャーさんにいる物いらない物を分別してもらい、
捨てるものは念のため(また無くなった言ったら困るので)写真を撮っておいた。
タンスの中を確認し、ひとしきり話をした後、
「どうしますか?ご家族に聞いてみますか?」と言うと、気が済んだようで
「もういいわ。タンスに無かったという事をあなたが覚えてて下されば。」
騒動のショックでどうでも良くなったのか、寂しくて話す機会が欲しかったのか、
どっちか分からないけど、その後は「あの洋服が・・・」と言わなくなった。
こんなイレギュラーな、仕事なのか仕事じゃないのか
分からないような時間外業務が多々あると、本当に辞めたいと思う私は
介護には向いてないなぁとつくづく思う。
ボランティアだと思ってやらなくちゃ続かない。
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